気づいたらデュエルアカデミア   作:りんごうさぎ

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最終章です


最終決戦編
あの日の約束


 

 それから俺達はユベルの世界から4週目のトーラ達の様子を見守っていた。

 

 ラスボスグラファを倒した後、ついにラーヴァ登場。圧倒的な力で十代達を1人ずつ消していく。ラーヴァは十代までも手にかけてしまい、残るデュエリストはトーラだけ。

 

 もう、我慢の限界だった。

 

「俺が行く」

「ダメだ! まだ勝つ算段なんてないだろう?!」

「俺はこれまでそんなものなくても勝ち続けてきた。このままトーラを見殺しにはできない」

「異世界での死は現実での死を意味するわけではないんだ。最後に君が勝てば全て元に戻る。だが、君が負けてしまえば本当の終わりなんだ! 冷静に考えるんだ!」

 

 ユベルの言うことはわかる。だけど、ラーヴァはそんな甘いことはしない。

 

 本当にトーラに敵意を向けたなら、トーラは恐ろしい結末を迎えるかもしれない。トーラを敢えて最後まで残したことも、トーラへの憎しみ故だとしたら……

 

「出せ! 俺をあの世界に連れていけ」

「ダメだ!」

「……なら、力づくでも押し通る。俺がお前に従う理由なんてないんだ」

「この……わからずや!」

 

 悪態はつくものの、最後にはユベルが折れた。やはりどれだけ強力なデッキを持っていても、本心では俺には勝てないと思っているらしい。だからこそ俺に協力を求めているのだから当然といえば当然か。

 

 ラーヴァがトーラに勝負を仕掛ける直前に、俺とユベルはラーヴァの前に現れた。

 

「テンシン……それにユベル!」

「どうしてあなたがここに」

 

 今、ラーヴァにトーラを狙われるのはマズイ。ラーヴァの注意を引きつけるために俺はラーヴァへ語りかけた。

 

「久しぶりだな、ラーヴァ」

「テンシン……」

「つい最近まで一緒にいたはずなのに、もうずっと会ってなかったような気分だ。まるで7年ぶりぐらいかな?」

「……!!」

 

 俺の言葉で全てを悟ったのだろう。ラーヴァはみるみる温度が上昇し烈火のごとく怒り出した。

 

「この……お邪魔虫め! なんてことを! 私の天真に! よくも、よくも!! やっとここまで愛情をためてきたのに! 今度こそ上手くいっていたのに!!」

「ラーヴァ! 俺は話し合いに来たんだ! お前とはまだやり直せる!」

「うるさい……もうあなたに用はない。私の思い通りにならないテンシンなんて……」

 

―――死んじゃえ―――

 

 普段のラーヴァからは想像もつかないような冷たい声。完全に俺をモノとして見ている。世界を跨ぐ力を持つと、こんなに冷酷になってしまうものなのか。

 

「約束、破るのかよ? 俺を見てくれないのか?」

「……! 偽物が、私の好きな、愛した人の言葉を騙るな!」

「だがそれも俺の言葉だ。俺の気持ちも! 何も変わってない!」

 

 冷めきったラーヴァの瞳に温度が戻った。

 

 俺の言葉は届いている!

 

「……いいよ。だったら相手してあげる。デュエルで白黒つけようよ」

「デュエルだと?」

「デュエルの結果なら約束を破ったことにはならない。あなたも納得する。なんの問題もないよね?」

「ダメだ!」

 

 大きな声と共に乱入してきたのはユベルだ。

 

「なぁに? お邪魔虫は引っ込んでいてくれる?」

「ダメだ! テンシン! よく聞け! 今の君にはあいつを倒す準備はできていない! 早まっちゃダメだ! もうこの世界が最後なんだよ?!」

 

 ユベルはまだ踏ん切りがつかないらしい。俺とラーヴァが会えば、戦いが起こるのは必然。もう、俺達は戦うしかないんだ。

 

「やらせてくれ。こうなるとは思っていた。俺がこいつにケジメをつけるしかない」

「だけど! 君はそいつに勝ったことがないだろう! こんな正攻法で戦う必要なんてないんだ!」

「ユベル、俺は決めたんだ。ラーヴァは俺が完膚なきまでに叩き潰す。そして全部元に戻す! ラーヴァかトーラ、どっちかなんて選べるかよ」

「そのためにラーヴァを力でねじ伏せるつもりかい? あまりに無謀だ! 君らしくもない!」

「いいや、これまで勝てなかったのはあくまでラーヴァに創造の力があったからこそ。この空間なら条件は五分! 実力で俺が負けることはない! そもそもこいつにデュエルを教えたのは誰だと思ってる?」

「ヒヒヒヒ……おバカさん。昔のことを少し知っただけで、ラーヴァの師匠気どり? あなたなんかとっくに超えてる。かかっておいで。全力で叩き潰してあげる」

 

 こいつとは白黒つけるしかないんだ。ここで勝って、完全に屈服させることさえできれば、俺がラーヴァの力を抑え込むことができれば、トーラが死ぬことも、俺が死ぬこともない。

 

勝てば、全て解決する!

