「世渡天真くん、校長室まで来るのニャ」
「校長室? 俺はやるべきことは全部終わらせたはずですよね?」
「課題やテストとは別件なのニャ。他にも十代くんや明日香さんも呼ばれているのニャ。みんな校長室に集まってほしいのニャ」
おっと、とうとうきたか。地道に地位を上げていき鍵の守護者となるデュエリストを倒し続けなんとか俺もメンバーに選ばれることができたらしい。これで俺もセブンスターズの戦いに関わることができる。長く辛い雌伏の時は終わりを告げた。
「そうそうたるメンツだな。戦争でも始まるのか?」
「ふむ、おもしろい発言なのニャ。全ては校長室へ行けばわかるはずですニャ」
油断ならない表情を見せる大徳寺。お前も俺のデッキでたっぷりといたぶってやるよ。除外デッキはメタさえ仕込めば完封できる。
校長室にはすでに亮とクロノスがいた。レッド嫌いのクロノスが十代をバカにし始めるが、見ていて余りにも滑稽だな。
「あんた、レッドをバカにするのは勝手だが、俺と十代のどちらかに1勝でもしたのか? あんたはしょせんレッド未満のザコなんだからおとなしく分を弁えな」
「ななななな!? ナンデスート!? 由緒あるメディチ家の末裔であるこの私をザコ呼ばわりするトーハ! 不届き千番! 失礼するノーネ!」
「失礼なのはあんたの弱さだろ」
「グヌヌヌ!!!」
ハンカチ噛みしめてキィーーーーッと悔しそうな顔をするクロノス。表情豊かで結構なことだ。
「いいから中に入りましょう。テンシン、あなたちょっと強いからって図に乗り過ぎよ。先生あっての生徒なのだから慎みを覚えなさい」
「言うようになったもんだ。まぁいい、たしかにさっさと用事を済ませた方が賢明だな」
中に入ると校長が待っており、知っている通りの三幻魔の話が続いた。
「この7つの鍵を持つデュエリストに、彼らは挑んできます。あなた方に、セブンスターズと戦う覚悟を持っていただけるなら……どうか、この鍵を受け取ってほしい」
校長が小箱を開き、各々がその中のカギをとっていった。自分も1つ手に取ってじっくりと観察してみるが何の変哲もないただのカギだ。
選ばれたのは大徳寺以外の6人とこの俺、世渡天真。
結局、明日香は脱落しなかったか。今のデッキだと相当強いし脱落はないだろうとは思っていたが。
「おもしれぇ、やってやるぜ!」
「ふふふのひー、校長、脅かしはいけませんノーね
要すルーに、学園の看板ンーを、道場破リーが、奪いに来ると考えればいいノーネ」
「まぁ、今はそう考えてもらっても結構ですが……」
そうなるとここにいるのが不自然なのは大徳寺だ。
「そういえばあんたはなぜここにいるんだ?」
「私は君たちの付き添いなのニャ。闇のゲームの研究をしている教師は私だけなのニャ」
万丈目の問いに淡々と答える大徳寺。こいつはなんだかんだ理由をつけて付いてくるつもりだな。俺が口をはさんでも引きはがすのは難しいか。
鬱陶しいヤツめ!
だったらこっちにも考えがある。十代がセブンスターズと戦えばこいつと影丸の思うツボ。特に大徳寺の思い通りにはさせたくない。十代を見極め、そして成長させようという目論見は潰させてもらおう。
「校長先生、1つ提案があります」
「なんでしょうか?」
「カギを奪うにはデュエルに勝たなければならない。つまりカギだけを盗んでも意味がない。それがこの島の伝統なんですよね?」
「ええ、そうです」
「なら最初はカギを持たせるデュエリストを最も強い1人だけにしておけば敵はそのデュエリストと戦うしかない。何人も足手まといを戦わせるより被害は最小限で済みますよね。世界の破滅を賭けて戦うんだ、頭を使っていきましょうよ」
合理的な作戦だ。俺はこの策を退ける理由が思いつかないが校長はどう答える?
