機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-01 思わぬ出会い

俺はシードフリーダムの夢を見ている。そう深海が認識したのと同時にシンがまた深海に語り掛けてきた。

「て、あ…やっと起きたんですか?まったく、俺たちよりも年上なんだからもうちょっとしっかりしてくださいよ…」

こいつ(シン)シードデスティニーの時から成長してるのか?と深海は内心で思いながらやっと返事を返した。

「君の言う通りだな、感謝するよシン・アスカ」

「うえ…なんで改まってフルネームで呼ぶんスか…名前で呼んでもいいってこの前言ったの、もう忘れたんですか?」

「ははは…どうやらまだ少し寝ぼけているのかもな…すまない」

シンに対して謝罪の言葉を述べる深海。そして、自分とシンたちが今何処にいるのか、ようやく深海は把握できた。

(俺も含めて全員がパイロットスーツを着ている…そして窓の向こうはMSの格納庫か……となれば、ここは待機ルームか)

深海の左目が目の前で話をする3人を捉えた。シンとルナマリアは赤基調のパイロットスーツ、アグネスは1人だけ白と水色基調のパイロットスーツだ。そして深海は自分の胸元へと視線を落とす、どうやら自分たちもシンとルナマリアと同じパイロットスーツを着ているようだ。更に深海は右の方へ視線を向けた。今自分たちのいる白い壁で囲われた待機ルームと窓1枚で隔てられた先、鋼色をした壁に囲われた天を突くように広い空間に直立する人型の機械。

MS(モビルスーツ)…まさかこんな形で見ることになるとはな

深海は思わず感傷に浸ってしまった。すると突然―――

コンディションレッド発令。コンディションレッド

男性の落ち着いた口調の艦内放送が流れるのと同時にアラートが鳴り始めた。

「っ!?」

突然の事に思わず驚く深海だったが、そう言えばさっきはコンディションイエローだったな。と口内で呟いた。艦内放送は続く。

〈アフリカ共和国、オルドリン自治区領内へブルーコスモスと思われる攻撃部隊が進行〉

(ブルーコスモス…やはりまだ暗躍しているようだな)

艦内放送を聞きながら深海がシードデスティニーでの知識を思い出す。シードデスティニーの物語後半、ブルーコスモスの要人たちはシンたちの活躍によって討たれた。だがどうやら、CE(コズミック・イラ)75年になってもその組織は生き続けているようだ。

「もうっ!?」

シンがそう叫びながら立ち上がる。ルナマリアとアグネスも同様だ。3人はサッとエレベーターに乗り込んでいく。ルナマリアがシンに向かって手を差し伸べているのが見え、シンもその手を掴んでエレベーターに乗り込む。そして深海も不思議と自然に体がエレベーターに向かっていった。無重力空間で動いたことなど無いのに、何故か体が自然と動いた。そしてシンに遅れること数秒後には深海の体はエレベーターの中にあった。

(無重力空間は水中に少し似ている気がするな…)

そんな事を思いながら狭いエレベータは下へと降りていく。そしてエレベーターが下まで降り切った所で扉が開き、シンたち3人はサッと身を乗り出して鋼色の格納庫の中へと入って行った。

〈パイロットは搭乗機へ、各科員は速やかに所定の作業を開始せよ〉

艦内放送が続く中、深海も格納庫へと足を踏み入れる。そして格納庫へ出た深海の目の前に1機のMSが立っていた。足元から、舐めるように上へと視線を向けていく深海。そしてそのMSの正体に、深海は目を見開いて思わず声を漏れた。

ムラサメストライク!?

全身が鉄灰(てっかい)色になっていて、右手には銃身付近とサイトセンサー付近を赤く塗られた四角い銃口のライフル、左腕にはストライクガンダムのシールドを思わせる外側から白、赤、黄色で色分けされた重厚な盾を持っているが見間違えようもない。先程、自室の執務机の上で見た娘たちが作ったガンプラ。それが今、自分の目の前にMSとして立っている。そしてそのコックピットに向かう者は誰もいない。つまり―――

(なるほど。これが俺のMSということか!)

