ヘルカイザーとレイの勝負も決着がついたみたいね。
「勝者! 恋する乙女こと、早乙女レイ!」
「レイ? あのヘルカイザーが負けるなんて」
あの子本当に強いわね。ここで気を抜いちゃダメだ。あと1戦、全力で臨む!
ドゴォォォッォォォッォォ!!!
突然とてつもない地響きが起きた。何事?
どうやらソーラが暴走しているらしい。かなり近くに攻撃しているみたい。ここも危ない!
校長の指示で大会は中断、みんな急いでアカデミアの地下施設に避難した。
「テンシン、起きて!」
「……」
もう! こんなときに何眠りこけてるのよ! しょうがないわね!
黒幕の見当はついてる! こんなことするのはあいつしかいない!
テンシンが戦えない今、斎王琢磨は私がぶったおす!!
「混黒ちゃん!」
「お呼びですか?」
「斎王琢磨を探して! ぶっ潰すわよ!」
「こちらです」
ホワイト寮の中か。やっぱりここに潜んでいたのね。
地下にいくとそこには斎王琢磨だけでなく十代達もいた。
「トーラ!?」
素っ頓狂な声出して、そんなに驚かなくてもいいでしょ?
……って十代は以前の私しか知らないし仕方ないか。
「あんた達ばっかりに任せっきりで悪かったわね。でもギリギリセーフでしょ?」
ヒーローは遅れてやってくる。まぁ私はヒロインだけどね!
「世渡トーラだと? テンシンはどうしたァ?」
「私のおにぃちゃんならぶったおしてやったわよ? さすがにアンタも予想外でしょ?」
案の定うろたえる斎王。十代達も驚いている。
「これで光の結社は事実上の壊滅。敵の正体も明らかになった」
エドは一体何をいってるの? 敵の正体? 敵は最初から斎王でしょ?
「それは最初からわかってたでしょ? この斎王が黒幕なのよね?」
「斎王は操られている」
「破滅の光の意志にな」
エドと十代息ぴったりね。破滅の光とかよくわかんないけどこっちも色々と面倒な展開になってるようね。
「要約すると、あとは目の前にいるあいつを倒せば万事解決ってことに変わりはないんでしょ? だったら手っ取り早くブッ倒してやるわ」
「抜かせ! 貴様らではこの私に勝つことは不可能! ありえないのだよ! 現にそこで倒れている十代は何もできずに敗北した。我が力は今ッ! 頂点に達しつつある!」
十代が負けたってことはやっぱりテンシンが負けた時みたいにターンをスキップするインチキカードを使ったのね。
「なら今度は私が相手よ」
「お前は一度この私のデュエルを見ていたな。ならば理解できるはずだ! このデッキの無敵の力を!」
「それを言うならテンシンが私に負けることだって考えられなかったはずでしょう? 私にはもう不可能はないのよ」
ここで初めて斎王の表情に陰りが見えた。
「たしかにテンシンを倒した時点でお前の力は侮れないものがある。だが所詮あいつはただの保険! ソーラが手に入った今、もはや光の結社に拘る理由はない! 奇しくも貴様がテンシンを倒したおかげで我が障害は除かれた。さらに何の力も持たないお前ならデュエルをしてやる必要すらない」
「なんの力もないですって? だったらこれでどう? 混黒ちゃん! 滅びの呪文よ!」
バシッ
「ハァッ!!」
混黒ちゃんの杖先から滅びの呪文が炸裂! 不意を突かれた斎王は避けきれず防御するのが精一杯だった。
「ぐおっ!? 精霊が実体化しただと!?」
「さぁ、どうするの? このままじっくりお料理してあげましょうか?」
みんなお目々まんまるね。私が精霊の力を持ってるなんてびっくりでしょ? 最初は少し会話する程度のことしかできなかったけど、ジェネックス最終盤に突入して急激に精霊の力が増すのが私でも感じられた。
原因はわからないけどね。
「キサマ、どうやって精霊の力を……仕方あるまい! より確実な勝利のためにはやむを得ん! よかろう! デュエルだ!」
「そうこなくっちゃね!」
「「デュエル!!」」
「私のターン! まずは手札を4枚セット!」
「……?」
いきなり4伏せ? 何が狙い?
「ラバーズを召喚!」
「生贄召喚への布石ね」
「当然正位置ィィ!!」
召喚権は使った。このターンは凌いだ?
