気づいたらデュエルアカデミア   作:りんごうさぎ

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掟破りの融合封じ

「退学!?」

「そういうことです」

 

 この状況……見覚えがある!

 

 万丈目を潰した次の日。突然寮に爆破予告をするベレー帽の怪しい連中に呼び出され、今モニターに映っている校長に退学を言い渡された。これは廃校のデュエルがバレて制裁タッグをやらされる十代達と同じ流れだ。丁度十代達も同じ時期にやらかしたはず。

 

 ひとまず事態を把握しないと。十代らはクロノスの差し金だった。なら俺は?

 

「理由は?」

「とある生徒から君が禁止されているアンティルールを多用してカードを乱獲しているという情報が入ったのです」

 

 その一言で全て悟った。万丈目、あいつが負けた腹いせでこんなことを! だがこれなら弁舌でなんとかできる。

 

「それはしっかりと事実確認したのですか?」

「もちろん。他の生徒も複数証言しています」

「いーや、不十分ですね。あなた方は実態を把握していない」

「……というと?」

「確かにアンティルールをしたことは事実です。認めます。しかし、なら奪ったカードが元々誰のものだったかというと、それは俺です」

「どういうことですか?」

「俺は昔から陰湿なイジメにあっていて、大量にカードをとられていた。しかしそれもガマンの限界に達した。だから俺は報復することにしたんです。かつて俺からカードをむしり取っていった奴らから自分のカードとプライドを取り戻すためにデュエルで制裁を下したんですよ。校長先生は俺が悪いと思いますか?」

「うーん。事情はわかりましたが、規則は規則ですので……簡単に許されることではないですね」

「ではせめてどうすれば良かったか教えて頂けますか? このまま虐げられ続けるべきだったとおっしゃるのですか? あるいは俺の話がウソだと思っているのですか? 俺は周りの目があるところで堂々とカードをとられていたので、レッドの生徒なら誰にきいても確認がとれますよ。テンシンはいじめられっ子だったとね」

「……」

 

 返答しないということはどうすべきだったか解答できないということだ。理不尽な申しつけであることは理解してもらえたらしい。

 

「そのタレコミ……おそらくタイミングから言って万丈目でしょう? あぁ、肯定も否定もする必要はないです。一応匿名でってことなんでしょう? 言っておきますが、あいつもアンティルールの常習犯です。どちらかというと搾取する側の人間。奴に関しても因果応報。十代辺りに確認すれば裏はとれますよ」

「……わかりました。そこまで言うのなら信用しましょう。確かに理不尽な面もあったかもしれません。では即刻退学というのは取り消して制裁デュエルで決着させましょう」

「制裁デュエル?」

「ふふふのひー! いくらあなたが言いわけを並べようとも、ペナルティは絶対ぜったいぜーったいに、避けられないノーネ! 制裁デュエルは、あくまで救済措置! もし勝てたら無罪ほうメーン! しかーし、もしも負けたーら! 即刻退学にしちゃうのーネ!」

 

 急にしゃしゃり出てくる変態クロノス。こいつが事態をややこしくさせたのであろうことは想像に難くない。だが校長も反対はしなかったのだろうな。

 

「やけに話が速い。つまり最初からその制裁デュエルをすることは決定していたというわけですね? レッドを目の敵にするクロノス教諭とデュエル大好きの校長の思惑が見事に一致したと」

「ギクリンチョ!」

「おや、ずいぶん手厳しい。納得いきませんか?」

「話の進め方は納得いかないなぁ。しかし事情が事情。デュエル1つで無罪放免なら話に乗っても構わないです。元より拒否権はなさそうだし」

「おぉ、潔い。実によい心がけです。もちろん勝てば全てお咎めなしとなることは保証しましょう」

「ふひひひ! 結局上手くいったノーネ! 所詮はオシリスレーッド! 単純ですーノ!」

 

 言ってくれる。俺が負けると思っているならそう考えるのが自然だけど……俺は負けないぜ?

