再び場面はクロノスの授業中へ。
「この世界は前の世界とは何が違う?」
「1つは君の呪いが消えたことだ。下手な呪いをかければ君には看破されてしまう。そしてあの精霊にダークネスの力が宿り、それが継続された」
「それがどんな影響を及ぼす?」
「君は2週目と4週目に幻魔への執着を見せる。その原因はなんだったかな?」
「記憶の操作……そうか、それがダークネスの力!」
「ご名答。だから1週目はできなかったんだろうねぇ」
「ならこの世界の俺は幻魔掌握のため積極的に動き、かつ呪いもないから実力も最初から伴っている」
「ふふふ……」
「なんだ?」
「あともう1つ、決定的に違うところがある」
「それは?」
「君の悪の魂が馴染んで性格そのものがかわっているんだよ」
そうか。1週目から今の4周目の俺まで、世界を周回するごとに少しづつ俺の性格がかわっていくのか。ならこの世界は4週目の俺よりも1週目に近いが、少し丸くなったというところか?
ユベルに視線を向けるとまた笑っている。なんかイヤな感じだ。バカにされてる?
こいつの性格はもうわかっているのでいったん無視してこの世界の俺の経過を見守った。
最初のデュエルはもちろんこれだ。
「手札からダブルアタックを発動!」
「待て! 話せばわかる!」
「問答無用! バトル! 秒殺の暗殺者でプレイヤーへ2回攻撃!」
ドローカードなどだいたい同じ。強いて言えば相手側のカードが違うぐらいか。やはり俺の引くカードは必然ともいうべき、運命力に引き寄せられているのかもしれない。
世界を跨いでの自分の再現力に感嘆していると、その後も同じような展開が続いた。
なるほど、性格的に少しクールで冷酷なところはあるがどちらかと言えば4周目の俺に近いかもしれない。いきなりこいつらを下っ端にするようなことはなかった。
俺の行動が違ったのは次の日だ。
いきなり散髪! 自分の変化はお構いなしか? 記憶がない分俺に行動が近くなっているのかと思っていたが、そうでもないのか?
「君は慎重なんだよ。この世界の天真は大胆なのさ。不思議だねぇ、悪か善かで根本的な性格まで変わるなんて」
「しかし、髪を切って下っ端にしないなら完全に新しいパターンになるか」
「ふふふ……」
また笑った! 何がそんなにおかしい?
その答えはすぐにわかった。俺は髪を切った次の日からクラス中の注目を浴びた。いや、クラス中の女子からだ。
「天真クンかっこいいね!」
「ヤダ! 私と遊んでよ!」
「こっちで一緒にお弁当たべましょう?」
人を寄せ付けないようなトゲがないおかげで話しかけてくる女子が急増。そしてこの世界の天真はそれを利用しようと考えた。
「よかったらブルーの君にデュエルのこと教えてほしいな」
「ありがとう、君ってすごく優しいんだね」
「君のこと、すきになってきたかも」
なんだこいつ、誰だ? 俺なのか?!
「ふはははは! この世界は本当に痛快さ。あの溶岩娘も見ているはずだからね。前の世界の君とあんな別れ方をしたばかりなのに、君はいきなり浮気三昧だからね」
「そんなこと言っても、覚えてないものはしょうがないだろ!」
「何をいってるんだい? そんなもの、覚えてない方が悪いに決まってるだろ?」
「えぇ……」
そういえばユベルも覚えてるはずのない前世の記憶をもとに難癖つけるヤツだったな。
モテ天真は上手く女の子のご機嫌をとりつつカードを集めるつもりのようだ。わざとデュエルに負けてアドバイスを受けて自分の弱さを前面に出し、女の子の良心につけこんでカードを無償で回収している。
「前の世界とは全く別ベクトルの外道だな」
「この世界の君は女子に好意は一切ない。それがわかるから溶岩娘もギリギリ耐えたんだろうね。あとラヴァ・ゴーレムのカードは忘れずに回収したしねぇ」
「そこについてはさすが俺だな。まぁ自分のカードぐらい必ずチェックするか。自分のことだからなんとなくわかるが、カードをもらうことについては鼻の下を伸ばした対価、ぐらいにしか思ってないだろうな」
「さすが、この世界でも女たらしは変わらないねぇ。ヒドイ男だよ、全く」
「俺は思っても行動にまで移さないからな! あの世界の俺だと幻魔の力を手に入れるためにやむを得ないところもあるだろう。なぜかレッド寮で他の男子から襲われなかったからカードが集まらなかったし」
そうなのだ。この世界は4週目ほど攻撃的ではなかった。やはり世界が疲弊しておかしくなっているというのは本当かもしれないと感じるところだった。
「状況が変わればするってことだろう?」
「……そういえば、この世界の俺はどんなデッキを使う? カードの集め方が違うなら別のデッキにならないか?」
ごまかしたね、とユベルに視線を飛ばされたが無視した。
モテ天真はさっそく集まったカードでデッキを組み始めた。俺が守備寄りのデッキを使うせいか集まるカードも守備寄りばかりだった。
その中で目を付けたのが岩石族だった。
「岩石族……!」
「さすがに気づいたかい?」
天変地異、岩石族、と来れば連想されるのはあれしかない。
「俺が幻魔に具現化させたデッキ、あれは俺の記憶と関係していたのか?」
「そういうことだね。魔法使いは4週目、岩石族は2週目、天変地異は1週目だ」
4週目は未来に使ったんだが、俺の中に潜在的に眠っていた構想があふれ出たということならおかしくはない。全部やはり俺のデッキだったのだ。
「クロノスに見せたデッキはおそらく前世の俺が使っていたものと見て間違いない。この世界にないカードまで使っていた。だとすると3週目はエクゾディアか?」
「そうなるね」
なんてこった。
でもモテ天真の今のデッキはかなり岩石コアキメイルとは違う。番兵ゴーレムなどが主力だ。いや、1枚だけ……
「岩石族がほしいの? だったらこれあげるわね。コアキメイルガーディアンって岩石デッキでしか活躍できないから私じゃ使いにくいし、天真に使ってほしいな」
女子から普通にもらえるのか。しかもデメリットアタッカーみたいな認識なんだな。まさかブラッドヴォルスの方が評価高いとかないだろうな? ありそうだ。
「ちなみに、最初に十代の仲間と戦うのは誰からだと思う?」
「女子からカードを集めてるなら、やはり明日香か?」
「いや、嫉妬したあの男さ」
誰だ?
