気づいたらデュエルアカデミア   作:りんごうさぎ

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思い出巡り

 

 いったいどれほど泳いだか。海は低地になっている全域に広がっていた。

 

 泳いでも泳いでも終わりが見えない。この範囲にこの持続時間。フィールド魔法がこんなに強力だとは思わなかった。これなら1枚ぐらい持ってきておけばよかった。

 

 このまま泳いで無防備な姿を晒すのは危険だ。この先には踏切があり、それを超えれば低地が終わり街に入る。このまま敵の的になることを避けるため、一度わき道に逸れることにした。

 

 わき道というのは一本道の途中にある。山側へ上っていくルートで、舗装はされていない、獣道のような道だ。この道の先にはさっき高架下をくぐった線路が続いていて、線路の向こう側に墓がある。この線路を進めば元の道の先にある踏切に合流する。線路は高い位置にあるから海には浸かっていなかった。こちらの方が安全だろう。

 

 墓へ行くには踏切のないまま線路を跨ぐことになる。元の世界じゃ轢かれないように気をつけないといけなかったが、この世界じゃ列車を動かす人間はいないだろうからいきなり轢かれることもないだろうし、仮に列車がくれば便乗してやるだけのこと。むしろ好都合だ。

 

 昔は毎年ここに墓参りに来ていたものだ。少しぐらい様子を見ていくか。

 

 ゆっくり見て回っているうちに記憶が段々と蘇ってくる。あっちは戦争で戦死したご先祖で、こっちは遠い親戚の……。

 

 いつも必ず参る曾祖母の墓はここか。自分の誕生日と命日が同じなんだよな……。

 

 ちょっぴりセンチメンタルな気分に浸っていると、周囲の空気が変わり始めた。

 

 具体的に何が、とは言えないが、何か得体のしれない者の気配を感じる。

 

 普段のデッキにチェンジしてリバースカードを2枚セットし、モンスターカードを2枚左手に挟み込んだ。モンスターはピラミッド・タートルとグリズリー・マザーだ。

 

 メインデッキは親父殿にカードを分けてもらってアンデット族を追加している。

 

 戦闘準備はするが、戦わずに済むならそれに越したことはない。ゆっくりと線路の方へ後退した。

 

 1歩、2歩……あと少し。

 

「ウガァァァ!!」

「ウラァァァ!!」

 

 やっぱりタダでは返してくれないようだ。ドラゴン・ゾンビにマーダーサーカス・ゾンビ、戦死したご先祖の墓からは鎧武者ゾンビか。

 

 このモンスター共はユベルの仕業だよなぁ? いい趣味してるじゃねぇか。

 

 人様の墓を好き放題荒らしやがって、許さねぇからな。

 

 とはいえステータスでは遠く及ばない。ピラミッド・タートルは守備表示で自分の傍に置き、グリズリーマザーにマーダーサーカスゾンビを攻撃させた。

 

 戦闘開始だ!

 

 こっちの攻撃はしっかり通ったが、返しの攻撃でドラゴン・ゾンビにグリズリーマザーが破壊された。そのとき、自分自身にも衝撃が走り、ライフが減っていた。

 

 LP 4000 → 3800

 

 やはりライフは確実に減っていく。ここでそれを確かめられてよかった。できれば一定時間経つと4000にリセット……となればいいんだが、どうだろうな?

 

「グリズリーマザーの効果で2体目のグリズリーマザーを特殊召喚」

「キィィィエエエエ!!」

 

 それがどうした? と言わんばかりに鎧武者ゾンビが襲い掛かってきた。

 

「ターン制なんてねぇからな。援護させてもらう! ドロー! 攻撃封じを発動! アンデットなんざ、寝かしてしまえば守備力はゼロなのさ。グリズリーマザー、返り討ちにしろ!」

 

 鎧武者ゾンビも破壊。残りはドラゴン・ゾンビのみ。

 

 ゴゴゴゴ……

 

 近くの六地蔵のところから新手が出てきた。あれはメデューサの亡霊か?