 

「さぁ、デッキをセットしなよ。あなたにとって最後のデュエルだよ? 慎重にカードを選んでね」

「なんでも使えるってことは、お前にターンは回さねぇぞ?」

「あなたのターンが回ってくれば、だけどね」

 

 くっ……やはりそうなるか。

 

 この異世界は人の思いが具現化してカードになる。どんなデッキでも作れる。だからこそデュエルは激しく高速化する。

 

 この勝負、俺かラーヴァ、先攻をとった者が勝つ。

 

 デッキをイメージしてディスクにセットした。ちらりとラーヴァを伺うと寒気がするような壮絶な笑みを浮かべている。

 

 そのとき、脳裏にこのデュエルの結末が過ぎった。

 

 俺が手札を5枚引いた瞬間、やられる……

 

「くそっ!」

「終わりだね」

「天真……はやまったか!」

 

 ユベルはがっくりとうなだれている。そうか、俺はこれから手札を5枚引かないといけない。対してラーヴァはすでに5枚引き終わっている。改めてカードを引きなおす俺が先手を取ることは難しい。

 

 デッキ作成に集中し過ぎた。

 

―――さぁ、デッキをセットしなよ。あなたにとって最後のデュエルだよ? 慎重にカードを選んでね―――

 

 あれすらラーヴァの罠だったのか。

 

 終わった……

 

 …………

 

 いや、まだだ!

 

 引きの強さは思いの強さ! 気持ちで負けなければ奇跡は起きる!

 

 まだ、俺が先攻を取れなかったとしても、俺に勝つ方法は残っている!

 

 神をも凌ぐ力を持つラーヴァに勝つには究極の力に頼る他ない。勝利の目があるとすれば、それはエクゾディアをおいて他にない!

 

 3週目の世界、そこで俺がエクゾディアを使ったことさえ運命! 意味のあるプロセス! 今日このときのためだったんだ!

 

 俺の勝つ方法は1つ、エクゾディアパーツ5枚……その全てを最初のターンに揃えること! それができれば俺にも勝機はある!

 

 確率で言えば約66万分の1か……だが、この世界で確率なんてもの関係ない!

 

「絶対に俺が勝って……」

「あなたはもう、ラーヴァのものだよ……」

 

 デッキに手を置いた瞬間、感じたのは未だかつてないほどの圧倒的なプレッシャー。俺が、気持ちで、押されている……!!

 

「まだだ! 俺は負けない……!!」

 

 無意識に俺は勝つではなく負けないと口にしていた。

 

 ラーヴァに圧倒されたまま引いた5枚の手札は、俺の心中を投影したかのようなひどいものだった。

 

 トゥーンのもくじ

 魔法石の採掘

 トゥーンのもくじ

 トゥーンワールド

 苦渋の選択

 

 負けた。

 

 パーツも0枚。万が一の可能性すらない。圧倒的な差を見せつけられた。ほぼ最悪と言ってもいいような手札。先攻をとれたとしても勝つことはできるだろうか?

 

 もう、俺に勝ち目はない。

 

 そして俺が先攻を取ることはできない。こんな放心状態で、ラーヴァの速さにはついていけない。

 

「ドロー!」

 

 死刑宣告になるはずだったその声は、ラーヴァの声にしては少し大人で、そして希望に満ちていた。

 

「あなた……なんのつもり?」

「これから世界の命運を決する戦いが始まるんでしょ? だったらデュエリストとして、黙って見てるわけにはいかないわね」

 

 ドローしたのは蚊帳の外、誰もがその存在を忘れていた、トーラだった。

 

「トーラッ! お前、なんでっ!」

「水臭いわね。強敵……なんでしょ? たまには私を頼りなさいよ。強くなって俺のこと助けてくれって、言ったのはアナタよ? テンシン」

 

 思い出すのはこの世界の記憶。帰省した時、たしかに俺達は約束した。

 

―――俺よりも強くなって、今度はトーラが俺のこと助けてくれ! 俺はデュエリストとしてもお前のこと尊敬してるんだからさ――

 

