聖霊の軌跡   作:常葉樹

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大分、遅くなってしまいました。
詰め込みすぎたので近日に修正予定ありです。

先日、閃の軌跡Ⅱをクリアしました。
マクバーンが強い。敵キャラの中でダントツで好きです。

刀剣乱舞やってますが、鶯丸と長曽祢が来ません。6-2にはまだ行ってません。6-1のマップが長すぎて…




3 はじまりの心構え

はじまりの心構え

 

 

私は覚悟を決めて、すぐに扉を開け、フォルティスが入ったのを確認すると、扉を閉めた。建築の構造上、帝都に近いからか貴族が住んでいそうな様式の建物で辺りを見回すと、1つの扉があり、その方向へ更に進んだ。開く前にエニグマにセットされているクォーツを確認する。

私のエニグマにセットされているマスタークォーツは時属性の“カーディス”と呼ばれるマスタークォーツで大鎌が2本交えたマークが描かれている。

 

このマスタークォーツだけは自分が相性がいいだろうと思い、このエニグマを譲り受けた時と同じ時期に探してからの相棒とも言える。

 

学院で用意していたマスタークォーツは確か、クサナギだった筈。マカロフ教官が壊れたエニグマと一緒に持って行ってしまったため、少し曖昧だ。

セットされているエニグマのクォーツを確認してポーチに仕舞うと、扉を更に開けて、中へ進んだ。

 

 

一方、ユエが旧校舎に入っていくのを旧校舎近くの崖から見つめていたのは4人の男女だった。

 

「トワ、彼女の名前は判るかい?」

 

紫色の髪にライダースーツを着た中性の容姿を持つ者が指差す方向に見えた少女のことを小柄な少女に聞いた。

 

「新入生でⅣ組のユエ・ウィンゲルさん、どうして旧校舎へ!?」

 

 

「恐らく、何かを察知したんじゃないか?確か例のクラスの奴の1人と同じノルド高原出身なんだろ?俺がちょっくら見てくるぜ、武器を見ても前衛だしな」

 

驚きを隠せない小柄な少女に対して、バンダナをつけた青年は答えると、その場から飛び降りて一気に降りると、すぐに旧校舎に向かってしまった。

 

「あっ、クロウ君…行っちゃった」

 

「せっかく、知り合う機会をクロウの奴…よくも…。」

 

「アン、とりあえずクロウに任せてみよう。クロウは戦闘でのフォローも上手いし…見た限りの大鎌の武器属性は斬属性と剛属性、アンの武器は突属性と剛属性だから武器属性的に補うのが難しいから、クロウが適任だ」

 

作業着の青年が中性の容姿を持つ人物を宥めると、小柄な少女は旧校舎を心配そうに見つめていた。

 

旧校舎では…

「入る前から少し思ったのですが、不気味ですね…フォルティス」

 

「そうだな…ノルド高原にある石切場や遺跡などと同じ位かそれ以上だな。」

 

「入った瞬間に感じた嫌な予感が当たらなければいいですが…」

 

ユエはフォルティスと共に進んでいた。

 

背には包みから外した大鎌を右手に持ち、左手には腰につけたポーチの中にあるエニグマをすぐに取り出せるように構えていた。

 

「ユエ、中に入ったのはいいが、何をするつもりだ?」

 

「ガイウスに傷薬を渡そうと思いまして…ここにいるのは恐らく、…!?」

 

言いかけた時に目の前に現れたのは植物型の魔獣。

 

「この特別オリエンテーション、何かを試されています。なら、私が出来ることをするだけです。彼の道を阻まない程度に彼の進む道を進めるようにサポートをすること…それが今、私が出来ることであり、約束ですから」

 

言いながらも襲いかかる蔓を切り、更に本体の花に向かって、大鎌を投げつけ、止めをさした。

魔獣の断末魔が虚しく響きわたるが、姿と共に断末魔も終わりを告げた。

 

