仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#25 かいしんのいちげき

 神奈川県川崎市。

 東京湾を(のぞ)むその街にマリスセルが襲来する。

 今まで東京湾内からおおむね北方(ほっぽう)に侵攻し、東京のみにとどまっていたマリスセルの被害がこちらにまで広がり、人々は混乱と恐怖に(おちい)る。

 が、そこに翼の戦士が羽ばたく。

 

 翼の戦士───仮面ライダーフェクシアはリンクスレーザーとヴィゴラスヴォルケーノによる光線と炎で一気にアルファタイプとベータタイプ、そして亜種の軍団を一気に焼き尽くす。

 

「今まで侵攻のなかった川崎になぜこいつらが…それよりも!」

 

 大量のマリスセルを消し去りながら、フェクシアは群集の奥へと進む。

 その先にたたずむオメガタイプを捕捉(ほそく)し、炎をまとった拳をぶつける。

 

「羽ノ、強イヒト」

「オメガタイプ…! なぜ範囲を広げた!?」

「ヒトヲ、知リタカッタ───」

 

《ReactRoor》

 

 オメガタイプが話している途中で、フェクシアから放たれる轟音でオメガタイプの胸元が広がり、核があらわになる。

 

「そこが弱点なのは……」

 

《LinksLaser》

 

「わかっているッ!!」

 

 核へと光線が直撃したオメガタイプは言葉にならない断末魔を上げながら触腕をフェクシアへと突き出す。

 

(隙ができた、今か!)

 

《ZoeticZeal》

「ッ…決まれェェ!」

 

 ゾエティックジール、そう呼ばれた力を込めた回し蹴りがオメガタイプへと直撃する。

 核を防御し、致命傷を(まぬが)れオメガタイプは安堵(あんど)する。

 

「…核ヲ、壊セナカッタ」

「構わんさ───」

 

 瞬間、オメガタイプの核に膨大なデータが流れ込む。

 それは地球が歩んできたこれまでの歴史、生物の営み、人の一生、ありとあらゆる地球(ほし)の情報であった。

 大量に流れ込むデータに処理が追いつかず、オメガタイプはその場に伏せる。(かろ)うじて核を守る姿勢をとって倒されまいとするが、攻撃もできずにフェクシアを見つめた。

 

「ナ……な……何が、起こった」

「説明などしてたまるか、攻略されてはたまらんからな」

 

 そう告げるとフェクシアは飛び去り、周辺のマリスセルにもゾエティックジールを反映させていく。

 するとマリスセルたちが苦しみもがき、その姿を白いデッサン人形のような平坦(へいたん)な形へと変えていく。

 

「これ、は……まさか……! マリスセルへの、“ハッキング”」

 

 その効果に気づいたオメガタイプはすぐさま内部の防衛機構(ファイアウォール)を再構築し、ゾエティックジールによるデータ干渉を食い止める。

 ゾエティックジールとは、生命の持つ情報を(おとり)に処理能力を分散させ、その間にデータの侵食を起こす対電子生命体用再プログラミングシステムなのだ。

 

 

「マリスセルから得られるエネルギーでゾエティックジールの発動にこぎつけるか不安だったが、間に合って良かった……実践はこれくらいにして、あとは仮面ライダーたちにこれを搭載するためのマリスセル回収に当たるか」

 

 フェクシアがふらつく体をなんとか支えながら川崎に出現したマリスセルのハッキングを続ける。

 オメガタイプはこれ以上の戦闘は危険と判断し、退避する。

 

「逃げるのが得意なようだな…」

 

 なんとか川崎の動乱をおさめたフェクシアはハッキングしたマリスセルを海岸に用意していた貨物船に乗せると、変身を解除する。

 

「このあたりのマリスセルもゾエティックジールで無毒化できているようだな、体の重みがいつもよりはマシだ」

 

 そうつぶやくと、タバコを取り出して一服(いっぷく)する。

 

「これがあれば……マリスセルを……消せる!!」

 

 歓喜する光貴だったが、そういえば、とスマートフォンを取り出す。

 

「熊谷と大神……まだ繋がらないのか、ったく……まぁ仕方ないか、心の傷を癒すには、時間が必要だからな」

 

 ため息をこぼすと光貴は貨物船に乗り込み、ライダーらの待つ施設へと戻る。

 

(帰ってさっさと改修を施さねばな…)

 

──────────────────

 

 北斗が目覚めると、外はすでに明るくなっていることに気づいて顔を蒼白させながら時間を見る。

 と同時に光貴から大量の着信があったことに気づき絶句する。

 

「しまった…どうやら寝過ごした───ほえ、のえる」

「むにゃにゃ~~~」

「行こう、光貴さんが待ってる」

「むにゃ~い」

 

 北斗は久方ぶりの私服に着替え、支度(したく)を整える。

 