「世渡天真! ボクと勝負しろ!」
いや、お前かよ! 丸藤弟!
たしかに明日香が他人の恋愛関係に首を突っ込むわけないか。弟クンなら強さ的には一番ラクな相手だし勝負を断る理由もない。
果たして、やはり俺はその勝負を受けて立った。
「いいだろう。モテないお前にガールフレンド達の力を見せてあげるよ」
「ムキーッ!! 絶対倒してやるっす!」
「「デュエル!!」」
「ドロー! モンスターをセットしてターン終了」
「へへん! そんなへっぴり腰じゃボクには勝てないね! ドロー! いけ、スチームロイド! 攻撃!」
スチームロイドを召喚してモンスターを攻撃。伏せていたのはモアイ迎撃砲。そのまま破壊された。
その次のターンも天真はモンスターをセットするだけ。伏せていたのはサンドモス。モンスターは当然戦闘で破壊される。
その一見無為にモンスターを破壊され続けている姿がより相手の油断を誘った。
「モンスターをセット……」
「また壁モンスター? やっぱりドベはドベ、たいしたことないね。それとも僕が強すぎるのかな? ナハハハハ!!」
今度は翔がジェットロイドを追加して2体で攻撃。ジェットロイドのダイレクトアタックによりライフは2800に減った。
「防戦一方だね! この勝負もらったよ!」
「モンスターをセット。ターン終了」
「こうも無抵抗だとさすがに歯ごたえがなさすぎなぁ。いや、待てよ。ここで華麗に勝利すれば僕が女子からモテモテに……」
丸藤弟は油断しきっているな。対照的に天真は淡々とデュエルを進めていく。
「よし、融合を発動! どうだ! これが僕のフェイバリットカードだ! 今度はスチームジャイロイドで攻撃!」
「伏せていたのは伝説の柔術家。効果でそいつはデッキに戻る」
「えっ!? なんだって!?」
《伝説の柔術家》
効果モンスター
星3/地属性/岩石族/攻1300/守1800
フィールド上に守備表示で存在するこのカードと戦闘を行ったモンスターは、
ダメージステップ終了時に持ち主のデッキの一番上に戻る。
これまで大した効果のない壁モンスターを出し続けていたが、この絶好のタイミングでクセ者を忍ばせていたな。これで丸藤弟のフィールドはガラ空き。墓地もたんまり溜まっている。
アレが来るな。
「俺のターン!」
「あっ!」
丸藤弟は何もリバースカードを出せずにターン終了。勝負あった。
「君は幸運だね。俺の切り札を最初に見れるんだから」
「切り札? フィールドはガラ空きだよ? モンスターすら1体もないのに何ができるっていうのさ?」
「ガラ空きなのはお前の方だろ?」
「うぐっ」
「岩石の巨兵を攻撃表示」
「アハハハハハ! そんなモンスターしかいないんじゃ、僕の勝ちは変わら……」
「墓地の全ての岩石族を除外!」
ゴゴゴゴゴ…………
「うわぁ?! なんッスカ!?」
「いでよ、メガロックドラゴン!」
「なんだこいつ!?」
「こいつは墓地の岩石族を好きなだけ除外して特殊召喚する。その攻撃力は、除外した岩石族の数×700ポイント! さぁ、お前は何体のモンスターを墓地へ送った?」
「え……スチームロイドで2回、ジェットロイドと2体で攻撃して1回、スチームジャイロイドで1回……全部で4回。攻撃力は……2800!」
「2体でダイレクトアタック!」
「あああぁぁぁぁっっ!! そんなザコデッキに負けるなんて……くぅぅぅ! 悔しい!」
もとの天真らしい、耐えて耐えての一撃必殺スタイル。岩石の守備寄りのイメージも合わさって、周囲からの評価はすこぶる低い。好意を向けているブルー女子も天真のデッキについては同じような感想だった。
しかし、使ったマジックトラップはゼロ枚か。いくらなんでもモンスターに偏り過ぎている。
今の俺とは真逆のデッキ構成だ。いくらロクなカードがないからとはいえ大胆過ぎる。
それでも勝ててしまうほど2週目の世界はまだデュエリストレベルが低いということだろうな。
これだとこの世界では敵なしだろう。
それからなんとモテ天真には制裁デュエルがなかった。さすがに譲渡は罰則にならないらしい。そのせいでクロノスからカードをもらう機会がなくなったのでラーヴァの活用カードが集まらないまま帰省する時期を迎えた。