「ふむ、なるほど。考えてもみなかった……面白い提案ですが、最も強いデュエリストはどうやって決めるのでしょうか?」
「対戦成績を見れば議論の余地などないはず。俺がセブンスターズをまとめて倒して差し上げましょう」
全勝は俺だけ。本当に議論の余地など微塵もない。
「ちょっと待つノーネ! シニョールヨワタリ! アナターのような儀式魔法もわからないようなドロップアウトボーイに任せることなんてできないノーネ!」
「じゃあ俺に勝ったデュエリストが今ここにいるのかよ?」
「そ、それは……誰かいないノーネ?」
周りを見るが全員苦々しい表情を浮かべる。己の敗北を思い出している顔だ。
「まさかあなた一度も負けていないの?」
「今頃気づいたのか? 呆れた……。ドベだザコだと言われ続けてきたがデュエルをすれば負け知らずの俺だ。入学してから敗北は一度もない。わざと負けたのを除けばね」
校長室内に戦慄が走る。ようやく俺がとんでもない実力を持っていると気づいたらしい。
「しかしカギを全員に渡さず1人だけに任せるというのは島の伝統に反するのニャ」
「なるほど。大徳寺先生はそのくだらない伝統が世界の破滅より重いとおっしゃるのですね?」
「ずいぶんと手厳しいのニャ……」
「申し出はありがたいのですが、やはりカギは7人に守っていただきたい。私はあなた方全員の力を信じています」
全員の力を信じています、か。上手いこと誤魔化すなぁ。耳障りのいい言葉で言い訳しているようにしか思えないが、こっちも本気で言った通りになるとは思ってない。好きにさせておこう。
「……わからん人だな。まぁいいや。結果が出てから後悔することになっても知りませんよ。俺に泣きついてくるまで果たして何人倒せるか見物ですね」
こいつらはまだこれが闇のゲームになることを知らない。友人として行動するなら先に警告をするべきだろうが俺が知り過ぎていることを大徳寺に知られるのもマズイのでね。
だからこれが今の俺にできる最大限の誠意だ。ちゃんと被害者が出ない方法は示した。拒否したのはこいつらだ。これで十代がボロボロになっても自業自得っと。
最初に戦うことになる十代には悪いがしばらくは静かに見守ることにしよう。
◆
最初のセブンスターズ、ダークネスが来た。突然光に包まれ十代が失踪、火山の方へ行くと吹雪と一緒に倒れているところを大勢に発見されて保護された。闇のゲームを体感し、守護者として選ばれた他のデュエリスト達も認識を改めたようだ。
「やはり闇のゲームを仕掛けられたようだな。今回わかったのは闇のゲームに伴う苦痛はたとえ勝利しても相当なものということ。こちらの戦力を維持するためにはできるだけダメージを受けずに勝つことが望ましいな」
「だからなんだというのだ! 十代ですらこのありさまだぞ! 誰がやっても少々のダメージは止むを得ん!」
「俺は最も守りに長けている。実力も上。お前らの出る幕がないことは既に証明された。今学校内では吸血鬼の噂で持ちきりだ。次の刺客が仕掛けてきている。お前らは用心して寮にこもってろ。敵さんには俺が相手しにいく」
しかし俺の話を無視して万丈目を始め全員が湖の方へと去っていった。
「早い者勝ちだ!」
「バカは死ななきゃ治らない……か」
そして案の定今度はクロノス教諭が餌食となった。最初の犠牲者だ。クロノスは無残な姿で戻ってきた。
「敗者というのは惨めなものだな」
「……」
「返す言葉もないわね。先生はどうなるの?」
「この人形に魂は宿っているようだ。敵を倒せば復活の可能性はある。だが足を引っ張ったことに変わりはない。まんまと鍵をとられやがって! やっぱり俺以外のデュエリストは足手まといだな」
わざと人形をたたくと人形が反応を見せた。
「イタッ! イタイノーネ!」
「しゃべった!?」
「本当に生きてるのね……」
クロノス教諭が勝手に自爆したが本心を言えばどうでもいい。表に出している態度は自分の正しさをアピールするためのポーズだ。何かあったときレッドの俺はまだ発言力が弱い。我ながら涙ぐましい努力だ。
「お前らの愚かさには心底あきれ果てた。もう勝手にやってろ。どうせ痛い目を見るのは己ら自身。人形にされてから俺に助けを求めればいいさ」
