機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-19 報復の業火

「ターミナルの調査に、こんなものが引っかかってきた」

レクリエーションルームにあるテーブルの上にアスランが1枚の写真を置いた。研究所か、大学の様な場所の背景に、白衣を着た金髪の女性が写っている写真だ。その女性は驚いたような表情でダンボールの様な物を抱えていた。深海もその写真に目を落とす。写真に写っている女性は、何処かで見たような面影を秘めていた。

(この女…何処かで?)

すると横から、マリューが眉をひそめた表情で呟いた。

「これは……アウラ女帝?」

すると、アスランが頷きながら説明をした。

「19年前、メンデル研究所にいた頃の彼女です」

「19年前!?」

(そんな馬鹿な!?あの女帝が何故成人した姿で19年前の写真に!?)

深海が目の前の写真を見ながら叫びかけた。シンも深海と同じく、動揺を隠せない様子だ。それはもっともな反応だろう。先日、ファウンデーション王宮で見たアウラは、明らかに見た目が少女だった。19年前となれば、キラやアスランが丁度誕生した頃、シンに至っては生まれてすらいない。19年前に成人の姿で写真に写っているアウラと、先日ファウンデーションで見た少女のアウラ。明らかに時間が逆行している。ガンダムSEEDの世界では遺伝子工学が発達しているが、容姿が若返るような技術は、深海も聞いた事がない。

(メンデルで若返りについて、何かの研究をしていたのか?あるいは……)

深海の動揺は治まったが、眼差しは写真に釘付けになっていた。アスランが話の続きを切り出す。

「彼女の研究テーマは、コーディネイターを超える種を創り出すこと…」

(コーディネイターを超える種……)

深海はエルドアでの戦闘を思い出した。何処からともなく聞こえてきた男の声、そして頭の中に聞こえたシュラ本人の声。あの時深海は、何も思わずに受け答えをしていたが、今にして思えば、それが答えだったのだ。ブラックナイツ。あの近衛師団の団員たちが、恐らくはその「コーディネイターを超えた種」なのだろう。

「なるほど、そう言うことか…」

深海は誰に言うでもなく小さく呟いた。その言葉にアスランが気づいて深海に尋ねてきた。

「どうかしましたか?クロノ大尉」

深海は確信を得た様子で口を開いた。

「たぶんその、コーディネイターを超える種。と言うのはブラックナイツたちの事だろうな」

「っ!どういうことですか?」

深海はエルドアでの戦闘で起こった事について話し始めた。

「俺たちがブラックナイツの襲撃を受けた時、通信、レーダーを含めて全てが使えない状況だった。だがあの時、ブラックナイツのモビルスーツと相対した時だけ、何処からともなく誰かの声が頭の中に聞こえてきた。キラとシン、お前たちもそんな現象にあったんじゃないのか?」

「っ!?」「そう言えば!」

キラとシンの反応を見て、深海はやはりな。と呟いた。深海は続ける。

「俺はあの時、奴らの内の1人、シュラ・サーペンタインと話した。信じられないかもしれないが、心の中どうしにな…どういうトリックかは知れないが、頭の中に直接語り掛けてくるなど、普通の人間には無理だ。超能力者なら別になるかもしれないが、俺とキラ、そしてシンの3人が同時に同じ現象を体験している。確証はあるんじゃないのか?」

「………」

レクリエーションルームにいる全員が無言のまま時間が流れた。ほとんどの人間が信じ切れていないのかもしれない。仕方のない事だろう。と深海は口内で呟く。すると、シンが唐突に口を開いた。

「じゃあ、あの時の核攻撃は、本当にユーラシアの……」

(そうだ。問題はそっちだ…何故、国境侵犯したことに対する報復があんなに早く、そして核攻撃だったのかだ……)

深海がそう内心で考えていると、アスランがシンの言葉に答えた。

「いや、違うと思う。恐らくあの攻撃を含めた全てがアウラの―――彼らの計画だったんだ」

「ええ。アスラン君の言う通りだと思うわ…」

そこへマリューが横から口を添える。シンが、えっ!?と驚いていると、マリューもまたエルドアでの戦闘で自分たちが目撃したことを話した。ユーラシア軍のかなり後方でブラックナイツのモビルスーツ「ブラックナイトスコード・ルドラ」を2機確認したこと、そしてその2機が飛び立った辺りから、件の核ミサイルが発射され、それを目撃した自分たちを、その2機のブラックナイトスコード・ルドラが執拗に攻撃してきた事を。

(なるほど、点と線が繋がったな)

「でも、なんだって自分たちの国に核を撃ち込むんですか!?」

シンの憤る叫びに、アスランがまた答える。

「少なくとも核を撃たせたことで口実は出来る―――」

深海はそこでハッとした。先程の納得など一瞬で消え去ったようにして、頭から血の気が引いていくのを感じた。そしてアスランが言い放つ。

 

彼らがユーラシアを討つための口実が

 

(まさかっ!!)

