ジェネックスも最終盤を迎え残ったデュエリストはどれも強敵揃い。それでも私は戦い続けてメダルを増やしまくっていた。
「これで428枚。ブルーの3年といっても1年の私に負ける程度なのね」
「コツコツ貯めてきたメダルが……」
なによ、30枚ぐらいしかなかったじゃない。
さて、もうデュエリストは粗方狩りつくしたか。もう探し回っても効率が悪い。一度中央に行って途中経過を確かめましょうか。どうなってるか楽しみね。
「あっ! トーラさんだ! ヤッホー! まだ勝ち進んでる?」
「あんたはこの前の315……たす112枚の427枚! 私は今428枚になったわ! これで私が抜いたわね」
「ごめんね? ボク、あれからデュエルはしてないけど十代さんにメダルを託されて461枚なんだ」
「はぁ!? なによそれ!? っていうか十代リタイヤしたの!?」
テンシンに勝った実績のあるミラクルボーイが敗退。いよいよこの子が本命に近づいてきたわね。
「なるほど、生き残りが集まってきたか。ここで最後の決着をつけようというわけだな」
「亮様!!」
「あんたはヘルカイザー!」
あれが勝利に飢えたデュエルの鬼。壮絶なオーラが漂っている。
「さて、そろそろベスト4が決まったようだ。ここを決戦の舞台としよう」
「校長!」
あんたいつのまにいたの!? それに選手が3人しかいないわ! あと1人、それが私にとって最も大事。
「4人? ここには3人しかいないみたいだけど? 大本命がここにはいないよね」
仮面の少女も気づいたわね。まだあの男とテンシンがいない。まさかテンシンが負けた? 別に洗脳が解けたなら私が勝つ必要はないけど、私以外にそんなことできる人物がいるの?
「心配しなくていいトーラ。俺ならここだ」
ドキッ!
この声だけは聞き間違えるわけない! 振り返らなくてもわかる!
「テンシン……! やっぱりアンタは私が倒さないといけないようね。あの男……斎王琢磨はどうしたのよ?」
「あの方は多忙につきこの場には来られない」
テンシンの登場に体が震えた。やっとみつけたわ……待ちわびたわよ!
でも待ってたのは私だけじゃなかった。
「テンシン! やっと会えた!」
「ん? 誰だ、お前?」
「もうっ! この声でわかるでしょ! ボクだよ!」
あの子、テンシンと親しげだけど仲いいの? どういう関係?
「お前……早乙女レイか?」
「亮様! 覚えていてくれたんだね! そうだよ、ボクの正体は……1年前ここに編入した早乙女レイだ!」
いきなり仮面を外して正体を明かした。でも私はこの子を知らない。
だれ?
だいたいこいつどうみても小学生じゃないの? 1年にも2年にもこんなのいなかったし。まさかこの見た目で3年じゃないわよね?
「編入ではなく潜入の間違いだった気もするが……また恋にうつつを抜かしてここまで来たか」
「なんかリアクションが冷たいなぁ。あっと驚く場面だよ? テンシンさんは喜んでくれるよね?」
「……さぁ、お前みたいなやつのこと知らないな」
「えっ……」
ちょっと! その子めっちゃショック受けてるじゃない! そういえばその子はテンシンが洗脳されてること知らないんだ!
「レイ、そいつは今洗脳されていて記憶が曖昧だ。万丈目は大事なカードの記憶を失うほどだったらしい。そいつも記憶障害があっても不思議じゃない」
「記憶障害だって? 何を言ってるのかわからないなぁ」
当の本人は自覚なし。これはダメね。さっさと正気に戻さないと。
「諸君たち4名にはこれより2人ずつ戦ってもらいトーナメント形式で優勝者を決定する。これから戦う前にいくつか確認しておきたいことがある。まずはメダルの枚数を確認しよう。まずは世渡兄弟。兄と妹揃ってベスト4進出。妹のトーラは428枚! そして兄のテンシンは318枚!」
えっ!? どうやってこの短期間でそんな大量に増やしたの!? そんなに増やすにはランキング上位のデュエリストを倒すしかないけど……
「あっ!? 万丈目がいない! もしかしてテンシン、あんたが倒したの!?」
「万丈目? 光の結社を裏切った愚か者ならたしかに制裁を下したさ。ついでに斎王様に歯向かおうとしたエド・フェニックスも斎王様のお手を煩わさぬよう始末した」
「ほう、エドを倒したのか」
「エドにすら勝てないお前では話にならないだろうな」
「なんだとォ?」
いきなりヘルカイザーに喧嘩うってる!? テンシン怖すぎるわよ! 大会終わった後も遺恨が残りそうだけど大丈夫なの!?
