機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-28 自由の宣言

ラクスと共にイングリットも伴った深海たちは、アルテミス要塞の通路を走り、ドックへと戻ってきた時ズゴックが丁度降りてきた。そのまま深海たちはキャバリアーに飛び乗ると、ズゴックはすぐに飛び立った。それと時を同じくして、港口のハッチが開き、ドックの内部からで次々に爆発が起こり始めた。やがて、港の外へ出ると、ブラックナイトスコード・シヴァと交戦していたストライクフリーダムガンダム弐式も、さっさと引き上げてズゴックと共にアルテミス要塞から去っていった。ブラックナイトスコード・シヴァの追撃は無く、爆炎に呑まれていくアルテミス要塞へと向かっていくのが見えた。それを見た深海は、口元に不敵な笑みを浮かべて独り言ちた。

「悪く思うな、イングリットは貰って行くぞ」

 

それからしばらくして、ズゴックはストライクフリーダムガンダム弐式を再度抱えてスピードを落とした。ストライクフリーダムガンダム弐式のコックピットからアスランが出てくると、キラもまたキャバリアーから宇宙空間へと出ていった。キラがストライクフリーダムガンダム弐式のコックピットに収まると、通信回線がオンにされた。

〈ラクスを頼む。僕はレクイエムへ〉

「奴らは強い。気を付けろよ」

〈うん。今度は負けない。僕は、1人じゃないから〉

モニター越しにアスランが短い忠告を告げると、キラは自信に溢れた言葉を返した。そして、アスランがその場から身を引くと、ラクスがキラとの回線モニターの前に身を乗り出した。

「キラ…どうぞお気を付けて」

〈うんっ!〉

キラとラクスが同じハンドサインをすると、ストライクフリーダムガンダム弐式はあっという間に飛び去ってしまった。通信が切れると、アスランが早速尋ねてきた。

「それにしても、まさかアコードが助けたい相手だったとは…これはどういうことですか、ミカイさん?」

アスランの言葉を聞き、イングリットが俯く。仕方のない事だ。事情を知らないアスランからすれば、当然の反応だ。だが深海はおどけた様子を一切見せない、ハッキリとした口調で言いきった。

「何を言っているんだアスラン。ここにアコードは1人もいない、そうですよねクライン総裁」

「はい。ここにいるのは、アコードのイングリット・トラドール国務秘書官ではありません。彼女はアルテミス要塞で、クロノ大尉によって死亡が確認されましたから。私もその場に居合わせたので、間違いはありませんわ」

「え?いやだが、目の前にいるのは……」

「………」

イングリットには返す言葉がなかった。しかし、深海とラクスは引き下がろうとしなかった。

「アスラン。イングリットさんは自分の意思で定められた運命から、逃れることを望んだのです。彼女にも、自分の想いを伝えたいお方がおられますわ。どうか、わかっていただけませんか?」

「………」

アスランは小さく考え込んでいたが、やがて仕方ないな。と言わんばかりな口調で口を開いた。

「分かったよラクス。俺の負けだ」

「ありがとう、アスラン」

「俺からも感謝する、アスラン」

また面倒が増えた。と顔で言っているような笑みをアスランは浮かべ、ズゴックは一路、ミレニアムを目指した。

 

 

それからしばらくすると、戦闘宙域にズゴックは突入した。そのただ中で、ミサイルの雨あられを巧みな操艦と対空射撃で切り抜けるミレニアムの姿があった。幾つもの光条が飛び交い激しい乱戦となった戦場の中、2機のジンがミレニアムに向かっていく。だが、そのジンはズゴックが放ったビームで撃ち落とされて爆発する。

「ラミアス艦長!」

通信回線を開き、アスランがマリューを呼び出した。続けてラクスがモニターに向かって身を乗り出し、マリューを含めたブリッジクルーに向かって早口で話す。

「ミレニアム。私です、すぐに放送の準備を!」

深海は黙ってラクスの言葉を聞いていた。そしてイングリットも、黙ったままだった。未だに仲間たちの元から離れたことに実感が無いのかもしれないが、ラクスがこれから話す言葉は、きっと彼女に何かしらの力を与えてくれるだろうと、深海は感じていた。ズゴックはミレニアムの右舷側からミレニアムの格納庫へと着艦した。格納庫上の甲板が閉じ、ズゴックが動きを止めると、ラクスはすぐさまキャバリアーを飛び出していった。深海はイングリットの肩を叩くと、彼女に付いてくるよう告げた。