その言葉が深海の口から飛び出そうとした時だった。

〈ザラ一佐、すぐに管制室に来て!!〉

室内にあったスピーカーから慌てた様子の女性の声が鳴り響いた。

 

 

アスランを追いかけるようにして管制室へとやってきた深海たちは、眼前のモニターに映し出された光景に息をのんだ。地上に現れた白熱の光球が、地上を焼き払っている光景だった。その衝撃波によって雲はあっという間に散っていく。

「……モスクワよ」

先程アスランを呼び出した女性、オーブの国営企業「モルゲンレーテ社」の技術主任エリカ・シモンズが、絶句した様子でその光景が発現した場所を伝えた。ユーラシア連邦の首都の名だ。当の深海もまた、動揺を隠しきれなかった。こんな経験は殆んどしたことは無い。深海棲艦との戦争においても、これだけの爆発は見たことがない。すべてアニメの中でしか見たことが無い光景が、深海の目に焼き付いていた。

「これがファウンデーションの報復……もう!?」

「核…攻撃……?」

動揺したマリューの震えた声にシンの震えた声が重なったように聞こえた。

(いや違う……これは、核による攻撃じゃない!)

深海がその手を強く握り締めながら口内で激しく否定した。そしてアスランもその違和感に気づいた。アスランの苦々しい否定の言葉が紡がれる

「いや、これは―――」

深海がアスランへ視線を投げた。すると彼は憤りに満ちた表情でその続きを口にした。

「――レクイエムだ」

(っ!?)

レクイエム。月の裏側、元地球連合軍のダイダロス基地に設置されていた。軌道間全方位戦略砲と分類される戦略兵器だ。廃棄コロニーと、その内側で展開されるゲシュマイディッヒ・パンツァーを利用した「中継点」と呼ばれるビーム偏光ステーションを用いることで、地球圏のあらゆる場所を砲撃できる恐ろしい兵器だ。深海はレクイエムの簡単な概要を頭の中で思い出していると、不意のモスクワを映し出していたモニターが変わり、ファウンデーションの宰相、オルフェ・ラム・タオが映し出された。オルフェは沈鬱に語りだす。

〈我々は地上を追われた……ナチュラルの放った憎しみの核によって―――〉

どうやら、ファウンデーションの宣戦布告のようだ。深海はオルフェの放った言葉を聞き、即座にそれを理解した。そうなれば、深海はこんな茶番を見る価値など無い。と思い、踵を返した。すると、深海の目に自分と同様に部屋を去っていくキラの姿が映った。

(キラ、いったいどこへ行くんだ?)

深海は少し考えてその足を前へと伸ばした。すると、背後からアスランが深海を呼び止めた。

「クロノ大尉?」

その後ろではオルフェの演説が変わらず流れていたが、それは深海の耳に既に届いていなかった。興味など無い。奴らの言っていることは、ただの自己顕示だ。内容はどうあれ、そんな言葉を聞いていては時間を無駄に浪費するだけだし、ましてや、今夢を見ている自分、ミカイ・クロノはただのモビルスーツパイロットだ。綺麗に並べられた戯言を吐き出すだけの茶番など、真剣に聞く価値はない。倒すべき相手がわかった。それだけで十分だった。深海は咄嗟に振り返って、アスランに告げた。

「すまない。今の間にアグネスの様子を見てくる」

「え?」

「今奴らは宣戦布告をするのに一生懸命だ。なら、この時間好きに使わせてもらう。なに、演説中って言うのは、当人も自分を着飾ることに手一杯だ。すぐには動けんさ」

そう言って深海は管制室を出ていって、そして最後に一言付け加えた。

「アスラン、キラの奴が何処かに行ったようだ。キラの事は任せるぞ?」

深海は暗い廊下の闇の中へと消えていった。

 

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