深海は確信を持って床を蹴った。

〈オペレーション9902(ナインナインゼロツー)進行中、ヤマト隊発進準備。カタパルト、アルファチームはインダクターズ―――〉

ムラサメストライクのコックピットに向かう深海の耳に興味深い言葉が入ってきた。ヤマト隊。ヤマトという名を持つ者は1人しかいない。

(キラが俺の隊長という事か…いや、俺は別部隊なのか?まあ、コックピットに入ればわかるか)

深海はそう思いながらムラサメストライクへと向かっていく、ムラサメストライクが深海を待っていたかのようにそのコックピットが深海の視界に広がっていく。コックピットの近くには緑色のノーマルスーツを着た整備員らしき男が2人待っていた。深海は上下に開いていたコックピットハッチの上側に手をついて1度止まると、深海は整備員に声をかけた。

「機体の状態は?」

「問題ありませんクロノ大尉!」

(あ、俺って階級大尉なのか…まあ、あまり関係ないか)

自分に階級があることに少し驚く深海だったが、すぐに忘れる。

「じゃあ行ってくる」

「お気を付けて!」

「ご無事を祈っています!」

「…ありがとう」

深海はヘルメットを被るとコックピットハッチからコックピット内部へと滑り込み、身体を反転させてシートに座る。コックピットは無機質な機械と計器で溢れ、左右と正面に四角いモニターがある狭い空間だ。

「全天周囲モニターのようにはいかないようだな…」

ぼそっと深海が呟き直後に目の前のハッチが閉じる。深海は早速機体を立ち上げていく。知らない筈だが、どうやら身体が知っているようだ。次々にモニターや計器が点灯し、そして正面下の小さなモニターに文字が浮かび上がる。

 

General

Unilateral

Neuro - link

Dispersive

Autonomic

Maneuver

      Synthesis System

 

G.U.N.D.A.M.(ガンダム)か…フッ……」

ストライクガンダムが初めて起動したとき、キラが思わず呟いたセリフを思い出して小さく笑ってしまう深海。すると通信モニターに、白と黒、正面に金色のエンブレムの様な物があしらわれた帽子を被った白い軍服の男性が映り込んだ。

〈部隊は中隊規模。まあ、現地部隊からの報告ですから、多く見積もっておくに越したことはありませんが…状況は切迫しているようですっ〉

(確か…アレクセイ・コノエ艦長だったか……)

深海はモニターに映った男性をすぐに誰か見分けた。落ち着いたような口調だが、何処か強い意志を深海は感じとった。すると今度は自分のよく知った声とその主の顔が通信モニターに映し出された。紫色の瞳に茶色の髪、そして青と白に赤色があしらわれたパイロットスーツを着た男。

〈了解。フリーダム突入後、シンは政府施設の防衛を―――〉

(キラ・ヤマト……こんな形で会えるとはな)

 

キラ・ヤマト

 

SEEDシリーズを通して凄まじい活躍をしたSEED世界最強格と呼ばれているガンダムパイロットだ。深海がそんなことを考えていると、不意にシンの驚いた声が聞こえてきた。

〈え!?〉

〈ルナマリアとアグネスは市民の避難を誘導しつつ、オルドリン守備軍を援護―――〉

そしてキラが深海の名前を呼んだ。

〈ミカイさんは臨機応変にシンたちの援護をお願いします〉

〈また?〉

今度はルナマリアの少し呆れたような口調が聞こえてきた。すると、少し語気が強くなったアグネスが通信でキラに呼び掛けた。

〈隊長、前線の敵は私が叩きますッ、ぜひご一緒に!〉

〈隊長、俺も行きます!〉

続けてシンが自分も一緒に行くと、少し無邪気そうにキラに語り掛けた。だがキラはすぐに、駄目だ!と強い口調で言い放つと、今度は諭すように言葉続けた。

 

戦場を広げたくない

 

キラ(こいつ)らしいな…)

その言葉に深海は小さく笑みを浮かべながらヘルメットのバイザーを閉める。現実に自分の年齢はわからない深海だが、キラやこの場にいるパイロット達よりかは確実に年上だ。故にキラの言葉も何処か自分の娘たちの言葉のように幼く聞こえるのだ。

〈ハーケン隊は、ミレニアムを頼みます!〉

〈任せな、隊長!〉

(あの3人組もいるのか…驚いたな)

キラの言葉に再度驚く深海。

(ハーケン隊…恐らく、シードデスティニーでドムトルーパーに乗っていたヒルダ・ハーケン、マーズ・シメオン、ヘルベルト・フォン・ラインハルトの3人だろうな)