「もう終わり?」
「世渡トーラ! この私に勝負を挑んだことを後悔するがいい! マジックカード発動! 手札交換! これでキサマの手札を奪い我が勝利を確実のものとする!」
「なるほどね……全部セットしたのは手札を減らすためだったのね」
「さぁ、手札を渡したまえ」
魔法都市
魔力掌握
マジブラ
闇デッキ
魔デッキ
「ずいぶんとしけた手札だ。どいつもこいつも……キサマら兄妹はよほど運命の女神から嫌われていると見える!」
「……」
アンタはそうやって笑ってなさい? このターンさえ凌げば……
「ならばリバースカードオープン! 手札抹殺! これでカードを総交換する」
「手札抹殺をそんな使い方で……」
テンシンのときとは違った使い方ね。これで斎王に新たに5枚のカードを引かせてしまう。
「ハッハー!! やはり我が運命力は満ちている! 手札から二重召喚を発動! これで生贄召喚の準備が整った!」
「……!」
「出でよ、ザ・ワールド! さらに時の女神の悪戯を発動! バトルフェイズだ、小娘!」
「ぐっ……!」
今私には1枚のカードもない!
「オーバーカタストロフ!」
LP 4000 → 0900
「キャアァァァ!!」
「さらにカードを1枚セットしてターン終了!」
斎王 手札1枚 世界 伏せ4枚 LP 4000
トーラ 手札0枚 LP 0900
本来なら相手のカードを使ってさらに展開してトドメのはずだったんでしょうけど、私の運命力ってやつが1枚上手だったようね。
私達兄妹が勝利の女神に嫌われてるですって?
ハッ! ちゃんちゃらおかしいわ!
「フフフ……」
「はぁん? キサマ、何を笑っている! 己の状況に絶望しておかしくなったか?」
「嬉しいのよ、やっとアンタの憎たらしい顔に敗北を刻んでやれるから」
「なにィ? ここからキサマごときに何が……」
「アンタは私を仕留め損ねた! この1ターンが命取り! もうアンタには永久にターンは回さない! さぁ、引くわよ! 私のターン……ドロォォーー!!」
「笑止! たかが1枚で何ができる?」
今の私には1枚あれば十分。私のこの手には勝つために必要なカードが吸い寄せられてくる!
私は絶対にコイツに勝つ!
さぁ、ここから始めるわよ? 私の独壇場!!
「1枚のカードには無限の可能性……可能性がある限り私は決して諦めない! マジックカード発動! 命削りの宝札! カードを5枚ドロー!」
「なにっ!?」
「なんだあのカード?」
「十代、キサマ知らないのか!? あれはプロの中でも限られたデュエリストしか持っていない幻のレアカード!! 僕だって持っていないんだ。ただの学生が使えば当然驚く」
そんなにすごいカードだったんだ。ありがと、かあさん!
「さぁ、暴れるわよ? まずは王立図書館を守備表示! さらにテラフォーミングで魔法都市を手札に! そして発動! おろかな埋葬でエンディミオンを墓地へ送る! 図書館の効果で1枚ドロー!」
「ドローなどさせん! リバースカードオープン! 天罰! おもいあがった小娘に天誅を下す! 手札を1枚捨てて効果を無効にし、破壊する!」
《天罰》
カウンター罠
手札を1枚捨てて発動する。
効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。
「あらら、やってくれるわね。魔力カウンターはコストとして消費しちゃったか」
「キサマはドローをそのモンスターに頼っている! 序盤で破壊されたのは致命的だったな!」
「そうでもないわ。ドローする方法なんていくらでもある! 魔力掌握! 魔法都市にカウンターを載せる! さらに強欲な壺! 2枚ドロー! そして闇の誘惑! 2枚ドローして1枚闇属性モンスターを除外!」
「なんという引きの強さ……何枚ドローするつもりだ?」
「へへっ……それがあいつの強さだからな」
プロの人まで感心してるけど、あたしの本気はここからよ?
何枚でもドローして、斎王のカードを根こそぎ剥がしてやる!
