「待て! 十代と戦う前に俺とデュエルしろ」
「カイザー!」
「お前が? どうしてお前と戦わなければいけないんだ?」
さっき吹き飛ばしたはずだがまだ動けたのか。しぶといな。周りの奴らからもカイザーと同じく俺と敵対する意志を感じる。何か仕掛けてくるか?
「お前は言ったな、十代を倒せば世界は破滅。なら十代を戦わせる道理はないと。ならば今、この状況でも同じことが言えるんじゃないのか?」
そういうことか。十代と戦う前に自分らと戦えと言いたいんだな? 愚かだな。その行為が自殺にも等しい愚行であると教えてやろう。
「ククク……なるほどねぇ。いいだろう! じゃあまずはお前らを先に始末してやるとしよう。最初の相手は言い出しっぺのお前からだ。だけどせっかくだから幻魔の力を存分に使わせてもらおうか」
「何だと?」
「幻魔の力を解放せよ……さぁこい! 俺のデッキ!」
幻魔の力があればなんでもできる。そんな全能感に身を任せイメージしたデッキを具現化しようとすると本当にできてしまった。
昔は引き運が悪すぎていつも負けてばかりだったがこの世界ならドローするカードは自由自在。幻魔の力でより力を増した今の俺ならこれまで以上の運命力を発揮できるはず。
「さぁ、始めようか。闇のゲーム」
「望むところだ」
「「デュエル!!」」
世界の命運がかかっていることはカイザーも重々承知。その体に伝う緊張が手に取るようにわかる。土壇場での精神力はやはり十代には及ばないな。
「先攻は俺だ! ドロー! 手札からパワーボンド発動! 3体のサイバー・ドラゴンを融合! こい! サイバーエンド! パワーボンドの効果で攻撃力は8000だ! さらにサイバージラフを召喚し生贄に捧げ、このターンの俺へのダメージを0にする。最後にカードを1枚セットしてターン終了」
いきなり攻撃力8000のサイバーエンドか。幻魔の力を相当警戒しているようだ。なんせ奴らにとっては未知の力。身構えてしまうのも無理はない。
「勘違いするなよ? お前ごときに幻魔のカードを見せたりはしない。幻魔の力で直々にトドメを刺すのは十代! お前だけだ!」
「なんだって!?」
「あくまで手の内は見せないということか」
驚く十代と考察を深める三沢。そしてカイザーは当然俺のデッキに疑問を持つ。
「ならば今のお前のデッキは何だ?」
「安心しな。ちゃんと丸藤亮を倒すのにふさわしいデッキを用意してあるよ。シンのサイバー流使いにふさわしいのはどちらなのか、ここではっきりさせようぜ?」
「真のサイバー流だと?」
「ハッタリだ! サイバー流を使えるのは正当な後継者だけだぞ!」
丸藤兄弟は面白くないだろうよ。だが所詮これはカードゲーム。カードさえあれば誰でも使えるんだよ!
「ウソかどうかはその目で確かめな! 正しいサイバーエンドの使い方ってもんを見せてやる! 俺のターン! ドロー!」
「テンシン……何を企んでいるの?」
「あいつはこれまでラヴァゴーレムを中心としたデッキしか使ってなかった。そこにサイバー流のカードも混ぜるってことか? それともラヴァゴーレムは使わないのか?」
深まる謎に皆首をかしげる。お前らのようにカードを道具や手段として見れない人間には到底想像できないだろうよ。
こいつらのデッキはいわばカテゴリ統一のファンデッキ。1つの目的に特化した究極のデッキというものがどれほどのものかたっぷり教えてやろう。
「見ていればわかるさ、十代! まずは王立魔法図書館を召喚! そして魔法都市エンディミオンを発動! 図書館には魔力カウンターが1つ乗る」
「魔法使い!?」
「おいおい! ラヴァゴーレムもサイバーエンドも出てこないぞ! 奴の言うことはやはりハッタリだったのか?!」
「万丈目くんの言う通り影も形もない……でもテンシンがそんなつまらないウソを言うはずもない。何かあるんだわ……」
見当違いの会話に笑みを深めつつもしっかりデッキは回していく。まずは魔力カウンターを貯めていくことが大切だ。あとは俺のドロー次第。
「さらに魔力掌握を発動! 図書館にカウンターを1つ乗せデッキから同名カードを手札に加える! さらにマジックカードの発動によりそれぞれにカウンターが1つ。そして図書館の効果で自身のカウンターを3つ使い1枚カードをドロー! さて、そろそろ大嵐を発動しておこうか。丸藤亮は防御しかできない罠は使わないが念のためだ。場のマジック・トラップカードを全て破壊しておこう」
