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草や木、あらゆる動物が活動を停止する深夜二時。
鬱蒼とする紅霧が視界を遮る中、唯一紅く輝く月だけが雲や霧が割れるように見えていた。
妖怪、それも吸血鬼が住みやすい環境となった魔境の地。そこで私はワイングラスを片手に携え、
しかし、並々に注がれた液体はそれなりの時間空気に晒されていたのか、凝固・粘性を孕んでおり、喉に絡みついて離れようとしない。
「チッ、マズイ。やっぱり血は経口摂取に限るわね」
猫のように縦長な瞳孔、それでいて異形な妖しさに輝く真紅な瞳を細め、微かに舌を打つ。
口に含んだ液体を吐き出し、グラスを床へと投げ捨てる。カシャン、とガラスが割れ、びちゃりと床へと飛び散る液体が私の左頬へとかかってしまった。
何をしてもうまくいかなかったあの頃の日々。
皆は入場を許し、私だけが弾かれた孤独の毎日。
当然食糧は勝手に運ばれてくるわけではなく、ただひたすらに。
舐り、舐られ、また舐る。
あの時に飲み続けていた嗚咽のする味は、魂の奥底まで刻み込まれる程に嫌悪していた。
ああ、ひどく、不快だわ。
飲み損ねたせいで、ノドは乾き、腹は満たされぬままだ。
寧ろ潤う瞬間にお預けされたのだ。より一層強くなる食欲に辟易するように、足を組み直しては嘆息する。
「せっかくの月見酒なのに興が覚めたわ。お前たち、疾く床のゴミを片付けなさい」
だが、そんな苦痛も、もう少しで終わる。
想定外だが、想定内な出会いがもう少しで訪れる。
「ふん、咲夜がやられたのか。分かっていた事だけれど、これは盛大に歓待してやらないといけないかしらね」
私はそう一人ごちると、頬にかかった"それ"を右手の親指で拭い去る。
床には無数の
クリムゾンレッドのレンガに囲まれた、無機質な狂気に満ちた玉座の間。
そこに天蓋はなく、敷かれたカーペットは赤黒く染まり、最早元の柄や色が何なのかすら覚えていない。
「遠慮なく来るといいわ、幻想郷からの刺客よ」
私は玉座から立ち上がり、背の黒い両翼を大きく振りかぶる。
「私は、
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