気づいたらデュエルアカデミア   作:りんごうさぎ

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ハーピィ登場

「テンシン! すごいわ! とうさんに勝つなんて! 私じゃ絶対勝てないのに!」

「テンシン、えらいわ!」

 

 トーラが俺に駆け寄って抱き着き、かあさんも頭を撫でてくれた。家族に愛されてるんだな、俺は。

 

「テンシンよ」

「とうさん……」

 

 問題はこの人だ。デュエルで俺にできることはやりきった。さすがに許される……よな?

 

 神妙な面持ちでしばらく黙ったままのオヤジ。俺がしびれを切らして口を開きかけたところで1枚のカードを差し出された。

 

「え……これは?」

「このカードならお前のデッキでも使えるだろう。持っていけ」

「でも、これはアンデットデッキの要なんじゃ……」

「アカデミアに戻ればもっと強いカードが必要になる。黙って持っていけ」

「とうさん……」

 

 渡されたのは神獣王バルバロスのカード。大量展開するアンデットデッキでは抜群の働きをするが、単体でも超強力なのは間違いない。ありがたく受け取ることにした。

 

 きっと、これがとうさんのやり方なんだろうな。厳しくて、不器用だけど、俺を認めてくれた。その想いがこのカードにこめられている。

 

「良かったぁ~~! 私、テンシンのことめっちゃ応援するわ! 私の分まで頑張ってきなさいよ!」

「私の分まで?……そういえば、トーラはアカデミアにこないのか?」

 

 ピシッ!

 

 暖かく俺を見送るムードが一変、場の空気が凍り付いた。どうした? 俺、なんかマズイこといっちゃいました?

 

「そうね。トーラも行けばいいのよ」

「だから! 高等部からの編入は難しいって言ってるでしょ! どうせ私じゃ……」

「え? 普通に俺の同級生よりトーラの方が強いけど」

 

 そういうと突然トーラが大声で泣き始めた。

 

「だって! テストになると緊張しちゃうんだもん! うわぁぁぁぁぁん!!」

「え」

 

 こいつ、そういえばメンタルはお豆腐だったな。臆病な上にそれを隠そうとする小心者。プレッシャーにも弱いようだ。しかもトーラの進学問題はわが家にとってデリケートな話題だったようだ。両親も暗い顔をしている。

 

「テンシン! お前どうやってわしより強くなった? それをトーラに教えてやれ!」

「はいぃ?」

 

 思わず間の抜けた返事をしてしまった。右京さんか!!

 

 そしてなんだその雑な命令は!?

 

「決めたぞ! お前をアカデミアに返すのは先送りじゃ! その前にトーラを1人前にしてみせろ! できなければお前も退学じゃ!」

「は!? 今餞別みたいなカード渡したよな!? なんだったんだ今のは!?」

 

 強めのツッコミを入れるがとうさんはお構いなしだった。

 

「それとこれとは話が別じゃ! いいから妹の面倒みてやれ! 今までロクに何もせんかった分アニキらしいこともしてみせろ! トーラがアカデミアのもんより強いと言うたのはお前じゃテンシン! 責任持て!」

「えぇ……」

「おにぃちゃんっ!」

「おにぃちゃん!?」

 

 急にトーラが猫なで声で話しかけてきた! なんだこの声! かわいいィィ……!! 天使なのか? 魔法使いなのに天使なのか?

 

「お願い! 私に、カワイイ妹に、デュエルの手ほどきしてちょうだい? おにぃちゃんみたいにカッコよくて強いデュエリストになりたいな……責任取って!」

「なんだ責任取るって! おかしいだろ!」

「おねがい……おにぃちゃん!」

 

 両手を合わせ、小首を傾げながら甘えるトーラ。こんなの初めて見た。かわいい……めっちゃかわいい! ここまでされては断れない。責任っていうのは脈絡が意味不明だが、妹の頼みだし、アカデミアにはすぐ戻る必要もないし、少しぐらい寄り道してもいいか。

 

「よし! おにぃちゃんに全部任せな!」

「やったー! テンシンちょろーい!」

「え……おにぃちゃんだろ?」

「ん? テンシンでしょ?」

 

 騙された!