 

「で、日時と場所、相手は?」

「制裁デュエルはユウキジュウダーイのタッグデュエルの後、連続して行うノーネ! 相手は当日までシークレット! 秘密ナノーネ!」

「当然それなりに歯ごたえがあるやつが来るんだろうな?」

「もちろんもちろん、もちのロンーッ! あなたでは絶対勝てませんノーネ!」

「ふーん。最初から俺を退学させる気マンマンか。あんたもなかなかいい教師だね」

「アウチ! 口がちょこっと滑ったノーネ」

「日時は追って知らせます。健闘を祈りますよ」

 

 本当にこの学園はやることがめちゃくちゃだな。雑過ぎるだろ。元はと言えば万丈目のやつが余計なことしくさって……。

 

 とはいえこれはいい機会。俺の実力をわかりやすく全校に知らしめることができる。実際デュエルさせられる程度じゃペナルティとしては大したことない。むしろ今後大っぴらにアンティルールをふっかけづらくなる方が痛い。次は流石に許されないだろうし。

 

 そのうえ最近はレッドの間で俺の強さが知れ渡るようになり、自ら獲物になる奴も減ってしまい、カードはあまり増えていない。今は周りも弱いからよわよわデッキでもなんとかなっちゃいるが、早いところ強化しないとパワー不足は否めない。金さえあればカードも買えるだろうがそれも叶わない。何か方法はないものか。考えておく必要があるだろうな。

 

 考え事をしながらレッド寮に戻ると近くの海岸で十代と翔がデュエルをしていた。なぜだ? そんな話もあったかもしれないがド忘れしてしまったな。

 

 だが覚えていなくてもわかる。あの翔が十代に勝てるわけない。案の定とんでもないミスをして十代にも呆れられている。

 

「やはりザコはザコか」

「あっ! あなたは世渡天真!」

「はぁ? 誰だお前? なぜブルー女子がここに?」

「あなた、私のことを覚えてないの!?」

 

 屈辱にまみれた表情で俺を睨む明日香。プライドが高い他のブルー生徒に比べれば作中性格はかなりマシに描かれていた。だが、こうしてみるとやはりプライドが高い面もあるのがよくわかる。俺ごときに忘れられたことが許せないのだろう。

 

「お前はっ、レッド生を根こそぎ潰しまわっている赤い悪魔! 世渡天真! とんでもない悪党なんだな!」

「ん? お前は見ない顔だな。人を指さして悪党呼ばわりとは躾がなってねぇ。デュエルで上下関係を叩きこんでやろうか?」

「ひっ!? 暴力反対なんだな!?」

 

 明日香と一緒にいたのは前田隼人。こいつは2年(1年)という肩書きだったはずだが完全に腰が引けてる。カードは簡単に奪えるだろうな。……横にこの女王様がいなければ。

 

「やめなさい! 勝手は許さないわ! あなた、相当悪名高いようね」

「だったらお前が相手になってくれるのか? ビビッて足がすくんでいるようだが?」

「そんなわけ、ないでしょうっ」

 

 空元気だな。前回のデュエルは相当堪えたらしい。情けない。

 

「だったらデュエルしなよ。ブルーならレッドより強いんだろう?」

「それは……」

「明日香さん、大丈夫なんだな? 体が震えて……」

「大丈夫よ! 震えてなんかないわ!」

「眉が上がっている」

「はっ!? うそっ!?」

 

 もちろんウソだ。だがこの慌てっぷりでは同じこと。

 

「やっぱりやめとくか。ビビリ腰の弱そうな奴と戦ってもつまらないし」

「……ほっ」

 

 完全にキバが抜けてやがる。ここで安心するような腑抜けならもう敵じゃない。

 

「おい明日香、隼人! どうしたんだ? ってお前はこの前の!」

「あっ!! 僕をミジンコ扱いしたイヤな奴! なんでそんなところにいるんだ!」

「たったいま目の前で己の無力さをかみしめていたクセに威勢がいいな」

「うっ!」

 

 俺の一言ですぐにしょんぼりする翔。わかりやすっ!