「あいつとお前の母にはまだ劣るが、大鎌の扱い方が様になってきたんじゃないか?」

「本当ですか!?フォルティスにそう言って頂けて嬉しいです!」

 

「ああ、ただもう少ししなやかさを持て。動きが少し硬い。ガイウス達はこの先約200アージュ地点だな。」

 

 

「判りました、行きましょう」

 

嬉しそうに喜んでいたが、追いつくためにその場から駆け出した。

 

 

あれから飛び猫という魔獣にも遭遇し、エニグマの火炎系の導力魔法を駆動させ、一気に片をつけ、再び走り出す。

 

襲いかかろうとした魔獣にはエニグマでフィールド攻撃を駆動させ、威嚇した所為かよっぽど強気な魔獣ではない限り近付かない。

 

走って距離を縮めた先にはガイウスと見慣れぬ少年が3人いたのが見えた。だが、上から2体の昆虫型魔獣が降りてこようとしていたのが目に入るとすぐにエニグマを駆動させ、火炎系の導力魔法で作った火の玉を天井へ向かって、投げつけた。

「ガイウスとそこの人達、伏せて!」

 

響きわたるのはガイウス以外には聞き慣れていない少女の声だった。

 

その声ですぐに彼らはしゃがんだ瞬間に声の方向に注意を向けた魔獣はユエの方へ振り向いて襲おうとしたが、ユエの火炎玉が昆虫型魔獣に当たり、燃えていく。

 

「ユエ、すまない。助かった」

 

「無事で良かった…ガイウスに何かあったら、ラカンさんに怒られてしまいますから」

 

「ガイウス、知り合いなのか?」

 

「確か幼なじみって言ってたよな。」

 

安心したユエに対して、緑色の髪の少年が尋ね、黒髪の少年は入学式後のことを振り返り、聞き返した。

「あぁ、リィンは入学式前に彼女と面識があって、マキアスとエリオットは知らなかったな。彼女の名前はユエ・ウィンゲル、俺の幼なじみだ。ユエ、どうしてここに?」

 

ユエは名乗ろうとした時にガイウスが代わりに紹介すると、ユエは簡潔に紹介と要件を言う。

 

「ガイウスから紹介があった通り、私はユエ・ウィンゲルです。宜しくお願いします。ガイウスにこれだけ渡すのを忘れてしまって、届けに来たんです。」

 

ユエはポーチから回復薬を取り出し、ガイウスに手渡すと、ガイウスはユエから回復薬を受け取った。

 

「わざわざすまない。」

 

「ありがとう、助かるよ。こんなに貰っていいの?」

「君は1人で大丈夫なのか?良ければ出口まで一緒に向かった方がいいんじゃないか?」

 

 

紅茶色の髪の少年と緑髪の少年がユエに聞いた。

 

「はい、良ければ使ってください。私はここから来た道へ戻ろうと思っていますので、お気持ちだけ受け取っておきますね。その方が特別オリエンテーション中の皆さんの邪魔になりませんし、単独で帰る時は敵をよく知っていて安全ですから。ガイウスと皆さん、ここから先、ここにいる魔獣とは違う敵の風を感じますから気をつけて下さいね。」

 

「あぁ、お前なら大丈夫だと思うが…ユエ、何かあったらすぐに知らせるんだ。すぐに駆け付ける。」

 

ユエは先にある道から流れる空気で気配を感じながら、そう言った。

それに対して少し心配しながらユエに声を掛けるガイウス。

 

「ありがとうございます、ですが、ガイウス、役目を放棄したらそれこそラカンさんに怒られてしまいますよ。その気持ちだけで凄く嬉しいです。ガイウスも何かあったら呼んでくださいね。皆さんに風の導きがあることを」

 

 

ユエはすぐに来た道を歩くと、ガイウスはその後ろ姿を見送っていると、ユエの横にいたフォルティスの存在に気付く。

 

「心配だが、彼もいるなら心配ないか。」

 

