仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#27 ぜんせい

「すみません、遅れました」

 

 ガレージにまだ残っていた面々に追いついた北斗が告げると、外の広場の上空から轟音(ごうおん)とともに突風が吹きつける。仮面ライダーを目的地へと運ぶ輸送機が到着したらしい。

 

「熊谷、いいのか」

 

 光貴に気遣われるも、北斗は首を縦に振って意志を(しめ)す。

 北斗が一歩進むと、職員からアタッシュケースを手渡される。

 

「改修にあわせてフェクシア起動時に使用されていたメディックシグナルも再配備しています」

「ホントだ、カレイドナックル…また使えるんですね」

 

 

「それでは私は変身して急行する。君たちはそこに止まっている輸送機で移動してくれ」

 

《WolmocianDriver》

《WieldWing》

 

 そう告げると光貴は腰にベルトを巻きつけ、ウィールドウイングのメディックシグナルを装填する。

 それを押下すると、彼女の足元に置かれていたアタッシュケースに収納されていたメディックシグナルが飛び出し、起動していく。

 

「変身───ッ」

 

《YearningYouth》

《QuestQuartz》

《LinksLaser》

《ReactRoor》

《VigorousVolcano》

《ZoeticZeal》

《Project Complete…SevensBlessing───Change The Phexsia》

 

 神々(こうごう)しい輝きとともにフェクシアが変身完了する。

 

「諸君、健闘を祈る」

 

 そう言い残すと、フェクシアは戦闘機を思わせる速度で空に消える。

 それを見送る暇もなく、面々が輸送機に乗り込む。

 

 目的地は神奈川県横須賀市。

 海上自衛隊の保有する艦艇(かんてい)が多く入渠(にゅうきょ)するその地にマリスセルが出現したのだ。

 

「マリスセルがわざわざそんなとこに現れるのには何か理由があるのでしょうか」

 

 北斗が端末に問うと、そこに内蔵されたヴォルモシアンの分体がそうですね、と返してから思考を開始する。

 

《奴らの目的は人類の侵略です。今まで狙ってこなかった地に到来したのは、人類の文明をさらに学習してより効率よく活動することが目的と推察(すいさつ)されます》

 

「文明? だったら金でも稼いでみりゃいいのよ」

「たしかにそれも有効な方法、かもですね」

 

 両手を広げて肩をすくめる楽歌に、陽廉が苦笑いする。

 

「横須賀で文明といえば自衛隊の持つ兵器、艦艇が思いつきますが、それがマリスセルの狙いだったりするのでしょうか」

「なんにせよアタシらはバイキンを倒して報酬をいただくだけよ」

 

 気合いを入れ直す楽歌を尻目に、いぶが北斗を気づかう。

 

「北斗ちゃん…マリスセルと戦える?」

「はい、問題ありません。お父さんとお母さんだってマリスセルに立ち向かったんですから」

 

 北斗が告げると、いぶがうなづく。

 

「二度とお父さんやお母さんみたいに、マリスセルによって命を失う人を出さないために、絶対に戦います」

「すごい覚悟ね、お金目当てのアタシとは違うわー」

「そういう楽歌ちゃんだってここまで付き合ってくれてんだからすごいと思うわよぉ」

 

 いぶにフォローされ、複雑な心境の楽歌が目をそむける。

 

「そろそろ目的地みたいです☆」

 

 真希に告げられ、一同が窓から風景をながめる。

 広大な海に大きな艦艇の並ぶその地に、灰色の群衆が押し寄せていた。

 

「マリスセル、もうあんなに…」

 

 感嘆する陽廉だったが、以前のような恐怖はなかった。

 それは戦いを忌避(きひ)していたいぶ、恐ろしい怪物に足をすくませていた北斗も同じだった。

 短い期間ではあるが、仮面ライダーとして戦ってきた壮絶な環境が彼女らを成長させていたのだろう。

 

 

「───うわぁぁあッ!!」

 

 輸送機の操縦士の叫びに全員が前方を向く。

 と、コックピットに大量のアルファタイプが張りつき、飛行を(はば)んでいた。

 そのアルファタイプらは翼を有しており、明らかに進化していた。

 

「あ、新しいマリスセル…!?」

「陽廉! ビビってないで降りるわよ!」

 

 そう叫ぶ楽歌に、いぶがさらに焦りを(つの)らせる。

 

「楽歌ちゃん、降りるったってどうやって!」

「そんなの───」

 

 無策だった。

 飛行戦力の(とぼ)しい仮面ライダーらが現在の高度から落下すればたとえ装甲をまとっていてもひとたまりもないだろう。

 そうしているうちに輸送機は新型マリスセルの重量で高度を落とし、彼女らを乗せたまま地面へと近づいていく。

 

《RemediumDriver》

《XenoX》

 

「───変身」

 

《Project Start…XenoX───Change The Rappol》

 

 ラポールに変身し、ゼノクロスをまとって全員を抱える。

 

「こうなったら私がギリギリの高度でみんなを運びます!」

 