 

「ここにいるのは単純なこと。レッドの俺がレッド寮に戻って何が悪い? 普通だろ?」

「そりゃそうだ。でもなんでこんな時間に外に出てたんだ?」

「理由ならお前らと同じさ。俺も制裁デュエルとやらをすることになった」

 

 なんだってー! と4人の声がこだまする。明日香と翔は露骨に嬉しそうだな。我ながらよくもまぁここまで嫌われたもんだ。一応先に喧嘩売ったのは翔の方だから俺は1ミリも悪くないんだが?

 

「お前らは誰が制裁デュエルをするんだ? 十代達がタッグデュエルをする、とは小耳に挟んだが……まさかペアの相手はお前じゃないよな、丸藤君?」

「ぼっ、僕だよ! なんか文句あるの!」

「ありゃりゃ……それは災難だったな。十代はそいつと仲良く退学か。ついてねーなぁ」

「それは翔じゃ足手まといになるってことか?」

 

 十代が思いのほか強い口調で言い返してくる。こんなことする奴だったのか。意外だ。

 

「それ以外どんな意味が? 今のデュエル、見てたぞ? そいつはずいぶん弱いなぁ?」

「翔は弱くなんかない! 俺は絶対翔と勝ってみせる!」

「アニキ……!」

 

 えらく慕われてるな、十代。自然と人望が集まるところは俺にはマネできない。

 

「ふーん。ずいぶん信頼されてるな。一応カイザーの弟だからってことなら納得できなくもないけど。で、そこでビクビク震えてるブルー女子と知らない顔のレッドはなぜここに?」

「えっ!? この前明日香さんとデュエルしたのに覚えてないんスか!? 記憶力悪すぎるッス!」

「……あぁ、そういえばお前を退学させるかどうかってとき戦った相手か。弱かったんで忘れてたよ。君の言う通り、記憶力が悪いみたいだね、俺は」

 

 この丸メガネ、毎回俺の腹が立つことばっかり言いやがる。デュエルする機会があったらいじめ倒してやるからな?

 

 アホ扱いされるのもムカツクので思い出したことにするが、コアラが余計な一言を漏らした。

 

「……本当は覚えてたんじゃないのか? 知らない人間を見る目じゃなかったんだな」

「えっ! あなた、私を……」

「邪推だな。証拠もない。証拠と言えばお前らなんで退学になった? 俺は根も葉もない言いがかりでこんなことになったんで、クロノス辺りの差し金だと思っているんだが」

「俺たちは昨日廃校に行って、それがバレてこんなことになったんだ。明日香達も一緒にいたけど、なぜか俺と翔の2人だけなんだ」

「とするとおかしいな。4人全員退学ならまだしも十代と落ちこぼれ君の2人だけっていうのは。……そういえば十代は入学試験デュエルに勝ってからクロノスから嫌われていたよな? あと廃校で何か変わったことはなかったか?」

「闇のデュエルに見せかけたイカサマデュエリストと戦ったけど、それだけだぜ」

 

 元々俺は事の真相を知っている。だが、真相を知ることを明らかにするにはその根拠を示す必要がある。ここで今聞いた話は俺が真実に辿り着く根拠として十分な役割を果たせるはずだ。

 

「……なるほどね。面白い。いいこと聞かせてもらったよ。礼といっちゃなんだが、十代よ。タッグの相手を俺に代える気はないか? 俺の強さは知ってるだろう?」

「なんだって!?」

「ちょっと待ちなさい! そんな勝手はダメよ! そんなことしたら……」

「したらなんだっていうんだ? なぁ十代、お前も退学はイヤだろう?」

「あ、アニキ……」

 

 不安そうな表情で十代を見る翔。それを見て十代は即答した。

 

「悪いけど、俺は翔と組むぜ!」

 

 男だねぇ、十代。兄貴分として舎弟を見捨てるわけにはいかないんだろうな。いずれ翔はあっさり十代を見限るのに……報われねぇな。

 

「おかしいと思わないのか? お前ら2人だけ退学話になったのは十代、お前を退学させるための罠だ。普通にデュエルさせても、強いお前のことだ、誰をデュエルの相手に立てても勝てないと踏んだのだろう。そこでタッグデュエルをもちかけ弱い奴と無理にペアを組ませた。これならさしもの十代も負けるだろうとね」