「おーい、ガイウス。行こうよ~」

 

「ああ、今、行く。」

ガイウスは少し先に歩いたリィン達と合流しにいった。

 

一方、後から入ったバンダナの青年はユエの行方を探していた。

 

「ちっ、進むのが早すぎる…奥に進んでるんじゃないのか?それとも俺が早いのか?」

やや焦りを見せていたバンダナの青年は入り口の方へと戻るユエの姿を見つけた。

 

「あっ、いたな。後は何とか…合流しないといけないな。」

 

キシャアアアア

 

矢先に入口の前には大型の植物型魔獣が立ち塞がっていた。

 

「うげ…マジかよ。さっきはあんなのいなかっただろ…ここらへんじゃ見ない魔獣だ。さっき倒した魔獣の大ボスか?」

 

とバンダナの青年はユエに気付かれない位の声で口に出した。

 

「大きい…」

 

「ここにいる魔獣と違い、桁違いの強さだ…どうする、ユエ?」

 

「ガイウス達に被害がいかないためにも倒します」

 

「やはりか…言うと思ったが、そこはお前もあいつもお前の母親も変わらんな。」

 

目の前の討伐対象を見上げて構えを戦闘態勢に切り替えるユエに懐かしみを込めて呑気に聞き返すフォルティス。

 

「フォルティス、下がっていてください。それと姿を見えないようにして…足音が微かだけど聞こえたから」

 

 

「了解した。」

 

フォルティスは出口近くに控えた。

 

あれを1人で挑むつもりか…武器は大鎌、相性は良いが、1人だと分が悪い。なら、俺が先輩として力を貸すまでだ。

バンダナの青年はタイミングを伺った。

 

「立ちはだかるなら迎え討つのみです」

 

構えから電光石火で後ろに回り込み、魔獣の蔓を切り落とした。

 

「おい、新入生!」

 

「!?」

 

いきなり声を掛けられ驚くユエに対して、お構いなしにバンダナの青年は姿を表した。

 

「名乗るのは後だ!こいつを倒すぞ」

 

「はい!」

 

バンダナの青年はユエの後ろで二丁拳銃を構え、ユエは大鎌を構え直した。

 

「ちっ、サラの奴には後でたっぷり言わないとな。環境を整えとけってな…いいか、俺がお前の呼吸を合わせるから一気に倒すぞ、頼んだぞ!後輩ちゃん」

 

「分かりました、先輩、私があの全ての蔓を封じます。先輩はあの毒を出す花の部分を一時的に止めることは可能ですか?」

 

「ああ、可能だ。いいぜ、その案に乗った!ヘマすんなよ」

 

「はい!」

 

「散って下さい!」

 

ユエは魔獣に向かって突進し、大鎌の刃がまるで舞を見せるかのように連撃し、大鎌を下から上へ振り上げたと同時に宙へと飛び、大鎌に力を込めて投げつけた。

その大鎌は旋回して全ての蔓を切り落とした。

 

「先輩、今です!」

 

「こいつで凍えな!」

 

その合図と共に拳銃で撃たれた弾丸によって魔獣の花の部分が凍る。

 

「これはちょっとしつこいですよ、弐の舞…猟犬!」

 

大鎌の斬空波の姿が獲物を追う猟犬のようになり、軌道を示した。その当たった場所に吸い込まれるように大鎌の一撃で止めをさした。

 

「ヒュゥー!やるじゃん!後輩ちゃん」

 

「先輩も流石ですね…。先程はありがとうございました。改めまして私はユエ・ウィンゲルと申します。先輩はどうしてここに?」

 

「そいつはご丁寧に俺はクロウ・アームブラスト。宜しくな、後輩ちゃん。ここで行われている特別オリエンテーションの手伝いをしているんだ。もし何かあった時の“助っ人”だ。」

「そうだったんですね…それでは私が勝手に入ったことでご迷惑をお掛けしていたんですね。申し訳ありません」

 