 

「とんだ悪女だ!」

「テンシンのせいだもん♪」

「かぁ~~っ!! どうしたもんかなぁ。まぁやるといった以上やるけど……」

 

 こうして俺の実家滞在期間は少し伸びることになった。トーラの特訓をすることになったが、やはり問題はメンタルなところにあるようで、その克服には実践あるのみという結論に至った。

 

 そこで以前訪れたカード屋で大きな大会が開かれるという情報を得たので、その店舗の推薦により店舗代表として俺とトーラも参加させてもらうことにした。全国から腕利きが集まるトーナメントで、当然負けたら即敗退。この緊張感でトーラの腕を磨くことにした。

 

「いよいよ本番か。うぅ緊張する」

「気にするな。緊張は悪いことじゃない。それにどうせ負けても死にはしないんだ。気楽にいこうぜ?」

「……そんなこと初めて言われた。とうさんは“緊張するな”しか言わなかったのに」

「あの人ならそういうだろうな。人に教えるのは下手そうだ」

「ふふっ! ねぇ! それで優勝したらなんか賞金とかあるの?」

「あぁ、あるぞ。300万ぐらいだったかな」

「そんなに!?」

「規模とか考えるとそんなもんだろ。全国区だし。あと超レアな限定カードも貰えるらしい。俺はこっちが気になるな。レアカードは平気でウン千万するだろ?」

「うわぁ、いいなぁ、夢が広がるわね」

「最悪お前が負けても俺が優勝してやるから気楽にいけよ」

「よくそんなことポンっと言えるわね。あんた緊張とかしないの?」

「そりゃすることもあるだろうけど、今回は別に緊張しないな」

「なにそれ! ずるーい! なんでアンタだけ緊張しないのよ!」

「そりゃ勝つとわかってる勝負で緊張する方が難しいだろ。負ける気がしない」

「結局自信があるってことかぁ……」

 

 少しはトーラの参考になるかな? こいつもなんとかしようとは思っているんだろう。いきなり改善されることはないだろうが、1歩ずつ進んでいくしかない。

 

 参加人数は1000人ほど。10回程勝てば優勝する計算だ。しかし総試合数が1000試合ほどあることになるので長丁場になる。俺とトーラは同じ店舗からのエントリーなので一番遠いグループに属しており試合時間もかなり離れていた。最初は俺、次にトーラだ。当然俺はあっさりと勝利したのですぐにトーラの応援に向かった。

 

「おっ……やってるな。しかしトーラは劣勢か。しかもあの表情……あいつの悪いところが出てしまったか」

 

 相手 手札2枚 モイスチャー星人  LP4000

トーラ 手札0枚 魔法都市(C:5)  LP500

 

 モイスチャー星人は3体生贄で魔法罠を全て破壊する効果がある。こいつにフィールドを一掃されたようだな。トーラ相手に3体の生贄召喚を決めるとは逆に相手もすごいな。

 

「もう後がない……テンシンになんて言えばいいの」

「へへへ……弱い奴が相手で助かったぜ」

「くっ……」

 

 もうあきらめかけている。どうして諦める? まだまだここからだろ? トーラ、ここを超えて強くなれ! どうしても黙って見ていられず大声でトーラに呼びかけた。

 

「諦めんじゃねぇぞ! トーラ!」

「っ!! テンシン……」

 

 青ざめた表情でこちらをうかがうトーラ。よほど俺にカッコ悪いところを見られたくなかったのだろう。こいつは気負い過ぎなんだ。その重りさえ外すことができれば勝てる!

