機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-30 想いを伝えに

ムラサメストライクをMA形態に変形させ、戦場を駆ける深海とイングリット。両肩に追加装備されたマイダスメッサーが主翼の代わりとなっているが、ハッキリ言ってかなり無理があるとしか言いようがない。幸いなのは、ここが宇宙空間であることだ。深海は変形させたムラサメストライクを駆り、向かってくるファウンデーションのジンやディンを蹴散らして先を急いだ。キラの駆るストライクフリーダムガンダム弐式の識別信号は月面、崩壊したメサイア要塞の周辺にあった。不意に深海はチラとイングリットに目を向けた。イングリットの顔は、真っ直ぐ進行方向を向いていた。決意を秘めた凛とした表情だ。深海はそれを見て、視線を正面へと向けた。崩壊したメサイアが近づくにつれて、こちらに向かってモビルスーツに、ザクウォーリアも加わってくる。ザフトのクーデター部隊に所属する機体だろう。深海はザクウォーリアの頭部や腕部、武装を撃って戦闘不能にしていく。ファウンデーションと違って、まだ帰れる国がある彼らを殺すことを、深海は少しだけ嫌だと感じたからだ。

(命を無駄にするな!こんな正義の無い戦いで!)

深海は機体下部の「フラッシュエッジG-3シールドブーメラン」に取りつけられたビームライフルを放ちながら、ザクウォーリアのパイロットに向かって投げかけた。すると、不意に通信が入ってきた。深海が良く知る人物からの通信だったが、声が聞けたことに深海は少し安堵した。

〈やっと来たのね!遅いわよ!〉

「アグネスか!?」

変形したムラサメストライクの左側に、白いギャンシュトロームがいつの間にか並走していた。モニター越しに見たギャンシュトロームに損害らしい損害は無い。どうやら、ほぼ無傷で戦い抜いているようだ。

「シンたちはどうした!?」

〈あいつ等なら大丈夫よ。山猿が、あの4人組を完全に抑えているわ〉

「そうか…俺たちはこれからメサイア跡地に向かうが、お前はどうする?」

シンがブラックナイツの4人組を単機で抑え込んでいる。それを聞いただけで、少し鳥肌が立った深海。流石に驚きは隠せなかった。深海は自分たちの今後の行動をアグネスに伝えると、アグネスから思ってもいなかった返事が返ってきた。

〈私もアンタに付いていくわ。あの、ナチュラルにも勝てなかった騎士かぶれに、引導を渡さないといけないからね〉

「プッ!」

唐突にイングリットが噴き出した。それに深海は一瞬驚いたが、確かに笑える内容だ。と思わずにはいられなかった。アコード(新人類)を名乗っておきながら、ナチュラル(旧人類)である自分に一撃もくわえられなかった騎士かぶれ。これを笑わずにはいられない。思わず深海は、イングリットに聞いてしまった。

「お前もそう思うのか、イングリット?」

「ええ、実力はあるのに精神的には子供過ぎるシュラらしい、なと」

「フッ、同感だな……わかった、あの騎士かぶれは任せたぞアグネス!」

〈色々と聞きたいことはあるけど、任せなさい!〉

ムラサメストライクとギャンシュトロームはそれぞれに敵機を落としながら、一路メサイア跡地を目指した。そして、ムラサメストライクのカメラが、メサイア跡地周辺で起こっている戦闘を捉えた時、強烈な稲光が発生した。かと思えば、その稲光は周囲に存在したミサイルや艦艇などを巻き込み、周囲一帯を無数のミサイルの爆炎で覆いつくし、稲光を受けた艦艇を行動不能に陥れていった。動きの止まった無数の艦艇が周囲を漂う姿は、まるで宇宙における船の墓場のようだった。

「何だ今の光は!?」〈今のは何!?〉

余りの唐突に起こった出来事に、深海とアグネスは声を上げ、それぞれの乗機をその場に停止させた。深海はムラサメストライクをMS形態に変形させ、驚愕の視線をモニターに向けた。その向こうには白と黄金の翼を広げたストライクフリーダムガンダム弐式。もとい、マイティーストライクフリーダムガンダム*1とそれに相対する純白に金の装飾が施された神々しい機体、ブラックナイトスコード・カルラ*2がいた。