押してダメなら引いてみろ。俺が匙を投げたのを見て、そして次にカイザーが負ければいよいよ俺に頼らざるを得ない。十代はまだベッドで寝たきり状態だからな。
そして懲りずにクロノスの仇討ちに向かった鍵の守護者達。戦いの後帰ってきたメンバーは1人欠けていた。
「また負けたのか。情けねぇなぁ」
「テンシン、虫のいい話だとは思うけどお願いさせて」
「俺が相手になれと?」
「ええ。カイザーといわれた男が負けた以上、もうあなたしか頼れる人がいないのよ」
「当然の判断だな。十代は手負いだし残りのお前らには荷が重い」
「なんだと!? この万丈目サンダーが負けるとでもいうのか!?」
「ビッグマウスは結果を出したヤツが言うものだ。弱い犬ほどよく吠えるとはこのことだな」
「なにぃぃ!?」
万丈目が嚙みついてくるが全員相当なショックを受けているのがわかる。そして俺の言う通りにしていれば被害者は出なかったことも理解している。バツの悪そうな顔だ。
「勝算はあるのか? カミューラは卑怯な手を使う」
「たしかに。闇の力は侮れない。だったら今、用意してもらいたいものがある」
「なんだ?」
「十代が持っている闇のアイテム、そして明日香、お前からは吹雪が持っているもう1つの片割れも渡してもらおうか」
「吹雪兄さんも!? どうしてそうなるのよ!」
「おっと! 忘れたとは言わせないぞ? あのときの約束……」
「あっ!」
いつぞやに吹雪の大事なものを賭けて行ったデュエルに俺は勝利している。
明日香なら反故にはできまい。
「どうするんだ? 別にイヤなら他の誰かがまた挑めばいい。俺は戦わないだけのこと」
「いいわ。三沢君、いいわよね」
「あぁ、十代には俺から説明しよう」
準備は整った。
デッキの対策も万全だ。
セブンスターズの中でカミューラだけはこちらの手の内を調べてくるのはわかっている。だから鍵を貰った日にカミューラ対策は済ませていた。
カミューラ戦で気を付けることは幻魔の扉を使わせないこと。それさえクリアすればデュエルが多少上手いだけでデッキの強さは普通だ。
満を持して湖の古城に向かうと予想通りぞろぞろと見物人がついてきた。
こいつら本当に学習しねぇなぁ? ときどきその思考回路に寒気がする。
「なぜついてくる? カイザーは人質をとられて負けたと聞いたが? 同じ轍を踏む気か?」
「そうは言っても心配だぜ」
「警戒していれば大丈夫よ」
「明日香くんの言うとおりだ! 小心者め!」
「なら人質をもしとられても俺は見殺しにするぞ? 来るなと忠告はしたからな」
「……薄情なヤツだ」
「だったら来るな、万丈目」
「サンダー」
本当にどんな思考回路をしてるのか時々本気で不思議になる。全員見に来るのはやはり避けられない。このアイテムで保険をかけているとはいえ、大胆なもんだ。
「よく来たわね。あら、あなたは今までに見なかった顔ね。ウフフ……とってもタイプだわ。次のコレクションにふさわしいわね」
「ウッ……節操のない女だ。変な目でこっち見るな!」
何考えてんだこいつ? 別に見た目は美人だがこういうネットリとした視線を向けられるとどうも落ち着かない。上司にセクハラされるOLみたいな気分だ。ましてやカミューラはこれから戦う相手。そういうのは本当にやめてくれ。
「なによ、失礼しちゃうわね。でも嫌がる男を無理矢理……というのも悪くないわ」
「勝手に言ってろよ、もう……。いいからさっさと構えろ! お前には早々にご退場願おう」
「つれないわね。なら名乗りなさい! あなたの名は?」
「世渡天真」
セブンスターズ編で名乗りをあげるシーンなんてあったか? 少し引っ掛かりながらも一応名乗るとカミューラの表情が一変した。
「あなたがテンシン! なるほど、かわいい見かけに騙されるところだったわ。だとすると相当用心深い性格のようね」
どういうことだ? どうも知っている話と少し違うな。気にはなるが考えるのは後だ。
「あんたも名乗ったらどうだ?」
「我こそは誇り高きヴァンパイア一族の末裔、カミューラ! 今宵あなたの魂を頂く者の名よ! 覚えておきなさい! わかっているでしょうけど、負けたものはこの愛しき人形に魂を封印される。いいわね?」
「いいだろう。始めようか」
「「デュエル!」」
ここは絶対に先手を取りたい!
