仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#10 うらぎり

 あれから3日が経過した。

 毎日訓練が行われ、仮面ライダーらの戦闘知識がさらに向上した。

 

 だが、その間いぶは変身しなかった。

 光貴からの忠告はあったようだが、戦闘区域内にはいるからと言いくるめ、叱責をかわしていた。

 

「猫宮さん、また変身しなかったね」

「うん」

 

 少し気になるのかほえるから話を振られ、北斗は釈然としない返事をする。

 

「この間は人としてどうなんだ、とまで言ったけど…あれは狩屋さんと猫宮さんの問題だから、これ以上突っかかるのはよそうと思って」

「んー、たしかに! おせっかいになっちゃうもんね!」

「何日か経ってるけど、結局私達と参加者のみんなは他人同士でしかないから───」

 

 自身の立場を淡々と語る北斗だったが、そこに警報が鳴り響いた。

 久方ぶりのマリスセル活性化を知らせるけたたましい音に緊張感が走る。

 

「…行こう、北斗ちゃん!」

「うん!」

「っと、北斗ちゃん」

 

 ガレージへと足早に向かう北斗を引き止め、ほえるが懐からフェイタルファングのメディックシグナルを取り出す。

 

「コレ持っててよ」

「…なんで?」

「お守りみたいなモノかな、どうせ買うの忘れてそうだったから~ふふふ~」

 

 気持ちの悪い笑みを浮かべるほえるに北斗は少し機嫌を損ねるが、実際のところは図星だった。

 この戦いが終わったあとには無用となってしまうであろうメディックシグナルにコストを()くのは少し気が引けていたのだ。

 

「どうせ買うのがもったいないとか思ってたんでしょ?」

「……」

「マリスセルは強くなってる、またベータタイプが現れたとき、北斗ちゃんに何かあったら嫌だから」

「…わかった。借りるね、ほえる」

 

「じゃあ、改めて行こっか!」

「うん」

 

──────────────────

 

 ライドスフレに全員搭乗し、スムーズに戦闘へと移行する。

 何度目かになれば各人の慣れが見受けられる。

 

 ほえるは楽歌と共にマリスセルを対処することになり、お互い挨拶を交わす。

 

「楽歌さんだ! よろしくお願いします!」

「はいはい、言っとくけどマリスセルを倒して金をもらうのは私だから、よろしくね」

 

《RemediumDriver》

 

《PersonaPhantom》

《BlazeBullet》

 

「変身!」

「変身ッ」

 

《Project Start…PersonaPhantom───Change The Wolmoke》

《Project Start…BlazeBullet───Change The Syunso》

 

 ヴォルモーク、俊鼠が変身完了し、湧き出るアルファタイプとの戦闘を開始する。

 

──────────────────

 

 時を同じくして、いぶ、真希、北斗も戦闘エリアに到着する。

 

「真希にゃん、私こわぁ~い」

「大丈夫、わたしが守ります☆」

 

 相も変わらずお互いに張り付く2人だったが、一旦別れて真希が変身する。

 

《StraightSword》

 

「変身☆」

 

《Project Start…StraightSword───Change The Tioro》

 

 電子音と共に真希の姿は黄緑のカマキリを模した戦士へと変わる。

 剣を振るうその戦士、ティオーロは訓練と同様にマリスセルを撃退───しなかった。

 

「えっ?」

 

 いぶにアルファタイプの手が迫る。

 咄嗟に振り切っていぶが後ずさりする。

 

「どうしちゃったの真希にゃん!?」

「えー?☆」

「えーじゃなくて、また守ってよぉ! そういうビジネスでしょ?」

 

 焦るいぶをラポールが救出する。

 

「どういうことですか、狩屋さん」

「いぶにゃんには黙ってたけど、わたし気になることがあって☆ 人がマリスセルを怖がらなくなったらどうなるんだろうって☆」

「猫宮さんの危機感をなくして、実戦で彼女がどう行動するか…試してたんですか」

「北斗ちゃん正解☆」

 

 いぶを安全なところに降ろし、ラポールがティオーロへと掴みかかる。

 

「どれだけ危険なことをしているか分かっているんですか!?」

「あ、珍しく怒ってるね☆ 君が怒ったり泣いたりするかも気になるね☆」

「私だって、さすがに怒りますよこんなこと!」

 

 と、ティオーロがラポールの足を引っかけ、バランスを崩す。

 そこへアルファタイプが迫り、ラポールはその場に倒れたまま氷を発生させ敵の動きを止める。

 

