仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#19 しんじつ

 謎のマリスセルらしき生命体。

 それは損壊した屋敷の床に降り立つと、警戒するヴォルモークへと近づいてきた。

 

「コンニチハ、アナタハ、我々ト、オナジ」

「そう、私もそんな気がする。でも学んできたことと目的が違うと思うよ」

「アナタハ、ヒト、シンリャクシナイ」

「そういうあなたは、ヒトを侵略するつもりなんでしょ?」

 

 刹那(せつな)、生命体の腕らしき触腕が伸び、ヴォルモークを攻撃する。

 

「オカアサンノ、メイレイ、マモル、アナタ、イラナイ」

「お母さん…?」

 

 思わずラポールがつぶやく、と光貴が懐がメディックシグナルを取り出した。

 

「鳳さん、それは?」

「…説明するには準備が足らん。あとで話す」

 

 そう告げると光貴がメディックシグナルへと問いかける。

 

「あれがマリスセル側のオメガですか」

《はい、言語の学習が不十分ですが、戦闘能力は恐らくオメガ───いえ、ヴォルモークと同等以上かと》

「鳳さん、何と話して……!」

 

 人語を発するメディックシグナルに、ラポールが驚きを隠せない。

 だが、それを聞いているだけの余裕がこの場にはないらしい。敵の攻撃をなんとかいなしながらヴォルモークがラポールの前に立つ。

 

「真希さん、光貴さんと一緒に離れてて北斗ちゃん。アイツは一筋縄じゃいかないの」

「あの金色のマリスセル? は一体なんなの、のえる?」

「…あれは、私と同じ。学習によって強化されたマリスセルの…最強といってもいい個体」

 

 ヴォルモークが最強と語るそれを見て、ラポールは先ほど光貴が発した“オメガ”の意味を理解した。

 

「……オメガタイプ」

「おそらくその通りだ、熊谷」

 

 光貴がラポールの肩に手を置き、退避させようと引く。

 

《貴方がたと戦ってきた仮面ライダーヴォルモークと同じ、オメガタイプ…それが奴です。現在の人類の技術では勝機はございません。ここはヴォルモークに任せ撤退してください。でなければ強力なマリスセルに感染し、抗体を持つ貴方も危険にさらされます》

「メディックシグナルがなんでしゃべってるんですか」

「それも追って説明する、今は退()くぞ」

 

 なんとかその場から離れようとするラポールたちだったが、オメガタイプは逃しはしないと触腕を伸ばす。

 が、ティオーロが残った刀で両断し、時間をかせぐ。

 

「北斗ちゃんは死なせません☆」

「真希さんも離れて!」

 

 ヴォルモークに押され、ティオーロがつまづくと、その瞬間に触腕によってヴォルモークの腕が破断される。

 

「…っ!!」

 

 ヴォルモークがその場でオメガタイプと拮抗したことでラポールたちはなんとかその場から離れ、逃げおおせることに成功した。

 が、破壊された屋敷の中でオメガタイプから逃げ続けるのは困難を極め、再度の交戦も時間の問題であった。

 

 

「ハァ……のえる……」

「みなさん!」

 

 瓦礫(がれき)の山と化した屋敷の2階からルキフス、俊鼠、ケトシィ、プロシオンが到着し、それぞれ合流を果たした。

 

「とりあえず私たちが発見できた職員はみんな助けられたけど、かなり少なかったわよ」

 

 疲弊(ひへい)した様子の俊鼠が説明すると、そうか、と光貴がつぶやき、壁にもたれる。

 

「鳳ちゃん!」

 

 いぶがオーバーホールオーブを使用して光貴を治療する。

 ここまでの戦いで彼女自身もダメージを負っていた。それに加えてマリスセルの蔓延(まんえん)するこの環境下で一般人が行動するにも限界があったのだ。

 

「私がまごついている間に…大変なことになったな」

「鳳さん……もしよければ教えてください、あなたが隠していたことを」

 

 ラポールの呼びかけを受け、光貴は手に持っていたメディックシグナルを一同に見せる。

 