「いや、別にいい。無事ならな。ただ、本当はこの場所は許可ないと入れねえから次は気をつけろよ」

 

本当に心配していたようでクロウは少し怒りを含んで言う。

 

「判りました。」

 

「だが、さっきのはなかなかだったぜ、手足を封じて頭を封じる、それでもいいが、ああいう奴は指揮系統である頭を封じてからの方がいい。再生がはぇえ奴がいるから意味がない奴もいるからな…だが新入生にしては度胸あるな、お前」

 

「ありがとうございます、とても勉強になりました。アームブラスト先輩」

「いいんだよ、そんじゃ、外に出るとするかね?」

 

さっきとは違い、クロウは少し嬉しそうに言っていた。

ユエはそう言うと、大鎌をしまい、エニグマだけ構えておき、クロウの先導の元、共に外を出た。

外へ出ると安全が確保されたと判ったのかすぐにポーチに仕舞った。

 

「ごくろうさん、んじゃ帰るとするかね~」

 

「あ、あの…アームブラスト先輩?」

 

「どうした?」

 

「寮の場所って判りますか?」

 

「寮の場所が判らねえのか?確か案内の紙が入っていた筈じゃ…あ、…」

 

「何かあったんですか?」

 

クロウはふと脳裏にある出来事が浮かんだ。

それは約数ヶ月前に遡る。

 

「ちっ…サラ、お前、どんだけサボってたんだよ」

 

「ゴメン、ついつい、後回しにしちゃってね」

 

「ついついじゃねえだろ、この量は」

 

「確かにこの量を溜めようと思えるサラ教官はある意味、強者だな」

 

「あははは、ちょっと早めに言って欲しかったですね」

 

「まさか、教頭からの依頼がサラの入学案内発送の手伝いで報酬が俺の単位の免除とは思わなかったぜ」

 

「良かったじゃない?」

 

「複雑すぎるわ!」

 

「確かに複雑すぎるよな…クロウに取っては」

 

サラとクロウとのやり取りを苦笑いしながら、ジョルジュが言った。

「はいは~い!提案!くじ引きでどこの地域の入学者をやるか決めな~い?」

 

そう、サラの提案でトリスタの西側と東側と少人数の地域をまとめた物で分かれてやることになった。

 

俺とトワがトリスタから東側で入学者が多い地域、ゼリカとジョルジュが西側で入学者が多い地域、言い出しっぺのサラが数が少ない少人数の地域をまとめた地域だった。

 

恐らく、サラの担当した地域にノルド高原があった筈だ。

それが今、偶然にも自分の目の前に先程まで共闘した初対面の後輩であり、サラの提案の被害者として出会うとは思わなかった。縁であれども出来すぎとも思えてしまうが、内心、少し諦めてから言う。

 

「いや、お前の寮の案内には心当たりがある…しゃあない、案内してやるよ。これも何かの縁だしな。」

 

「すみません、先程からお世話になりっぱなしですね。」

 

「いいって、後でそいつには言っとくからよ」

 

そう、ユエは悪くない。悪いのは全て手抜きのサラのため、論破して奢らすと決めた。

 

「ありがとうございます、アームブラスト先輩」

 

「クロウでいいぜ、アームブラストは長げぇだろ?」

 

「分かりました。宜しくお願いします、クロウ先輩」

 

旧校舎から校門、校門から寮を目指し、2人は歩き出した。

 

 

「ああ、宜しくな。寮はここから近いからな。男子は一階と二階、女子は三階と四階だが、今回、寮長から例外を聞いたな。女子の入学者人数が1人多いから屋根裏を改良して部屋にしたある意味、ラッキーな奴が確か…」

クロウは説明をしながら、胸ポケットから折り畳んだプリントを取り出すと、入学者で部屋が判らなかったら、必ず案内すること。屋根裏はユエ・ウィンゲルと寮内地図と名前が書かれたプリントだった。

 

