仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#14 きょうみ

 新型メディックシグナルを使用した訓練が何日か実施され、その操作にも慣れてきた頃。

 広間で食事をしていた北斗とほえるに、真希が話しかけてきた。

 

「2人っていつも一緒にいるよね☆」

「狩屋さん」

「真希でいいよ☆ みんなそうしてるんでしょ☆」

 

 いつものテンションで言われ、北斗が訂正する。

 

「真希さん、たしかに…一緒にいる機会は多いですが、それがどうしたんですか?」

「あっ、もしかして北斗ちゃんと仲良くしたいから私おジャマだったのかも!」

 

 口元に手を置き心配するほえるにそれはないでしょ、と突っ込む北斗だったが、真希の答えは意外なものだった。

 

「その通りです☆」

「マジですか!?」

「……」

 

 黙り込む北斗だったが、ほえるは2人を邪魔しまいとその場を離れる。

 

「いやー気付かなくてごめんなさい! 私はちょっとどっか行ってるので、あとはお若い2人で…」

「ほえるってば……」

 

 肩を落とす北斗だったが、真希の視線に気付き話を続ける。

 

「…それで、真希さん。ほえるが邪魔、というのは本当ですか」

「邪魔、っていうのかな☆ 私北斗ちゃんとお話したかっただけ☆」

「それならほえるが一緒でも構いませんよ、もしほえるが邪魔だというなら……」

「どうしたの?☆」

「…いえ、ただ…ほえるは私の大切な友達だから悪く言われたくないんです」

 

 そっか、と頬杖(ほおづえ)をつきながら真希が笑う。

 

「もしほえるちゃんが傷付けられたら、北斗ちゃんはどう思う?☆」

「縁起でもないですね…でも、そうしたら私は……」

 

 感情の希薄な自分でも怒れるのだろうか、と北斗は不安になる。

 友のために感情をあらわにできることは大事な人のありかただと理解してはいるものの、そのように行動できるかは想像できなかった。

 

「でも、ほえるが傷付くようなことにならないように私は戦っているんです、だから…そんなことにはならないと思います。私が、守りますから」

「わぁ☆ なんかパパから聞いた武道っぽいですね☆」

「武道…これがですか?」

 

 首を傾げる北斗に、真希が笑う。

 

「どうしたんですか?」

「ううん、北斗ちゃんの悩んでる顔が見れたから☆」

 

 そう言って笑う真希に、北斗はかつて彼女が見せた狂気の片鱗(へんりん)を思い出す。

 

「ちょっと、北斗ちゃんに何ちょっかいかけてんのよ」

 

 真希の後ろに眉をつり上げたいぶが立っていた。

 かつて真希に全幅(ぜんぷく)の信頼を置いていたにもかかわらず、彼女に裏切られ命の危機にさらされた彼女にとって、真希はもはや敵といえる相手と化していた。

 

「いぶにゃん、どうしましたか☆」

「どうしましたか☆ じゃないわよ、そうやって北斗ちゃんに何か吹き込んでたんじゃないの?」

「私はただ知りたいだけです☆」

 

 そう言ってウインクする真希にいぶはため息をつく。

 

 と、警報が鳴り、マリスセルの出現を知らせる。

 

──────────────────

 

 北斗、楽歌、いぶが合流、到着し、ベルトを装着する。

 

《RemediumDriver》

 

「───変身」

「変身ッ」

「へんしぃん!」

 

《ImagineerIce》

《BlazeBullet》

《FatalFang》

 

《Project Start…ImagineerIce───Change The Rappol》

《Project Start…BlazeBullet───Change The Syunso》

《Project Start…FatalFang───Change The Caitsith》

 

 

「…アルファタイプ、訓練よりも少ないんじゃない!?」

 

 得意の銃撃でアルファタイプをなぎ倒す俊鼠だったが、ラポールや自分に隠れて戦闘を嫌がるケトシィに苛立(いらだ)ちを覚えていた。

 

「ちょっとアンタ、少しは戦いなさいよ! 私が全部お金かっさらうわよ!」

「いいわよぉ~! 怖さには変えられないんだからぁぁあ!」

 

 おびえるケトシィに、ラポールが氷壁を作ってなんとか守る。

 

「いぶさんは私がなんとかフォローします! 周りのアルファタイプは楽歌さんが!」

「ハイハイ金策金策ッ!」

 

 と、ケトシィが何かに気付き呆然とする。

 ベータタイプが現れたのだ。

 

「貴様ら注意しろ! ベータタイプが出現した、同時に二ヵ所───厳重警戒! 無理に戦闘するな!!」

 

 光貴からの連絡に気を引き締める俊鼠、ラポールだったが、アルファタイプが彼女らの道を塞ぎ、ベータタイプに対抗できずにいる。

 その状況の中で唯一ベータタイプのもとへと行けるケトシィは、決断を迫られていた。

 

(動けるの私だけ…? でも、あれって、前に赤い子を殺しちゃった…えっ怖すぎ、怖すぎて鳥肌すごい、毛穴広がる、ゲロ吐きそう)

 

 震え上がるケトシィだったが、その間にもベータタイプは俊鼠へ接近していた。

 

(楽歌ちゃん危ない! でも、でも!)

