機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-26 心からの想い

アルテミス要塞に潜入した深海たちが、安全な場所に身を隠すとドック内で警護に当たっていたファウンデーションの兵士が自動小銃を撃ってきた。相手は数人で制圧射撃をしてきたが、キサカたちが放った銃弾によりあっと言う間に鎮圧された。そして上空をビームを撃ちながら飛んでいるズゴックを横目に、深海は周囲を警戒する。

(やはり光波防御帯を過信していたようだな)

しかし、それ以上襲い掛かってくる兵士はいなかった。明らかに光波防御帯に頼り切った防衛線だ。そんな事を考えていると、キサカがドックの床へ向けて携帯式のバズーカを撃った。深海もキサカの後を追って行動する。すると、先程バズーカの弾が命中したか所にキサカを含めた3人が取りつき、ミレニアムハイジャックの時に使用したハッキング端末をケーブルに取りつけた。これさえ取りつけてしまえば、あとはメイリンが施設内をあっという間に掌握してしまうだろう。深海がそう考えた時、港口のハッチがゆっくりと閉じていくのが見えた。

(流石だな…さて、次だな)

と、深海が視線を投げると、既にキサカたちが給気システムの通風管の近くで作業を始めていた。通風口の蓋を開けて、そこへバックを押し当てている。そのバックの中には、ラクスが持っていたピンク色のハロをはじめとした、無数のボール型ロボットが入っている。これも作戦を円滑に進める為の代物だ。

「キサカ一佐!」

キラが作業を終え、通風口から降りてきたキサカに声を掛ける。

「行くぞ!」

短いやり取りを済ませると、その場にいた全員が一斉に基地内部へ続くの通路へと走っていった。深海も彼らに倣い、後を追う。キラは、咄嗟にトリィを宙を飛ばせると、トリィは、鳴き声をあげて何処かへ向かって飛んでいく。

(あの方向にいるんだな)

深海は自分たちの前を飛ぶ、1羽のロボット鳥を見ながら口内で独り言ちた。

 

 

それからしばらく通路を走っていると、無数の兵士たちが倒れていた。しかし、その身体に外傷はない。

(催眠ガスをハロに仕込むとは、やることがえげつないな)

理由は先程キサカが通風管に放ったハロたちだ。無数のハロは通風管の内部で催眠ガスを撒くように細工されていて、それが発動した証拠が、現在床に倒れている兵士たちだった。深海はそんな兵士たちを横目にしながら、キラの後ろについて走った。そしてしばらくすると、トリィがある部屋の前で円を描くように飛んだ。

「キサカ一佐、ここです!」

「……駄目だな、どうやらロックが壊されているみたいだ。下がっていろ!」

扉が開かない原因を突き止めたキサカは、すぐさま自動拳銃を扉のロックがかかった場所に向けた。乾いた銃声が響くと、金属が破壊される高い音が混じって響く。扉を無理矢理に開き、僅かに開いた隙間から、キラが室内を覗き込んだ。

「ラクス!」

そしてキラがラクスの名を叫んだ。

「キラ!」

キラの言葉に応えるように、ラクスも彼の名を呼ぶ。感動の再会に見えたが、その部屋にはもう1人、人間がいた。その人物は、素早くナイフを抜いてラクスの後ろに回り込み、その首を固めた。

「来ないで!」

キラ、キサカの後に続いて部屋に突入した深海は、ラクスの首を固めるその人物を見て自分の予想が見事に的中したことを認識した。

(やはりここにいたか……イングリット)

深海はブラックナイツ、近衛師団のメンバー5人が戦闘に特化したアコードなら、残りのオルフェとイングリットは内政に特化したアコードと予想を立てていた。アルテミス要塞に侵入する時、ブラックナイトスコード・シヴァが単機で出てきた事、他のブラックナイツのメンバーと遭遇しなかった事から、ここにはイングリットしか残っていない。なら彼女はこの騒ぎが起きたら真っ先に何処へ向かうか?それはラクスの所だ。自分たちの要であるラクスを奪還される訳にはいかない。深海はラクス救出作戦が立案になった時からずっと、このことを考えていたのだ。

「少しでも動けば、この人の目を潰すわ!」

「あっ!?」

イングリットの言葉にキラの足が止まる。流石のキラも動揺しているようだった。

「喉を切ってもいい!歌えなくなったこの人を、それでも愛してるって言えるの!?」

まるでキラにラクスとの相愛を試しているような問答で、イングリットは言い放つ。彼女が言いたいことはすぐに分かった。ラクスの「価値」を潰されても、キラは彼女を愛せるのか。アコードらしい考えだ、と深海は感じたが深海は安心しきった表情でキラに視線を向けた。そしてキラは頷きながら、しっかりとした「自分の言葉」でハッキリと答えた。

「ああ。その目が見えなくても、声が失われても、ラクスはラクスだ―――」

 

 

僕はそのすべてを愛している!!

 

 

「キラ……」

震えた声でラクスがキラの名を呼ぶ。キラとラクス。この2人の相愛は、その程度の脅しで切れてしまう程、脆弱ではない。数時間前のキラなら、絶対に口に出来なかった言葉を、今は堂々と胸を張って言い放った。深海は思わず目頭が熱くなりかけたが、グッとこらえた。

(強い言葉だ……流石にこうハッキリと時雨に向かって言うのは恥ずかしいがな…)

と思った瞬間だった。

〈ブルー〉

キラの肩に止まっていたトリィが羽ばたいたかと思えば。ラクスの髪の下から姿を現したブルーが飛び立った。まるでキラとラクスの2人が互いに相手を求め合うかのように、トリィとブルーもまた2羽連れ立って飛んでいる。その一瞬、イングリットの視線が宙を舞うトリィとブルーに向けられた。その一瞬を突くように、ラクスはその身を前へと投げ出した。

「なっ!?」

ラクスの突然の行動に驚いたイングリットは、咄嗟にナイフの刃先を逸らしてしまった。ラクスの動きに一瞬バランスを崩したイングリットだったが、すぐに体勢を整え、駆け寄ってラクスを抱きかかえたキラの眼前に自動拳銃の銃口を向ける。イングリットの指が引き金を絞り込もうとしたが、咄嗟にキサカが発砲し、イングリットの手から自動拳銃を弾き飛ばす。イングリットは残されたナイフを振りかざしてキラとラクスに斬りかかったが、ナイフはラクスの髪を掠めただけで、空を切った。すかさずキサカがタックルを放ち、イングリットを突き飛ばす。

「ウゥッ!」

イングリットの手からナイフも零れ、彼女は机に倒れ込んだ。その彼女に向けキサカは自動拳銃を向けて牽制する。クッ!とイングリットの呻き声が上がるが、もはや彼女にはどうすることも出来なかった。イングリットの視線の先では、キラとラクスが固く熱い抱擁を交わしている。深海は内心、ホッと胸を撫で下ろした。

「キラ!」

「ラクス!なんて無茶を!」

ラクスの目には大粒の涙が溜まっていたが、その笑顔は明るいものだった。

「愛しています…私も!」

これにて目的は果たされた。キラとラクスの背をキサカが護りながら、ゆっくりと室外へ出ていこうとしている。

「ごめんなさいっ」

ラクスが涙の弾った瞳でイングリットを見つめながら言い放つ。

「行って―――」

イングリットが涙を浮かべた表情でラクスに吐き捨てるように言い放った瞬間だった―――

 

 

それはまだ、出来ない話だ

 

 

深海はその場にいた全員に聞こえる声で言い放った。

 

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