 

「キャーーーハハハハッッ! 融合!」

 

 メデューサは叫び声のようなセリフを吐きながら融合を発動した! フィッシャーマンに続いてお前らもマジックカードを使うのか。

 

 ドラゴン・ゾンビとメデューサの亡霊が融合、金色の魔象が現れた。

 

 このモンスターに特殊効果は特にないが、攻撃力は2200ある。このままでは倒せない。だが敵はこちらのことを待ってはくれない。

 

「パォォォォンンン!!」

「ピラミッド・タートル!」

 

 金色の魔象からグリズリーマザーへの攻撃を守備表示のピラミッド・タートルに受けさせた。

 

 タッグマッチでパートナーを庇うような動きでピラミッド・タートルが身代わりとなって攻撃を受ける。

 

 そして狙い通りその特殊能力が発動する!

 

「ピラミッド・タートルは戦闘破壊されたらデッキから守備力2000以下のアンデットを呼ぶことができる。来い、邪神機-獄炎!」

 

 

《邪神機-獄炎》

効果モンスター

星6/光属性/アンデット族/攻2400/守1400

(1):このカードはリリースなしで召喚できる。

(2):このカードの(1)の方法で召喚されている場合、エンドフェイズに発動する。

このカードを墓地へ送る。

その後、自分はこのカードの元々の攻撃力分のダメージを受ける。

この効果はフィールドにこのカード以外のアンデット族モンスターが存在しない場合に発動と処理を行う。

 

 

 ヴァンパイア・ロードは確かに自身の能力を発動して蘇っていた。なのでコイツも妥協召喚で普通に出すと効果通りにプレイヤーがダメージを受けるかもしれない。だからわざわざ間接的に呼び出した。結果的にはフィールドにアンデットがいたからそのままでも出せたのだが。

 

「蹴散らせ!」

「パォォォンン……」

 

 魔象撃破! これで敵は全て片付いた。また新手がやってくる前にさっさと先へ進もう。

 

 どうせグリズリーマザーを出したなら下の海に降りてモンスターに乗って移動する方が速いな。降りて移動することにしよう。

 

 結果だけみるとムダな寄り道をしただけになったが、何年振りかに墓参りもできたんだ。よしと思っておこう。

 

 邪神機-獄炎は上から踏切まで先行させ、俺とグリズリーマザーは水路を進んだ。

 

 

 ◇

 

 

 ここから真っ直ぐ進むとT字路になっており、右に曲がってすぐに線路の踏切だ。

 

 踏切を超えると町の中へ進んでいくことになる。しばらく進むと、川を越えた先で道がY字路で二手に別れるが、その先でまた合流し、そのあとは一本道だ。

 

 一本道を進み、町を抜けてその先の山道を超えると、少し大きな街に出る。教科書には載ってないが詳しい参考書には名前が出てくるぐらいの知名度の街だ。

 

 まずはその街に行くことを目標にしよう。街に行って特になにもなければ引き返して反対側に進むしかない。

 

 Y字路で右に進めば一本道に合流する前に小学校がある。今日はそこで一泊することを目標にしよう。

 

 さぁ、踏切前のT字路が見えてきた。水深が浅くなりもう自分で歩けるな。

 

 踏切に着いた瞬間、全身に鋭い痛みが走った。

 

 罠か?!

 

 咄嗟にライフを確認すると残りライフポイントが減っていた。

 

 LP 3800 → 3600

 

「オオオォォォオオオォォォーーー!!!」

 

 山の方から獣の雄たけびが聞こえた。見れば新手のモンスターが来ている!

 

 現れたのは……森の番人グリーン・バブーン!

 

 それを見てピンときた。こいつと獄炎の攻撃力の差は200……減ったライフも200だ。

 

 そして先に到着しているはずの獄炎はいない。

 

「ウオオオォォォォォォ!!」

 

 殴りかかってきたバブーンの攻撃はグリズリーマザーを守備表示にして盾にした。

 

「効果で3体目のグリズリーマザーを出し、表示形式を変更」

「ウゴゴゴオオオオオオォォォ!!!」

 

 自分の攻撃が遮られたのが気に入らなかったのだろうか、バブーンは激しく怒り狂いこれまで以上の声量で雄たけびをあげた。

 

 いや、これは……!

 

 ドコッ!!

 

 グリズリーマザーが再び攻撃を受けて吹っ飛ばされた。なんだ今のめちゃくちゃな攻撃! あんな激しい攻撃を受けて本当にライフが2600減るだけで済むのか?

