機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢― 作:黒瀬夜明 リベイク
「航跡を分析して、ファウンデーションのシャトルが向かった宙域を絞り込みました」
「オーブの情報と合わせると、ラクスは恐らく―――」
キラが立ち直ったことでファンデーションに対する反攻作戦のブリーフィングが始まった。メイリンが分析したファウンデーションのシャトルの行き先を示す3つの光点が画面に映し出される。モニターには3つの光点の他に地球と月を示す図も乗せられており、3つの光点の1つ。アスランがモニターを操作してその点を点滅させて強調表示した。その点が何なのか、深海にはさっぱりわからなかったが、マリューが嫌な物を見たような目でその場所の名前を口にした。
「アルテミス要塞……厄介ね」
(……それは確かに厄介だ……だが)
アルテミス要塞は周囲を「傘」と呼ばれる光波防御帯によって守られている鉄壁の要塞だ。しかし、機動戦士ガンダムSEEDの劇中でブリッツガンダムを駆るニコル・アマルフィがミラージュコロイドを使って攻め入り、要塞は陥落するに至った。深海はその事をよく覚えているし、鉄壁の防御帯は内側の人間に強い安心感と、強大な慢心を植え付ける。そこを上手く突ければ。深海はそう考えていた。
「トリィとブルーの量子ネットワークを使えば、ラクスの位置を特定できる」
「近づきさえすれば、居場所が分かるのね」
(トリィとブルーにそんな機能があるとは…)
キラが自身のペットロボットであるトリィと、ラクスに渡したペットロボットのブルーにそんな機能があることに深海は驚く。だが、キラは少し不安そうに俯いた。
「もしも、まだラクスが持っててくれるなら…だけど」
「お前がプレゼントしたものなら、きっと大丈夫だキラ」
「はい、ありがとうございますミカイさん」
不安そうになったキラの肩を叩きながら、深海はさっきと同じように頷いてみせた。今のキラには少しでも希望があった方が良い。深海の言葉を受けて、俯いていたキラの顔はやがて上がった。すると今度はシンがもっともな事を口にした。
「
「今まともに動けるのは、アスランのズゴックと俺のストライク、そしてアグネスのギャン……この数ではな…」
「確かにね…これじゃ、返り討ちに会うのがオチよ」
シンの言葉に深海が指折りで手持ちの中で動けるモビルスーツを口にし、アグネスも大体の結果を察する。モビルスーツの数など指折りする必要もない、たったの3機だ。現実的にこの数でファンデーションとアルテミス要塞に挑むのは無謀だ。アグネスの言う通り、返り討ちにあうだろう。すると、マリューが悪戯でも考えているかのような、小さく笑った表情で告げた。
「
(流石、ラミアス艦長…やることが凄まじいな)
深海がマリューの浮かべた笑みの理由をすぐに把握した。すると今度は、エリカがハキハキとした口調で言った。
「モビルスーツの方は、私が何とか出来るかも」
「なら準備が出来るそれまでに、身なりは整えておいた方が良いだろうな」
深海の提案にその場にいた全員が頷いた。そして、今のジャージ姿から着替える為、各々が部屋を出ていった。そして当の深海は、エリカの元へ足を向けた。
「エリカ主任、1つお願いしたことがあるのですが」
「クロノ大尉、どうかしましたか?」
「実は―――」
それからしばらくして、制服姿となった深海たちは広い空間が広がる場所へと通されると、照明がパッ!付き、目の前に3機のモビルスーツが姿を見せた。
「アスハ代表から預かって、新型融合炉と新装備の性能評価実験に使っていたの。こういう事態を想定していたわけじゃないんだけど」
3機全てが全身鉄灰色ではあったが、深海はそこに立つ3機のモビルスーツを目にして驚きを隠せなかった。それに重なるように、シンの嬉しそうな声が格納庫に響いた。
「デスティニー!」
「……フリーダム」
「インパルス…か、これはまた……」
横を見れば、シンはまるで欲しかった玩具を買ってもらえた子供のように、目をキラキラさせている。キラは驚きを隠せないながらも、嬉しそうに見える。
ZGMF/A-42S2 デスティニーガンダムSpecⅡ
ZGMF/A-262B ストライクフリーダムガンダム弐式
ZGMF-56E2 インパルスガンダムSpecⅡ
インパルスガンダムSpecⅡ以外は、後に名前を知ることになるが、それでもキラとシンからすれば、かつての愛機たちとの再会だ。シンは言うまでもなく喜んでいるし、キラも内心は喜んでいるに違いない。特にシンの反応には、自分の娘たちが、誕生日プレゼントを喜んで受け取る姿が重なってしまい、思わず笑みがこぼれた。
「駆動系と武装は昔のままだけど、コントロールシステムは最新の物にアップデートしてあるわ。ブラックナイツに対抗するには、心許ないでしょうけど…」
エリカは最後、申し訳なさそうなことを言ったが、その表情に申し訳なさは無かった。彼らのかつての相棒となった機体たちだ。性能差はあろうと、搭乗者は完璧だ。負ける筈はない。そんな確信に満ちたような表情だった。その内心を察してかは分からないが、シンが、ヘヘッ、と小さく笑った。そして、両の拳を強く握り締め、言い放つ。
「いや――これさえあれば、あんな奴らなんかに!」
その表情には絶対の自信が満遍なく溢れていた。
(この場にもし、レイ・ザ・バレルがいたのなら、きっと「お前ならやれる」って声をかけたんだろうな)
深海は、この場にいないシンのかつての親友「レイ・ザ・バレル」の言葉を思い出す。思わずその言葉をシンに投げかけてやろうとも思ったが、あれはレイ自身が発するからこそ、シンへプラスになる言葉だ。自分で入っても意味がないだろう。そう深海は自重するのであった。