 決断したラポールが告げると、操縦士を含めた全員を集めて、手をつないでもらう。

 

「だったら…」

 

《CrimeChain》

《Project Start…CrimeChain───Change The Luxhus》

 

 陽廉がつぶやくと、ルキフスへと変身する。

 

「これで…少しでもみなさんを持てるでしょうか……」

「自信はありませんが、今の高度から着地させることくらいなら…できますかね」

 

 ラポールが息をのむ。

 

「みなさん、一応衝撃に備えて変身を」

 

 各員がうなづくと、その姿を戦士の様相へと変える。

 

《Project Start…BlazeBullet───Change The Syunso》

《Project Start…FatalFang───Change The Caitsith》

《Project Start…StraightSword───Change The Tioro》

 

「操縦士さんは私が安全に下ろせるよう隣でお願いします」

「あっはい…」

 

 ラポールが操縦士と手をつなぐと、同じようにそれぞれが手をつなぎ、ルキフスの鎖を腰に巻いて固定する。

 

「八雲の使った鎖の力を……みんなのために、使う…!」

 

 ルキフスがつぶやくと、鎖を輸送機後部のハッチに叩き付け、扉をこじ開ける。

 

「……出ます! いっせーの…!」

「せッ!!」

 

 全員が輸送機から飛び出し、落下する。

 ゼノクロスの飛行能力で、落ちるスピードをゆるやかにし、軟着陸(なんちゃくりく)をめざす。

 彼女らの降りていく中、マリスセルに包まれた輸送機は爆散し、爆風を受けながらもなんとか全員が着地する。

 

「生きて降りれた……」

 

 ほとんど生身で着地することとなり、生きた心地のしなかった操縦士は胸をなで下ろす。が、事態は未だ好転しない。

 自衛隊横須賀基地敷地内の岸に到着したものの、そこはすでにマリスセルの大群に占拠され、いわば四面楚歌(しめんそか)といった状況となっていた。

 

「たしか改良されたんでしょ、仮面ライダーも。だったらその力を見せつけてやろうじゃない!」

 

 楽歌が啖呵(たんか)を切る。それに応じてラポール、ケトシィ、ティオーロも臨戦態勢をととのえる。

 ルキフスは操縦士が無事に避難できるよう守備につく。

 

《Project Start…HasteHack───Change The Luxhus》

 

「操縦士さんは私に任せてください……ゴメンナサイ、援護お願いしたいです」

「任せて陽廉ちゃん、お姉さんもついていくわん」

「車を見つけられればそれで逃げられます」

 

 ケトシィもルキフスと協力し、車両のある場所を探して操縦士を送り届ける。

 アルファタイプが彼女らへと近寄るが、ティオーロが一気に斬り払う。

 

「操縦士さんは守る…そうすれば笑顔になれるかな、北斗ちゃん?☆」

「その人を守れなければ笑って過ごせません、笑顔になれません」

「…りょうかい☆」

 

 ティオーロが走り出すと、さらにアルファタイプを一刀両断していく。

 その倒す速度は以前よりもはるかに上がっており、仮面ライダーの運動補助性能が向上していることを思わせる。

 だが、それ以上に仮面ライダーの能力が変化している点があった。

 それにいち早く気づいたのは鉤爪(かぎづめ)奮戦(ふんせん)するケトシィであった。

 

「マリスセルが触っただけで動かなくなるんだけど!?」

「マジで?」

 

 試しに俊鼠がアルファタイプを殴ると、まるで思考が停止したように体を硬直させ、動かなくなってしまった。加えて一撃で粉砕できるほどに弱体化しており、仮面ライダーに対マリスセル用の新たな特性が付与されているようだった。

 

「これが仮面ライダーの、改良…!?」

 

 ラポールが放つ氷の冷気だけで迫りくるベータタイプが動きを止め、氷柱の餌食(えじき)になる。

 

《鳳さまが有しているゾエティックジールのメディックシグナル…その特性を各ライダーのスーツに組み込み、触れるだけでマリスセルをハッキングし脆弱化(ぜいじゃくか)させる、“善性のマリスセル”を発生可能にいたしました。これこそが仮面ライダーの主な改良点です》

 

 ヴォルモシアンの解説を受け納得した北斗がさらに氷柱を発生させ壁の様に配置し、マリスセルの動きを食い止める。

 

「こうすれば時間を稼げる…!」

「時間を稼ぐどころか攻めに使えるわよこの氷! あのザコどもの動きが完全に止まるから…簡単に狙い撃てる!!」

 

 冷気の中に含まれた善性マリスセルによって周囲の敵が動きを止める。その間に俊鼠が銃を乱射して敵を消し飛ばしていく。

 マリスセルに対して有利になった仮面ライダーらは操縦士が運転できる車両を見つけ、そこへと突き進む。

 

「操縦士さん、これに乗れば避難区域まで行けるかと!」

「ああ、ここまでどうもありがとう…君たちもどうか無事で!」

 

 操縦士を見送ると、仮面ライダーたちが勢ぞろいしマリスセルをなぎ倒していく。

 

