過ぎし歳月の物語   作:バーベナ/Verbena

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第三話 道中

 

 診療所の扉を開けると、豊かな景色が目の前に広がった。

 家畜小屋や厩戸、人間の子供や、精霊のような存在まで──村の外周には丸太組の外壁がそびえていて、外の針葉樹がちらと見える。

 「アリョーシャ」

 わたしたちが歩いていると、遠くからアレクセイの名を呼ぶ声がした。目の前から少女が歩いてくる。

 「やあ、アーシャ。今朝は元気かい?」とアレクセイはいった。

 「えぇ、それはもうとっても。そちらの方は、昨晩の?」

 「うん。こないだ僕が外に出かけていた時に救助したヒト。リツカって言うんだ。」

 「アザーリャと申します」とその少女は丁寧に私に向かってお辞儀をした。紫のドレスを纏っていて、艶やかなブラウンの髪の毛が肩までかかっていた。わたしもつられてぎこちなく頭を下げた。

 「どうか、お身体には気をつけてくださいね。リツカさん。」

 「それにしても、綺麗なドレスだね。似合ってるよ。」とアレクセイは彼女に言った。

 「ありがとう。そろそろ催される村の祭事のために、村の人にしたためていただいたの。」

 彼女は照れ臭そうにそう言った。

 「今年の儀式は良いものになりそうね。じゃ、またね」とアザーリャは手を振って、向こうに行ってしまった。

 「仲が良くてね。よく彼女と話し合うんだ」とアレクセイは私にそう話した。彼は微笑んでいた。

 「・・・そういえば、お互いにちゃんとした自己紹介はしてなかったね」とアレクセイは急によそよそしくなってそう言った。

 「そうだったっけ?」とわたしは思わず吹き出してしまった。さっきのアザーリャとの会話からは想像できないような人見知り具合なのが、わたしにはなんだかおかしかった。

 「いや、なんというか、その、いろいろあったからね。それに、君のことが気になる。さっきの通信のこととか。リツカもヴォールフフみたいな魔術使いなの?」

 「ヴォールフフって?」

 「ヴォールフフっていうのはこの国の魔術師のことでね。諸々の儀式や祭事を取り行っているんだ。ほら、あっちの方にいるだろう?」

 アレクセイは向かいの方を指し示した。そこには呪術的な装いをした人々が、これまた呪術的な木彫りの像に向かって、なにやら群がっていた。

 「近いうちに祭事があるから、ああやって皆活発になってるんだよ」

 「わたしはヴォールフフではないけれど、魔術は使えるよ」

 「そうなの?珍しいね。リツカは神格でもヴォールフフでもないのに、魔術を使えるなんて。」

 「その、神格っていうのは・・・」とわたしはためらいがちに聞いた。

 「神格も知らないのかい?」とアレクセイは驚きをまじえて言った。「リツカはいったい、どこから来たの?」

 わたしが説明しようと頭を悩ませていると、アレクセイは急に立ち止まった。

 「さ、着いたよ。ここが僕とリューボフさんの住んでいる小屋だ。」

 

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