トリニティを得たあと、めっきり襲ってくるモンスターの数が減った。
道中襲い掛かってきた骨のある敵は3体。
まず1体目はF・G・D。
《F・G・D》
融合・効果モンスター
星12/闇属性/ドラゴン族/攻5000/守5000
ドラゴン族モンスター×5
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
(1):このカードは闇・地・水・炎・風属性モンスターとの戦闘では破壊されない。
町の端、山道に差し掛かる手前で現れて襲い掛かってきた。破壊耐性はないが攻撃力は5000とモンスター単体としては最高クラス。トリニティにも攻撃力では勝っている。これも強奪により捕獲した。
次がスフィンクス・アンドロジェネス。
《スフィンクス・アンドロジュネス》
効果モンスター
星10/光属性/獣族/攻3500/守3000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上の「アンドロ・スフィンクス」と「スフィンクス・テーレイア」が
同時に破壊された時、500ライフポイントを払う事でのみ
手札またはデッキから特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、500ライフポイントを払う事で、
エンドフェイズ終了時までこのカードの攻撃力は3000ポイントアップする。
出会い頭に攻撃力を3000ポイントアップしてきた。攻撃力5000を超えてきたわけだ。面白いのでチェーンして禁じられた聖杯を発動して効果を無効にし、この2つの攻撃力をぶつけてみた。
攻撃力5000と4000の衝突。どうだ?
しかし、結局スフィンクス・アンドロジェネスは何も起きないまま破壊されてしまった。パワー不足なのか、もっと根本的な問題なのか……。
考えても仕方ないので次に進むことにした。アンドロジェネスを倒してしまったのはもったいないが、ゴールを探し続けるしかない。
3体目は街の入り口付近、最後の関門のつもりだろうか。
混沌幻魔アーミタイルが現れた。
《混沌幻魔アーミタイル》
融合・効果モンスター
星12/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
「神炎皇ウリア」+「降雷皇ハモン」+「幻魔皇ラビエル」
自分フィールドの上記カードを除外した場合のみ、
EXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。
(1):このカードの攻撃力は自分ターンの間10000アップする。
(2):このカードは戦闘では破壊されない。
攻撃力はゼロだからなのか、全く気配もなく背後から現れた。不意打ちをF・G・Dが受けてしまい、ライフポイントは5000ポイント減少。とんでもない不意打ちだ。
殺す気か?
デッキに回復手段を用意し、ここに来るまでに発動していなければ、ここで確実に死んでいたことになる。トラップはオートで発動することはないから不意打ちだとなすすべがない。恐ろしい罠だ。
LP 6600 → 1600
だが、俺は倒れない。さらにモンスターは無傷。
アーミタイルの能力、10000ポイントの攻撃力上昇は実質の最高攻撃力。しかしその攻撃力でもってしても俺のモンスターを倒せない。F・G・Dは戦闘では破壊されない効果を持つ。
破壊に失敗したことが癪だったのか、アーミタイルはヤケクソでブラック・ホールを発動してきた。
「速攻魔法! 我が身を盾に!」
LP 1600 → 100
結局ライフポイントは残り100ポイント。
アーミタイルよ、ダメじゃないか、自分ごと破壊しようとするなんて。お前は大事な手駒になるんだから。
俺は3枚目の強奪でアーミタイルを奪った。これで手持ちの強力モンスターは3体。
あとはユベルの謎を解くだけか。どうやったのかは知らないが、ユベルは俺のことを知り、この異世界で俺に何かをさせたいのだろう。だがこうなってはもうこの世界のモンスターは障害にはならない。ライフはずいぶん削りとられたが、もう負ける気がしない。
俺の記憶はすいぶんと蘇っているが、俺の一生の中でユベルのカードとの関わりなんて覚えがない。少なくとも、ラヴァゴーレムのような繋がりはない。だが、事実としてユベルは2年生の時点で相当なデュエルエナジーを集めている。
情報が足りない。散策が先か。ゴールがあるとすればこの街である可能性も高いはず。
街の中を歩いているうちに段々と思い出してきた。
この街にはカード屋がある。そこにいけばまた何か思い出すかもしれない。
重量級モンスターに囲まれながら、特に危険もなく簡単に移動できた。
「この辺によく来たジャスコがあって、こっちが寿司屋で……あったここだ!」
田舎だからなのか都会よりかなり格安でカードが買える店がある。ここで大会に出て景品もらったりしたっけ。
ストレージの中に天変地異を見つけてデッキを作ってみたのもここがキッカケだったっけ。簡単にデッキが作れたんで楽しかったなぁ。フルバーンをメインに据えていても色んなデッキを試していた。
やはりここに来て収穫は確かにあった。ここで俺は自分のカードを見つけて、思い出の一時を過ごした。
大事な記憶の断片をまた手に入れることはできたわけだが……何か物足りない。決定的に何かが足りない。俺の記憶……何が足りないんだ?
