機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-05 シンの不安

アークエンジェルでの休息と補給の後、深海たちは再びそれぞれの乗機に乗り込みアークエンジェルの放ったローエングリンにより発生したポジトロニック・インターファライアンスを使って大気圏を離脱し、数時間前に飛び立った母艦「スーパーミネルバ級MS惑星強襲揚陸艦ミレニアム」に帰還することになった。ライジングフリーダム、イモータルジャスティス、そして深海のムラサメストライクはMA形態に変形して、ゲルググメナースとギャンシュトロームは大気圏離脱ブースターを装着してそれぞれ大気圏を離脱していく。深海は緑のプラズマに包まれた空間を横目に正面モニターを向いたまま先程の休憩中に聞いた現在のコズミック・イラの現状について思案を巡らせていた。

(予想通りだったが、まだナチュラル、コーディネーター間の溝は埋まっていなかった……結果的には世界中では未だ戦闘が耐えず、それらを抑止するために今俺が所属している組織「世界平和監視機構コンパス」が大西洋連邦、プラント、そしてオーブの主導で創設された。という訳か……それにしても、知っている体で話を聞き出すのは骨が折れたな)

深海は先程アークエンジェルのパイロット待機ルームでシンやルナマリアからその話を聞き出し現状について理解を深めた。のだが、シンたちからすればそれは「当たり前の知識」なのである。深海自身も知っていて当たり前。だと思われている内容について話を聞き出すのは骨が折れたことに深海はため息を吐いた。そして思案を巡らせている間に深海の乗るムラサメストライクは大気圏を離脱し、宇宙空間へと辿り着いた。無重力空間に来たためなのか、少しだけ体が軽くなったように深海は感じていた。

〈ミレニアムに向かう〉

キラの短い言葉が通信モニターを通して聞こえてきた。それと同時に先頭を行くライジングフリーダムが加速しイモータルジャスティスが続く。深海も遅れる訳にはいかないとスラスタースロットルを開いてムラサメストライクを加速させる。後ろからはゲルググメナースとギャンシュトロームが続いていた。

(そう言えば、ルナマリアが言っていたが戦後の混乱とユーラシア連邦の弱体化に乗じて、ユーラシアで独立の嵐が起こっているらしいな……何と言ったか?確か……ファウンデーションショック……だったか?)

深海は先程から続けていた思案を再び巡らせていた。そしてしばらくして深海の目の前にミレニアムが姿を現したのだった。

 

 

ミレニアムに着艦し、パイロットスーツから赤紫色の制服に着替えを終わらせた深海は一旦自身の部屋に戻ると自分の部屋を物色した。自分の部屋を物色。という傍から見れば意味が分からない行動をしていることに苦笑しながら深海は机の引き出しを開けていく。すると一番下の引き出しの中から自身に一番身近な物を発見した。

「ナイフが二振りか…フッ」

引き出しの中に短い鞘に納められたナイフが2本収められていたことに深海は口元に笑みを浮かべた。深海はそれを取り出すと自身の制服にグリップを左側に向くように腰裏と右腰のベルトに鞘を通した。

「これでよし……やはりシックリくるな」

いつもの自分に戻ったような感覚に深海はご満悦だった。すると艦内放送からカナジへの出撃の際に聞いた男性の声―――話では元ミネルバの副長「アーサー・トライン」の声が聞こえてきた。

〈本艦は間もなくアプリリウス宇宙港に入港する。各部員は所定の作業を開始せよ〉

「アプリリウス」とはプラントの首都となっているコロニーだ。深海は頭の中で涙滴型の居住区が2つ、砂時計のような形に繋がっているコロニー「プラント」の姿を思い浮かべた。

「…休暇、か?」

そんなことを考えながら深海は、部屋を出ていった。そしておもむろにパイロット待機ルームへ足を向けた。そしてしばらく艦内廊下を行き、パイロット待機ルームへ到着した深海。目の前のエレベーター扉が開き室内へ身を乗り出した時、不意にシンの声が聞こえてきた。

「…俺、やっぱ信用されてないのかな?」

「?」「は?」

シンと共に室内にいたルナマリアが手元のタブレットからシンに視線を向き直した。するとシンはおもむろにガラスの向こうのイモータルジャスティスを見やった。シンの視線の動きを見て深海もガラス向こうのイモータルジャスティスに向けた。深海は近場にあった椅子の背もたれに手を置いて身体を止めた。