 

「グォォォォオオオオオ!!」

 

 次の瞬間バブーンが爆発し破壊された。

 

 ということは……やはり、今のは野性解放だな? 野性解放は大幅に攻撃力を上げる代償としてその後破壊されてしまう効果を持つ。

 

 今回はラッキーだった。グリズリーマザーは守備表示にしていたから貫通ダメージはない。意味なく破壊されただけだ。後続のモンスターは出さずそのまま先へ進もうとした。

 

「ウオオオォォォォォォ!!」

「なにっ!?」

 

 目の前でグリーン・バブーンが復活した! 自己再生したのか?! 

 

 面倒なことになった。こんなのアリか? リクルートしたグリズリーマザーを守備表示にした俺が言うことじゃねぇかもしれんが、自分で自分の破壊をトリガーにできるのはズルいだろう!

 

 だいたい本当にライフコスト払ってんのか、こいつ!? 実質ノーコストか!?

 

「ウオオオォォォォォォ!!」

「チッ!!」

 

 墓地で伏せたリバースカードは2枚残ってる。1つはもしものためのミラーフォース。だがグリーン・バブーンは破壊しても意味がない。ミラーフォースは使い損になる。

 

 なら使うのはこっちか。

 

「月の書!」

 

 時間稼ぎにしか使い道がないが今なら丁度いい。

 

「オオオオオオオ!!」

 

 遠くの方から別の声が聞こえる。また新手か……

 

 あれは……森の狩人イエロー・バブーン!

 

 町の中へ入ると新手とかち合って、結局2体のバブーンの相手をする展開になりそうだ。野性解放で強化と再生を繰り返すこいつらをこのまま相手するのは厳しいか。

 

 なにも道は1つだけではない。俺にはまだ2つの道が残されている。

 

 来た道を戻るのが1つ、そしてT字路を左手に進む道がもう1つ。

 

 来た道を戻っても得るものはない。左へ進もう。

 

 全力ダッシュで逃げながらデッキを入れ替えた。振り返って確認するとモンスター達は追ってこない。獣族らしく縄張り意識でもあるのか? どうやらそばにあるあの山の近辺がテリトリーらしい。俺が離れると山の方へ帰っていった。

 

 なら町には夜にこっそり入ろう。次は町の奥へ逃げ込めば追ってこないかもしれない。そのまま学校で一泊すればいい。

 

 こうして最上級モンスターとの戦闘を避けて、俺は踏切とは逆の道を進んだ。この道をまっすぐ進めば海に出る。海水浴はできないが、近くに公園があってキャッチボールとかもできたのでよく遊びに行っていた。自転車に乗る練習もここでしたっけ。

 

 思い出はあっても異世界を脱出する手掛かりがあるとは思えないが、人間万事塞翁が馬、何が好転するかわからないし、一応行ってみるのも悪くない。

 

 

 ◇

 

 

 この道をまっすぐ進めば海に出る。おっきなクジラの絵があるからクジラの浜と呼んでいた。その道中は何度も曲がりくねった峠道だ。崖の下にはソーラーパネルがたくさんついた民家がある。水も山の水を引けばタダになるらしく、この辺りは電気も水も自給自足だ。

 

 峠道に入る途中にも民家があるので、適当な家から自動車をかっぱらっていくとしよう。ずっと歩きじゃ時間がいくらあっても足りない。

 

 家の中に入ってカギを漁っていると何者かに声をかけられた。

 

「あら? 何かお探し?」

「誰だ?」

 

 この世界にまともな人間などいるはずもない。だが目の前に現れたのは一見普通の人間だった。金髪に黒のピッチリした服の女。この容姿、どこかで……?

 

「一緒にイイトコ行きましょ?」

「異次元の女戦士……!」

 

 どこへ連れてく気だ? うっかり触れただけでどこに連れていかれるのかわかったもんじゃねぇ!

 

「さぁおいで」

「クリッター!」

 

 俺にさわろうとした瞬間にモンスターを召喚して盾にした。

 

「あっ! いけず!!」

 

 クリッターと一緒に異次元へと消えていった。危ないモンスターだ。ライフとか関係なく一発アウトとか笑えねぇ。

 

 ササッ……!

 

 周りの建物の影にアヤシイ気配を感じる。あの髪……今度は異次元の戦士か?