「お前は屋根裏って書いてあるな」

 

「屋根裏、了解です。」

 

「間取りは変かもしれないが、部屋は少し広いと思うぜ。さて、着いた。ここがⅢ組~Ⅴ組クラスの奴らが2年間、世話になる第2学生寮だ。」

 

校門を出て、少し歩いて別れ橋の左へ行くと、そこには立派な建物が目の前に映った。

 

「大きい…建物です。」

 

「確かに学院内以外の周りの建物に比べたら、でかいかもな」

 

「クロウ先輩、案内して頂き、ありがとうございました」

 

「いいってことよ!そんじゃ、俺は2階だからまたな。」

 

クロウは2階の男子フロアへと姿を消した。

 

「私は4階の上で梯子に登るんだったよね…フォルティス?」

 

「ここにいるぞ」

 

「梯子に登れる?」

 

「無論…風を使えばいいだろ?」

 

「そうだったね、行こうか?」

 

フォルティスの答えに無意味な質問だったなと思いつつ、ユエは自室へと向かった。

4階の廊下の丁度真ん中辺りに梯子がつけられており、そこが自室だと気付く。梯子を登り、扉を開けた先には一通り生活が出来るスペースが整えられていた。

ベッドと調理器具と机と収納家具が部屋に配備されており、ベッドの近くの窓を開けると、そこからはトリスタが一望出来ていた。

 

「なかなかだな…」

 

「そうだね、ちょっと1人が使うには広いかもしれないね」

 

「いいんじゃないか?この寮の部屋を窓から見た限りでは他の利用者の部屋も大体そんな感じだぞ。ユエ、机の上に何か紙があるぞ」

 

フォルティスが一息吹くと、紙が舞い、舞うと同時にユエの元へと届けられる。

 

内容にはこう書かれている。

 

1年Ⅳ組 ユエ・ウィンゲルさん

入学おめでとうございます。

今回、女子の入学者が多かったため、厳選な抽選の中からあなたがこの部屋の利用者になりました。ご了承下さい。

トールズ士官学院 学生寮管理担当

 

 

「ユエ、どうした」

 

「いえ、この部屋であってるみたいですが…誰かここに来る際には判りにくいかもしれませんね。」

 

「そうか…まあお前には必要ないだろうが、ガイウスがお前に用があった際には困るか…まぁ、連絡して待ち合わせればいいんじゃないか?」

 

「そうですね、ガイウスのオリエンテーリングは無事に終わるといいのですが…」

 

「それよりもケルディックに買い出しに行くのだろう?急がなくていいのか?」

 

フォルティスに急かされてユエは慌てて準備をすると急いでケルディック方面の街道へ向かった。それから数刻後、荷物を抱え嬉しそうに寮へと向かうユエの姿が見えた。

相棒であるフォルティスはこの少女が少しだけ浮かれているのに少し引いていた。

 

「嬉しそうだな…」

 

「えぇ、荷物で送れなかった分の調味料と材料が買えたのと後、ハーブの苗と野菜の苗、これさえあればなんでも作れますから。」

 

そう語る中、エニグマの通信機能から呼び出し音が鳴ったため紙袋の荷物を右腕に持ち替えて左手でエニグマを取り出した。

 

「はい、ユエ・ウィンゲルです」

 

「ユエか?」

 

「ガイウス、無事に終わったのですね!」

 

エニグマの通信機能越しに聞こえる幼なじみの声に安心した。

 

「あぁ、ユエに言わないといけないことがある。」

 

「大丈夫ですよ、言わなくとも。貴方が進むべき道を見つけたのでしょう?」

 

ガイウスが切り出した話にユエは穏やかな声で彼に聞いた。

 

「ああ、俺はⅦ組に所属する旨を教官に伝えた。だから少しだけお前と違う道に行くかもしれないんだ」

 

それからガイウスはオリエンテーションで何があったのか語り出した。

ユエはそれをしっかり聞いていた。

 