「ところで、のえる」

「なに?」

「昨日のこと…なんだけどさ……」

 

 北斗が顔を赤らめる。

 何かに気づいたのえるも(ほお)を赤く染める。

 

「ほえるちゃんとの記憶は…つながってて、その…覚えてる、よ」

「…やっぱり」

「あーでも!? ね! ヒトだもんね! ね! えっと───」

「ほえるに会わせてくれてありがとう、のえる」

 

 北斗が少しだけ微笑むと、のえるも満面の笑みを浮かべる。

 

「私はもう大丈夫、ほえると、のえるのおかげでね。だから行こう、私たちにしかできないことをしに」

「うん、みんなを守ろう」

 

 玄関に立った北斗は、懐かしそうに自宅を見回す。

 

「お母さん、お父さん、行ってきます」

「お邪魔しました!」

 

──────────────────

 

 施設に戻った楽歌らは、ようやくと羽を伸ばしつつ自主的に戦闘訓練をおこなっていた。

 

「一人でやろうと思ってたけど、まさかアンタらも付き合ってくれるなんてね」

「それはこっちのセリフよん、これ時給は出るけど前みたいにマリスセルを倒してお金もらえないんでしょ?」

 

 アルファタイプを切り裂きながら着地するケトシィに俊鼠が笑う。

 

「アタシはママ活から足を洗って普通に仕事したかったからこれでいいのよ、それよりもいぶ、アンタ戦いたくなかったんじゃないの?」

「…理由ができたのよ」

「それってそこの真希みたいな?」

 

 2人がティオーロの方向を見ると、そこには修羅(しゅら)と形容できるほどに激しくマリスセルを斬っていく戦士の姿があった。

 

「あの子ほど複雑な心境はしてないかしらね…ただ、あなたが好きになったから、一人で戦わせられないだけよ」

「ふふ、何それ」

「昔ヒモってた子にフラれたことがあって、もうメチャクチャ引きずって、置いてかれた気がして、だから───」

「アタシに置いてかれたくない、そんだけなの?」

「ええ、それだけ」

 

 ケトシィ、俊鼠がそれぞれの刃と弾丸をベータタイプへとぶつける。

 戦いの中でベータタイプの弱点を完全に把握(はあく)した2人にとってはもう敵ではなかった。

 

「にしても変わったわよね、みんな」

 

 独り言のようにつぶやく俊鼠が、ケトシィ、ティオーロ、そして奥でドローンの指揮(しき)をおこなうルキフスを見る。

 

 

 ルキフスはドローンを用いてマリスセルを倒していくが、自分が戦うべき真の敵のことを考え、職員に連絡する。

 

「あの…仮面ライダーアトラクネの戦闘データを敵として出せますか?」

「可能です、今出力します」

 

 するとルキフスの前にアトラクネが出現し、鎖を彼女めがけて射出する。

 

(不規則な軌道(きどう)、当たれば致命的な金属…ドローンは先んじて破壊される……やっぱり)

 

 回避と損傷を繰り返し、ルキフスがアトラクネの攻撃を学んでいく。

 

《CrimeChain》

《Project Start…CrimeChain───Change The Luxhus》

 

 アトラクネと同じ鎖同士で絡ませ、彼女の動きを封じる。

 その間に接近し、アトラクネが腰に装備するダリングエッジを奪い取る。

 鎖が邪魔をして自由な身動きが取れない中で、ルキフスはアトラクネの動きを観察し続ける。

 

(こちらが奪った武器を取り返そうと迫りつつ、こちらの急所を狙う、だけどこっちには武器を持つ有利点がある)

 

「隙ありです☆」

 

 ティオーロがアトラクネの背後を狙い、刀で刺し貫こうとする。が、ルキフスが鎖をほどいてその攻撃を防御する。

 

「あれ☆」

「ごめんなさい真希さん! でもっ…! ……八雲は私に……やらせてほしいんです」

「どうしてですか☆」

「八雲に、親友を殺されたんです。これは単なる復讐(ふくしゅう)…だけど!」

 

 体の自由を取り戻し、ルキフスへと接近するアトラクネだったが、足元に鎖が絡みつき、体勢を崩してしまった。

 

「これからを笑顔で生きるために、私が、八雲を倒したんだって結果がほしいんです。でなきゃ…私はあの子に、何もしてあげられなかったことになるから……」

「結果…ですか?☆」

 

 真希が結果と聞いて自分のことを思い出す。

 北斗の笑顔が見たいからと戦い続け、言葉を(つむ)ぎ、時間を(つい)やした。

 ただ一つの、自分だけの結果。それを求めて武器を握るルキフスの姿勢は、自分のそれと変わらないと、ティオーロは考えた。

 

「それがあなたの“笑顔のため”なんですね☆」

「笑顔…? っとぁ!?」

 