「……そのカード、感じるぞ! 精霊の力!」
感心する十代達とは違い斎王は除外した私のモンスターに特別な力を感じているようね。この男の精霊を感じる力、どうやら本物ね。
「あら、気づいたの? そうよ! とくと拝みなさい! 私の最強の相棒よ! 手札からD・D・Rを発動! 出てきて! 混黒ちゃん!」
「お任せください」
「混黒ちゃんの効果で私は命削りの宝札を回収する!」
「忌々しい精霊どもめ! そうはさせん! トラップカード、転生の予言を発動! これこそが貴様の敗北の未来を予言するカードだ! その効果によりお前の墓地の命削りとエンディミオンをデッキに戻す!」
「墓地を戻すですって!? ふーん、私への対策はバッチリってこと? 警戒してもらえてるようで嬉しい限りね」
「自惚れるな! キサマなぞ、路上の小石も同然! モンスターの使えぬテンシンを倒した程度でずいぶん思い上がってしまったようだなぁ?」
「いってくれるじゃない」
《転生の予言》
通常罠
(1):お互いの墓地のカードを合計2枚対象として発動できる。
そのカードを持ち主のデッキに戻す。
結構無効にされちゃったわね。的確に私のイヤなところを妨害してくる。
でも勝負が長引くほど斎王のターンスキップコンボの餌食になる可能性は高くなってしまう。
だからなんとしてもこのターンで決める!
「これが最後の手札! 天使の施しを発動! さぁ、これはいいのかしら?」
「チッ! まだそんなカードを!」
「どうやら無効にはできないようね! だったら遠慮なく3枚ドローして2枚捨てる!」
「……」
引いてきたカードを見て思わず口角がつりあがってしまった。
「あたしって、本当に最強かもしれないわ」
「トーラ、それってどういう……」
「まさか、また引いたのか!?」
十代はわかってないけどプロのエドフェニックスは気づいたわね。そうよ! 私は斎王を倒すまで何度でも命を削る!
「命削りの宝札を発動!」
「くぅっ!? またしても!!」
私が5枚カードを引くのを忌々し気に眺める斎王。いい気味だわ!
これでもうアンタにターンが回ることはない!!
「今、魔法都市には8つのカウンターが貯まっている!」
「チィ……エンディミオンまでも、手札に!」
「いいえ、私は墓地からエンディミオンを特殊召喚! その効果で命削りを手札に加える!」
「墓地だと!? キサマ、天使の施しで命削りのみならず、エンディミオンまで引き直したというのか! バカな……!!」
「アンタが言うにはアタシらは運命の女神に嫌われてたらしいけど、ずいぶんと気まぐれな神様もいたものね?」
「キサマァ……負ければタダで済むとは思うなよ?」
あらあら、斎王さん顔が真っ赤っ赤ね。
「なんてことだ。世渡トーラは最初のターン、手札交換により全ての手札を失っていた。敗色濃厚と言ってもいい状況から、あっという間に優勢と言っていいところまで立て直した。あの子は本当に何者なんだ?」
「あの兄貴にしてこの妹あり、だな」
なんかエドや十代からほめられると照れちゃうわね。まぁ悪い気はしないけど。
私だってテンシンにおんぶにだっこじゃいられない。いつかは絶対に追い越してやるんだから!
「ただでは終わらん! エンディミオンは使いまわさせん! 奈落の落とし穴を発動! デッキがダメなら除外するまで!」
今度は除外か……けっこう面倒くさいわね。でも命削りは手札に入った。
あともう少しで斎王を倒せる!
「たしかに除外されたのは痛いけど、ようやくアンタの伏せカードが残り1枚になったわね! ここでサイクロンを発動! これでトドメよ! あんたの最後の伏せカードを破壊する!」
これで私の勝ち!
「リバースカードオープン! 和睦! クククク……ハハハハァァーー!! これでこのターン! 我が身は安泰というわけだ!」
ぐっ……! 一瞬引きつりそうになる顔をデュエリストとしての本能で必死に留めた。
「関係ないわ! 手札を1枚捨ててトリッキーを特殊召喚! 仕上げのディメンションマジックも発動よ! これでトリッキーを生贄に魔法の操り人形を特殊召喚! ザ・ワールドを破壊! そして再び命削りの宝札を発動!」
「それが最後の5枚というわけだな?」
よくわかってるわね。混黒ちゃん、エンディミオン、どっちも使い切ってしまった。もう私には回収手段はない。こんなことなら魔法石の採掘とかもデッキに入れておいた方が良かったわね。
「えぇ、これで十分よ! 死者蘇生でカオスマジシャンを特殊召喚! カードを3枚セットしてターン終了」
デッキ破壊ウイルスを最初に持っていかれたのが地味に痛いけど、これで盤石の布陣はできた。私の勝ちは揺るがない!