「私は止めません。ですが、約束してください。無茶はしない。抱え込まない。って…」

 

「判ってる。お前との約束だ。」

 

「約束じゃなくとも親友として心配してるんです。約束でもしないとガイウスはいつも無茶したり1人で悩んでますから。勿論、ガイウスとの約束が私にとって一番大事です。だから私も守ります」

ユエがそう言うと、ガイウスは切り出した。

 

「心配かけてすまない。ユエは今、どこにいるんだ?」

 

「ケルディック方面の街道です。もうすぐトリスタに着きますよ。」

 

「今、俺がいるのがⅦ組の寮が駅の近くなんだ。そちらに向かう。」

 

「了解です。ですが…」

 

「大丈夫だ。目の前にお前がいるのを確認した。荷物は俺が持つから気にしないでいい。」

 

エニグマの通話機能が切れたと同時に目の前にはガイウスがいた。会話に夢中になり障害物以外は視界に入らなかったことが気付かなかった要因に気づいた。右腕で抱えていた紙袋の荷物をガイウスに取られてしまった。

 

「ガイウス、大丈夫ですから」

 

「今日、回復薬を届けてくれたお礼だ。それに身の危険があるかもしれない場所に君はためらいもなく来てくれたことは嬉しかった。だから黙って持たせてくれ」

 

彼が頑固なのはユエも知っている。だが、ガイウスもユエも天然が入った頑固というのは更に質が悪い。

フォルティスは2人とは付き合いが長いため今までの状況を振り返る。一歩も譲らないかお互いが譲歩を続けて刻々と時が過ぎるのかと思い出して溜め息をつきそうになったが、流れが変わった。

 

「判りました。ですが、私の生活用品を運んで貰うのですから夕飯、食べていってください」

 

「ああ、だが、夕飯の準備は手伝わせてくれ」

さらりとガイウスは交わした。

ユエの最大の譲歩を見事に交わした。

相変わらずユエはガイウスには弱い。

 

「………判りました。ですが、ガイウスは魔獣と戦ったのですから、簡単なことだけにしてください。私の住む第二学生寮は学園には近いですが、ガイウスの寮からは遠いので」

 

その証拠にガイウスは又、最大の譲歩を交わし、ようやくやり取り合戦が終わった。

 

それから、ガイウスはユエの部屋に来た時には驚いていた。階段を上り、更に梯子の先にあるのだからあいつの言葉を借りるなら訳あり物件ならぬ訳あり部屋にユエはこれから住むことになったのたが、本人は至っては訳ありとは考えていない。寧ろ気に入ってるようだ。

「カバブや香草焼きが食べられるなんて思わなかったな」

 

「調味料を行くときに頂いたんです。ガイウスが作る時用に多めに渡されているので分けて、明日、渡しますね」

 

「ああ、助かる。いい風が吹いているな」

 

「そうですね」

 

夕飯を作り終えて、並ぶのはノルドで作り慣れた料理で気持ちがいい春の夜を楽しむために窓を全て開けて食事を取っている。

「俺の部屋はユエの部屋より高い場所にはないから少し羨ましいな」

 

「良ければ又、来てくださいね。」

 

「ああ、甘えさせて貰おう。」

 

「ええ、ガイウスでしたらいつでも歓迎です」

 

「ノルドのようにはいかないが、お前と又、星が見たいな」

 

「私もです。ただ、クラス離れちゃっているので難しいですよね」

 

「なら、自由行動日の前日の夜に見ないか?」

 

まさか、ガイウスから話が出るなんて思わなかった。

 

「いいんですか……?ガイウス」

 

恐る恐る、間を置いて聞き返した。

 

 

「ああ、ノルドにいた頃にもお前と過ごしてきたあの時間を大切にしたいんだ。お互い悩んでいることがあったら、星を見ながらよく話していたあの時間は正直に助かっていた。」

 

 

