気づいたらデュエルアカデミア   作:りんごうさぎ

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お披露目

 予想以上の量の課題を受け取ってきて、午前中で2割ほどこなして昼休憩の時間を迎えた。今は制服に着替え、探索を続けることしばらく、食事を終えたところらしい明日香をやっと見つけた。

 

「おい、明日香。今ちょっといいか」

「ん? 別にいいけど……何か用かしら?」

 

 あれ? なんかリアクションが変だな。ここに来るまでも周りのヤツの俺を見る目が変だった。そっちは俺が退学もどきをくらって久々の登校だからだと思っていたが、明日香まで似たような反応をするとは思わなかった。

 

「お前、夜に亮と会ってるだろ?」

「えっ!? どうしてそのことを知ってるの!?」

「亮を呼び出してもらいたい。明日の夜、灯台の下」

「……直接会いにいけばいいじゃない?」

「俺じゃない。亮に会いたいやつがいる。イヤなら腕づくで頼みをきいてもらう」

 

 そういってデュエルディスクを構えると明日香は好戦的な笑みを浮かべた。

 

「面白いわね。じゃ、あなたが勝てば亮を呼んであげるわ。丁度新しいデッキの肩慣らしをしたいと思っていたし……あの男と戦う前に調整できてラッキーだわ」

 

 あの男? 誰だ? こいつが負けるとしたら……十代? 亮? でもあの男なんて言い方するか? まぁどうでもいいか。

 

「「デュエル!!」」

「俺のターン、ドロー! 神獣王バルバロスを召喚。こいつはレベル8だが生贄なしで召喚することができ、その場合攻撃力は1900になる。カードを2枚セットしてターンエンド」

「見たことのないモンスターね。いいわ、私のターン! ドロー! まずはフィールド魔法、祝福の教会、リチューアル・チャーチを発動!」

「儀式デッキか!」

「あら、よくわかったわね。このデッキを使うのは初めてなのに」

「……」

 

 このカードの登場はさすがに驚いた。たしか儀式デッキは三幻魔編の終盤から使用していたはず。少し早い。

 

「私はサイバー・プチ・エンジェルを守備表示で召喚し、その効果で機械天使の儀式を手札に加える! さらに教会の効果でこれを捨てて2枚目の機械天使の儀式を加える。さらに儀式の準備を発動!」

「儀式の準備……そんな強力なカードまで使うのか」

 

 儀式の準備

通常魔法

(1):デッキからレベル7以下の儀式モンスター1体を手札に加える。

その後、自分の墓地の儀式魔法カード1枚を選んで手札に加える事ができる。

 

 

 明日香がそんな汎用性の高いカードを使っていた記憶がない。どうしてこんなカードを使うようになったんだ?

 

「儀式召喚を得意とするブルー女子から譲ってもらったの。苦労した分その効果は強力よ! デッキからレベル7以下の儀式モンスターを手札に加え、さらに墓地の儀式魔法を手札に加えることができる! 私は弁天と機械天使の儀式を選択!」

 

 プレイングにムダがない。おそらくここから怒涛の儀式ラッシュが来る。

 

「さぁ、いくわよ! 機械天使の儀式を発動! 手札のサイバーエンジェル弁天を生贄にサイバーエンジェル韋駄天を儀式召喚! どう? これがサイバーガールよ! 儀式召喚に成功した時、生贄になった弁天の効果でデッキから光属性の天使族を手札に加えるわ! 私は2枚目の弁天を選択!」

 

 

《サイバー・エンジェル-弁天-》

儀式・効果モンスター

星6/光属性/天使族/攻1800/守1500

「機械天使の儀式」により降臨。

(1):このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。

そのモンスターの元々の守備力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードがリリースされた場合に発動できる。

デッキから天使族・光属性モンスター1体を手札に加える。

 

 

《サイバー・エンジェル-韋駄天-》

儀式・効果モンスター

星6/光属性/天使族/攻1600/守2000

「機械天使の儀式」により降臨。

(1):このカードが儀式召喚に成功した場合に発動できる。

自分のデッキ・墓地から儀式魔法カード1枚を選んで手札に加える。

(2):このカードがリリースされた場合に発動できる。

自分フィールドの全ての儀式モンスターの攻撃力・守備力は1000アップする。

 

 