 

 そのとき、ケトシィ───いぶの脳内にかつてティオーロに裏切られた記憶が浮かび上がった。

 加えて、今まで別れてきた数々の女性たちの顔がよぎり、これまでの苦しい別離の経験を呼び起こされる。

 

「───!」

 

 気付けば体が動いていた。

 ベータタイプへと体当たりし、その巨体を転がしていた。

 

「いぶ…!」

「いぶさん!」

 

 ようやくアルファタイプから解放された2人がベータタイプへと走る。

 

《AssaultArmour》

 

 俊鼠が取り出した新たなメディックシグナル、『アサルトアーマー』を装填し、その姿を重武装型の攻撃形態に換装する。

 

《Project Start…AssaultArmour───Change The Syunso》

 

「これでも食らいなさいッ!!」

 

 全身が展開し放たれるミサイルや弾丸の乱射でベータタイプが爆破消滅する。

 

「やったわね、30万ゲットだぜ」

「楽歌ちゃん避けてッ!!」

 

 いぶの声に反応し、俊鼠が振り向くと、2体目のベータタイプの拳が俊鼠を直撃した。

 

「楽歌さん!」

 

 今度はラポールが新たなメディックシグナルを装填し、その姿を変化させる。

 

《Project Start…KaleidoKnuckle───Change The Rappol》

 

『カレイドナックル』と呼ばれる、幾何学的な美しい模様が施された拳を装着したラポールがベータタイプを殴打する。

 スーツに組み込まれた身体補助機能で最も効率的かつ打撃力の出る体制で敵を殴り倒せるように設計された形態で、あのベータタイプを圧倒する。その動きには、芸術的な美しさすら感じられる。

 

 一方、アサルトアーマーの頑強さによって致命傷はまぬがれたものの、傷を負った俊鼠のもとにケトシィが到着する。

 

「楽歌ちゃん、ごめんなさい…私が咄嗟(とっさ)に動けなかったから!」

「いや、アンタがあの場にいてくれなきゃ、最初のベータを倒せなかった…それに、傷はそんなに深くは……!」

 

 筋肉を強張らせ、硬直させながら痛みにもだえる俊鼠を見て、ケトシィは新たなメディックシグナルを使用する。

 

「…『オーバーホールオーブ』!!」

 

 左手に出現するメディックシグナルを装填し、ケトシィが姿を変えていく。

 

《Project Start…OverhaulOrb───Change The Caitsith》

 

 円環状の装飾が取り付けられたその鎧を装着したケトシィは、自身の周りに円型の光を発生させる。と、俊鼠の痛みがやわらいでいき、外傷も修復される。

 

「ケガが…治ってく…!」

「訓練じゃ意味無かった力だけど…凄いわねぇ」

「……ありがとう、いぶ」

「いいのよ、今の戦いで思い出せたの。本当に大切なのはお金や自分じゃないって…どんなに怖くてもなくせないモノのために、私、戦うって決心できたから!」

「……お金は、大事だけどね」

 

 そういって笑うと、俊鼠は立ち上がりラポールの援護に入ろうとする。が、もうその必要はなかった。

 

《KaleidoKnuckle End》

 

 ラポールの拳が、ベータタイプを粉砕していた。

 アルファタイプも撤退し、なんとか3人は難を逃れた。

 

「ふぅ…なんとかなりましたね」

 

 ラポールが安堵していると、光貴から再度連絡が届く。

 

「全員帰還しろ。参加者間で緊急事態が発生した」

 

 それを聞いて言葉をなくすラポールに、俊鼠とケトシィが駆け寄る。

 

「多分あの地雷女ね」

「真希にゃ…真希……あの子の行動は読めないから、気を付けてね、北斗ちゃん」

「2人がそういうなら」

 

 狩屋真希。彼女は自らの興味がために人の命すら簡単に扱えるほどの人物であることを北斗は知る(よし)もなかった。

 

──────────────────

 

 ほえる、真希が到着し、戦闘に移行する。

 

《PersonaPhantom》

《Straight Sword》

 

「変身!」

「変身☆」

 

《Project Start…PersonaPhantom───Change The Wolmoke》

《Project Start…StraightSword───Change The Tioro》

 

 電子音と共に、ヴォルモークとティオーロが変身完了する。

 

「行きましょう、真希さん!」

「はーい☆」

 

 2人がそれぞれの武器を構え、アルファタイプへと突撃する。

 が、ヴォルモークがいることによってか、例のごとく大量発生するアルファタイプに苦戦を強いられる。

 一騎当千の強さを誇るティオーロすらその物量には手を焼く。

 

「厳重警戒! 無理に戦闘するな!!」

 

 光貴からの連絡を受け、ヴォルモークとティオーロが辺りを見るが、どうやらここにはいないらしい。

 