「ガイウス、私も同じです…。いつも背中を預けられ、色々なことを話せるのはガイウスだけです。だからガイウスの時間が大丈夫の時に少しだけ時間をくれませんか?」

「じゃあ、決まりだ。お互い何もない限り、自由行動日前夜に星を見ながら話そう。本当はノルドにいた頃のように毎日でもいいんだが、学院生活に慣れないと難しいからな」

 

「そうですね。第一優先は学院生活に慣れることですから。」

 

それから、ガイウスと学院でやりたい事を話した。自分達がここに来た理由の他にもここに最初に来た時から興味があるものばかりだったため色々と挑戦したいと考えていたことを話すと、ガイウスは集落でやっていた絵を本格的に勉強したいと言っていた。自分は我流でやっていたから、基礎から学びたいらしい。

マカロフ教官が部活についても言っていた筈で確か、近日中にリストを渡すと言っていたのを思い出して言うと、ガイウスはそれは少しでも早く見たいな。と言っていたのでもし、早めに貰えたらガイウスにも共有を申し出ると、礼を言う。

話が盛り上がり、22時過ぎになってしまっていた。謝罪をすると、また笑顔で「気にしないでくれ、お前と話せて良かった」と言い、ガイウスは自分の寮へと帰宅した。

 

もうすぐはじまりの今日が終わる頃、私はガイウスに渡す調味料と朝食と昼食の準備をしてから、毛布を持って天窓から屋根へと登った。

 

 

「dia peqxe elfa Gillisu…」

 

「ガイウス、振り返らずに進めか。」

 

「フォルティス…」

 

「夜風もいいな。あいつは無事に寮に着いた。少し過保護ではないのか?」

 

隣に来たフォルティスはガイウスがいる第三学生寮の方向を見て、言う。

 

「否定はしません。彼は大事な家族ですから…」

 

「明日、ガイウスに朝食と昼食を置くために早いのだろう?もう寝てくれ、お前が星を見ると、本格的な天体観測でこちらが寝不足だ」

 

「そうですね。天体観測はもう少しこの地に馴れたらにします、おやすみ。フォルティス」

 

「待て、そこで眠るのか?」

 

フォルティスの声に反応はなく、眠るユエ。

 

はじまりの心構えはひっそり胸の内に

 

はじまりは何度でもやってきて終わりははじまりの数だけやってくる

 

next…学院の4月




ユエ・ウィンゲル
在籍;トールズ士官学院1年Ⅳ組
部活;?
武器;大鎌
斬:A 突:- 射:- 剛:A
初期属性弱点
炎;30 時;15
水;15 幻;15
風;15 空;15
地;15

初期状態異常
毒;10
封技;10
暗闇;10
睡眠;10
炎傷;30
凍結;10
石化;10
気絶;10
混乱;10
即死;10
悪夢;10
遅延;0
消滅;10
能力低下;10
崩し
斬1/突2/射1/剛1

今回出てきたクラフト
弐の舞;猟犬
狙いを定めた敵に対して必ず外さないダメージを与える。単体のみ一定確率で封技・封魔効果
※使用時は命中率低下効果無効
かかっていた時に使用した場合+1ターンマイナス効果がプラスされる。

備考
ノルド高原出身でガイウスの幼なじみ。
マスタークォーツ:カーディス


今回の解説
dia peqxe elfa Gillisu…

dia peqxe elfa はこちら、細音啓先生著書の黄昏色の詠使いシリーズにある讃来歌“オラトリオ”と詠唱に使われるセラフェノ音語を使用しています。
引用サイトはセラフェノ音語Wikiから。

dia peqxe elfaは作中にフォルティスが訳した振り返らずに進めという意味を持ちます。

gillisuはこちらの話でのオリジナルですが、ガイウスと読ませています。
この単語は今後も出てくるので、気になる方は意味を調べておくと納得するかも知れません。
原作で知りたい方は黄昏色の詠使いの2巻をご覧ください。



次回は日常編です。
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