「これはただのメディックシグナルではない……マリスセルの母体となる小型電子生命体が格納された生きるデータ端末だ」

《……私はマリスセル、その上位種にあたる“地球外生命体”───母星の名から『ヴォルモシアン』とお呼びください》

「地球外、生命体」

 

 ヴォルモシアンが語るその名に、ラポールは唖然(あぜん)とした。

 

《人に感染し仲間を増やす悪性のマリスセルに対抗し続けた貴方がたには、お話する必要がありましたね。今まで何も告げず申し訳ございませんでした》

「こちらこそしゅみましぇん……」

「なに謝ってんのよ陽廉」

「それで、あなたはマリスセルについて、色々と知ってるんですよね。時間のあるうちに教えてください…そこに何か活路があるかもしれませんから」

「かしこまりました、お話ししましょう。マリスセルという生命のあらましを───」

 

──────────────────

 

 

 地球から数百億光年離れたある惑星。

 そこでは新たな新天地の開拓計画が始動していた。

 彼ら(ヴォルモシアン)は小型の電子生命体であり、居住地の拡大にはさほど興味を持っていなかったにも関わらず、開拓計画が推し進められたのは、彼らが“娯楽”に飢えていたからだ。

 侵略は彼らにとって娯楽だった。

 他の星を侵略し、手中に収めるのが悦楽であると主張する者は後をたたなかった。

 

 計画の立案から実行までに時間はかからなかった。

 生命体は新天地を求め小隕石以下の小型宇宙船を用いて発進していったが、中には計画を良しとせず、食い止めるために立ち上がった者もいた。

 

 生命体が地球に到着するまでに、宇宙船の中で幾度もの戦いが勃発した。

 遂には宇宙船が破損し、限界を迎える直前で東京湾に不時着した。

 なんとか生き延びた生命体は、彼らの開発した侵略用学習型生命体───のちのマリスセルとなる個体と、計画に反対していた一体のヴォルモシアンのみであった。

 

 マリスセルは事前に組み込まれていた侵略用プロトコルを実施し、2049年に行動開始、惑星の霊長、すなわち人類への感染によって上位個体にとって無害な怪物に変容させるという形での侵略を開始した。

 一方のヴォルモシアンは電子生命としての能力を駆使してマリスセルのハッキングを開始、被害を食い止めんと工作を始めたが一人の力ではそれも難航し、現地の言語を学習しながら人類との協力を模索した。

 

 その後さまざまな電子機器への侵入とそれによるメッセージの送信を繰り返し、臨時東京市庁衛生対策委員会第9企画部、つまり光貴たちのチームと通じ合うことができた。

 彼女らが研究していた対マリスセル用戦闘装具の技術を得て、それをマリスセルの培養によって実体化させることに成功し、仮面ライダーの装甲が完成した。

 MRP参加者が使用していた装備はすべてハッキングにより善性化したマリスセルを変容させたものであったのだ。だからこそ一瞬でその場に出現したり、科学力の劣る人類の力でもってこれだけの戦力を開発できたのだ。

 だが、問題は仮面ライダーの変身者であった。マリスセルに感染してしまう人類ではどうしても戦闘に出るのは難しく、ヴォルモシアンは肉体を持たないためマリスセルサイズでの活動ができないのであった。

 当初は人にマリスセルを微量注入することで人工的に抗体を持った人物を製造する研究がなされていたが、成功するのに一年を(よう)することが分かり、非現実的であると思われた。

 

 そうした中、マリスセルに抗体を持つ人類が発見され、仮面ライダーの実装が現実的になった。

 日本国内の30歳未満の女性に限り発現したその抗体があればマリスセルに感染せずに戦闘が可能となる。その第一例であった大神ほえるを実験体として初期のマリスセル戦闘試験をおこない、ライダーの複数体開発と同時に集まった抗体保持者を使ってマリスセルと戦闘するための計画が始動した。

 それこそがメサイアライダーズプロジェクトであった。

 

──────────────────

 

《ですが、ヴォルモークが私の知らない場所にて独自学習を行っていた個体とは思いませんでしたが…おそらくヴォルモシアンの中にいた私の仲間が残した善性を学習する個体だったのかもしれません》