「失敗したな! フィールド魔法も破壊されるぞ!」
丸藤翔……兄貴とは大違いの劣等生。その発言はお勉強不足だな。
「ところがそうはならないんだなぁ。魔法都市はカウンターを1つ使い破壊を免れることができる。大嵐もマジックなのでカウンターが再び乗り差し引きゼロだ」
「くっ……」
「俺はチェーンしてリミッター解除を発動! サイバーエンドの攻撃力を16000にする!」
おぉ……なんてやつだ。しかもほぼ即座に発動を決意した。大したものだ。
「カイザー! リミッター解除にはデメリットが!」
「亮! 大丈夫なの!?」
当然リミッター解除のデメリットを知る連中からは心配する声が上がるがカイザーと呼ばれた天才がそれを理解していないはずがない。いいカンしてやがる。
「おバカな連中だ。カイザーはもちろん理解している。そしてその判断は正しい。さすがに鋭い勘をしている」
「えっ!? どういうことなの!?」
「このターンが勝負だと確信し、さらに攻撃力8000では足りないと考えた。しかも次のターン劣勢を切り返す自信と確信もあったのだ。だからためらわずに発動できた。並みのデュエリストなら宝の持ち腐れだっただろう」
いきなりのサーチ&ドロー。そしてこれから総攻撃を仕掛けますよと言わんばかりの大嵐。ちゃんと判断材料はある。そしてそれを見逃さなかった。
しかも当人はなおも涼しい表情だ。
「それは敗北宣言と思っていいのか?」
「フフフ……だがなカイザー、お前は確かに優れたデュエリストだが、それでも足りないんだよ。16000程度じゃ全く足りない」
「足りないだと!? まさかこのサイバーエンドを超えてくるというのか!?」
「それがお前の限界なら期待外れと言わざるを得ないな。さて、続けてトゥーンのもくじを発動!」
「トゥーンだと!?」
この世界じゃ会長さんしか持っていないカードだ。手に入れば是非ともトーラのデッキに入れてやりたいところだが入手は不可能と思っていい。
「あれはペガサス会長だけが持つと言われるトゥーンシリーズのカードナノーネ!」
「ここにきてトゥーンまで使うのか!?」
「やつのデッキはトゥーンまで使うことができるのか!?」
いちいち大袈裟な……。一応説明ぐらいはしてやろうか。
「トゥーンはあくまでカウンターを乗せるために使ったまでのこと。俺のデッキはあらゆるカードの中から好きなカードを使用できる。だから世界に1枚のカードだろうがこんな使い方も可能だ! もくじの効果で2枚目のトゥーンのもくじを手札に加える! 図書館の効果で1枚ドローし再びもくじを発動! そして3枚目を加えて発動、最後にトゥーンワールドを手札に加える。そして強欲な壺を発動しさらに2枚ドロー。図書館の効果でさらにドロー」
カイザー 手札0枚 サイバーエンド(16000)
テンシン 手札7枚 図書館 魔法都市(6)
「そうか! あいつマジックを連続で使って魔力カウンターを貯めるためだけにあんな使い方をしたのか! トゥーンカードをカウンター集めに使うなどまともな神経の奴の発想じゃないぞ」
万丈目の言葉を受けて三沢もトゥーンのもくじの使い方に苦言を呈した。
「なんて贅沢で罰当たりな使い方なんだ……」
「だけどトゥーンのもくじで一気にテンシンの手札が増えてしまったわ。カイザーにとっては悪夢のようなコンボね」
トゥーンのもくじにターン1制限がないのが悪い。今となっては黙認されている感もある。魔法使いデッキには必須カードだ。
「あんなに手札を貯めこんでいったい何のつもりだ?」
「結局何もできてないじゃないか!」
少々ギャラリーを待たせ過ぎたか。そろそろ俺のデッキがどんなコンセプトなのか教えてやろうじゃないか。
「ならばそろそろみせてやろうか。お待ちかねのサイバーエンドを」
「ここから!?」
「融合素材を集めていたのか?」
「いーや、召喚に必要なカードは1枚だけだ。俺は融合デッキのサイバーエンドを除外!」
「融合デッキのサイバーエンドをいきなり除外だと!? どういうことだ!?」
「見てな、これがサイバーエンドの罪深き姿、Sinサイバー・エンド・ドラゴン!」
「なんだこれは!? こんなサイバーエンド見たことがない!」
《Sinサイバー・エンド・ドラゴン》
特殊召喚・効果モンスター
星10/闇属性/機械族/攻4000/守2800
このカードは通常召喚できない。
EXデッキから「サイバー・エンド・ドラゴン」1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。