 《機械天使の儀式》

儀式魔法

「サイバー・エンジェル」儀式モンスターの降臨に必要。

(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、

自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、

手札から「サイバー・エンジェル」儀式モンスター1体を儀式召喚する。

(2):自分フィールドの光属性モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、

代わりに墓地のこのカードを除外できる。

 

 

 弁天は生贄にされるとデッキからモンスターを持ってこれるのか。かなり強いな。

 

「まだ儀式召喚するのか?」

「その前に韋駄天の効果!」

「そいつもか!?」

「儀式召喚に成功したらデッキ墓地から儀式魔法1枚を手札に加える! 私はデッキから3枚目の機械天使の儀式を手札に加える! さらにもう一度儀式召喚! 韋駄天を生贄にして弁天を儀式召喚! 生贄になった韋駄天の効果で自分フィールドの全ての儀式モンスターの攻守を1000ポイントアップさせる!」

 

 弁天と韋駄天、それぞれ2つずつ効果を持っているようだな。弁天はたしかフレイムウイングマンのような効果も持っていた。明日香のやつ、試運転みたいな発言をしていた割にはしっかり使いこなしてやがる。

 

 明日香 手札2枚 プチ 弁天(2800) 韋駄天(2600) 教会

 墓地  儀式の準備 弁天 韋駄天 機械天使の儀式 機会天使の儀式

 

テンシン バルバロス 伏せ2枚 手札3枚

 

 

「さぁバトルよ! まずは弁天で攻撃! 900の戦闘ダメージと弁天の効果で守備力分のダメージを与える!」

「守備力版のフレイムウイングマンか。バルバロスの守備力は1200……」

「合わせて2100のダメージ! 残りライフ1900では韋駄天の攻撃は耐えられないわ! 終わりよ!」

「ワンターンでいきなり決めに来るか……大した速攻だがリバースカードを警戒しないのはどうかと思うぜ、女王様?」

「このタイミングで?」

 

 なぜ最初に使わないのか不思議そうだな。このカードはバルバロスを倒してもらう必要があるからな。

 

「リビングデッドの呼び声を発動! 墓地のバルバロスを復活させる」

「でもそのモンスターの攻撃力は1900……いや、違うわ! そのモンスターの元々の攻撃力は……!」

「教えてやろう、3000だ。もちろん特殊召喚された場合攻撃力が下がることはない。これでこっちの攻撃力が上回ったな」

「なら攻撃は中断よ! 攻撃力で上回られても倒す方法はあるわ! 行くわよ、3度目の儀式召喚!」

「3回目!? 機械天使の儀式を使い切るか」

「サイバープチエンジェルと韋駄天を生贄にサイバーエンジェル茶吉尼を儀式召喚! 韋駄天の効果で全てのモンスターの攻守がアップ!」

 

 

《サイバー・エンジェル-荼吉尼-》

儀式・効果モンスター

星8/光属性/天使族/攻2700/守2400

「機械天使の儀式」により降臨。

(1):このカードが儀式召喚に成功した場合に発動できる。

相手は自身のフィールドのモンスター1体を墓地へ送らなければならない。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分の儀式モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

(3):自分エンドフェイズに自分の墓地の、

儀式モンスター1体または「機械天使の儀式」1枚を対象として発動できる。

そのカードを手札に加える。

「攻撃力は上がりに上がって3700と3800……両方バルバロスを超えてきたか」

 

 

 育成ゲームのようにフィールドの儀式モンスターが強くなっていく。結構回して楽しそうなデッキだ。こいつも遊戯王してるねぇ。ちょっと羨ましい。

 

「それだけじゃないわ! 茶吉尼が儀式召喚に成功したときあなたは自分のモンスターを1体選んで墓地におくらなければならないの」

「なるほどね……じゃあバルバロスを選択」

 

 ぐぉぉぉぉ……と咆哮をあげてバルバロスが破壊される。悪いな、今は墓地で眠っていろ。

 

「さらにこのモンスターがいる限り自分の儀式モンスターは全て貫通能力を得るわ。守備表示で逃げることも許さない」

「……」

「そしてエンドフェイズ! 茶吉尼の効果で墓地の機械天使の儀式を手札に加える! これで次のターンも儀式召喚できるわよ! さぁどうする? 私はターン終了」

 

 手札は今回収した儀式魔法1枚のみ、全て使い切った。おそらく儀式モンスターの展開に特化した構築なのだろう。恐ろしい殺意だな。しかも機械天使の決定力不足を韋駄天のパワーアップ効果で見事に解消している。この時代のデッキとしてはかなり完成度も高い。前の戦士族を融合するだけデッキより格段に強くなっている。

 

 だが……相手が誰かわかってるのか? 俺だぜ?