「ドロー! 強欲な壺を発動! そしてモンスターをセット! カードを3枚伏せてターン終了。さぁどうぞ」
「私のターンねぇ。ドロー! ウフフ……」
ウットリ自分の手札を見つめるカミューラ。まさかと思うがもう引いたのか? いくらなんでも早すぎないか? なんか仕込んでるのか?
「やっぱりもったいないわね」
「ん? もったいない?」
「えぇ……あなたみたいなイイ男が幻魔の生贄になるなんて、重大な損失だわ」
カミューラの言葉は実質の幻魔の扉使用予告。場の空気が凍り付いた。
「いきなりくるのか!?」
「マズイ! テンシン!」
「……」
「ねぇ? あなた、私に対して永遠の愛を誓うなら、このカード、使わないでいてあげるわよ」
「……」
「あら? 大丈夫よ、負けて人形になっても死ぬわけじゃない。ずっと私がかわいがってあげる……」
「あのさぁ」
「なにかしら?」
「悪いけど、あんたは俺のタイプじゃない」
「んなっ!? このガキ……!」
「あんたの言いなりになるぐらいなら死んだほうがマシだろ?」
「よくも私に恥をかかせてくれたわね……! いいわ! もともとあなたは徹底的にマークするように言われていたし、もう容赦しない! お仕置きよ!」
いきなり口が裂けてえげつない顔になった。俺がマークされているというのはどういうことだろう。今回が1戦目のはずだが。
「まずは強欲な壺を発動! カードを2枚ドローォ! そしてまず始めはこれよ! 苦渋の選択! デッキから馬頭鬼2枚とヴァンパイア・ロード3枚を選択! さぁ選びなさい!」
おいおい……めちゃくちゃ本気じゃねぇか。
「馬頭鬼を選ぶ」
「なら残りは墓地へ送られますわ。さぁ、お待ちかね。世渡天真を地獄に送ってあげる! 手札から幻魔の扉を発動!」
「墓地を肥やしたのは蘇生効果を活かすためか!」
「テンシン!」
「当然通さない! リバースカード発動! マジックジャマ―! 手札を1枚捨てて無効!」
魔宮の賄賂は危なくて使えない。自分の手札1枚をコストにして無効にした。
「よし! まず幻魔の扉は防いだ!」
「もう人質をとることもできないぞ!」
「小賢しい! まぁいいわ。ここから本当のヴァンパイアのショーが始まるわよ! まずは馬頭鬼の効果でヴァンパイア・ロードを蘇生! さらにヴァンパイア・ロードを除外してヴァンパイア・ジェネシスを特殊召喚! さらにジェネシス・クライシスを発動! 効果でヴァンパイア・ジェネシスを手札に加える! さらにハリケーンを発動! 互いのフィールドのマジック・トラップカードを全て手札に戻させて頂きますわ」
こいつ、このターンで決める気か。カイザーと勝負した時ですらこんなに激しい攻めはしなかったはずだが?