(1):「Sin」モンスターはフィールドに1体しか表側表示で存在できない。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、他の自分のモンスターは攻撃宣言できない。
(3):フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合にこのカードは破壊される。
「これは過去であり未来でもある時空から現れたカード。Sinと名の付くモンスターは対となるモンスターをデッキから除外して召喚される。そしてフィールド魔法がなくなればこのカードは破壊される」
「なるほど……そのために破壊されにくい魔法都市を用意したということか」
確かにSinモンスターは場持ちのいいフィールドと相性がいい。その中でも魔法都市を使ったのにはちゃんと理由がある。
「それだけじゃない。俺の本当の狙いはここからだ! 手札からリミッター解除を発動! これでサイバーエンドの攻撃力は2倍となる!」
「いきなり8000!?」
「だけど兄さんのサイバーエンドは16000! この程度じゃ負けないぞ!」
「さらに魔法石の採掘を発動! 手札のカード2枚、トゥーン・ワールドともう1枚をコストに墓地のリミッター解除を手札に加える」
もうわかったはず。このデッキの恐ろしさに悲鳴を上げて……
「貴重なトゥーンカードをこんな使い捨てにするやつ初めて見たぞ! 勿体ない!」
「これはトゥーンカードへの冒涜だな」
注目するところがズレてる……。まだわからないのか? ずいぶんと呑気な連中だ。
「カードは喜んでるさ、自分が1番輝ける使い方をされているんだからな! さぁ2回目のリミッター解除を発動! 攻撃力16000!! これで並んだァ!!」
「やばいぞ! あと一回でも使われたら……」
「お前ら忘れてないよな? このフィールドは飾りじゃないぞ? 魔法都市のカウンター6つを取り除き墓地の神聖魔道王エンディミオンを特殊召喚する!」
「なんだと!」
「魔法石の採掘……リミッター解除を回収しつつ神聖魔道王エンディミオンを墓地へ送り次への布石にもなっていたのか」
カイザーと三沢はやっと理解したか。もう何もできないけどな。指をくわえて見てな。
「この効果で特殊召喚したエンディミオンは墓地の魔法カードを回収することができる!」
「マンマミーヤ!?」
「ということはテンシンくんの選択するカードは……」
「当然リミッター解除! どうです校長? 俺の方がサイバー流の後継者にふさわしいのでは?」
「むぅ……」
「そんな、お兄さんが負けてしまう……」
「うんとは言わないですか。ならばもっと! もっとだ! 図書館の効果で1枚ドロー! そしてリミッター解除を発動! 攻撃力32000!! さらにワンダー・ワンドを発動! エンディミオンに装備! さらにこのカードとエンディミオンを墓地に送り2枚ドロー!」
《ワンダー・ワンド》
装備魔法
魔法使い族モンスターにのみ装備可能。
(1):装備モンスターの攻撃力は500アップする。
(2):装備モンスターとこのカードを自分フィールドから墓地へ送って発動できる。
自分はデッキから2枚ドローする。
天真 手札4枚 図書館2コ サイバーエンド(32000)魔法都市5コ
「まさかまだ攻撃力が上がるのか!?」
「もうやめて! 闇のゲームでこんな攻撃力のモンスターでバトルなんてしたら危険よ!」
「そいつは自ら志願してデュエルの場に上がった!! デュエリストなら勝負には死をも覚悟して臨んでいるはず。違うか?」
「その通りだな」
「亮!!」
「兄さん!!」
あーあ、言っちゃった。このサイバーエンドがどこまで攻撃力を上げれるかわかってるのかねぇ? 最後にこいつがどうなるのか実に楽しみだ。
「ニィ……2枚目の魔法石の採掘! 魔力掌握とエンディミオンを捨てて3枚目のリミッター解除を手札に加える!」
「しかも魔法都市にはこれで6つ目のカウンターが乗る! マズイぞ!」
「まずは図書館でドロー! そしてリミッター解除を発動! 攻撃力64000!!! さらにエンディミオンを特殊召喚! リミッター解除を回収し発動! 攻撃力128000!!!!」
「攻撃力が10万を超えた!?!?」
「アイツはいったい何をやっているんだ……?」
「さらに天使の施しィ! ドロー! 図書館でドロー! ワンダーワンド! エンディミオンを生贄に2枚ドロー!」