「次はこの学園の卒業生でプロデュエリストのヘルカイザー亮、129枚」
地味にこの人も増やしてる。でもこの中だと一番少ないわね。とはいえメダルは実力と全く関係ないと思っていい。そういう意味では斎王がここに来なかったのはラッキーね。
「最後は現時点で最多の枚数を獲得したダークホース、外部からエントリーの恋する乙女こと早乙女レイちゃんだ」
「テンシン……ボクが絶対元に戻すからね!」
「あなたの出る幕じゃないわ。テンシンのことは私に任せておきなさい」
「もしかして……テンシンさんがこうなってるの知ってたの? それで……」
「アンタと戦うことになっても手加減しないからね」
「望むところ! どっちが勝っても絶対テンシンは助けようね!」
レイの言葉に深く頷いた。全く、アンタって本当に幸せ者ね、テンシン!
「だったら2人まとめて白く染め上げてやるさ。気絶したあの2人もそろそろ光の結社の一員としてめざめる頃だ」
テンシン、もう完全に悪役サイドね。最初から悪役だったみたいに様になってるけど本当はこんな人じゃないって私は知ってる! 絶対元に戻す!
「あとは各自に優勝したときに望むものをきいておこう。優勝者には私にできることならなんなりと望みをかなえよう」
「俺は望みなどない。ただ勝利を得ることができればそれでいい」
「俺は要求させてもらう。俺が勝った暁にはこの学園にホワイト寮を増やしてもらおう」
「ホワイト寮? んん……考えておきましょう」
ちょっとテンシン! なに言ってんのよ!? よく考えたら斎王の手駒が決勝まで勝ち上がってる状況ってかなりマズイ。というか斎王がここにこないのってテンシンが絶対負けないって思ってるからよね。
その驕り……私が咎めてやる!
「ボクはこのアカデミアに入学したい! できればまたテンシンさんとルームメイトになりたいんだ! お願いします!」
「ふむ、君はたしか手続きでは男子だったが本当の性別は女子だったね?」
「えへへ……ごめんなさい」
はぁ!? こいつなにしてんのよ!? 無茶苦茶じゃない! いや、この子の前例があったから私もルームメイトになれたの? だったらありがたいかもしれないけどさぁ。
「ルームメイトにはできないがブルー女子として女子寮に迎えることはできる。それでいいかな?」
「テンシンと同じ制服が着れるならもちろん嬉しいよ! それでいい!」
「よし。では最後に世渡トーラくんにも聞いておこう」
やっと私にもきた。優勝した後で校長に頼み込む予定だったけどこうしてご褒美を言える機会があったのは嬉しい誤算。お願い、私の願いを叶えて!
「私はブラックマジシャンとブラックマジシャン・ガールのカードがほしい! 用意できる?」
えぇーーー!!! と大勢の人がどよめいた。というかいつのまにかこんなにたくさんギャラリーが集まってたのね。
「いいでしょう。レプリカだが初代決闘王のデッキがある。それを進呈しよう」
「よっし!」
周りから羨む声がする。へへーん、あんたらにはチャンスはないのよ!
“ブラックカオスのやつ、上手くやったようね”
ん? 今誰かの声が? 誰?
「さぁこれから最終トーナメントを始めよう! まずは対戦カードだが、こちらでランダムに……」
「ちょっと待った! その組み分け、適当に決めたら面白くないでしょ?」
これはレイの声。いったいなんのつもり? あれは何か企んでる顔だわ。
「どうせならだれと戦うかはデュエルで決めようよ。4人同時でバトルロワイヤルなんてどうかな?」
どよめく観衆。いきなりとんでもないこと言い始めたわね。
「どういうことだね?」
「4人で戦って最初にライフがなくなった2人と生き残った2人がそれぞれ準決勝を戦うっていうのはどう? バトルシティトーナメントに倣ってね」
「それはおもしろい。対戦カードの決定にも戦略が求められるわけですね」
「だったら先攻はモンスターを出し合ってその強さによって決めるというのは? 提出したカードはデッキには戻せない。バトルシティトーナメントに倣うのであればそうすべきでしょう」
ヘルカイザー! ナイス! それだとテンシンはモンスターを出せない可能性が高い! デッキの変更がないかチェックもできる!