斎王 手札0枚
トーラ 手札1枚 混黒 魔法人形 カオスマジシャン 伏せ3枚 魔法都市
そう、今斎王の手札も、フィールドも、一切カードは残っていない。あの男にターンを明け渡すことになったのは痛恨だけど、ここから逆転することなんて不可能だわ。
「ククク……」
「あら? いよいよ自分の敗北を予知しちゃっておかしくなったのかしら?」
「甘いなァ! 世渡トーラァァ!! もうターンは渡さないのではなかったのかァ?」
「うっさいわね……手札もフィールドもすっからかんでいきがってんじゃないわよ!」
だけどこの男のおぞましい笑い声を聞くとただの空元気とは思えない。
状況は圧倒的に有利なのに、どうしてこうも空気が重苦しいの?
「高まる……高まるぞ! 我が運命力! 我こそが宇宙最強! キサマがどれほど策を講じたところで、世の摂理を曲げることなどできん!」
「摂理?」
「破滅の光たる我こそが、この世の法! 秩序! 摂理ィィィ!! 全ては我の匙加減1つで決まる! これからキサマには本当の恐怖というものを味あわせてやろう! この先、キサマにターンが回ることは永遠にィィ、永久にィィィ、ありはしないぃぃぃぃ!!!」
なんなのよコイツ! こんなの正気じゃない! それにこの禍々しいオーラ……本当にこいつが宇宙最強だっていうの?
「ドロォォーー!! 強欲な壺を発動! さらにマジックカード、カップ・オブ・エース発動! 我が運命力は今頂点を極めた! 全ての理は我が意に沿う! 当然私が2枚ドロォォーー!!」
「なんですって!?」
「!! へぁぁ……」
まだそんなインチキカードを隠し持ってたわけ!? 往生際が悪すぎる!
「こっちだって黙ってみてないわ! 闇次元の解放を発動! エンディミオンを特殊召喚!」
「なんのマネだ? すでにそのデッキにデッキ破壊ウイルスはあるまい? あれば私がドローした直後に使っているはず」
フン、よく気付いたわね。
今斎王の表情に危険な匂いがした。きっと一気にしかけてくる。モンスターは先に展開しておかないと意味がない。
「ライフを800支払い早すぎた埋葬を発動! これでザ・ワールドは復活する! さらにハリケーンを発動! これで目障りなカードを全て手札に戻す!」
LP 4000 → 3200
「破壊じゃないのもタチが悪いわね……なら神秘の中華鍋! これでエンディミオンを生贄にしてライフを2700回復。さらにリビングデッドの呼び声! 墓地のディフェンダーを蘇生! そしてリビングデッドによる自壊はディフェンダーの効果で無効にする!」
魔力カウンターはフィールドで肩代わりできる。
LP 900 → 3600
これでライフも逆転して安全圏に戻った。モンスターも並べた。闇次元とリビデは手札に戻るから次のターンに使える。被害はほとんどない。むしろ恵みのハリケーン。
やれることは全部できた。これで大丈夫よ。
「ムダムダムダムダァァ!! そんな小細工など我が力の前では無力! 再び早すぎた埋葬を発動! アルカナフォース・ワン・マジシャンを特殊召喚! 正位置の効果を得る! さらにライフを800支払い洗脳ブレインコントロール! これでキサマの精霊は私のものだ!」
「ぐあああぁぁぁ!!」
「混黒ちゃん!?」
LP 3200 → 2400 → 1600
あいつ! 私の混黒ちゃんをよくも! しかもバンバンライフコスト使ってもう1600しか残ってないじゃない! ハリケーンで私の手札も増やしちゃってるし、もっと後先考えて……
そこまで考えて脳裏に最悪のシナリオが浮かんだ。
もう、斎王は次のターンのことを考えていない……
「さぁ、バトルだ! 混沌の黒魔術師で魔法の操り人形を、ザ・ワールドでカオスマジシャンを、攻撃力が2200に上がったマジシャンでディフェンダーを攻撃!」
LP 3600 → 1500
あっというまに私のフィールドが空っぽに。なんてことなの……
「そして永遠に時は止まる! これが世界! これがザ・ワールド! ウリィィィィィィィィィ―――ッ」
「くるっ!」
「混沌の黒魔術師とマジシャンを生贄に捧げ……ザ・ワールドの恐るべき特殊能力を発動! 世渡トーラァァ! キサマのターンをスキップするゥゥ! さァ!! 時よ止まれェェ!! 再び私のターン! ドロー! さぁ、これで終わりだ! やはりお前では役不足だなァ! オーバーカタストロフ!」
「往生際の悪さだったらあたしだって負けないわよ! 手札のクリボーの効果で戦闘ダメージを無効!」
「何ィ!?」
止めた! これで次のターンさえ回ってくれば私には潤沢な手札がある。エンディミオンは墓地にあるし、闇次元の解放でもう一度混黒ちゃんを呼び戻すこともできる! 逆に斎王はもうカードを使い切っている! あとは物量差でゴリ押せる!