 

「イイカッコしようとするな! 最後までみっともなくあがいてみろ! 俺は最後まで諦めないお前が好きだ!」

「えっ!? すすすすっ!? こんな大勢の人がいるとこで何言ってんの!?」

 

 青白かった顔は今は真っ赤に染まっている。強引だが負の思考からは抜け出せた。

 

「敗けることを恐れるな! そして勝利への執念を燃やせ! 普段通りのつもりで、何も考えず全力を尽くすことに集中しろ!」

「テンシン……」

「俺はお前を信じてる!」

「……!!」

「なんだぁ? あれ、お前の彼氏か? こっぱずかしい男だな」

「……黙れ」

「はぁ? なんか言っ…」

「黙れ! あんたに何がわかるのよ! テンシンはね……テンシンはね……」

「ちっ! いいから早く続けろ! 一々見せつけやがって! どうせ俺の勝ちだ」

「それはどうかしら? 勝負は最後までわからない! 私は簡単には負けない! なんとしてでも勝つ! テンシンが信じてくれる限り、私は戦える!」

 

 目の色が変わった。あれは戦う者の目だ。やっと調子取り戻したか。

 

「はっ! 何にも残ってねぇのに勝てるかよ!」

「わからないならよく見てなさい! これが私のデッキの可能性! ドロー! まずは強欲な壺! カードを2枚ドロー!」

 

 いきなり手札補充。あいつのゾーンに入ったな。

 

「これで魔法都市に6つのカウンターが集まった! 魔力カウンターを6つ捧げることで魔法都市の王を呼び覚ます! 出でよ、エンディミオン!」

 

 手札からエンディミオンを特殊召喚した。今それを引くとは大したやつだ。

 

「いきなり最上級モンスターだと!?」

「さらにその効果で墓地の強欲な壺を回収! 当然そのまま発動! さらにカードを2枚引かせてもらうわ! ……フフ。やっぱりね。今の私は負ける気がしない。思った通りね」

「モイスチャー星人はそのナントカってのより攻撃力は上だ! なめんじゃねぇ!」

「舐めてるのはアナタよ。エンディミオンはね、手札の魔法カードを使ってフィールドのカードを破壊できるの。私は手札のマジックブラストを捨ててモイスチャー星人を破壊する」

「なにぃぃぃ!」

 

 最初の強欲な壺で引いたカードがマジックブラストだったようだ。完璧な引きだ。

 

「さぁバトルよ! エンディミオンで攻撃!」

「うぐぅ……だがLPはまだある! これでバトルフェイズはしゅうりょ……」

「まだ私のバトルフェイズは終了してないわ!」

「えっ」

「速攻魔法発動! ディメンションマジック! 手札の氷の女王を特殊召喚し追加攻撃!」

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 結局バーサーカーソウルかいっ!

 

 ◇

 

「テンシン! どうだった? 私ってばやっぱり天才でしょ! 強すぎて申し訳ないわね」

「よく言う。油断せず最後まで勝ち上がって来いよ。決勝で待っててやるからな。俺に勝てたら何でも好きなご褒美をやるよ」

「ホント!? 絶対勝つ! 全速先進! レッツラゴー!」

 

 めちゃめちゃやる気出たな。勝つことしか頭にないときのトーラは本当に強い。単純だがご褒美を用意するのはいいアイデアだったかもな。ただ最後の一言が……古い。

 

 その後は俺もトーラもお互い苦戦することなく勝ち上がっていった。たしかに参加者のレベルは高く、名門と言われるアカデミアの生徒以上の実力者が揃うが、俺達はそれでも頭1つ抜けていた。

 

 朝から始まった大会もいよいよ大詰め。屋内なので太陽は見えないがもう外は暗くなりつつあるだろう。残ったデュエリストも4人を残すのみとなった。

 

 準決勝は2組同時だ。トーラの方は見てやることはできないがその必要もない。あいつなら勝つだろう。

 

「ラヴァ・ゴーレムでダイレクトアタック!」

「うげっ!!!」

 

 俺は決勝進出。トーラの方もそろそろケリがついたか。

 

「そんな……」

「お嬢ちゃん、たしかにスジはいいわ。でも相手が悪すぎた。あたしの敵じゃない」

 

 負けた? トーラに勝てるほどの奴がいたのか?