 まさか、こんなに早くその時がくるなんて。異世界での戦いでトーラは俺の想像を遥かに超えるほどたくましく、そして頼もしくなっていた。

 

 本当に俺のことを超えていってしまったのかもしれない。

 

「うふふふ……アハハハハハハ! これはいい! 私はね、あなたのことが憎くて憎くて仕方がないの! 自分からデュエルを挑んでくれるなら好都合! テンシンの目の前で! ドロドロに溶かしてやる! 私から天真を奪った罪を今ここで! これまでの世界の分も償わせてやる!」

 

 ドロォ……

 

 ラーヴァの体が溶けだして、マグマがその体を伝っていく。さらに体中から噴き出たマグマから凄まじい熱気がこっちまで飛ばされてくる。

 

 負ければタダでは済まないことはこの場の全員が理解している。トーラも少ない会話からこれが只ならぬ戦いであることは理解しているようだ。

 

 そして、それでもなおその瞳には並々ならぬ強い意志が宿っている。何者にも決して屈することのない、本当の強者の目だ!

 

「だったら私の参加は認められた。3人で三つ巴のバトルロワイヤルよ!」

「面白い。次は私のターンだから。テンシンには1枚もカードはドローさせないよ」

「そのセリフ、そっくりそのままあなたに返すわね」

「バカなの? あなたのデッキは知っている。私には絶対に勝てない」

「テンシンッ!」

 

 唐突にトーラが俺の名前を呼ぶ。なにか大事なことを伝えようとしているのか?

 

「デュエルはお前がカードを引いた瞬間始まっている。もうプレイヤー間の相談はできないよ」

「絶対勝つって宣言する割に小心者なのね。テンシンと比べたらずいぶんと器がちっちゃいこと」

「小娘が……まずは貴様から骨まで溶かしてやるからな!」

 

 おっそろしい表情のラーヴァに思わず後ずさりしてしまった。しかしトーラは全くひるまない。

 

「テンシン、あなたは最後まで勝つことを諦めてはいないわよね?」

「……」

 

 なんだ? 唐突なトーラの言葉。どんな意味がある?

 

 翔ける思考。回る脳みそ。そして1つの答えに辿り着いた。

 

「あぁ、俺は諦めてない。けど希望は……0だった」

「そう……0だったのね」

「はぁ? 君たち、ラーヴァの熱さで脳ミソ溶けちゃったの? サレンダーなんて認めないからね? そして敗者は命を失う。異世界のデュエルは命がけ、わかってるよねぇ?」

 

 ラーヴァは気づいていない。これはトーラの作戦だ。だとすると、トーラはとっさにデッキを入れ替えたのかもしれない。たしかにさっきまで誰もトーラを気にしてなかったし、存在すら忘れていたはず。

 

 まだ、希望はある!

 

「私のターン! テラフォーミング!」

「ムダ。灰流うららの効果発動! 手札にカードを加える効果を無効にする!」

「だったら強欲な壺!」

「させないよ! 緑色の宣告者の効果で無効!」

「王立魔法図書館を守備表示! 魔力掌握! 効果でカウンターを乗せる!」

「ムダなの。幽鬼うさぎの効果で王立図書館を破壊するよ。これでもう打つ手なしでしょ?」

 

 なんてことだ。徹底的に無効。そして次のターンになれば命削りや天よりの宝札で手札を補充する。しかもラーヴァはまだ手札を1枚残している。何を持っているかわからない。うかつなことはできない。

 

「さすがね。テンシンが強いっていうだけあるわ。何もドローできなければどうしようもない。道理でテンシンが負けるわけね」

「もう終わり? 私のターンに入るよ?」

「慌てないでよ。こっちはまだ2枚残ってる。これで希望をつないでみせる」

「希望なんてない。みんなラーヴァが溶かしちゃうから」

「これをみても同じことが言える? 闇の指名者! これでテンシンに私の宣言したカードをデッキから手札に加えさせる」

 

 闇の指名者! そのカードだけで、トーラの意図がわかった。

 

「そんなカードを……チッ! 面倒なことを!」

「無効にはできないわよね? だって魔法を止めるにはカードが2枚必要ですもの」

「よくわかってるね……この神々の戦いに足を踏み入れるだけのことはあるの」

「神様、ねぇ。まったく、ずいぶんわがままな神様もいたものね」

 

 それを聞いて、再びラーヴァの熱気が溢れ出す。

 

「おいおい、あまりラーヴァを挑発するな! テンシンの妹!」

「それを言うなら、あなた、世界をどうにかする力があるならこの子もなんとかしてよ」

「痛いところをつくねぇ。君の妹はいったい誰に似たんだろうね、世渡天真?」

 

 知るか! 俺とは全然性格違うからな、トーラは。それにゾーンに入ってるときのこいつは無敵だ。ここからでもあるいは、ラーヴァの喉笛にその刃は届くか?