「狩屋さん、何を…!」

「わたしね、気になることがあったらどうしてもやりたくなっちゃって…こないだは裏切られた人の顔が気になって☆ 今はね、北斗ちゃんが怒ったり泣いたりするのが見たくなっちゃった…☆」

「あなたは…剣道をやってるんじゃなかったんですか」

「それがどうしたの?☆」

「狩屋さんのやってることは剣道…ひいては武道の精神に反すると思います」

「……は☆ じゃあ北斗ちゃんが精神ってものを教えてよ☆ あは☆ ははへ☆ あははははは!!☆」

 

 狂気じみた笑い声を上げるティオーロにラポールが怖気だつ。

 

(! こんな人に構ってられない、猫宮さんは…!)

 

 ティオーロとの間に氷壁を生み出しその場を離れたラポールがいぶの元へ向かう。

 案の定彼女は変身できずにアルファタイプから逃げ回っていた。

 どうやら真希の指示でベルトの格納されているバイクから離れた場所にいたらしい。

 

「猫宮さん!」

 

 ラポールが呼びかけると、助けを求めるためにいぶがこちらへ大きく手を振る。が、その隙がアルファタイプとの距離を縮めた。

 

「!」

 

 なんとかラポールが氷を伸ばしてアルファタイプを止めようとするが、その瞬間、いぶを追っていたアルファタイプが蜂の巣にされる。

 

「…銃撃!」

 

 ラポールが振り向くと、俊鼠の持つバレットブレイザーがアルファタイプを撃ち抜いていた。

 

「アンタ…たしかあの地雷系と一緒にいた───」

「あの子に裏切られたの! 私にお金まで払ってたのよ! なのに…」

「お金の関係なんてそんなモンよ、誰もアンタの身を保証しちゃくれない」

 

 俊鼠が周囲に集まっていたアルファタイプを蹴散らし、いぶを脇に寄せる。

 

「自分の命に関わることはたとえお金が良くても、相手が誰でも断ること、でないと───」

「エラいことになる、そう言ってましたよね」

「こういうことになるのよ」

 

 ひどく傷付いたいぶの姿を見て、ラポールが息を呑む。

 

「ま、アンタは危機感なさすぎの自業自得だと思うけどね」

「そんなぁ……」

 

 悲しみに暮れるいぶに、ラポールがアタッシュケースを渡す。

 

「戦いましょう、猫宮さん。誰かに責任を預けていたって、始まらないって私は思うので…だから」

 

《FatalFang》

 

 ラポールがフェイタルファングを取り出す。

 それを見ていぶがアタッシュケースを開いて自身の分のメディックシグナルがあることを確認する。

 

「お…お揃い」

「私と一緒に戦ってくれませんか、猫宮さん。責任を預けるのも、背負うのも怖いから…分け合うのはどうかなと」

 

 北斗の提案に感極まるいぶがベルトを装着し、メディックシグナルを装填する。

 

「誰かに頼らず自分の力で勝ち取る…か……」

 

 いぶの準備ができる間敵を引き受けていた俊鼠が呟くと、物思いにふける。

 

 

「さあ、猫宮さん」

「へ、へんしぃん!」

 

《Project Start…FatalFang───Change The Caitsith》

 

 仮面ライダーケトシィに変身完了し、戸惑いながらも初実戦を開始する。

 ラポールも起動したフェイタルファングをベルトに装填し、再押下して新たな鎧を身につける。

 

《Project Start…FatalFang───Change The Rappol》

 

 ケトシィと同じ形状の鎧をまとったラポールが構え、腕から伸びる鉤爪(かぎづめ)を振るいアルファタイプに食らわせる。

 

「私もよく分からないけど、一緒にやればきっとやれます!」

「ツケにしとくから援護は私がやる!」

 

 ラポールと俊鼠がケトシィの道を切り開き、彼女が戦いやすいようにと支える。

 それを受けてケトシィが目の前の弱った敵を切り裂いていく。

 

「…それぇっ!」

 

 消滅するアルファタイプを見てケトシィは、息を枯らしながらも自身の勝利を実感する。

 

「や…やったっ…!」

「え、いぶにゃん!?☆ 戦ってる☆ すごーい☆」

 

 拍手しながらティオーロがやってくる。

 悪びれることなく近づいて来る彼女にケトシィは鉤爪を向ける。

 

「───真希にゃん、今までなんだったワケ?」

「わぁ、怖いので刃物向けないでください☆」

「! 猫宮さん」

 