もっとも、その分女子達からカードをたくさん頂戴し、その結果、岩石族デッキとしてはさらに磨きがかかっていった。
幻魔の戦いに介入するため自分の力を見せつけるようにデュエルを繰り返す天真。そして天真に集まるブルー女子は天真が強くなってしまった後もお構いなしにカードを贈り続けた。
「「デュエル!」」
そして実家に帰り、4週目と同じような流れでトーラとデュエルすることになった。
「ドロー! 強欲な壺! 2枚ドロー! そしてリバースカードを1枚セット。さらにモンスターをセットしてターン終了」
この世界では俺が先攻をとった。やはりドローは俺の方が速いのか。
「チッ! 天真のクセに先攻なんて生意気! ドロー! まずは手札抹殺! そして浅すぎた墓穴! ブラッドマジシャンを召喚してディメンションマジック!」
1週目と同じ要領でディメンションマジックを使い氷の女王とブラッドマジシャンの2体を並べられた。
「攻撃!」
「聖なるバリア! ミラーフォース!」
「うそ!? だったらカードを1枚伏せてターン終了」
「俺のターン! じゃあ番兵ゴーレムを召喚して攻撃」
LP 4000 → 3200
「チッ……うっとおしいわね!」
「番兵ゴーレムを効果で裏側守備表に変更してターンエンド」
トーラの伏せカードはミラーフォース。天真はそれを見抜いてあえて1体だけで攻撃した。しかも1体だけで攻撃するのが不自然じゃない形で。
「ドロー! ヂェミナイ・エルフを召喚! 攻撃!」
「1900か……」
「まだよ! 伏せていたマジシャンズサークルを発動! これでマジカルマリオネットを特殊召喚!」
「おっと、俺は魔法使いを入れてない」
《マジシャンズ・サークル》
通常罠
(1):自分または相手の魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキから
攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。
もう1体はガーディアンスタチュー。2体とも破壊された。
「俺のターン。ドロー! モンスターと伏せカードを出してターンエンド」
「どうしたの天真ちゃん? もう降参かしら? だらしないわねぇ!! このターンで最後よ! 2体で攻撃!」
伏せていたのはメデューサ・ワーム。効果は発動できず墓地へ送られる。
そしてライフが2000削られた。次のターン、再び魔法の操り人形のダイレクトアタックを受ければライフは尽きる。
「やっぱりアンタは弱いまま! アンタはいつでも守備表示! そのまま何もできずに縮こまっていればいいわ! 意気地なしのアンタにはお似合いね!」
トーラの毒舌を天真は軽く聞き流して一言呟いた。
「お前さ……」
「?」
「もう負けてるよ」
「は?」
あっけにとられるトーラを置き去りにしてデュエルは進む。
「墓地の8体の岩石族を除外……」
「8!? 倒したのは3体……捨てた手札5枚全部岩石族!? あんた、バカなの!?」
それが天真の戦略なんだよ。
「いでよ! メガロックドラゴン!」
「知らないモンスター……」
「教えてあげるよトーラちゃん」
「誰がトーラちゃんよ!」
「こいつの攻撃力は……除外した数×700! つまり、今、こいつは攻撃力5600!」
「しまっ……」
ちゃん付けに赤面した表情が一変、焦りを見せたがすでに打つ手は残されていない。
「もう遅い。魔法の操り人形を攻撃!」
ゲームエンドだ。
LP 3200 → -400
勝負には勝ったが、モテ天真はやはり満足していないようで、さらなる力を求めてカードショップへ行った。そこで女子から集めたカードを元にトレードや換金を繰り返しさらなる強化を図った。
この天真はトーラとは全く関わろうとはせず、トーラも俺を恐れているままなので、カードは一人で探しに来ていた。
そんなとき、カードショップであの男が現れた。
2人目はまさかのモテ天真
ラッキースケベ展開などの素養がこの世界で発揮されています
幻魔戦の謎のデッキチョイスの謎も明らかに
天変地異は呪い解除のために必要
岩石はラブァゴーレムと融合できる貴重な種族
全部意味のある選択でした
神縛りだけは現実風ならなんでもいい枠だったので世間で出回ってないオリジナルで一番ロマンがあるデッキにしました