 

「早くカードを宣言しなよ? まさかここに来て悩んでるんじゃないだろうね?」

「悪いけど、あなたよりも私の方がテンシンとは深い愛情で結ばれてるの。一緒にしないでもらえる?」

「……ぶっ殺す!」

 

 トーラのやつ、わざとさっきから煽ってるフシがある。少しでも相手の冷静な判断を狂わせようってことか?

 

「宣言するのは封印されしエクゾディア! さぁ、デッキを開いて!」

「エクゾディアは……ある! 俺のデッキはそう、エクゾディアだ!」

 

 よし! やはりトーラは賭けていた。勝つならこれしかないことを瞬時に判断し、それを俺も選択することを予測した。そしてこいつはとんでもない奇策を思いついた。自分は持っていないエクゾディアを、なんと、俺に揃えさせようとしているのだ!

 

「さぁ、あと4枚ね?」

「エクゾディアを……テンシンに……それが、君の愛情だっていうの? それは、ラーヴァへのあてつけのつもり? もう、怒り過ぎて、怒りでおかしくなっちゃう……ふふふふふ」

 

 あと4回。トーラなら可能なはずだ!

 

「命削りの宝札! 手札が5枚になるようにドロー!」

「よし!」

「おいおい! まさか本当にテンシンに5枚のパーツを揃えさせるつもりかい!? まさか、勝てるのか! あのラーヴァに! あんな小娘が!」

「精霊さん、そのまさかよ! 私のドローは奇跡を起こす! 魔法石の採掘! これで命削りの宝札を手札に!」

「させない! DDクロウの効果! 命削りの宝札を除外!」

 

 ニヤリ。トーラが笑った。

 

「かかったわね。これであなたの手札はゼロ! 私の勝利を邪魔するものはなくなったわ!」

「よく言う。命削りの宝札がなければもうドローできない!」

「ドローなんて問題じゃない。私が除外されたくないものは他にある! 魔法都市エンディミオンを発動! さらに天使の施し! そして今捨てた2枚の誘蛾灯レベル4の効果で王立図書館を2体特殊召喚!」

「なにぃ!? こんな方法でモンスターを!」

 

 トーラは俺とのデュエルを覚えていたのだろう。そのときの戦術を咄嗟に取り入れたんだ。だが、カードの発動手順にやや違和感がある。トーラがミスをするとは思えないが……。

 

「そして成金ゴブリンを発動! さらに無の煉獄! もう1枚の成金ゴブリン!」

「一気に魔力カウンターが貯まった!」

 

 なんてやつだ! 最後の1枚の手札で魔力カウンターを3つ貯めやがった!

 

「よっしゃ! やれ! トーラ!」

「もちろんよ! 2体の王立図書館でそれぞれ1枚ドロー! さらに愚かな埋葬! エンディミオンを墓地に送る! 精神統一を発動! これで6つ! 神聖魔道王エンディミオンを特殊召喚! 闇の指名者を手札に! いくわよテンシン! 2枚目! 封印されし者の右腕!」

「ありがたい!」

「図書館で2枚ドロー! ワンダーワンドをエンディミオンに装備! 効果で2枚ドロー! 魔法石の採掘! 闇の指名者を手札に!」

 

 さっきからやけに闇の指名者をサルベージする。妙な動きだ。強欲な壺とかを持ってくる方が本来自然だ。

 

 まさか……! トーラのやつ、デッキに闇の指名者が1枚しかないのか! だから命削りの宝札を除外させたんだ!

 

「まさかお前、そのカードがデッキに1枚しかないのか!」

「あら? 気づいた? テンシンも気づいたみたいね。そうよ! 私はこんな使い道のないカード集めていないもの。たまたま1枚持ってたの。タッグデュエルすることがあったら入れ替えるためのサイドデッキに1枚だけ入れて持ってきてたんだけど、役に立ったわ」

 

 おったまげだ。この土壇場でそんなことをやってのけるとは。トーラは俺を超えてしまった。

 

「命削りの宝札はなくても5回発動できる自信があったのね。しかも墓地に干渉する手札誘発まで読まれて……そう、そうなのね」

 

 ラーヴァが独白のあと、なんとデッキに手を置いてしまった。

 

「なんのつもり?」

「今回はラーヴァの負けにしておいてあげる。あなたのこと、侮ってた」

「……」

 

 あのラーヴァがサレンダーした?!