 ラポールが2人の間に立って敵対しないようにするが、彼女を押しのけてケトシィがティオーロの肩を掴む。

 

「どうして私を守るなんて嘘ついたの? そんなことしたって意味ないでしょ」

「意味?☆ 特に意味なんてないですね☆ そうしたらいぶにゃんどう思うんだろうって、思っただけです☆」

「辛いに決まってるじゃない! 誰かに裏切られるのは…もうたくさん……信じたかったのに、裏切られるなんて考えたくなかったのに…なんでよりにもよって真希にゃんが……」

 

 面食らったティオーロは何も言えずに固まる。

 その姿にケトシィはただ彼女を抱きしめた。

 

「私あなたのことが好きなのよ? “守る”って言われるの大好きだから、そう言ってくれたとき嬉しかったの。あなたが私を見放すなんて思わなかった」

「なるほど、人は裏切られるとそう思うんですね☆」

「…え?」

「こないだアイドル番組でやってたんですよ、“アイドルは裏切られる人の気持ちに寄り添え”って☆ だから裏切られた人ってどんな気持ちなのか知りたかったんですよね☆」

「そんなことのために……私死にそうになったのよ!?」

「…わたしは別になんとも☆」

 

 自らの行いを反省していないどころか悪行であったとすら考えていないティオーロにケトシィは震える。

 怒り以上に彼女への恐怖感が増していた。

 

「あ、あなたは───」

 

 ケトシィが言葉を押し出そうとしたとき、俊鼠がティオーロの(ほお)を全力で殴っていた。

 

「アンタは最低のことをした、それさえ分かればあとはいいわ。金輪際コイツに関わらないで…次は容赦しない」

 

 自らのために一撃を食らわせてくれた俊鼠に、ケトシィ───いぶは心を奪われる。

 

「あの…ありがとう」

「……お金で誰かが傷ついてほしくなかっただけよ」

 

 俊鼠がそう語ると、光貴からの連絡が全員に行き渡る。

 

「撤収、しましょうか」

 

 ラポールが告げると、俊鼠、ケトシィも同行しライドスフレに乗り込んでいく。

 

「おーい☆ わたしもいきますよ~☆」

 

 一人残されたティオーロが後を追う。

 

──────────────────

 

「───うぉらァッ!!」

 

 他のライダーがマリスセルと戦う中、アトラクネは再び出現したドローンに翻弄され続け、消耗させられていた。

 

「なんなんだコイツは…一体ッ!」

 

 鎖を振り回しながら(いきどお)る彼女の前に、ルキフスが現れる。

 

「それを操作しているのは…私です」

 

 自らドローンの主であることを明かしたルキフスに、アトラクネは怒りを込めた一撃を放つ。が、それは彼女に読まれており、その瞬間に生じた隙に、他にも配置していたドローンから攻撃を受ける。

 

「がぁっ!!」

「……予想通り、ですね」

 

 そう呟くとルキフスはその場を後にする。

 

「待てェッ!!」

「待ちませんよ、あなたへの“用は済みました”。あとは、周囲にいるマリスセルをあなたに倒してもらうだけですね」

 

 何度も邪魔立てをしながら姿をほとんど隠しているルキフスの姑息ともいえる攻撃にアトラクネは言葉にならない怒号を浴びせる。

 

「待ってください」

 

 アトラクネの叫びに混じって同じ場で戦っていたプロシオンが声をかけた。

 ルキフスが足を止めると、アトラクネが攻撃しようと立ち上がるが、ドローンが彼女へと自動追撃し、手を出せない。

 

「陽廉さん、ですよね……私が相談したとき、力になってくれた……」

「…はい」

「どうして、こんなことを」

「許せない、って、前に…言った通りです」

「何があったのか、教えてほしいんです。もしかしたら…今度は力になれるかも知れないから」

 

 ありがとうございます、と一言つぶやくと、ルキフスはドローンに掴まり、その場から高台へと行ってしまう。

 

「もう少し落ち着いたときに、話します……飯沼さんなら、分かってくれるかも知れない、ですから」

「私なら……?」

 

 

 戦闘が終了し、屋敷に戻った碧は陽廉の部屋を訪ねた。

 

「陽廉さん…あなたが、八雲って人にこだわる理由を、教えてほしいんです」

 

 碧からの頼みを聞き、陽廉は少し目を泳がせたあと、口を開いた。

 

「こ、腰を痛めたので、またの機会でも…いいですか……?」

 

 

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