 

「お前、本当にいいのか?」

「ん? 何よ?」

「モンスターを2体並べて良かったのかってきいてんだよ」

「どういうこと? なぜそんなこときくのかしら?」

 

 こいつ本気で言ってるのか? どうやらしばらく見ないうちに忘れてしまったようだ。俺の持つ悪魔は相手モンスターを喰らいつくす!

 

「ドロー! モンスターを並べたのはお前だからな。今からそのおニューのサイバーガール2つ……骨になるまで溶かすが恨むなよ?」

「えっ!? そのセリフ……あなたまさか!」

「弁天と茶吉尼を生贄に……溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム召喚!」

 

 握りつぶされ骨となりラヴァ・ゴーレムの一部となる2体のサイバーガール。なかなか惨い光景だ。これこそがデュエルにおいて最高の瞬間。相手のモンスターを踏みつぶしてラヴァ・ゴーレムに変えることこそ至福の喜び。

 

「あなた、まさかテンシンなの!? ウソでしょ!?」

「……お前寝ぼけてんのか? ボーっとしてるとすぐに終わっちまうぞ? 手札から所有者の刻印を発動! これでラヴァ・ゴーレムは本来の持ち主……つまり俺のフィールドに戻る」

「なんですって!? いきなり攻撃力3000のモンスターがフィールドに! しかも私のフィールドはガラ空き!?」

 

 トーラのときと全く同じ展開だ。明日香のデッキのようなモンスターを展開して押し切るスタイルは1ターンで決めきれないと制圧力がないから反撃で負けやすい。その辺が課題だな。

 

「バトル! ゴーレム・ボルケーノ!」

 

 LP 4000 → 1000

 

「くぅ……!! でもライフは1000残る! 次のターンまた儀式召喚して逆転できる!」

「あぁ、たしかにそのフィールド魔法の効果も侮れない。でもそうはさせない。トラップカード発動!」

「このタイミングで!? どんなカードなの!?」

 

 俺には大会で得た賞金がたんまりある。ここに来る途中カードを補充していた。これはその中の1枚だ。

 

「火霊術紅を発動! 自分の場の火属性モンスターを生贄にしてその攻撃力分のダメージを与える!」

 

 

 《火霊術-「紅」》

通常罠

(1):自分フィールドの炎属性モンスター1体をリリースして発動できる。

リリースしたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

「所有者の刻印とのコンボ前提のバーンカード! これで一気に3000ものダメージを与えるのね! なんて恐ろしいコンボなの!」

「いけ、ラヴァ・ゴーレムを射出! これで俺の勝ちだ」

 

 LP 1000 → -2000

 

 マグマが飛び出し明日香のライフはゼロになった。これでレイとの約束は果たせる。

 

 まぁ、強くなったと言ってもこんなもんだろうな。まだ恐れるほどではない。

 

 明日香は地団駄を踏みながら悔しがっていた。

 

「……もう! テンシン! あなたどうして最初に名乗らなかったのよ! まだ練習中だったのに!」

「はぁ? ならいいじゃん。俺は練習相手なんだろ? けど負けた以上約束は守れよ。亮に明日灯台に来るように言っておいてくれ」

「もう! あんたバカなんじゃないの?! いいわ、いっとくわよ! でもどうして亮に会う必要があるのよ!」

「事情は……一応説明しておこうか。ただし他言無用だ。いいな」

 

 なぜかキレ気味の明日香にレイの件を説明した。

 

「つまり年齢と性別を偽ってるレイちゃんの願いを叶えるために亮に告白するチャンスを設けるわけね。亮には事情は言わずただ女の子が来るとだけ伝えればいいのね」

「ああ。告白とかも言わなくていい」

「そうね。その方がいいでしょうね。でもあなたいきなり帰ってきたと思えばどうしてこんな人助けなんてするのよ? あなたそんな性格じゃないでしょ?」

「別に……同室に小学生がいても邪魔だし、さっさと気のすむようにやらせてゴーホームしてもらうためだ。告白が上手くいかないことは目に見えてるし」

「……まぁそうでしょうね。わかってて告白させるなんて、やっぱりヒドイ人ね」

 