「でも、それなら翔でなくて俺がペアの相手でもいいはずなんだな」

「確かに、お前もレッドではある。だが十代の退学を願う輩にとって、翔はそれ以下の実力という評価なんだろうよ。実際成績順に現れているだろ?」

「ちょっと待って! 成績順って……どうもあなたはこれが全てクロノス教諭の仕組んだものだと確信しているみたいだけど、まだ決まったわけじゃ……」

 

 成績順の一言で俺の言いたいことを理解するとは頭がいいじゃないか優等生。そうだ、これは全てクロノスの差し金。何かあればクロノスを脅せるように今こうしてクロノス黒幕説を推しておかないと。

 

「あのラブレターの筆跡もクロノス教諭のものじゃないのか?」

「えっ!? それは……よくわからないわ」

「だらしねぇな。まぁいい。俺は今回の件、結構頭にきてる。復讐はとことんやる主義だ。前回丸藤を退学させるのは失敗したが、クロノスは逃がさない。逆に奴を退職までおいこんでやるよ。この俺をコケにしてくれた報いだ」

 

 3人が青い顔をする中、1人だけ俺に対して果敢に反論するものがいた。

 

「待ってくれ! お前、次から次へとこんなにたくさんの人を怖がらせてさぁ。退学とか、退職とか、そういうのやり過ぎなんじゃないか?」

「何が?」

「明日香達から話は聞いた。一度お前とデュエルして、それから明日香は自信を失ったみたいなんだ。翔も退学にさせようとしたって言うし、もうそんなことするのはやめてくれよ!」

 

 いきなりだなぁ十代。なんでもかんでも更生させようって思うところが主人公らしいといえばらしいか。

 

「翔はお前の舎弟らしいし、まぁかばうのはわかる。けどその女とは何の接点もないだろう? もしかしてお前らデキてんの?」

「何言ってるのテンシン! 違うわ!」

「できるって何だ? 明日香も急にどうしたんだ?」

「慌てた私がバカだった……」

 

 残り2人はアワアワしている。子供だな。

 

「ならどうして?」

「俺は強い奴とデュエルしたい! だから明日香にも立ち直ってほしいし、全力を出せるようになった明日香に勝ちたいんだ!」

「十代……」

「熱苦しい奴。よし、だったらお前が俺とデュエルしろよ。この腑抜けは俺が怖くてデュエルできないらしいから」

「ちがっ! 私は……」

「どうやらまた明日香をイジメてたらしいな。いいぜ! 俺がお前をぶっ倒して考えを改めさせてやる!」

「お前には以前、勝利目前のところで逃げられたからな。今度こそ叩き潰して俺には逆らえないようにしてやるよ」

 

 さぁ、デュエルを始めようか。丁度相手のキーカードを潰す戦術を考えたところだ。こいつのデッキで肩慣らししておこう。楽しいデュエルの時間といこうか。

 

「「デュエル!!」」

 

「俺のターン、ドロー! 俺はスパークマンを召喚し、カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

「まずは無難な滑り出しだな。融合は引けなかったのか?」

「さぁ、どうだろうな」

 

 表情からだけでは判断できない。十代、なかなかの役者っぷりじゃないか。

 

「ふむ。さすがにあの女ほどわかりやすく表情には出さないか」

「くっ……」

 

 明日香は十代とは対照的にわかりやすく顔をしかめる。

 

「ドローカード! 俺はサファイアドラゴンを召喚してバトル! スパークマンを攻撃!」

「トラップ発動! 攻撃の無力化! 効果で攻撃を無効にしバトルを終了させる」

 

 しっかり融合素材を守ってきたな。バカなイメージの十代だがデュエルの内容はしっかりしている。本能的に最善の行動がわかるんだろうな。だが本能のみのデュエルはこちらの読みを通しやすい側面も併せ持つ。

 

「これで罠は使わせた。次のターンが楽しみだな。2枚伏せてターン終了」

「それはどうかな? 俺のターン、ドロー! よっしゃ!」

 