「また手札が4枚まで戻りやがった……いつまで続くんだ!?」
天真 手札4枚 図書館1コ 魔法都市4コ
「3枚目の魔法石の採掘! これでリミッター解除を回収し発動! フハハハハハ!! 攻撃力……256000!!!!」
「にじゅっ……」
「まだだ! これでカウンターが6つ! 出でよ! エンディミオン! そして回収! リミッター解除! 先に図書館の効果で1枚ドローしてと。さぁ……リミッター解除発動! これで攻撃力はいくつだ?」
天真 手札2枚 図書館1コ 魔法都市1コ
「くぅ……ひと思いに攻撃しろ!」
「おっと? まだだ! 魔法石の採掘を使い切ってもまだ終わりじゃない!! さらに3枚目のワンダーワンドでエンディミオンを生贄に2枚ドロー! ククク……悪いなぁカイザー。引いちまったぜ」
「まだマジックを回収できるカードがあるのか!?」
「鳳凰神の羽根! 手札を1枚捨ててリミッター解除をデッキの1番上に戻す!」
《鳳凰神の羽根》
通常魔法
手札を1枚捨て、
自分の墓地のカード1枚を選択して発動できる。
選択したカードをデッキの一番上に戻す。
天真 手札1枚 図書館3コ 魔法都市3コ
「その手があったか!」
「しかも奴の場の王立魔法図書館に3つ目のカウンターが乗ってしまった!」
「世渡天真……ここまでのデュエリストだったとは」
「地獄の扉が開く音が聞こえるなぁ? カイザー? 図書館の効果で1枚ドロー! これでリミッター解除が手に入った。フハハハハハ!! リミッター解除を発動! 攻撃力は……1024000だッッ!!!!! アハハハハハアッアハハハハッハハハハハハッハハハハハッハハハハアッハッハハハハハハハハハアアアアハハハアハハッハハ!!!」
全員が顔を青くしている。これは遊びではない。攻撃力の高さがプレイヤーの生死に直結する。カイザーはもちろん見ている奴らも生きた心地がしないだろうさ。
「兄さん!!」
「お願い! なんとか耐えて亮!」
「俺は……耐えてみせる!」
「何勘違いしているんだ?」
「…………まだ続くのか?」
カイザー、余裕がなくなってるぞ? 手足が震えている。
「成金ゴブリンを発動! 相手のライフを1000回復させ1枚ドロー!」
「そこまでしてドロー!?」
「さらに闇の誘惑! カードを2枚ドローした後闇属性モンスターを手札から除外する。闇属性モンスターがなければ手札を全て墓地へ送る」
「手札はその1枚だけ! 引けなければ終わりだ!」
「だが発動できたのでとりあえず魔法都市に6つ目のカウンターは乗せられる。それに今の俺は引けない気が全くしない。ドロー!」
「引くなっ!」
「もう終わって……」
……
「エンディミオンを除外!」
「そんな!?」
「墓地のエンディミオンが蘇りリミッター解除を回収! 図書館の効果で1枚ドロー! そして手札が3枚になったのでこのカードが使える! 無の煉獄を発動! カードを1枚ドロー! さらにリミッター解除を発動! 最後に2枚目の鳳凰神の羽根! リミッター解除をデッキに戻し図書館の効果で1枚ドロー! 正真正銘最後のリミッター解除を発動! 攻撃力4,096,000!!!」
「攻撃力……400万……もはや人間の所業ではない。ヤツは悪魔だ」
「待ってくれテンシン! デュエルを中止してくれ! 言う通り俺が戦うから!」
「ダメだ。これは罰でもあるんだ。お前が戦わなかった罰だよ」
「くっ……!」
天真 手札0枚 図書館1コ 魔法都市4コ Sinエンド4096000
攻撃力400万だって? ハハハ、こんな攻撃力はデッキを作った俺だって見たことがない。いったいどれだけの運命力があればここまでデッキが回るんだ? あと1枚鳳凰神の羽根は残っているがさすがに3枚目も使い切るのは現実的にはほぼ不可能だろうな。
「さぁバトルだ! 覚悟はいいか?」
「いつでもこい!」
「その意気やよし。Sinサイバーエンドの攻撃! Sinエターナルエヴォリューションバースト!!!」
LP 5000 → -4075000
「ダメージが400万だと!!?? バカげてる!!!」
「カイザー……カイザーァァァ!!!」
木霊するのは十代の悲しき叫びだけ。カイザーは声も出せずに散った。
まずは1人目。
さて、どこまで耐え忍ぶことができるかな、十代?
攻撃力400万のサイバーエンドだとぉ!?
しばらくデッキがハチャメチャになります。
幻魔の力に不可能はないのだ……