 それには何も答えずレッド寮に戻った。あとは勝手にやるだろう。俺が関わるのはこれでしまいだ。さっさと残りの課題を終わらせよう。

 

 

 

「ただいま!」

「あぁ、おかえり」

 

 課題が半分ほど終わった頃、レイが帰ってきた。ずいぶんとお早い帰宅だ。上級生ばかりじゃ居心地も悪いのだろう。まっすぐ寮に戻ってきたようだ。

 

「ねぇ、何してるの?」

「課題」

「うげ!? これ全部!? ボクこんなに課題出されてないよ!? どんだけため込んでるの!?」

「休学してたっていってるだろ。これでも半分は終わらした」

「もう!? 今日来たから今朝始めたんだよね!? しかもこの2倍の量って多すぎるよ! 殺しにきてない!? それを終わらせるテンシンさんもおかしいよ!」

 

 さわがしい奴だ。邪魔になってる自覚ないのか?

 

 遠回しに追い払うことにした。

 

「いい天気だし外に遊びにいったらどうだ?」

「むぅ! 子供扱いするな! だいたい引きこもってたくせにお天気なんて知らないでしょ! 適当なこといってボクのこと邪魔者扱い!?」

 

 機嫌が悪くなったので喜ぶことを言ってあげた。

 

「出かけたぞ、お前との約束があるからな。亮はちゃんと呼んでもらえることになった。明日、ここにある灯台に夜待ち合せだ」

「ウソ!? 上手くいったの!? すごい!! レッドなのにブルーの人にそんなこと頼めるなんて思わなかった! テンシンさんすごいんだね!」

 

 こいつ約束したのに期待してなかったのか。失礼なやつだな。自分に正直というか、思ったことをそのまま言ってしまうみたいだな。

 

 だったら俺もハッキリ言ってやるか。

 

「俺になんか用でもあるのか? なければどっかいけ」

「ちょっと! かわいい女の子がルームメイトなのにその態度はないよ! プンプン!」

 

 なんだその“プンプン”って……聞いたことないぞ。こいつ構ってほしいのか?

 

「……なんかききたいことでもあるんだな? じゃあ早く言え」

「えへへ……わかる? 実は告白する前にアドバイスがほしくてさ。いいでしょ?」

 

 アドバイス? なんで俺にそんなこと聞く? 聞きたけりゃ他にいるだろう? それか話ができる相手がいないのか?

 

 いや、よく考えるとこいつは一応男ってことになってるから女の子としてどうすべきかのアドバイスは受けられないのか。なら俺にきくしかない。

 

 仕方ないな……。

 

「いいけど俺みたいなモテない男の意見なんて参考にならないと思うけど」

「えっ! 何言ってるの? テンシンさん絶対モテるでしょ? 彼女とかもいるでしょ、絶対!」

「いや、いないしモテたことないけど」

「え……そうなんだ。意外だなぁ。ま、それでもいいからさ、どうしたら男の子は告白OKしてくれるか教えてよ!」

 

 そんなこと言われても告白されたことなんてないし、どうアドバイスしろと? いや、逆にこいつもそんな経験ないんだし、適当に答えればいいか。俺は参考にならないぞって先に言ってるわけだし別に適当でもいいだろ。

 

「恋愛なんてデュエルと一緒だ。まずは己を知り、そして敵を知る。そして自分の強みを活かして相手の弱点を攻めれば百戦百勝だ」

「ホント!? すごい!! さすがだなぁ。じゃあ具体的にどうしたらいいの?」

 

 このガキ……めんどくさい質問しやがって!

 

「自分で考えろよ」

「そう言わずに! お願い! 後生の頼みだから!」

 

 どこでそんな言葉覚えたんだ、小学五年生?

 

「お前の強みはその容姿と性格……女の子らしくかわいい顔立ち。明るく天真爛漫で親しみやすい性格。男受けはかなりいいと思う」

「えっ、そう? あはは……そんなにかわいいかな?」

 

 横目でチラッと様子を見ると照れながらも顔がふやけるほど喜んでいた。それが計算してできたら魔性の女だな。

 

「弱みは年齢だな。これが致命的……幼さを感じさせるとまず恋愛対象にしてもらえない可能性がある」

「そんな! それはどうしようもないよ!」

「そりゃそうだ。だから年齢は伏せて、できるだけ子供っぽい行動は控えることだな」

「なるほど……」

 

 小声で何かをブツブツと呟くレイ。必死だ。あとはカイザーのことを言えばレイは納得するだろう。本当はよく知ってるが一応あまり知らないフリをしておくことにした。

 

「後はカイザーこと丸藤亮についてだが……俺は会ったことないし詳しくは知らないけどいいか?」

「もう藁にも縋る思いなんだ! なんでもいいからお願い!」

「……わかった。カイザーはまず一言で言うとデュエルバカだ」

「ボクの亮様を悪く言うな! なんにも知らないくせに!」

 

 いきなりマジ怒りするレイ。なんだいその態度は? それが人に物を聞く態度かい?