 

 グズグズしてるヒマはないようだ。禁止デッキに入れ替えてモンスターをドロー。

 

「Y—ドラゴン・ヘッドを召喚!」

 

 乗り物用のモンスターを引いた! 車は諦めてこいつに乗っていこう。かっとばして峠道に入った。

 

 道なりにまっすぐで海へ着く。だが距離はそこそこ。何もおこらないわけもなく……

 

 ドォォーーンン!!

 

 ドォォーーンン!!

 

 四方八方から岩石族モンスターが飛んできた! これは岩投げアタックか? 3枚どころじゃない。なんちゅう数だ。ルールも何もあったもんじゃねぇな?!

 

 しかし、なんとか逃げ切れている。峠を物凄いスピードで攻めまくるY—ドラゴン・ヘッド。迫ってくるのは岩や岩石族モンスターだけじゃない。さすがにこえーよ!

 

 埒が明かねぇ! スッとデッキを引いてマジックカードを発動した。

 

「ハーピィの羽箒!」

 

 辺り一帯のリバースカードを一掃! 

 

 これでちっとはゆっくりできるか?

 

 しかしこの世界はそんなに甘くはなかった。今度は目の前の道が光って大地が裂けた。

 

 急ブレーキを踏んで立ち止まると、目の前に大きなドラゴンが現れた。

 

「メガロック・ドラゴン! ヤバッ! 守備表示だ!」

 

 とんでもないのが出てきた! 攻撃力は計り知れない! 

 

 

《メガロック・ドラゴン》

効果モンスター

星7/地属性/岩石族/攻 ?/守 ?

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地に存在する岩石族モンスターを除外する事でのみ特殊召喚できる。

このカードの元々の攻撃力と守備力は、

特殊召喚時に除外した岩石族モンスターの数×700ポイントの数値になる。

 

 

 敵の先制攻撃でY—ドラゴン・ヘッドが粉砕。咄嗟に守備表示にしたのでダメージはないが、恐ろしい破壊力を見せつけられた。

 

 だが、これはチャンスだ。禁止デッキは異世界を想定して組んでいるのである系統のカードをふんだんに入れている。こいつもここで使う!

 

「その攻撃力、いただきっ! 強奪を発動!」

 

 回復させる相手はこの世界にはいない。デメリットは皆無だ。俺は超強力なメガロックをあっさりと掌中に収めた。メガロック・ドラゴンは昔使ってたことがあるから懐かしい気分だ。

 

 よし。コンボ用のカードを1枚追加でセットして先へ進んだ。

 

 辺りの山中にはまだ岩石族モンスターが潜んでいる気配を感じたが、メガロックのおかげで襲い掛かってこない。よしよしと頭を撫でながら悠々と海へ出た。

 

 しかし俺を待っていたのは想像もしない光景だった。

 

「なんだこりゃ……」

 

 目の前に広がる海は記憶にある青々とした姿からは程遠い、深い暗黒に染まっていた。

 

 直感的にわかった。俺は来るべき場所を間違えた。この先へ進んでもゴールはない。かつての姿がみる影もないじゃないか。

 

 沖では大きな鯨が海面に顔を出していた。何体ものクジラ達が海面付近で跳ねまわっている。クジラの浜とはいえこんな浅瀬に本物がいるなんておかしい。

 

 しかも、そのうちの1体がどんどんこっちに近づいてきた。

 

 よくみればあれはクジラじゃないぞ。あれはシャチか?……いやっ、ちがう!

 

「暗黒大要塞鯱!」

 

 

《暗黒大要塞鯱》

効果モンスター

星5/水属性/海竜族/攻2100/守1200

自分フィールド上の「魚雷魚」1体を生け贄に捧げる事で、

フィールド上のモンスター1体を破壊する。

自分フィールド上の「砲弾ヤリ貝」1体を生け贄に捧げる事で、

フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。

 

 

 気づいたときには「砲弾ヤリ貝」をぶっぱなしてきた。

 

 遠距離からの思わぬ攻撃でモロにくらってしまう。その効果によりミラーフォースが割れてしまった。

 

 さらに休む暇もなく今度は魚雷魚をぶっぱなしてきた。

 

「そう何度もやられるか! 神秘の中華なべ!」

 

 俺のデッキのウルトラC。みるみるライフが回復し17600になった。回復量は14000か。

 

 LP 3600 → 17600

 

 ライフポイントに上限はないらしい。これで俺の身はしばらく安全だ。攻撃してきた暗黒大要塞鯱は冷静にドラゴンエッガーを召喚して返り討ちにした。そのままモンスターに乗って来た道を引き返そう。

 

 岩石族では攻撃力は総じて低いし、罠もすでに除去している。簡単に戻れるな……と思っていた。

 

 しかし、来た道にとんでもないモンスターが行く手を遮っていた。

 

 こいつはロストガーディアンだ!