「っ!ミカイさん!?」

シンはこの時になって深海の存在に気づき、焦った様子を見せた。

「ヤマト隊長のことで何かあったのか?」

「あ、いや……隊長、いつも一人で戦ってさ」

何処か寂し気にシンは口を開いた。深海は黙って話を聞いていたが、ルナマリアが指摘した。

「でも、それで被害も抑えられてるって」

深海は両腕を組みながらカナジでの市街地戦を思い出していた。確かに先の市街地戦でキラは単機で戦線に突入し、連合、ザフト両軍のMS部隊を壊滅させた。シンは続ける。

「そうなんだけどさ……じゃあ、俺たちは何なんだよって」

「うん…」

シンの言葉にルナマリアも複雑そうな表情で頷いた。深海は未だ黙って話を聞いていた。

「隊長。言ってくれたんだよね、あの時俺に……「一緒に戦おう」って」

シンの発した言葉に深海はシードデスティニーの最終場面、オーブの慰霊碑の前でキラがシンの手を取り「一緒に戦おう」と告げたのだ。

「その言葉に感動して、俺、コンパスに入ったのにさ……」

(シンがキラに懐いた言動をしていたのはそう言うことか…)

シンが先の市街地戦出撃の際に「隊長、俺も行きます!」と言っていたのはそれが理由らしい。するとルナマリアが呆れた口調でシンに言った。

「で?またうじうじ考えてるわけ?」

「っ、そんなんじゃなくてさ!だから、何ていうか…もっと役に立ちたいっていうか……キラさんの」

「シンはジャスティス任せられてるじゃないの。信頼されてないこと―――」

ルナマリアがそこまで言ったところで突如入ってきたアグネスが、会話に割って入ってきた。

「信頼なんてされてるわけないじゃない。「フリーダムキラー」なんて呼ばれてたアンタが」

「フリーダムキラー?」

初めて聞いた言葉だったのか、ルナマリアがアグネスに尋ねた。するとアグネスは上機嫌そうに語り出した。

「あら、知らなかったの?おめでたいわね、いつ背中から撃ってくるかもしれない人。私だったら横にいてほしくないもの」

「アグネス!」

「………」

ルナマリアがアグネスをたしなめるようとしたが、当の本人は意に介さずシンに寄って肩を叩きながら、イモータルジャスティスを譲れ。と言い放つ。

「ねぇ、譲りなさいよ、ジャスティス。アンタが持ってても宝の持ち腐れよ。アカデミーじゃ技術も評価も私の方が上だったじゃない」

「っ……」

アグネスの言葉にシンが悔しそうな表情を見せる。

「ちょっと、アグネス――」

「大戦の時もおかしいと思ってたのよね。アンタがフェイスだなんて」

「………」

アグネスを黙らせようとするルナマリアと、シンの事を馬鹿にする事をやめないアグネス。そんなやり取りを、やはり深海は黙って聞いていた。が―――

「でも結局、デュランダル議長にとって丁度いいコマだったってことで―――」

「フッ、ハハハハ!」

アグネスが、でしょ。と言おうとしたタイミングで深海は突然笑い出した。突然笑い出した深海に驚いた3人が一斉に深海に顔を向ける。すると深海はふぅ、と息を吐くと口を開いた。

「すまないすまない。あまりにもくだらない負け惜しみだと思ったら笑いがこみ上げてきてしまってな」

「ま、負け惜しみですって?」

深海の言葉にアグネスが食いついてきた。深海は口元を歪ませてニヤリと笑い話し始めた。

「アカデミーでの成績や評価がどれ程優秀だったのかは知らないが、その「丁度いいコマ」にさえなれなかった君が、今シンに言った話の何処が負け惜しみじゃないって言えるんだ?」

深海は殊更「丁度いいコマ」の部分を強調してアグネスに言い放った。アグネスは図星を衝かれたのかとても驚いた表情をしているが深海は口を閉じない。

「軍の組織内で「丁度いいコマ」になれるというのは上層部から信頼が寄せられ、実力が認めてもらえている者だけだ。前大戦で新造戦艦ミネルバに配属されてZGMF-X56Sインパルスを預けられ、その後は本人に合わせた専用機であるZGMF-X42Sデスティニーをデュランダル議長から託されたシン。一方でアカデミーでシンより評価や技術も上な君はミネルバにすら乗れていなければ、専用機すら与えてられない。実力主義のプラントなら、一体どっちが高く評価されるんだろうな?」

「―――」

「それと、仮にもシンの方が階級は大尉で上なんだ。アカデミーからの同期なんだろうが、口には気を付けた方が良いぞ。アグネス・ギーベンラート中尉」

そこまで深海が言うと、フンッ!とアグネスは室外へと出ていった。深海は依然口元を歪ませていた。するとシンが深海に話しかけてきた。

「すみませんミカイさん。俺……」

「気にするなシン。俺は事実を述べただけだ」

「………」

「お前の実力はよく知っているつもりだ。だからお前は、お前の出来ることでキラを支えてやればいい。あいつはきっと、お前の事を見てくれている。ジャスティスでは慣れないかもしれないが、頑張れよ」

「…ありがとうございますっ」

そう言って深海は格納庫へと向かうエレベーターに乗り込んだ。扉が閉まる寸前、深海にはシンが少しだけ元気になったように見えたのだった。

 

続く

 

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