得意げに笑うヘルカイザーの表情からするとテンシンのことわかってて言ったみたいね。さっきの挑発の仕返しかしら。テンシンはどんな反応をみせる?
「いいでしょう。それじゃ校長、バトルロワイヤル、開始でいいですよね?」
「わかりました。では各自モンスターを提出してください」
よし! だすのはカオスマジシャンでいいわね。上級だけどあんまり使わないカードが無難でしょう。
全員選択が終わった。どう?
トーラ カオスマジシャン 2400
早乙女 ケルビム 2300
丸藤亮 ヘビーウエポン 500
白天真 アポピスの化神 ×
「テンシンくん!? モンスターを選ぶと言ったはずだが?」
「お言葉ですが校長、このデッキにはモンスターは入っていません」
「なんと!?」
信じられないという表情だがそれは周りにいる者も同じ。でも私はわかっていたことなので驚かない。これでモンスターがないことも確認できた。
「まぁこれはハンデみたいなものですよ。斎王様は世渡天真がモンスターカードを使うことを望んでおられない。あぁ、もちろんターンの順番は最後で結構。攻撃力0として扱ってもらえばいい。これぐらいはサービスしてあげないとね」
最後に一瞬だけこっちを見た。ねっとりとした視線。得物を見つけた蛇の眼差し。私を本気で倒すつもりだ。
ハンデなんてとんでもない。油断なんて微塵もできない!
順番は私から始まってレイ、ヘルカイザー、テンシンの順。1ターン目は攻撃できない。このデュエルはあくまで対戦相手を決めるだけだからあまり手の内を見せるわけにもいかない。落ち着いたデュエルをしながらテンシンに狙いを絞りましょう。
「私のターン、ドロー! 手札を1枚捨ててトリッキーを特殊召喚! さらにトリッキーを生贄に魔法の操り人形を生贄召喚する。カードを2枚セットしてターン終了」
もっと展開することはできた。でも最初のターンは様子見が無難。
そもそもこのルールでは勝つことが必ずしもプラスになるとは限らない。なぜなら対戦したい相手と自分が共に先にライフがなくなれば目的は果たせるから。
だから大事なのは各自が勝とうとしているか、それとも負けようとしているか、それを見極めること。そして自分に都合の悪い行動を取る相手を妨害すればいい。
なんでもかんでも敵に回す必要はないのよね。
「ボクのターンだね。ドローするよ。よし、まずはライトロード・マジシャンライラを召喚! さらに効果も発動! 自身を守備表示にして相手のマジックトラップを破壊する。トーラさん、あなたの右側の伏せカードを破壊するよ」
「いきなり!? 仕方ないか……」
伏せカードは魔のデッキ破壊ウイルス。狙いを決めた相手に妨害するにはウイルスコンボはうってつけ。でもまだ全員の動きを見れていない現状で使うのはリスクが大きい。黙って破壊されるしかない。
私とテンシンが負けにいく展開になったらテンシンの手札を破壊しつつ自分のフィールドを空にできて理想の動きができたんだけど上手くいかないわね。
「1枚セットしてターン終了だよ」
「俺のターン! ドロー! まずはサイバードラゴンを特殊召喚! さらにカードを2枚セットしてターン終了」
やっぱり最初は様子見か。ヘルカイザーも慎重に動いている。
テンシン、あなたはどうくる?
「くだらない」
「なんだと?」
ポツリとテンシンが放った言葉にヘルカイザーが反応した。
「くだらないと言ってるんだよ。お前ら全員大したことないなぁ」
いきなりの言葉に私達は思わず顔をしかめる。なんだっていうのよ。
「ボク達はこのデュエルの趣旨を理解した上で最善の行動を取っていると思うよ? テンシンさんだってもうわかってるんでしょ?」
「それがくだらないんだ。相手の出方を伺ってセコセコとライフを減らしたり削ったりするつもりなんだろう? 勝たなくてもいいなら最初は様子見でいい、なんてぬるい考え方さ」
「ならキサマは俺達とは違った戦略を持っているというのか?」
あるならやってみろ、といわんばかりのヘルカイザー。でも私にはわかる。こんなに自信満々のテンシンにはもう最後の結末が視えているはず。ということはもう決めるつもりなんだ。
このターンで勝負にくる!