「助けにいかないと───」

「無理☆ こっちも敵多すぎるよ☆」

「ッ…私がいるといつもこうなんです、モテ期ですかね!?」

 

 軽口を叩きながらも息をつくヴォルモークは、左手を顔の前にかざす。

 

「来て! 『ゼノクロス』!」

 

 そう告げると、手元にX字状の意匠が刻まれた特殊な形のメディックシグナルが出現する。

 ヴォルモークがそれを押下すると、電子音が鳴り響く。

 

《XenoX》

 

 今まで装填していたペルソナファントムから交換するようにゼノクロスを付けなおし、再度ボタンを押す。

 

《Project Start…XenoX───Change The Wolmoke》

 

「訓練の成果、見せるよーッ!!」

 

 全身にXの装飾がついた装甲をまとった新たな姿のヴォルモークが息巻くと、先ほどまで装填していたペルソナファントムをゼノクロスに押し当てる。

 

《Xeno PersonaPhantom》

 

 するとゼノクロスの各部装甲からペルソナファントムの能力を思わせる煙が噴出し、その姿をくらませる。

 アルファタイプがヴォルモークの姿を見失っているうちに奴らの背後を取り、腕に取り付けられた刃で瞬く間に切り裂いていく。

 

 ゼノクロスの能力は、他のメディックシグナルの能力を補強し、向上している機動力と制圧力をもって敵を殲滅(せんめつ)する、言わば“すべてのメディックシグナルを強くする”ものであった。

 これによりペルソナファントムでは発揮できなかった速さと強さでマリスセルと戦闘が可能になったのだ。

 

「これが私の新しい力―――!」

 

「いいね☆ じゃあ私も新ワザ使うね☆」

 

《EquipmentElement》

《Project Start…EquipmentElement───Change The Tioro》

 

 今度はティオーロが新たな装甲を身にまとう。

 体の各部に炎や水の意匠を得た鎧、『イクイップメントエレメント』が彼女の力となる。

 

「えい☆」

 

 ティオーロが右手から炎を放ち、アルファタイプを焼き尽くす。

 今度は左足を滑らせると足元の地面から樹木が生え、一気に敵を拘束、締め付けて圧縮する。

 

「真希さん! 剣のやつ貸してください!」

「いいよー☆」

 

 ティオーロが念じると、左手にストレイトソードが出現し、それをヴォルモークへ投げ渡す。

 ゼノクロスの有する飛行能力で空を()けるヴォルモークがゼノクロスへとストレイトソードを押し当てる。

 

《Xeno StraightSword》

 

 ストレイトソードが持っていた刀がヴォルモークの手に渡り、空中からアルファタイプの軍勢を切りつける。

 加えてティオーロが樹木による拘束を化すことで狙いを定めやすくなり、2人の勢いは加速する。

 完全に有利になったことで大量にいたはずのアルファタイプが次々と消滅する。

 

「おー、綺麗になりましたね!」

「これが新しい力…☆ すごいね~☆」

 

「それじゃあ、みなさんの救援に行かないと」

「ううん☆ 他の人たちも新しい力があるから大丈夫なハズ☆ それよりも───」

 

 ヴォルモークが着地し、ティオーロへと駆け寄った瞬間だった。

 

 ティオーロの生み出した樹木が、ヴォルモークの心臓を貫いた。

 

「───え?」

「ほえるちゃん死んだら、北斗ちゃんは怒ってくれますか?☆」

 

 完全に心臓が破裂し、仮面から血を漏れ出させながらヴォルモークがティオーロを見る。

 と、彼女の手によって変身が解除され、意識の途絶えかけているほえるの表情を見て、同様に変身解除した真希は笑う。

 

「北斗ちゃん、全然気持ちが表に出ないじゃないですか☆ だから気になるんです、彼女の顔が動くときが☆」

「……」

「死んじゃいました?☆ まぁ殺したから死ぬんですけど☆ …ほえるちゃんが死ねば、きっと北斗ちゃんもいつもと違う顔を見せてくれると思いますよ☆」

 

 笑いながらつぶやく真希だったが、光貴からの連絡が入る。

 

「狩屋ッ! こちらから状況は確認していた…何のつもりだ!?」

「あ、見られてました?☆ ごめんなさい、私気になったからつい☆」

「貴様……! …とにかく、貴様の行動はMRPの妨害行為とみなし、即座に参加者としての任を解く。そしてこちらの実施するデータ採取用のベースとして管理させてもらう」

「分かりましたけど、最後に北斗ちゃんに合わせてください☆ どんな顔するのか見たくって見たくって」

「参加者と不和を起こすなと再三(さいさん)伝えたはずだが、貴様がそれを理解しないほど愚かだとは思わなかったぞ、狩屋……とにかくライドスフレに搭乗し待機しろ。全員を屋敷へ戻す」

「はーい☆」

 

 威勢よく返事した真希は、降り出した雨の中をスキップする。

 ほえるの遺体は、それ以上真希が触れることなく、置き去りにされた。

 雨ざらしの中、濡れるほえるの体が動くことはなかった。

 

 

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