 ドローしたカードを見て喜ぶ十代。わかりやすい。今キーカードを引いたとすれば、それはあのカードしか考えられない。

 

「喜んでいるところ悪いがサンダージャイアントは出させない」

「何!?」

「フッ、その反応で確信が持てた。トラップ発動! マインドクラッシュ!」

 

 十代、お前の考えはお見通しだ。奴は融合があればワンターン目でも即座に使うことが多い。サンダージャイアントなら温存もありえるが、「攻撃の無力化」で凌いで次のターン融合モンスターで切り返すのは十代の得意パターン。故に読みやすい。十代なら必要なタイミングで必要なカードを絶対に引く。だから十代はこのターンに融合を引いてくる!

 

「マインドクラッシュですって!?」

「どうしたんですか明日香さん? そんなに驚いて?」

「そんなにすごいカードなんだな?」

「効果は強いわ。でもあのカードは使いにく過ぎるから普通は使えないはずなのよ。でもまさかテンシンの狙いは……」

 

 明日香は気づいたな。サンダージャイアントの名前に反応した時点で十代の狙いが融合であることはほぼ確定。ならその要、融合を捨てさせればいい。

 

「明日香のあの驚き様……いったいどんな効果なんだ?」

「無学なレッド達のために効果を教えよう。このカードはカード名を1つ宣言し、そのカードが相手の手札にあればそれを全て墓地送りにできる手札破壊カードだ」

「手札破壊!?」

「そして俺が宣言するカードは……十代、お前が今、最も言われたくないカードだ」

「ぐっ!?」

「俺は『融合』を宣言! マインドクラッシュは不正防止のため相手の手札を全て確認することができる。手札を見せてもらおうか」

「くっ……よりによって融合が選ばれるなんて」

 

 十代の見せた手札は クレイマン、融合、フレンドッグ、融合解除、ハネクリボーの5枚

 

 恐ろしいねぇ……融合を捨てさせなければこのターンでワンキルされていた。それにフレンドッグで融合を回収することもできる。運だけはいい奴だ。

 

「世渡天真、彼の本当の恐ろしさは相手の考えや手札のカードを透かしてみているかのような正確な読み。それに敵の心を惑わす巧みな心理戦で自分の都合のいい展開に相手を誘導することもできる。こんなデュエリスト初めてみたわ」

「アニキ……大丈夫ッスか?」

「まだ大丈夫よ。十代は全然諦めてないわ!」

 

 当たり前だがギャラリーは全員十代を応援している。それでも勝つけどね。

 

「俺はクレイマンを守備表示で召喚し、スパークマンも守備表示に変更。これでターンを終了する」

 

十代 手札3枚(融合解除、フレンドッグ、ハネクリボー) スパーク クレイ

 

天真 手札3枚 サファイアドラゴン 伏せ1枚

 

「なら俺のターン。ドロー! いやぁ、嬉しいねぇ、こうも簡単に俺の切り札が出せるとは。思った通り、お前は融合さえなくなればモンスターを並べて凌ぐしかなくなる。メインデッキには下級モンスターばかりだからな。特に今はフレンドッグの効果も使いたいだろうからなおさらだ」

「まさか、三沢を倒した時のあのカード!」

「私のトラウマ……!」

 

 十代と明日香は同じカードを思い出せているようだ。翔、隼人……お前らはもう少し勉強しろ。というか頭使え。

 

 俺は若干テンションをあげながら気分よく切り札を投入した。

 

「そうだ、お前にも味わってもらおう、灼熱のマグマを! 十代のモンスター2体を生贄に……出でよ、ラヴァ・ゴーレム!」

「これが……テンシンの切り札!」

 

 ヒーロー2体を骨に変えて溶岩の悪魔が姿を現した。青い瞳と視線が交差する。待ってましたと言わんばかりに派手な登場だ。

 

 もちろんソリッドヴィジョンに感情などあるはずもない。でもカードと気持ちが通じ合っている気がいつもするんだよな。アニメの世界とはいえ俺もどうしたものか。とんだロマンチストだな。

 

 いや、せっかくこんな世界に来たんだ。なんでも楽しんだモン勝ちだ。

 