「イングリット、クライン総裁の話を俺たちも聞いておこう」

「…わかりました」

深海の後を追ってイングリットもキャバリアーから飛び出し、ラクスの後を追いかけた。格納庫から艦内通路へ足を踏み入れ、そのままラクスが向かった航行艦橋へと向かった。そして、部屋の前に辿り着いた所で、ラクスの演説が始まった。

「私はラクス・クラインです」

その言葉が発せられたのと同時に、深海とイングリットは室内へ入った。目の前では、ラクスが凛とした声で、演説を続けている。

「たった今、ファウンデーションによる監禁を逃れ、皆さんにお話ししています」

険しい表情とその瞳には、ハッキリとした意思が宿っていた。ラクスはそこで一拍措いて、話を続ける。

「まず、私はファウンデーションの見解には、一切賛同しておりません。彼らの提示する「公正で平等な社会」とは、デスティニープランによる統治であり、かつて申し上げたとおり、私がそれを受け入れることはありません」

深海は、両腕を組んで黙ってラクスの話しを聞いていた。イングリットも同じように、右手を胸の前で握りしめ、彼女の話に耳を傾けていた。

「失敗も、変化も、夢も―――全てが許されない世界。人の価値を遺伝子で決める社会。私は、自分の価値を他人に委ねはしません!」

「!?」

その言葉を聞いた瞬間、イングリットの表情が驚いたものに変わった。

(今まで、自分はそれが絶対だと信じて生きてきたんだ。自分の価値を他人に流されて生きてきたイングリットにとって、ここまで刺さる言葉は、他にないだろうな)

「ましてそれを、暴力や恐怖で人に強制するなど、決して許されることではないのです―――どんな命にも、自らの運命を決める自由があります!

ラクスのその言葉を聞いたイングリットの目に、涙が浮かんできているのが深海の視界に入ってきた。例え、自分たちの意見に賛同していなくても、ラクスと言う自分たちにとって特別な存在が、自分の想いに賛同し肯定してくれたのだ。自らの運命を決める自由がある。イングリットは生まれて初めて、自分の想いに正直になってもいいのだ。と理解したのだろう。

「私も、その為に戦います―――あなたを愛してもいない者に、決してあなたの価値を決めさせてはいけません」

そこで演説を締めくくると、ラクスは2人の前に着地した。ラクスはイングリットの手を優しく握り、温かい言葉を投げかける。

「貴女の想いを、私も応援しています。頑張ってください、イングリットさん」

「ラクスさま……」

イングリットが驚きつつも、何処か安堵した表情をラクスに向ける。ラクスも、イングリットに微笑み返すと、今度は深海の方へ顔を向け、自分の選択を告げた。

「私はこのまま、キラの元へ向かいます。ミカイさん、必ずイングリットさんを、想い人の元へ送り届けてください」

「任せてくれ、クライン総裁もどうか気を付けて」

深海は強く頷き、ラクスに小さく笑ってみせた。ラクスは、ありがとうございます。と礼を述べると、航行艦橋から出ていった。ラクスの後を追って、深海たちも艦橋を出る。

「やはり、強い人だな。クライン総裁は」

「はい。こんな私を許して、この想いにも賛同と共感を示してくれた……私には、手の届かぬ存在……」

イングリットが少し自虐的な言葉を口にしたが、深海は諭すように言った。

「届かなくても良いじゃないか、君は彼女ではないのだから」

「………」

「1人の人間が出来ることなんて、そう多くない。それを知っていたからこそ、君はオルフェのことを、傍で支えていたんだろ?」

「……そこまで見通せるなんて、まるでアコード(私たち)みたいですね。貴方は」

「俺にアコードみたいな力はないさ。だが、人を見る目には少し自信がある、それだけだ……さて、こちらも準備するとしよう」

「はい。よろしくお願いします、ミカイさん」

深海とイングリットは、格納庫へとその足を向けた。

 

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