 

「だから最初によく知らないって言ったよな? もう言うのやめようか?」

「ごめんなさい続けてください」

 

 こいつなんなんだ? 漫才しにきたのか?

 

「カイザーは今デュエルのことしか頭にない。だからどれだけ魅力的な女の子から告白されても意に介さない可能性が高い」

「えぇーーーっっ!! それじゃダメじゃない! どうすればいいの!」

 

 セールス番組に出てくるアシスタントのようなリアクション。お前テレビ出れるよ。

 

「あいつはおそらくブルー女子から毎日のように告白されてるはずだ。お前より大人で色気のあるブルー女子の生徒からな。それでも浮いた噂1つないってことは女に興味がないんだろう。そうとしか考えられないだろ?」

「そ、そんなに高い壁なんだ……うぅ、告白する前なのに自信なくなってきた」

 

 自分のライバルが高校生の美人なブルー生と知って10才のレッド生であるレイはショックを受けていた。本当に何も考えずに海を渡ってきたようだ。なんという蛮勇。

 

「自信のないやつは異性から見て魅力的には映らない。堂々としてる方がいいよ」

「えっ? そうなんだ、ありがとう。……ねぇ、なんか裏技みたいなのないの?」

「裏技? そうだな……例えば女なら脱ぐとか?」

「エッチ!! テンシンさん冗談キツイよ!」

 

 言い方がかわいい。なんか何回も言わせたくなる……バカみたいだからしないけど。

 

「別に冗談じゃないんだけど……まぁお前が聞きたい感じでいうとこれかな」

 

 そう言ってデュエルディスクを叩くと合点がいったという反応を示した。

 

「そうか! デュエルしか興味がないならそのデュエルで勝てばいいんだね!」

「ただこれは絶対にやめた方がいい。断言する」

「どうしてなの!? すごくいい案だよ?」

 

 物事を一面でしか見れない奴は必ず選択を誤って後悔する。リターンだけでなくリスクにも目を向けないといけない。

 

「それは勝てた場合の話だ。お前じゃカイザーには100回挑んでも勝てやしない。そもそもデッキ相性が悪すぎるんだ。その上、実力も比較にならないほど離れている」

「でも! デュエルは何が起こるかわからないじゃないか!」

「カイザー、つまり皇帝と呼ばれているのは奴がこの学園で最強と認められているが故のこと。俺にすら勝てない奴が学園最強に勝てる道理はない」

「くぅぅぅぅ!!! じゃあテンシンさんもう一度勝負だ! 次こそ勝つ!」

「お前なぁ……俺は課題が忙しいんだ。さっき説明しただろ?」

「お願いします!!」

 

 大きな声で頼みながらお辞儀するレイ。俺の発言は無視するつもりらしい。なんか断りにくいなぁ。

 

「1回だけな」

「やった! 絶対勝つ!」

 

 5分後

 

「もう1回! 次こそ!」

「1回って言ったよな?」

 

 10分後

 

「まだまだ!」

「何回するつもり?」

 

 数時間後

 

「疲れた……あ、もうご飯の時間だ! テンシンさん一緒に食堂にいこっ!」

「そうだな」

 

 勝手にデュエルを続けて勝手に終了か。子供の特権だな。同級生ならすでに殴っている。行動はやはり10才児相当だが、デュエルに関してはなかなか才能があった。この短期間で目に見えて上達している。

 

 俺がレイの行動を咎めるようなプレイングをすると次は確実にそれを修正して改善しようとしてくる。俺の行動の意図を汲み取る力、それに対応する力、その両方がなければできないことだ。

 

 それが上手くいくかは別として、悪かった部分を考えて修正する能力は高い。それはつまり伸びしろが大きいことを意味する。

 

 こいつ……かなり強くなるかも。

 