 鎖をほどいたアトラクネがルキフスに組みつく。

 危険な状態に追い込まれた彼女だったが、そこにティオーロが蹴りを食らわせてアトラクネを引きはがす。

 

「…あり、ありがとうございます」

「ひとつ聞かせてください☆ 結果がほしいならどんなやり方でもいいんじゃないですか?☆ どうして───」

 

 アトラクネの攻撃を防御したルキフスの姿を、ティオーロは回想する。

 

「どうしてやり方にこだわったんですか?☆」

 

 えっと、と言葉に詰まりながらルキフスはギャザリングガジェッツに換装する。

 

「やり方にこだわらないと失敗、するって思うんです…ここでいう失敗っていうのは、私じゃない誰かが八雲を倒したときのことです。そうしたら、私は今まで八雲を倒すためにしてきた努力や意地を無駄にしちゃうから……華に何もしてあげられなかったって思っちゃうから……やり方に、こだわらないといけないんです」

 

 アトラクネの攻撃をさばきながら、ルキフスは言葉を続ける。

 

「手を抜きたくないんです、つまり……楽な方法じゃ、満足できないから!」

 

 ルキフスが直刀を取り出すと、アトラクネの放つ鎖が巻きつく。

 

「真希さんも、北斗さんの困った顔が見たくて…のえるさんを手にかけたって、聞きました」

 

 アトラクネが鎖を使えない状態に(おちい)り、ルキフスは体に装備されていた小型銃でアトラクネを撃ち抜く。間一髪で直刀に巻きついていた鎖をといたアトラクネによって防御されるが、直刀が使用可能になりルキフスはそれを振りかざして走る。

 

「それが上手くいかなかったのは、手を抜いたからです!」

 

 その言葉とともに直刀をアトラクネへ突き刺す。

 心臓を確実に(つらぬ)いたその直刀を引き抜くと、ルキフスはその場に倒れ込んでティオーロへと言葉を投げかける。

 

「本当に満足できる結果がほしいなら…やり方にこだわって、手を抜かないことが大事だって…思います」

 

 訓練が終了し、真希はVR機器を取り外しながらルキフスに言われた言葉を反芻(はんすう)する。

 

「やり方に…こだわる……」

 

 

 と、放送から光貴の声が響く。どうやら帰還したらしい。

 

「諸君、これからリミディウムドライバーの改修をおこなう。これにより稼働時間の延長と対マリスセル用の防御能力が格段(かくだん)に上昇する予定だ。改修後それらをデータに反映した訓練をおこなうのでそれまで待機するように」

 

 光貴が言い終わると、ヴォルモシアンドライバーを装備開発用の機器に接続し、その場の職員に改修を任せる。

 

「善性化したマリスセルの力、有効活用させていただきます」

《はい、我々のやれる限りのことを尽くして、今後起こるであろうオメガの強化に備えましょう》

 

 ヴォルモシアンの言葉に光貴がうなづくと、別の職員に呼ばれその場をあとにする。

 

「どうした?」

「熊谷さんと大神さんが戻りました」

「…やっとか、私が直接文句を言っておく」

 

 職員が頭を下げると、光貴もつられて頭を下げる。少し苦笑いしてから、彼女は足早に玄関口へと突き進む。

 

「あっ光貴さん」

「すみません、遅れました」

「貴様ら……連絡を無視して職務怠慢(しょくむたいまん)とはいい度胸だな……!」

「“貴様”に戻ってるよ~どうしよ北斗ちゃん」

「これは私のせいで……」

 

 焦るのえると北斗の頭に、光貴が軽く拳骨(げんこつ)を食らわせる。

 

「貴様らは今は実験対象ではなく志願した人間として仮面ライダーの立場にある…人類を守る重要な立場だ。それを理解して、節度ある行動を心がけろ」

「ごめんなさい……」

 

 しおらしく謝罪する2人に、光貴はさらに言葉を重ねる。

 

「だが熊谷、お前の悲しみは理解できる。そして大神、友の悲しみに寄り添ったこと、人として誇らしいぞ」

 

 予想だにしていなかった光貴からの気づかいに、2人は(ほう)けた顔を見せる。

 

「きみ…貴様らの持つリミディウムドライバーも改修を(ほどこ)すゆえ、職員に預けるように」

「…それだけですか」

「それだけだが、なんだ」

 

 自分のフォローが2人にとって意外であったことに気づき、光貴は咳払いする。

 

「わ、私だって君たちを気にかけはする! 今は保護者に当たるからな……ともかくだ」

「はい」

 

 口角を上げて笑みを浮かべるのえるに光貴は顔をしかめる。

 

「ともかく、良く戻ってきた……熊谷、大神」

「ただいまです!!」

「ただいま帰りました」

 

 その言葉を聞いて、光貴はため息をつきながらも、微笑んだ。

 

 

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