「あるいは、霊長から学習を得るだけの個体だったように、私は思いました。それがほえるの優しさを理解し、優しい子に成長したのだと、考えてます」

 

 のえるの優しさを彼女自身のモノだと説くラポールにヴォルモシアンはなるほど、と返す。

 

「お話いただきありがとうございました。ヴォルモシアンという地球外生命体の存在、彼らがマリスセルを造り地球を侵略しようとしていること、あなたがそれを食い止めようとしていることがわかりました」

「今の北斗ちゃんの説明でようやく理解できたわ私ぃ」

 

 ケトシィの気の抜けた言葉にルキフス、プロシオンが苦笑いする。

 

「私も北斗が噛みくだいてくれたおかげで分かったわよ、恥ずかしながらね。それで聞きたいんだけど、結局のえるはなんなワケ? アイツだけやたら強いけど」

「のえるもマリスセルで、ヴォルモシアンによって放たれた人を学んで強くなるタイプだったみたいです。今戦っている強大な敵も同種らしいのですが、のえると違って人の体をベースとはしていないみたいですね」

「はー……」

 

 理解が追いついていないのか俊鼠が空返事(からへんじ)をする。

 

「まずはあの強い敵…オメガタイプのことが分からなければ対処のしようがありません」

《それなら私に……考えがあります》

 

 ヴォルモシアンの発言に一同がえっ、と声を漏らす。が、ただ一人光貴は渋い顔をしていた。

 

「“あれ”を完成させるには…7個のメディックシグナルが必要になります。それを完成させなければ、オメガには勝てません」

《ならば今完成させるのです。ここにいる方々が持っていたメディックシグナルと、私自身を変容させます》

「ヴォルモシアンさん、私たちのメディックシグナルがあれば、オメガを倒せる…のえるを助けられるんですか?」

 

 ラポールの問いにヴォルモシアンは少し黙ってからはい、とつぶやいた。

 

「……お願いいたします」

 

 何かを決心したのか、拳を強く握りながら光貴が懇願(こんがん)する。

 それを聞いてヴォルモシアンは自身の体を変容させ、ベルトの形状となり光貴に巻き付いた。

 

WolmocianDriver(ヴォルモシアンドライバー)

 

《皆様が予備として所持していたメディックシグナルは…確か7つありましたね》

「え? 私たちのメディックシグナルを貸さなきゃいけないの?」

「たぶん…そうしないといけないみたいですから……」

「…猿堂さんの分まで、お願いします」

 

 それぞれがメディックシグナルを取り出す。

 カレイドナックル。

 ギャザリングガジェッツ。

 アサルトアーマー。

 オーバーホールオーブ。

 ジェットジャベリン。

 デアリングダガー。

 イクイップメントエレメント。

 それらが揃ったとき、ヴォルモシアンの変容したベルトから放たれた光に包まれ、メディックシグナルらが別の性質を持ったものに変わっていた。

 

「熊谷、貴様の持つそれを貸してくれ」

「!…はい」

 

WieldWing(ウィールドウイング)

 

 北斗からメディックシグナルを受け取ると、光貴がそれを起動させ、ベルトに装填する。

 オーバーホールオーブの治療の甲斐(かい)あってか、ようやく立ち上がった光貴が息を大きく吸って、認証用の音声コードを口にする。

 

「変身───ッ」

 

YearningYouth(ヤーニングユース)

QuestQuartz(クエストクォーツ)

LinksLaser(リンクスレーザー)

ReactRoor(リアクトロアー)

VigorousVolcano(ヴィゴラスヴォルケーノ)

ZoeticZeal(ゾエティックジール)

《Project Complete…SevensBlessing───Change The Phexsia》

 

 その(こと)()は光貴に力を与え、変化したメディックシグナルを前腕と大腿(だいたい)に装着した戦士が完成する。

 (だいだい)色をまとい炎と鳥の意匠を持ったその仮面ライダーは、まさしく鳳凰のようだった。

 

「鳳さん……それは…」

「『仮面ライダーフェクシア』。MRP(メサイアライダーズプロジェクト)の最終段階……全てのマリスセルを浄化しうる、人類の救世主───“メサイア”だ」

 

 

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