「サファイアドラゴンを守備表示に変え、カードを2枚セットしターンエンド」

 

 あとは少しのターン凌げば俺の勝ち。十代はこれをどう乗り切るか……見ものだ。

 

「俺のターン……」

「おっと! エンドフェイズはまだ終わっていない! お前には何もさせないぜ! 最初のターンに伏せていたトラップを発動! 刻の封印! この効果で次のお前のドローフェイズをスキップする!」

「なんだって!」

「ドロー封じ!? 掟破りの効果だ!」

「ま、気持ちはわかるけどな。さぁ、どうする十代? まずは1000ポイントダメージを受けてもらうけどな」

 

 LP 4000 → 3000

 

 実際これはOCGでは後々禁止カードになるのだが、この世界では闇の仮面とのコンボはまだ誰も使っていないはず。当然コンボがなければ禁止される理由もないので普通に使える。アニメが禁止制限を合わせていたのは視聴者への気配りという意味合いだったのだろう。

 

「なんて熱さだ。しかもドローができなきゃどうしようもない。ここは攻撃あるのみ! フレンドックを攻撃表示で召喚してバトル! まずはラヴァ・ゴーレムで攻撃!」

「トラップ発動ドレインシールド。これで3000回復。しかもフレンドックは攻撃表示のままだな」

 

 LP 4000 → 7000

 

「よりによってそれを伏せてるのかよ! 仕方ない、ターンエンド!」

「お前、まだ勝負は続くと思ってないか?」

「何?」

 

 悠長に次のターンを待つ十代に敗北を宣言する。

 

「もうとっくに終わってんだよ。お前、やっぱりたいしたことねぇな。結局は引き運頼み。それがなければこの程度か」

「ここから俺を倒せるのか!?」

「お前のカードは全て知っているからな。もうどうしようもないぞ? 俺はリバースカード発動、強制脱出装置! これでラヴァ・ゴーレムを手札に戻す。さぁ帰っておいで」

「まだ防御カードがあったのね!」

「え、だったらどうしてさっき強制脱出装置の方を使わなかったんスか? ライフ回復のため?」

 

 翔にしては鋭いな。しかしこいつの気づきは毎回俺の相手を絶望させるだけ。手加減されている事実を突きつけているだけだ。

 

「どっちにしろ勝てることが確定したから、格の違いを見せるために使ってやったのさ」

「でしょうね。あなたはそういう性格のデュエリストだわ」

 

 明日香……。俺の性格をよくご存じで。

 

「さらにダブルアタックを発動! ラヴァゴーレムを捨てて効果発動! これでサファイアドラゴンは2回攻撃できる。さぁ算数の時間だ。1900を2倍して800を引くといくつだ、十代?」

「え~~っと?」

 

 十代は計算できないようだが明日香は即座に気づいた。

 

「……3000! 十代のライフと同じ!」

「アニキ!!」

「十代!!」

「ゲームセットだな。サファイアドラゴンで2回攻撃!」

「ぐあぁぁっ!!」

 

 LP3000 → 1900 → 0

 

 たった6ターン。俺のターンで数えると3ターンか。あっさり終わったな。

 

「この分だとマジで退学になるかもな。ったく校長の奴、どうして俺がレッドのままでこんな奴をイエローにしたがるのか理解しかねる」

「くっそーー!! 悔しい!!……テンシン! 今回は完敗したけど、次は負けない! 絶対に勝ってみせる!」

 

 威勢よく嚙みついてくるか。エドの時のような挫折は味わっていないようだ。何もさせてもらえなかったという事実がどれほどの実力差を表しているのか理解できないのだろうよ。

 

「あっさり過ぎてあまり効いていないみたいだな。リベンジするならもっとマシなカードをそろえてからにしな」

「テンシン!」

 

 十代の声を無視し、自分の部屋に戻った。本当に十代が退学になったらどうなるか、それはそれで面白そうか。そうなればセブンスターズは自分で始末するしかないが。

 




アニメの禁止制限ってどうなってるんやろうね
アニオリのぶっこわれカードが許されてるのでまともじゃないことは確かですが
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