「これMRPだったらいくらになってたのかしらね!」

「もう分かんないわね! 報酬は帰って光貴ちゃんと相談よん!」

「金!くれ!」

 

 俊鼠とケトシィが刃と弾丸の猛攻でマリスセルを蹴散(けち)らしていく。

 

 と、戦闘中のルキフスが何か予感を感じ取り、動きを止める。

 

「陽廉さん?」

「……なんだか悪寒(おかん)が…まさか」

 

 ルキフスがドローンを飛ばして遠方を確認する。と、そこには彼女の予感通り、“彼女”がいた。

 

「殺スッ!!」

 

 アトラクネデルタ。死後もなおマリスセルに肉体を(もてあそ)ばれ殺戮(さつりく)のみを思考する傀儡(かいらい)と化した彼女に、ルキフスはドローンの銃撃を放つ。

 

「殺ッ───動カネェ?」

 

 ドローンの銃弾にも仕込まれた善性マリスセルがアトラクネデルタの体に侵入し、ハッキングを開始する。

 が、元は人間であったその肉体に対しての効果は薄く、アトラクネデルタ体内の機能により防がれてしまう。

 再度動きだしたアトラクネデルタが周囲の行動不能になったマリスセルを砕きながら鎖を放つ。

 

「死ネェェェッ!!」

 

 ドローンを破壊され、丸腰となったルキフスは再びクライムチェーンに装備を変更し、鎖同士でせめぎ合う。

 

「陽廉さん、ここは協力して戦いましょう!」

「ッ…お願いします!」

 

 ラポールの氷がアトラクネデルタの鎖を凍らせ、その隙に仮面ライダーの一斉攻撃を食らわせる。

 が、瞬時に回避したアトラクネデルタはティオーロの斬撃を利用して凍った鎖を斬り、自由を取り戻す。

 

「邪魔クセェ!!」

 

 鎖を一本失ったアトラクネデルタが突撃してくるが、ティオーロがその道を阻む。

 

「死んでいるのに動いてるのはどんな感じなんですか?☆」

「ウルセェ、死ネ!!」

「もう少しあなたとお話したかったんですが、おしゃべりできないみたいですね☆ 残念です☆」

 

《StraightSword End》

 

 ティオーロが必殺技を放ち、アトラクネデルタを縦真っ二つに斬る。

 

「……人を殺した人の気持ち、少し知りたかったんですけどね☆」

 

 そうティオーロが吐き捨てると、ようやく倒れたアトラクネデルタに背を向ける。

 が。

 

「───殺ス…!」

 

 アトラクネデルタは体が左右に分かたれても死なず、体から細かな鎖が伸び、断面を縫合(ほうごう)するように固定する。

 そして背を見せたティオーロの右胸を腕から生えた鎖で刺し(つらぬ)く。

 

「───え☆」

 

 大量の出血と共に膝から崩れ落ちたティオーロにアトラクネデルタが語りかける。

 

「人ヲ殺スノハ、楽シイ、気持チイイ、最高ダ!」

「……それじゃあ分かりあえませんね…☆」

 

 そう、分かりあえないのだ。

 人の命を無為(むい)にし、楽しむ者とは。

 

 

 真希は北斗の笑顔への興味によって、変わっていった。笑顔が見たいと、そのために動くのだと。

 もう人の感情のために誰かを手にかける狂った自分はいない。

 アトラクネデルタと戦ったとき、そして今、死の(ふち)に立たされたとき、確信したのだ。

 誰かを守れる自分は“輝いている”のだと。

 

 北斗とともに歩いたとき、彼女は少しでも微笑(ほほえ)んでくれた。

 そうやってまた北斗と歩いて、彼女の心について考えていけば、また笑顔が見られると思えた。

 

「八雲さん、あなたみたいな感情のないオバケの殺人鬼さんには、一生分からないですよ、この輝きは……」

 

 そういうとティオーロは変身解除し、満面の笑みをアトラクネデルタに向ける。

 

「真希さん!」

「真希にゃ!」

 

 駆けつけた北斗といぶに、真希は屈託(くったく)のない輝く笑顔を見せる。

 

「真希さん! こんなの、笑えませんよ!」

「ごめんね、北斗ちゃん☆」

 

 真希の体が重くなっていく。

 自分のためにのえるを(あや)めた(むく)いだと真希が考えると、さらに笑えてきた。

 

(悪いことしたら…返ってきちゃうね……北斗ちゃん、笑えてないし)

 

 感情が希薄(きはく)であった北斗だが、真希の姿に、涙を流していた。

 悲しいという気持ちが、爆発していた。

 

「真希さん、お願い死なないでください!」

「泣いてる顔、はじめて見た。そんな顔、するんだね……笑ってる顔が、見たかったのにな」

 

 

──────────────────

 

 のえるが目覚めると、ベッドから飛び出して走り出す。

 

「私も、行かなくちゃ───!」

 

 彼女の腰には装着していないはずのベルトが巻きついていた。

 

 

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