「機動戦士ガンダムSEED Destiny」の知識を引っ張り出す深海。すると、深海の乗るムラサメストライクが固定された拘束具がゆっくりと動き出した。そして艦内放送が聞こえてくる。

〈カタパルト接続、全システムオンライン、ダウンクリア、進路上に障害無し―――〉

(いよいよ出撃のようだな…)

深海は不意に気持ちが昂って来るのを感じた。どうやら自分も男の子なのだ。と、思わずにはいられない。艦内放送は続く。

〈対空監視班は空域監視データをチャンネルD2で共有中、レッドチーム退避完了―――ゲルググ、発進どうぞ!〉

ルナマリア・ホーク。ゲルググ、行くわよ!

ルナマリアのゲルググメナースが右舷カタパルトから飛び立ち数秒後に―――

〈ギャン、発進どうぞ!〉

アグネス・ギーベンラート。ギャン、出ます!

アグネスのギャンシュトロームが左舷カタパルトから飛び立った。それから少し遅れて今度はシンとキラの機体がカタパルトに立ったようだ。

〈ジャスティス、発進どうぞ!〉

シン・アスカ。ジャスティス、行きます!

ルナマリアに続くようにシンのイモータルジャスティスガンダムが右舷から飛び立った。

(シンがジャスティスにって……大丈夫なのかそれ?)

深海はシンがジャスティス系列の機体に乗っていることに驚きながらも心配で仕方なかった。シンのパイロットとしての腕前は知っているが、心配になる理由は言わずもがな、ジャスティス系列の機体に今まで乗っていたパイロット。だ。

(最悪、フォローしておくか…)

〈続いてフリーダム、発進どうぞ!〉

キラ・ヤマト。フリーダム、行きます!

そんな事を深海が考えている内に、左舷よりキラの駆るライジングフリーダムガンダムを飛び立った。いよいよ次は自分の番だ。拘束具に固定されたままムラサメストライクが上昇していくのが、モニターを通してわかった。そしてあっという間に艦の外、漆黒の宇宙空間へとムラサメストライクが姿を現した。実際に宇宙空間に来たこともない深海は一瞬だけその漆黒の世界に目を奪われていたが、それもほんの一瞬だった。深海は正面にある計器の中にあるオレンジ色をしたボタンを人差し指で押した。それによってフェイズシフトが展開し鉄灰色だった機体が一瞬で白、青、赤のトリコロールカラーへと色付く。拘束具が外され、足元がそのままカタパルトに接続された。そして―――

〈ストライク、発進どうぞ!〉

深海は左手で手元にあったスラスターのスロットルを最大まで開き、コールした。

 

 

ミカイ・クロノ。ストライク、出るッ!

 

 

カタパルトが一気に前進し深海の体にGが圧し掛かってくる。深海はグッとそれを堪えていると、ムラサメストライクはカタパルトから飛び立ち、猛スピードで先に飛び立っていったキラたちを追って行った。

(これが地球……青く、美しい星だ…)

深海が地球の美しさに一瞬だけ気を取られていると眼前のライジングフリーダムとイモータルジャスティスがMA形態に変形する。寝そべりながら背面にある機首を頭部に被って足を折り畳み、それぞれの主翼を展開してシールドとビームライフルを合体させて胴体正面に張り付かせる。

(こちらも変形しないとマズいな…)

深海は先日娘たちから聞いたムラサメストライクの話を思い出し、手元の操縦桿と眼前にある無数のボタンを押した。すると、ムラサメストライクが直立で寝そべる様に態勢を変えるとバックパック中央に位置していたジェット戦闘機の機首のようなパーツが顔に被さり、両肩背面にある主翼と大型スラスターが90度回転し、後方へ推力を集中させる。両足は真ん中の部分で降り曲がり空気抵抗を軽減する。そして両手から離れたシールドとビームライフルが合体し、胴体正面に張り付く。ライジングフリーダムとイモータルジャスティスとよく似た変形機構だ。そして5機はそのまま大気圏に突入していった。ゲルググメナースとギャンシュトロームは脚部にバリュートを展開し、摩擦熱から機体を護っている。ライジングフリーダム、イモータルジャスティス、ゲルググメナース、ギャンシュトローム、ムラサメストライクの順に、彼らは眼下に広がる青く輝く地球()へと向かった。

 

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