「えげつないな。俺はリバースカードを発動! 和睦の使者! これでこのターンの戦闘破壊と戦闘ダメージを防がせてもらう」
「小癪な! まぁいいわ。次のターン存分に可愛がってあげる。そのためにもまずは私の可愛いヴァンパイアでフィールドを埋めておこうかしらね。さらにヴァンパイア・ジェネシスの効果を発動し龍骨鬼を捨ててヴァンパイア・ロードを蘇生、そのままヴァンパイア・ジェネシスを特殊召喚! さらに手札に戻したジェネシス・クライシスの効果を再び使い3枚目のヴァンパイア・ジェネシスを手札に加える!」
「おいおい、敵さんマジだぜ。とんでもないことやりやがった」
「亮の時の比じゃないわ。これがアンデットの恐ろしさ……」
「だがこのターンは和睦の効果でダメージはない。逆転の可能性はある」
三沢の言葉にカミューラは高笑いした。
「逆転? そんなもの不可能よ! この坊やのデッキはよーく知っているの。この子は私の赤目には気づいていたようだけど、残念ながら世渡天真の情報だけは別ルートで仕入れているのよ! オーホッホッホ!」
「赤目? なんだそりゃ?」
「十代、お前らはカミューラに監視されていたんだ。だからこいつは事前にこちらの手の内を知ることができた。俺はそれを見越してわざと別のデッキを見せていたってわけだ」
だんだんわかってきたな。カミューラは世渡天真のデッキをあらかじめ知っており、その対策をしていた。だから俺が名乗った時ダミーのデッキだったことに気づいたのか。
事の次第を理解し納得していると今度は万丈目の声だ。
「なんだと! 貴様、それをなぜ俺たちに言わない!?」
「お前らに伝えればそれすらも赤目によってカミューラの知るところとなりさらに厄介な方法にシフトしてしまうだけ。俺にはどうすることもできなかった。万丈目、恨むなら能天気に敵を待っていた己らの無能を恨め。カイザーやクロノスが負けたのは自分の責任だ。人のせいにするな」
「……クソッ!」
俺だって心苦しいとは思っているんだ。できる範囲のことはしてやった。差し伸べた手を先に振り払ったのはお前達の方だ。それを忘れるなよ。
「仲間割れなら後でやってもらっていいかしら? さらに2体目のヴァンパイア・ジェネシスの効果で闇より出でし絶望を墓地へ送りヴァンパイア・ロードを蘇生しヴァンパイア・ジェネシスを特殊召喚!」
「あわわわわ! 超強力なヴァンパイア・ジェネシスが1ターンで3体も並んでしまったのニャ!」
「しかも奴は馬頭鬼がまだ手札に残っている! これを倒してもまた立て直しが容易だ」
なぜかアンデットを使ってた三沢はよくわかっている。この展開力はアンデットとしても中々凄まじい。親父殿以上かもしれない。
「あとはカードを1枚セットしターン終了! オホホホホホ! さぁ! 逆転できるものならやって御覧なさい!」
カミュ 手札1枚 ヴァンパイア・ジェネシス×3 伏せ1枚 ジェネクラ
天真 手札3枚 セット1枚
「無理だ! 攻撃力3000のモンスターが3体も並ぶなんて有り得ないッス!」
「しかもジェネシス・クライシスの効果で毎ターンモンスターが補充され新たなモンスターが展開される。絶望的だな」
「ほう、この程度で絶望的なのか、万丈目?」
「何? キサマここからどうにかする方法があるとでもいうのか?」
俺が答える前にカミューラが釘を刺した。
「フフフ……言っておくけど、ご自慢のラヴァゴーレムじゃ3体のモンスターは同時に倒せないわよ?」
「よく知ってやがる。やはり……ユダが紛れ込んでいたか」
「……ユダ?」
ギャラリーには理解できるものはいないようだ。もちろん大徳寺のことだよ。悉く俺の邪魔ばかりする男だ。
「ドロー! 悪いけど敵のデッキを研究して対策するのはこっちも同じだ。卑怯とは言わせないぜ?」
「なんですって?」
「手札から傀儡虫の効果を発動! こいつは相手の場のアンデット族を1体操る効果を持っている。これであんたのモンスターを頂こう」
「なにぃぃ!? 対アンデット専用のカード! おのれぇ……かわいくないわね!」
アンデットとの戦い方はよーくわかっている。なぜか何度も対戦する機会もあったし。
「驚くのはまだ早い。2枚目の傀儡虫も発動! やっぱりお人形になって操られるのはアンデット族の方がお似合いのようだな。これで形勢逆転だ」
「1体じゃ飽き足らず2体も奪うつもり!? なんてガキなの!? くぅぅぅぅぅ!!!」
「さすがだわ! 簡単に状況をひっくり返した!」
「こんなのアリなのか!?」
一見悔しそうなカミューラ。けど大袈裟な仕草で芝居がかって見える。どうも真に迫る感じがない。まだ余裕があるやつのリアクションだ。
となるとどうにかする手段があるのか?
……なるほど、リバースカードか!
