機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-06 キラの苦悩

深海がMS格納庫に足を踏み入れると、反響しながら早口な男の声が聞こえてきた。

「フェルミオン誘導方式はまだ使い物になりません。マイクロメーターサイズの障害物でドッキングセンサーにエラーが出るなどありえませんよ」

(この早口言葉はアルバート・ハインラインか?)

深海はその早口を聞きながらムラサメストライクの元へ向かっていると、今度は不意にキラの声が聞こえてきた。

「解決出来そうですか、ハインライン大尉」

「はぁ…設計者の私がやるしかありませんね。まったく開発部の無能さには呆れます!フリーダムへのセットアップとアジャスト時間が必要なのに、自立制御プログラムのバグも頭が痛い―――」

続いて早口の愚痴が飛んでくる。キラがそれを止める

「プログラムは僕が担当しますので、ハインライン大尉はセンサーをお願いします」

「すみません准将」

そこまで聞こえたところで深海はムラサメストライクのコックピットに辿り着いた。深海がコックピットハッチを開けようとしていると、今度は背後からコノエの声が聞こえてきた。

「よろしいのですかな、お帰りにならなくて?」

「ええ……」

コノエ艦長の言葉を聞いた深海はそこで手が止まった。キラが弱々しく返事を返す。深海はその場で身をクルリと回転させ、キラとコノエが会話している方向に目をやった。心配した口調でコノエがキラに尋ねる。

「クライン総裁がお待ちなのでは?」

「…でも、早くこれを使えるようにしないと…」

(……そう言えばミレニアムに帰ってきた時から気になっていたが、このMA(モビルアーマー)は何なんだ?)

深海は格納庫に存在する白と金で彩られたMAに視線を向けた。フリーダムガンダムに近い形状をした純白の翼、それに挟まれた金色のウイングバインダーが目を引く機体だ。

(そう言えばさっきハインラインがドッキングセンサーとか言っていたな。もしかしたら、ライジングフリーダムの追加装備なのかもしれないな)

「敵を圧倒する力が事態解決への早道―――と言うことですか?」

「そんなんじゃないです……でも、僕たちは何も守れていない」

(敵を圧倒する力、か…もしかしたら、キラがあんな行動を取った理由(わけ)はそこにあるのかもな)

深海は先のカナジ市街地戦のライジングフリーダム――キラの無鉄砲な行動を思い出した。「焦り」の言葉が深海の脳裏を掠める。デスティニープランを否定し、デュランダル議長を討ったが依然世界では紛争は絶えない。その当事者となったキラからしてみれば、あんなに迷って戦い続けて戦争を止めたのに、何も変えられていない。ともすれば、やはりあの無鉄砲なキラの行動にも納得がいく。だが今は現在、ミレニアムはアプリリウス宇宙港に停泊し休暇中だ。夢から覚めた現実の世界では、ほぼ毎日が休日のような深海ではあるがしかし、休める時に休んでおかなければいざ戦いとなった時に死を招く危険がある。深海は意を決してムラサメストライクのコックピット周辺を蹴った。

(正規の軍人じゃない分、そういう所に疎すぎるんだよ。まったく)

格納庫内を一気に移動する深海。そしてあっという間にキラとコノエの元へと辿り着いた深海。

「あ、ミカイさ―――」

「コノエ艦長、ヤマト准将を少しお借りします」

「え?」

深海は通り過ぎながらキラの左腕を掴み、そのままあっという間にコノエの横も通り過ぎていった。そして格納庫の端まで到着した所でキラが不意に深海に問いかけてきた。

「ミ、ミカイさん!いきなりなにするんですか!?僕は今―――」

「お前が休まないと他の人間が気を使って休めなくなるんだよ」

「え?」

深海は早々に本題を切り出した。突拍子な内容だったのか、キラは驚きに満ちた顔をした。深海は続ける。

「はぁ…お前はやはり休むことに関して疎すぎるんだよ。今日から休暇なんだろ?だから休め」

「いや、でも……」

なお食い下がろうとするキラに深海は言う。

お前を待っている相手がいるんだろ?

「っ!」

「だから帰れ。今日急いで明日倒れて色んな人に迷惑かけるより、今日休んで明日万全の状態で迷惑かけずに仕事する方が良いに決まっているからな……どうしても帰らないなら、気絶させてでも帰らせるぞ?」

「……はい」

するとキラはようやく折れた。深海は、ふぅ。と胸を撫で下ろした。

「ミカイさん……」

「お前は1人ではないんだ。俺やシン、ルナマリアにアグネスもいる。だから俺たちをもっと頼れ。シンもそのことで心配していたぞ?」

「シンが、そんな事を……」

「わかったのなら、早く帰れ。それとも、俺に気絶させられて帰るのがお望みか?」

深海は口元を小さく歪ませてキラに言った。するとキラも少しだけ口元に笑みを浮かべて返事を返した。

「ありがとうございます」

キラは背後の壁を手で弾くと、パイロット待機ルームへのエレベーターに向かって行った。それを見て、やれやれ。と深海は首を振ったのだった。

 

続く

 

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