“また次の世界で会いましょう。さよなら、テンシン”
ハッとしてデッキを見た。じんわりと熱い。たしかなぬくもりを感じる。そっと一番上のカードを引き上げ……俺は忘れていた大事なことを思い出した。
「帰ろう……俺の家に」
俺にとって一番大事なカードはこいつ、溶岩魔人ラヴァゴーレム。最初に手に入れたのはアルティメットレア。アニメで出てきたウルトラレアよりもちょっと豪華で鼻高々。でもジャスコのカードコーナーでストラクチャーデッキに付いていて簡単に手に入るってわかってがっかりしたっけ。しかも召喚先が相手フィールドだから自分で使えないってバカにされたしな。それでも初めてパックで当たったウルトラ以上のレアで俺はこいつが本当に好きだった。
でもって2番目のアルティメットレアがYドラゴンヘッドだ。こっちもストラクチャーにはいってたんだよな……。
それでも俺はラヴァゴーレムを使い続けたし、他のデッキを試す過程で目移りした時期もあったけど最後はやっぱりこいつに戻ってきて、フルバーンではモンスターはラヴァゴーレムだけになった時期もある。デッキのモンスターがラヴァゴーレムだけっていうと、俺もたいがいこのカードに惚れこんでいたのかもしれない。
ラヴァゴーレムは俺の大事なカード。目ざとい子に交換を持ちかけられたこともあったけど絶対に手放さなかった。ブラックカオスの失敗もあったから、当時は扱いにも相当気を配って人一倍、いや何十倍も大切にしていた。
だとすれば俺はもう1つ確認しなければならない。俺が最も大切にしていたカードは最初にこの世界で目覚めた場所、俺の部屋の押入れにしまってある。そこにラヴァゴーレムのカードに関する記憶の扉があるかもしれない。
山を越え帰る道すがら、不思議とモンスターには出くわさなかった。俺の周りにいる強力モンスターに恐れをなしたのか。それとも何かの意思が働いているのか……。
全てはあの部屋にいけばわかるはずだ。
◇
さぁ、戻ってきた。ここを出た時は少し移動するのも大変だったが、それも遠い昔のことのようだ。あれからまだ2日ほどしか経っていないし、結局カードは40枚も使っていない。やはりコントロールを奪うという俺の考えは間違ってなかった。
裏口に回り中庭を超えて物置の奥にある急勾配の階段から二階に上がる。そしてとうとう押入れに辿り着いた。
覚悟を決めてゆっくりと戸を開くと想像もしていなかったものがそこにあった。
「これは……!」
十代が異世界で見つけたのと同じ扉だ。最初、確かに自分の後ろなんて確認しなかったが、きっとこれは俺の記憶を取り戻したことで現れたんだろう。
こんなにあっさりとゴールが見つかるとはね。もうこれを開くしかない。ようやく俺の異世界の旅路は終わるのか?
この先にはいったい何が待っている?
デッキを確認し改めてディスクにセットしたカードを確認した。今できる最善の布陣だ。扉を開くと眩いばかりの光が溢れ出す。先は見えない。意を決して中へ一歩踏み出した。
記憶の世界はこれで終わりですがこの章はもう少し続けます
1話の穴抜きのセリフがそろそろ明らかにされていくターンですね
いろいろ考えてみてください