こいつの好んで使うカード、そして手札に温存された馬頭鬼……そうか、あれはあのカードか。
「下手な芝居はよせ。あんたの考えはお見通しだ」
「なんですって?」
「用心深いデュエリストだよ、お前は。あれだけモンスターを並べておきながらさらに保険をかけている。それは攻撃に反応するトラップカードだ」
「あら、どうしてそう言い切れるのかしら?」
「コウモリを使った事前調査、幻魔の扉による勝利、どれをとっても用意周到なその性格。何よりあんたの演技はウソっぽいんだよ。男を見るときの目つきと比べれば真への迫り方がまるで違う」
ペガサスヘアーの時と比較できるからなのかもしれないが女からの視線の変化は特によくわかる。明らかに目の色が違う。俺への視線が変わらないのはデュエルバカの女王様ぐらいだ。
「本当にかわいくない坊やだこと!」
「伏せているのは妖のレッドムーン」
「!!」
「ヴァンパイア・ジェネシスがとられても帰ってくることがわかっているような反応からしてミラーフォースのような破壊系ではない。そして手札に残されたアンデットモンスター。なら推理は簡単だ」
「どこまでもかわいくないガキね! たとえカードが知れたところでどうすることも……」
そのセリフを待ってたんだよ。ニヤリと笑って1枚のカードを掲げて見せた。
「なんのために3体のモンスターをそろえたか、見せてやるよ」
「まさか、生贄召喚!?」
「3体の生贄なんてそうそうあるものじゃ……」
「いや、たしかテンシンはあのカードを持っていたはず!」
明日香、負けたあとちゃんとカードの効果を調べたようだな。そうだ、それだ!
「3体のモンスターを生贄に……出でよ! 神獣王バルバロス!」
「バルバロスですって!?」
「効果発動! お前のフィールドのカードを全て破壊する!」
バリバリバリバリィィィィィンンン!!!
「くぅぅぅ!! だが次のターンには馬頭鬼の効果で……」
「次なんてねーよ! 生贄にしたクリッターの効果でリトル・ウィンガードを手札に加える! さらに閃光の双剣トライスを発動! 手札を1枚捨ててバルバロスに装備! 2回攻撃を可能とする!」
《閃光の双剣-トライス》
装備魔法
手札のカード1枚を墓地に送って装備する。
装備モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
装備モンスターはバトルフェイズ中に2回攻撃をする事ができる。
「2回攻撃!?」
「攻撃力は500下がるけどな。だが4000削るには十分だ! いけ! トルネード・シェイパー!」
「キィィィアァァァァ!!!」
これがヴァンパイアの断末魔か。恐ろしい声だ。
「やった! テンシンが勝った!」
「なんてやつだ。ここまで本気になったセブンスターズをワンターンで葬るとは」
「お兄さん! これで助かるよね?!」
「うぐぅぅぅ!!」
カミューラがうめき声をあげながら人形に変化した。しかし先に負けた2人に変化はない。呪いはまだ解けていない。
「どうして!? カミューラは倒したのに!?」
「おい、どういうことだ?」
人形をキツく掴んで問いかけると高笑いが返ってきた。
「ムダヨ! ハイシャノタマシイハエイエンニニンギョウニフウジラレル!」
「そんな!?」
「それじゃあカイザーは……」
「くそっ! 本当にこのままなのか?」
「ノーネ……」
いや、俺の知る筋書きではカミューラを倒せば戻ったはず。どうしてだ?
……そうか! 幻魔の扉か! カミューラは魂を幻魔にとられていない。ならこいつを消せば2人の魂は解放される。
「心配するな、2人を解放する方法なら見当がついている」
「なんだって? それは本当!?」
「もちろん。そいつらはカミューラの闇の力でそうなった。ならこいつを殺せば人形は蘇る可能性が高い」
「じゃあ、お前はこいつを殺すっていうのか!?」
「背に腹は代えられないだろう? こいつは敵だし殺しても問題はない。だがまぁ、もし他に方法があるなら考えなくもないが。どうなんだ、吸血鬼?」
「ぐぐぐ……なら私を解放しろ!」
「ダメだ! あいつらを解放するか、人形のまま死を選ぶか、2つに1つ。どのみちお前が死ねば2人は元に戻る。これ以上俺が譲歩する理由はない。元に戻すつもりがないならさっさと死んでもらおうか」
「クゥゥゥゥ!!! キサマ! ゼッタイニノロッテヤル!!」
その言葉と共に2人の姿が元に戻り、城が崩れ始めた。
「脱出だ!」
カミューラが闇の力を手放したようだ。これで完全勝利だな。
一応この時代で可能な最大限の布陣までブン回しました
ハリケーンを和睦で躱された時点で負けですね
闇の力云々の部分は推測で書いてます。