「ねぇ、テンシンさん。難しい顔して何考えてるの?」

「……お前、センスあるよ」

「えっ……あぅえ?」

「このまま伸びたら……俺を超えるかも」

「んう……あう」

 

 レイは呂律が回らず上手く喋れないまま俯いてしまった。

 

 いきなり話しかけられて、つい考えていたことをそのまま言ってしまった。余計だったかもしれない。

 

 食後はなぜかレイが構ってこなくなり俺は課題に集中できた。少しレイに時間を使ったのでまだ3割ほど残っているがこれぐらいなら明日の放課後で終わりそうだ。

 

 次の日、レイは全く俺に関わろうとはせず、一言もしゃべらずに授業に行ってしまった。俺の方からは何も言わないのでレイが何もしないとこうなるんだな。

 

 授業では俺が復学したことが先生の口から告げられるも、その場の誰も俺に気づいていないようであらぬ方向を見ていた。(座席の場所は以前と変わっていた)

 

 おかげで俺は幻の存在のように扱われていた。

 

「おい、きいたか、いるはずなのにいないテンシンの噂!」

「あぁ、実は幽霊だったんだろ?」

「……」

 

 お前ら本当に高校生か?

 

「無理ないわ。私も最初わからなかったもの。あなた変わり過ぎよ?」

「明日香か」

「その呼び方も。前は天上院さんだったじゃない。私としては名前で呼んでくれる方がいいけど、いきなりだからわからなかったわ」

 

 そういえば以前は十代達を敵視してたから名字呼びだったっけ。忘れてた。トーラの影響で名前呼びにも抵抗がなくなった気がする。

 

「ちゃんと亮には伝えたのか?」

「もちろん。亮もOKしたわ。そういえばどうして私が亮と会ってること知ってるの?」

「逢引き現場を見られたのがショック?」

「あ……逢引き?! バカ!! そんなんじゃないわよ! あなたわかってて言ってるでしょ!」

「たしかにデュエルバカ2人が会って好きだ嫌いだもないか」

「あなたって本当に無神経ね。失礼しちゃうわ」

 

 明日香もどこかへ行ってしまった。もしかしなくても女が離れていくのは自分の言動が原因なのでは? 今更過ぎるな。

 

 レイにはもう少しちゃんとした対応をしよう。今日はレイにとって大事な日になるだろうし。

 

 放課後部屋に戻り最後の課題をしているとレイも帰ってきて慌ただしく動き始めた。身だしなみを整えて女の子らしい格好で臨むようだ。昨日のアドバイスを参考にしたのかもしれない。

 

 黙って課題をこなしていると不意に強烈な視線を感じた。目をやるとオシャレをしたレイが何か言ってほしそうにしている。ここで選択を間違えると3度目の失態になる。今朝の無言のレイ、さっきの明日香、これが3度目。

 

「帽子取った方が似合ってるな。美人に磨きがかかって今までで最高にかわいいよ」

「あぁ……うへへ」

「お前よりかわいい女の子なんて絶対いない。自信もっていけ」

「うん!」

 

 嬉しそうな顔で飛び出していった。今のは正解だったみたいだ。セーフ。

 

「……」

 

 でもレイに待ち受ける運命は残酷だ。亮に思いが届くことはない。あれ、そういえばレイは失恋と引き換えに十代へ新たな恋を始めたはずだが、この世界ではどうなる? 十代は同室の縁がなくなって接点がない。じゃあ、あいつは失恋という重い結果だけを背負ってこの島を去るのか。

 

 俺と同室になったのは校長か大徳寺が決めたことだろう。だが間接的に俺が原因なのは間違いない。そのせいでレイは辛い目に遭うことになる。

 

 いや、それでも俺の知ったこっちゃない。他人がどうなろうと俺には関係ないし、傍から見れば俺に非はない。だから気にする必要もない。

 

「……はぁ~~。いつまで帰ってこないんだ?」

 

 夕食前に早々に寮を出て、もう9時を回る。さすがに遅すぎる。おそらく失恋のショックで帰る気力もないに違いない。けれどそのまま空腹状態で寝てしまえば明日の授業に影響が出る。仕方ない。飯ぐらい用意しとくか。

 




サイバーエンジェルは全てOCG仕様にしました。
OCG効果だと使い慣れていたりして都合がいいので。
パーデクと混ぜて使ってました。

デュエルはまたしても短期決戦。
刻印のコンボがライフ4000であまりにも強すぎる。
重力解除してた頃がすでに懐かしい……
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