「あれが、新しいフリーダム…」

深海は驚きの言葉が口を突いて出た。そして眼下の月面へと視線を投げた。そこには激しくビームサーベルで切り結ぶ、ブラックナイトスコード・シヴァとインフィニットジャスティスガンダム弐式*3の姿があった。その姿を見たのか、アグネスのギャンシュトロームが月面へと降りていった。そして直後、深海がマイティーストライクフリーダムへ視線を戻した時、マイティーストライクフリーダムから、なんとも形容し難い光が走った。深海には、一瞬だけ視界内の色が反転したように見えた。そしてその光が走った直後、目の前にあったメサイア要塞が、文字通り輪切りにされている様を深海は目撃した。

「メサイアが!?」

ここに至り、イングリットも驚きの声を上げた。当然も当然だ。一瞬にしてあの要塞メサイアの本体が、文字通り「輪切り」にされたのだ。一体どんな武装を仕込めば、あのような事が出来るのだろう。深海は気になって仕方なかったが、突如、驚いた様子のイングリットが後ろを振り返った。深海は不思議に思い、イングリットの方へ顔を向けた。

「どうした?」

「リデルたちが……」

直後、後方で大きな爆発が3つ、同時に起こっていた。深海にはその爆発が何なのか分からなかったが、イングリットが自身の妹の名を口にしたのだ。恐らくは、ブラックナイツの4人組、グリフィン、リュー、ダニエル、リデラードが、シンの駆るデスティニーガンダムSpecⅡに撃墜され、命を絶たれたのだろう。深海は一言、そうか。とだけ呟いた。そして目の前で繰り広げられている戦闘、マイティーストライクフリーダムとブラックナイトスコード・カルラの戦いで、ブラックナイトスコード・カルラがマイティーストライクフリーダムに向かって行くのが見えた。深海は手元の操縦桿を操作し、ブラックナイトスコード・カルラに向かってムラサメストライクの右肩に追加装備されたマイダスメッサーを投擲させた。ムラサメストライクの右手がマイダスメッサーのグリップを握ると、右腕を左側へ大きく振りかぶり、マイダスメッサーを投擲した。深海はムラサメストライクのスラスタースロットルを最大で開き、ビームの刃を展開しながら高速で回転しながら飛翔するマイダスメッサーを追いかけた。

「しっかり摑まっていろ!」

深海はイングリットにそう語り掛け、ブラックナイトスコード・カルラに向かって突撃していった。視界の中で、白い機体が膨れ上がっていく。マイダスメッサーの接近に気づいたブラックナイトスコード・カルラは左前腕部にビームシールドを展開してそれを払い除けるのが見えた。その僅か2秒後、「フラッシュエッジG-3シールドブーメラン」を前方に構えたムラサメストライクが、ブラックナイトスコード・カルラに体当たりをぶつけ、弾き飛ばす。

〈グゥ!〉

接触回線を通じて、ブラックナイトスコード・カルラのパイロット、オルフェの苦悶の声が聞こえてきた。そして、マイティーストライクフリーダムとブラックナイトスコード・カルラの間に割って入ってきたムラサメストライクの姿を見て、キラから通信が入ってきた。モニターの向こう側にはパイロットスーツ姿のラクスの姿もあった。

〈ミカイさん!〉

「安心しろ、イングリットは無事だ!」

キラに向かってこちらの無事を告げる深海。すると、今の通信を聞いていたのか、オルフェの駆るブラックナイトスコード・カルラからも通信が入ってきた。

〈っ!?貴様ぁ…彼女を人質にするというのかぁ!!〉

「オルフェ……」

オルフェの憤った叫びが、深海とイングリットの耳に届けられた。イングリットは、そんなオルフェに慈しんだ目を向けて、彼の名前を独り言ちた。無事でいてくれたことへの、安堵の気持ちなのだろうか。イングリットの表情は何処か安らかだった。そんな彼女の言葉を聞き、深海は小さな笑みを浮かべ、言い放った。

 

 

 

やっと2人が向き合ったな

 

 

 

それはかつて、とある男女が結ばれるきっかけとなった、最初の言葉と同じ物だった。

 

*1
深海は後で名前を知ることになる

*2
深海は後で名前を知ることになる

*3
深海は後で名前を知ることになる

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