「まずは成金ゴブリンを発動。回復するのは……お前だ、世渡トーラ」
「えっ? 私? あ、ありがとう」
いきなり回復? どういうつもり? 他の2人をこのターンでライフゼロにするってこと? たしかに私を倒してから自分のライフをゼロにするより他2人を倒す方が手っ取り早いかもしれない。
「さらに天使の施しを発動。そして再び成金ゴブリンを発動。さらに3枚目の成金ゴブリン。これもトーラを回復させる。次はチキンレースを発動。ライフを1000支払いトーラのライフを1000回復させる」
「また? いいの?」
「ズルーイ! こんなのずるいよ! 身内びいきだ!」
「大口を叩いてすることが妹のライフ増強か?」
2人の言葉に対してはクツクツと笑ってとりあわなかった。
「さらにテラフォーミングで2枚目のチキンレースをもってきて発動、再びトーラに回復してもらう。カードを2枚セットしてターン終了」
なにこれ? 倒さないの? 私のとりこし苦労? いや、そんなわけはない。テンシンには何か狙いが……
「とりあえず私のターンね、ドロー!」
「まだわからないか? ならさっさと終わらせよう。リバースカードオープン、自爆スイッチ!」
「自爆スイッチ!? まさか狙いは私!?」
周囲の顔色が変わる。ここにきてテンシンの狙いが判明した。ずっと私をサポートしていたのではなく、むしろ私こそが標的だったんだ。
「くだらない読みあいなんて必要ない。圧倒的な力で自分の未来を切り開くのが本当に勝つべきデュエリストの姿だろう?」
「世渡天真、自分の妹に手をかけるようになるとは、堕ちたな」
「言ってなよ。お前もすぐに地獄送りにしてやるさ! その名の通りにね、ヘルカイザー!」
「ちょっと! まだデュエルは終わってないよ! ボクが持ち掛けたルールだからね、当然こういうことも想定してるよ! カウンタートラップ発動! 盗賊の7つ道具!」
上手い! ライフを減らしながら敵の妨害ができる。この状況ならテンシンをゼロにして自分も負ければテンシンと戦える。やっぱりレイもテンシンと戦いたいようね。
「くだらない。カウンタートラップ発動、神の宣告! これでライフを半分にして無効」
「げ!? そんなカードまで使うの!? テンシンさん完全にこのデュエル専用の構築じゃないのさ!? どういうこと!?」
たしかに。神の宣告はこのルールにとてもマッチしている。特に自爆スイッチとは相性抜群だ。どうしてこんなに準備がいいの? このルールはそもそもレイちゃんがもちかけたわけだし、レイちゃんとグルというのは考えにくい。あの二人は目的が食い違っているのだから。
「自爆スイッチはこの大会では散々苦しめられたからね。みんなこれ使って俺とのデュエルを引き分けにするからメダルが増えない増えない。でもおかげで自爆スイッチを自分も用意してこうやって利用できたのだから感謝しないとね」
やられたから自分も使ったってこと? でもテンシンが自爆スイッチを使う理由なんて普通に考えればないと思う。やっぱりこのデュエルを予見していたとしか思えない。どういうことかわかんないわね。
「ともあれ勝負は決まりました。思わぬ幕引きでしたがテンシン、トーラの2名がライフポイントがゼロ。よって対戦カードはテンシンvsトーラ、そしてヘルカイザーvsレイとします」
ずいぶん引っ掻き回されたけど結果的には私の思惑通り。テンシンが他のデュエリストを白く染める前に私が絶対に倒す!
もう私は恐れない!
テンシンとのデュエル……全力を尽くす!
自爆スイッチ万能説
こんなに頻繁に使われるのは珍しいでしょうね
カイザーVSレイは省略するつもりでしたが
レイがヒロイン扱いされてるのを感じて書くことを検討中です