 

 

《ロストガーディアン》

効果モンスター

星4/地属性/岩石族/攻 100/守 ?

このカードの元々の守備力は、自分が除外している岩石族モンスターの数×700ポイントの数値になる。

 

 

 こちらの通行を妨げるように鎮座している。しかもその先の道にまで何体も待ち構えてやがる! 行きしなこんなヤツ1体もいなかったのに、どういうことだ?

 

 メガロック・ドラゴンの攻撃力は14000だった。つまりこいつらも同様の守備力を持つことになる。攻撃力こそゼロだが戦闘じゃ破壊できないし、こんなデクの坊にサンダーボルトを使うのは勿体ない。

 

 道を変えるしかないようだな。少し右側に逸れるとしよう。こっちには行ったことがないからどこへ行き着くのかわからないので不安だが、やむを得ない。

 

 バブーンといい、ロストガーディアンといい、どうにも邪魔されて思った場所へ進めない。

 

 だが、使ったカードの分だけデッキは確実に減っていく。さらに慎重に行動していかないと、カードが尽きたら俺はおしまいだ。

 

 

 ◇

 

 

 ドラゴンエッガーのおかげで道中はモンスターを蹴散らせた。最初にいた自分家の裏山を目指して進む中、そのふもとにかなり近づいたところで厄介なモンスターに出くわした。

 

「バスターブレイダー!?」

 

 なぜこんなところに竜破壊の戦士が? 出会い頭に斬りつけられドラゴン・エッガーを破壊された。移動中は攻撃表示判定になるようで戦闘ダメージを受けてしまった。

 

 これは面倒なことになってきた。

 

 LP 17600 → 16700

 

 ドラゴン・エッガーを倒せるほどのモンスターが現れたらまた「強奪」してやろうと思っていたのだが、ドラゴン族限定の攻撃力3100か……微妙だな。

 

 コントロールを奪うかどうか悩んでいると周囲に強力なドラゴン族がたくさん出てきた。

 

 ダイヤモンド・ドラゴンなどの最上級ドラゴンが4体。

 

 だったらこうだ!

 

「精神操作!」

 

 攻撃はできないが相手からもこちらに手出しできない! 

 

 バスター・ブレイダーは敵になったドラゴンの数だけ攻撃力を上げるから、その数値は2000上がって4600に跳ね上がる。さらにコントロールが戻る前にまた神秘の中華なべの素材にすればいい。

 

「ハァッッ!!」

 

 しかし、こちらの精神操作に対して何か発動したようだ。速攻魔法か?

 

 グニャリとバスター・ブレイダーとダイヤモンド・ドラゴンの姿が歪んだ。

 

 これは……融合! それも瞬間融合か!?

 

 現れたのは竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー!

 

 

《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》

融合・効果モンスター

星8/光属性/戦士族/攻2800/守2500

「バスター・ブレイダー」+ドラゴン族モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードは直接攻撃できない。

(2):このカードの攻撃力・守備力は、

相手のフィールド・墓地のドラゴン族モンスターの数×1000アップする。

(3):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手フィールドのドラゴン族モンスターは守備表示になり、

相手はドラゴン族モンスターの効果を発動できない。

(4):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

 

 攻撃力は墓地のドラゴン・エッガーにより1000ポイントアップするだろう。とすると3800……だが瞬間融合ならエンドフェイズに破壊される!

 

「光の護封剣!」

 

 今のうちに逃げよう!