クリボーは魔法使いとは何のシナジーもないけど、今の私なら必要なときに必要なカードを引く自信があった。だからお守り代わりに入れてたんだけど、本当に役に立つなんてね。私の悪運も捨てたもんじゃないわ!
ここから私の華麗な逆転劇が始まるのよ!
「へぁぁ……」
「!! なによ、あんた! もう終わりでしょ? さっさと進めてもらえる?」
「おやおや? まだ自分のターンが回ってくるなどというおめでたい思考を続けていたとは、愚かだなぁ、世渡トーラ」
「……バカ言わないで。あんたにはもう今ドローしてきたその1枚しか残ってない。召喚しなかったんだからモンスターでもない。もう何もできることなんて……」
私が言い終わる前に斎王が言い放った言葉は、私の心の奥に眠っていたトラウマを深々と抉り出した。
「お前の兄も、そうやって倒れたなぁ? 世渡トーラァ?」
―――くひひひひ!!! 愚かだなァテンシン! キサマにはもうターンは回ってこないというのに何を考えている?―――
―――バカな……!―――
「な……にを……いって……」
「覚えているだろう? お前の兄、世渡天真の最後を?」
ありえないわ。だって、あのカードは、最初のターンに、もう……
「速攻魔法発動! 時の女神の悪戯ァァ!!」
一瞬で手足の感覚がなくなった。
目の前が真っ暗になるって、こんな感覚なんだ。
なぜかもう、目の前のデュエルすら他人事のようで、傍で誰かが叫ぶ声も、なにもかも意識の外に消えていった。
「あ……あぁ……」
私、負けたんだ……
「私の前ではいかなるデュエリストも無力! 永遠に止まった時の中で敗北するがいい! オーバーカタストロフ!」
「あっ……」
「終わりだ! キサマの魂は頂いていく!」
力が抜けていく。もう立てない……
「トーラ!」
「世渡トーラ!!」
あぁ、声が遠のいていく……
「ダメです! ここであなたが倒れてはこれまでの努力が無に帰す! 耐えてください!」
あぁ……暖かい。満たされる……
あなたは、混黒ちゃん?
「あっ……あぐっ……」
「トーラ! 良かった! まだ意識はある!」
「心まで破滅の光の手には堕ちなかったか!」
十代? エド?
そうよ、そうだわ! 私はいったい何を……
ここで気絶してはダメ。ここで私が倒れたら、誰がこの世界を守るの? さっきは混黒ちゃんに助けられた。ショックと斎王の力で敵の手に堕ちかけていたけど、ギリギリ意識は繋ぎとめた。
しかし、それはさらなる絶望の引き金でしかなかった。
「忌々しきは精霊の力。我が力を受けても精神は掌中にできぬか。だがこちらにはキサマからデュエル中に奪ってやった精霊のカードがある。これさえ消してしまえばお前はもう脅威ではない」
斎王の言葉の意味を理解したとき、自分の顔が本当に真っ青になるのがわかった。
「ダメッ……それはテンシンから貰った大事なカード!!」
「なんだって!? あれはテンシンのカードだったのか!」
「混黒ちゃんはテンシンの……命削りはかあさんの……」
「家族の形見のようなカードだったわけか」
本当に大事なカードなのに、また私は奪われる! 氷の女王を失ったときもこうだった。大事なカードがなくなっちゃう。
カードはデュエリストの命であり、誇りなのよ! それをまた、目の前で破り捨てられるなんて、私はデュエリスト失格だ……
どうすればいいの?
いや、どうすればよかったの?
たすけてよ……テンシン!
当たり前のように実質禁止カードを複数積みする系ボスです。
最初に手札交換でデッキ破壊を持っていったのが地味にファインプレー。
あれがないと制圧札が他にありません。
斎王は最後のターン手札3枚から連続時止めを実現(バック除去付き)
しかも、そもそも先攻1ターン目で連続時止めをしていない時点でまだ上限じゃないという恐ろしさ。
だ、誰が勝てるんだ……(棒)
まぁ先攻とれてたらトーラでも勝ててたんですけどね