 

 ガックリと膝をつくトーラの向こう、悠然と見下ろすのは見覚えのある顔のデュエリストだ。

 

「孔雀……舞!」

「あら、あなたが最後の相手かしら? あたしのことはご存じみたいね」

「あんた有名人だからな。トーラが負けるのも無理ないか」

「あら、その子と知り合い?」

「……妹だ」

 

 うなだれるトーラに手を貸し、リングの外の休憩場所まで運んでやった。トーラは俺に対してうつむいたまま顔をあげず一言も言葉を発しなかった。顔を視なくてもわかる。悔しかったんだな、トーラ。

 

「さぁ、今大会もいよいよ決勝戦! 最後は孔雀舞と世渡天真のデュエルだ!!」

「「「おおおおぉぉぉぉぉおおおおっっっ」」

 

 すごい盛り上がりだ。それだけこの大会は注目度も高いのだろう。こんな有名人も出てくるしな。

 

「さっきは悪かったわね。あなたの妹さんだっけ? あの子にとっては苦い経験でしょうけど、勝負事は甘くないのよ」

「心配しなくても俺は弔い合戦をしに来たわけじゃない。元々あいつには勉強のためにこの大会に誘ったんだよ。だから負けたといってもあいつを倒すのが俺じゃなくあんたに変わっただけのこと」

「意外と厳しいお兄さんだったのね」

「けどな! 俺は、俺自身は優勝するためにここに来た! 相手があんたでも勝たせてもらうぜ。勝負事は……甘くないからな」

「ぷっ! アッハッハ!! 言うわね! あんた面白いわ! ちゃんと私についてきなさいよ。がっかりさせたら承知しないからね」

「「デュエル!!」」

「先攻はお譲りするわ。お先にどうぞ?」

「先攻を譲る? なんのつもりなのやら……。後悔するなよ? ドロー! モンスターをセット! さらにリバースカードをセットし……さらにもう1枚伏せてターン終了!」

 

 先攻を譲るとすれば理由は1つしかない。狙いはハーピィの狩場だな。こちらのバックを剥がしつつハーピィお得意の大量展開でワンキルするのだろう。最近大量展開する奴とばかり戦ってる気がする。相手さんばかり遊戯王らしいデュエルができて羨ましい限りだ。

 

 さぁ、リバースカードはわざとタイミングをずらしてセットした。即決の1枚目の方が大事そうに思わせて、2枚目は少し迷って一応伏せたように見せている。相手がこっちの狙いに乗ってくれればよし。お前はどっちを破壊してくる? 孔雀舞?

 

「どうしたの? 守ってばかりでは勝てないわよ! 優勝するんじゃなかったの?」

「先攻は攻撃できない。攻撃表示で出してもいい的にしかならねぇよ」

「じゃあ、あなたに攻撃チャンスは一切与えないわ! ここで一気にいくわよ」

「やはり……くるか」

「まずはハーピィ・クィーンを捨てて効果発動! ハーピィの狩場を手札に加え、そのまま発動するわ! そしてハーピィ・チャネラーを召喚! このとき狩場の効果でまずは2枚目に伏せたカードを破壊するわ」

 

 

《ハーピィ・クィーン》

効果モンスター

星4/風属性/鳥獣族/攻1900/守1200

(1):このカードのカード名は、

フィールド・墓地に存在する限り「ハーピィ・レディ」として扱う。

(2):このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。

デッキから「ハーピィの狩場」1枚を手札に加える。

 

 

《ハーピィ・チャネラー》

効果モンスター

星4/風属性/鳥獣族/攻1400/守1300

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「ハーピィ・レディ」として扱う。

(2):自分フィールドにドラゴン族モンスターが存在する限り、このカードのレベルは7になる。

(3):手札から「ハーピィ」カード1枚を捨てて発動できる。

デッキから「ハーピィ・チャネラー」以外の「ハーピィ」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 

 

《ハーピィの狩場》

フィールド魔法

(1):フィールドの鳥獣族モンスターの攻撃力・守備力は200アップする。

(2):自分か相手が、「ハーピィ・レディ」か「ハーピィ・レディ三姉妹」を召喚・特殊召喚した場合、

そのプレイヤーはフィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。

そのカードを破壊する。

 

 

 ニヤリと孔雀舞がほくそ笑む。俺がわざとタイミングをずらして伏せたことにはやはり気づいたな。万丈目なら素直に先に出した方が重要とみてそっちを割るが、こいつはさらに裏を読んで敢えて2枚目を破壊してきた。

 

 このデュエル、面白くなってきた。

 




分割したのでタイトルが雑……
後で変えるかも
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