 

 3ターンの猶予を活かしダッシュでその場を離れた。

 

 高速道路の高架下をくぐり、舗装された道から獣道へ。そして森林を抜けた先には大きな橋と坂道があった。下の川はほぼ涸れている。この光景、見覚えがある気がする。

 

 そこでハタと気づいた。ここは昔よく来たうちの近くの散歩コースだ! 家の前の左右に分かれる道を、右ではなく左にいってしばらくすると線路の下を潜ってこっちに来る道がある。そこに出てきたのか。

 

 当時幼かったから川の橋の先には行かないことになっていた。その先がこんなふうに繋がっていたのか。

 

 ここからなら道はわかる。まず最初の道に戻ろう。自分家の中にはもう戻る必要はない。日も傾いてもう夕刻だ。そのまま自分の足で学校をめざす。

 

 周りには豊かな田園が広がる。茜色に染まる景色に懐かしい気持ちが蘇る。

 

 モンスターに乗っていないが、小走りですぐに半分ほど進み、田んぼに囲まれた十字路に着いた。いつもこの十字路から好きな散歩コースを選んでいた。橋のあるさっきの場所以外にも竹藪の道とかもあったっけ。

 

 モンスターに乗っていたわけでもなく、自分の足で移動したのにものの数分でここまで来た。

 

 昔はすごく時間がかかっていた気がするのに、こんなにすぐに着くなんて……散歩道ってこんなに小さかったのか。

 

 当時は毎回大冒険だったんだけどな。

 

 ジリジリ……

 

 ふと、何かがこすれるような音がした。羽音? 次第にその音は大きくなり、自分を取り囲むすべての方角から聞こえてくる。

 

 そういえばこの辺りはトンボがたくさんいたっけ。

 

 そう思った瞬間、辺りから大量のドラゴン・フライが飛び出してきた!

 

 トンボはいたがお前らじゃねぇ! ドラゴン・フライなんてマジシャン・オブ・ブラックカオスの祭りのとき周りのヤツの外れカードだった思い出しかない!

 

 まさに四面楚歌。100体はいるだろうか? こんな巨大な昆虫の集団に囲まれるなんて普通なら恐怖でしかない。

 

 しかも、厄介なことにこいつらは戦闘で倒しても後続がでてくる可能性が高く、辺りは田園、こうも開けた場所では逃げ隠れすることも不可能で、道のど真ん中だから戻っても進んでも抜け出すには一番遠いポジションにいる。

 

 おそらく待ち伏せされたな。

 

 ここまでされたら使うしかない。冷静に禁止デッキをセットしてカードをドローした。

 

「サンダーボルト!」

 

 ピカッッ!!

 

 敵を一掃、本当に一瞬だった。

 

 さすが禁止カード。凄まじいパワーだ。

 

 そのまま大急ぎでその場を去り、線路下を潜って最初の道に戻ってきた。この辺にはモンスターの気配はない。それに進んだ先には俺が乗り捨てた自転車があった。フィールド魔法も消えている。

 

 さぁ、自転車登校としゃれこむか。

 

 絶対先生に怒られるけど、などと考えている自分はまだまだ余裕なんだろうな。そのままちょうど夜になり暗くなる頃に踏み切りに戻ってきた。バブーンは襲ってこない。町に入ると、カードを狩る死神とか、悪魔族系のモンスターが徘徊していた。建物の影などに隠れながらやり過ごし、無事に学校に入った。

 

 予定通りここで一泊しよう。

 

 自転車は校門に置き、寝る前に自分の周りにアメーバを3体召喚して見張りにした。こいつらステータスは最弱だからこれぐらいしか使い道がない。

 

 常にモンスターに注意して気を張っていたからどっと疲れが出た。今は大胆に休んでいこう。休めるときに休んでおかないと体がもたない。

 

 頼んだぞ、とアメーバに声をかけて眠りについた。

 




理系人間で文才ゼロなので情景描写とかが厳しい……
位置関係とか向きとかもあんまり伝わってないかもしれないですね。
自分の頭の中では把握していても説明するとなるとまた別問題。
展開もゼロベースで組み立てていくので時間がかかるかかる……

いったんこの章の最後までは修正して目途が立ったものの、
その次の章も結局どう進めるか悩ましくてまた長考に入っております()
なので週一か週二ぐらいでしばらくは進めていきます。

ただ、一話からここで公開する前は全然筆が進んでなかったので、
その頃と比べてみるとだいぶ進みが早くなったなーと嬉しい気持ち。
締め切り効果とか人に見られるとか、やっぱり作業する上で大事だなーと
思うことしきりです。
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