 

 なんてことだ……。

 

 とんでもないことをやってのけたトーラは、しかし、沈黙を保ち何も語らない。

 

「でも、これに勝ってもまだ終わりじゃない。あなた達はただ、元の世界に還れるだけ。最後の決着はそこで決めましょう。今度こそ正真正銘、1対1だよ。テンシン……ううん、私の愛した天真、今度こそ、ラーヴァの気持ちを受け止めてね」

 

 ゴゴゴゴゴゴ!!

 

 世界が崩壊する。ラーヴァは昇天し消えていった。

 

 元の世界に戻れるんだ!

 

「トーラ! ありがとう!」

「えへ♪ なんか勝てちゃった」

「なんかって、お前の完全な勝利じゃないか」

「まったく、素晴らしいデュエルだった。あとは君が勝つだけだ。もうここまで来たら何も言わない。テンシンに全てを託すさ」

 

 とんでもない重圧だな。さっきは威勢よく勝負を挑んだが、改めてどれだけ自分が無謀なことをしたのか思い知ることになった。

 

「ううん、そうじゃないの。実はさっきのデュエル、サレンダーしてもらえなかったら勝てなかったの」

「……は?」

「まさか手札事故を起こしてたのか!」

「それこそまさか! 図書館のカウンターも3つだし、1枚引ければ10枚引ける自信があるわ!」

「だろうね。さっきの君はそれぐらいの気迫があった。じゃあなぜ?」

「実はね、墓地のマジックを回収できるカード、魔法石の採掘はもうデッキに残ってないの」

「え?」

「他に回収する手段はエンディミオンしかないから、たぶん物理的に魔力カウンターが足りない気がするのよね。結構無効にされたりしたし」

 

 そうか、トーラはカードを創造したわけではないんだ。だから外野からは見えない制約とも戦っていた。だから微妙に発動手順に違和感があったのか。

 

 トーラはあらゆる可能性を考えて、絶対に無効にされてはいけないカードを確実に通していた。

 

 たとえ命削りの宝札を失うようなことになっても!

 

 同様に、魔法都市エンディミオンを天使の施しより先に発動したのも、エンディミオンのサルベージ効果を1回でも多く使うことを優先していたわけか。

 

 勝つには魔法都市への魔力カウンターのストックを図書館よりも優先しないといけない。

 

「まさか、それなのにあれだけ自信満々だったのか! 君たちが負けたら殺される上にこの世界はリセットされて全てが終わっていたんだ! それで、あの大立ち回りか!!」

「俺よりトーラの方が勝てそうな気がしてきた」

「同感だよ。まさか世渡トーラがここまでやるとは。世界を3度見てきて初めて知ったよ」

「トーラはこの世界で成長したんだ。他の世界とは違う」

「そうかもしれないね」

 

 次は俺の番だ。もう一度ラーヴァと戦ってあいつに勝つ。そしてあいつを説得するしかない。

 

「テンシン。君は本当に勝てるのかい? いや、勝てると思っているのかい?」

「やっぱりトーラの方がいいって?」

「いいや、そうじゃない。異世界では君はエクゾディアを使うことができたから、かろうじて勝つことはできた。だが、この世界ではそうはいかない。ラーヴァは文字通り神の力を持っている。それに勝つとなればこちらも同等の力を得るしかない」

「同等……ユベル、何か方法があるのか?」

「実はあるんだ、その方法が1つだけね」

 

 はぁ!?

 

「だったらそれを早く言え!」

「まったく……君が話を聞かずに飛び出したんだろう? 結果オーライではあるけどね」

 

 そのことは、俺も今考えていた。

 

 あそこで俺が登場しなければトーラは犬死、この勝利もなかった。結果的に俺達は最高の立ち回りをしたことになる。

 

 さらに言えば俺は一度完全にラーヴァに敗北したが、それでもまだこうして生きている。

 

 思い起こされるのはこの世界での最初のデュエル。相手のミスがなければあっさり敗北していた運命。しかし、何の因果か、俺は勝利してここにいる。

 

 このツキを手放してはいけない!

 

「この世界でなら、ラーヴァに勝つことができる。言え!」

「覚悟はいいね。それは君を魂の片割れがあった場所へ帰すことだ」

「魂の片割れ?」

「君の記憶の世界があった場所、君が前世と呼んでいる世界さ」

 

 俺は……帰れるのか!?

 




もうなんでもあり()
これでも原作の方がぶっとんでるのでこれぐらいは許容範囲のはず……



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