仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#28 しんか

 仮面ライダーらに先んじて横須賀に到着していたフェクシアは、マリスセルの群衆にまぎれて護衛艦を調べているオメガタイプを発見し、急接近する。

 

「…こんにちは、鳥のヒト」

「私は仮面ライダーフェクシア…覚えておけ!」

 

《YearningYouth》

 

 赤い粒子を放つフェクシアがオメガタイプに回し蹴りを食らわせると、護衛艦の壁にめり込ませる。

 

「チッ、国民の税金をなんだと思っているんだ」

 

 蹴りの衝撃を食らったオメガタイプがふらつきながら体を変形させ、フェクシアにしがみつくと、人の顔のようなものを形成し、にらみつける。

 

「痛かった…これが痛み……怒り!」

「貴様らに人の情報を理解させたのは間違いなかったみたいだな」

 

《QuestQuartz》

 

 粒子状に分解したフェクシアが(から)みつくオメガタイプから離れると、今度は炎の拳を()りだしてオメガタイプへとダメージを与える。

 

《VigorousVolcano》

 

「ワタシは今、怒っている!!」

「顔を見れば分かるさ、感情を伝える手段を手に入れたみたいで何よりだ」

「ふざけるな…!」

 

 (いきどお)りをあらわにするオメガタイプに、フェクシアは笑う。

 

「まるで人間だな、マリスセル」

「ヒトを学び、理解した今なら貴方(あなた)がたの思考を逆手(さかて)にとれると思ったのですが…!」

 

 そう告げると、オメガタイプはさらに人に近い形を成していき、白髪の青年のような姿になった。

 

「ヒトはヒトを攻撃する際、抵抗感が生まれるそうですが───」

 

 青年の姿をとったオメガタイプをフェクシアは容赦(ようしゃ)なく(なぐ)った。

 

「正体割れてるのにやることか、阿呆(あほう)め」

 

 痛みにもだえるオメガタイプは、恨みを込めたまなざしをフェクシアへと向ける。

 

「だァッ!!」

 

 怒りのままに叫んだオメガタイプが、腕部から巨大な砲身を形成すると、そこからミサイルを射出し、フェクシアを吹き飛ばす。

 

「のゎッ!?」

 

 全身がしびれ、痛みをともなうが、なんとか爆風をかいくぐりオメガタイプを捕捉(ほそく)する。

 

「まだ、戦いますか!」

 

 憤慨(ふんがい)するオメガタイプに、フェクシアのベルトからヴォルモシアンが意思の伝達をはかる。

 

《オメガ、私が分かりますか》

「お母さん、と、同じ存在……!?」

《ただちに人の侵略をやめなさい、あなたの上位たる生命からの命令です》

「───!」

 

 オメガタイプが動きを止め、体を小刻みに震わせる。

 

「…通じたのでしょうか」

《分かりません……いえ》

 

 ヴォルモシアンがつぶやくと、オメガタイプが硬直したまま何かの言語を発しはじめる。

 

「繝槭Μ繧ケ繧サ繝ォ蛛懈ュ「繝励Ο繝医さ繝ォ繧堤「コ隱阪??謌ヲ髣倥r荳ュ譁ュ縺励せ繝ェ繝シ繝励Δ繝シ繝峨↓遘サ陦悟セ後??蛛懈ュ「繝励Ο繝医さ繝ォ繧堤?エ譽???蛻晄悄蜻ス莉、繧貞ョ溯」

「何を言っている…?」

《残念ですがこちらの命令が無視されました。今は戦うつもりはないようですが、人を襲うことには変わりないようです》

 

 すさまじい速度で退避するオメガタイプをフェクシアが追おうとするが、時間切れらしく力が抜けていく。

 

「くっ、こちらも限界か……」

 

 フェクシアが悔しさのあまり護衛艦の壁に拳を打ちつけ空を見上げると、白銀(はくぎん)の戦士が飛び去ったのを確認した。

 

「…あれは───」

 

 

──────────────────

 

 とある高校、とある教室。

 マリスセルの蔓延(まんえん)する東京湾から離れたその地域でもマスクを付ける生徒は多く、話題もマリスセルに関するものが多くなっていた。

 それぞれが心配の声を上げるも、どこか他人事のような反応の生徒たちを見て、飯沼碧はため息をついた。

 

 碧はまだうまく周囲となじめず、休憩中に一人でスマホを見ていた。

 クラスメイトである猿堂朱李を失ったはずなのに、ここではみんながそれを忘れたかのように過ごしている。マリスセルのことだってそうだ。自分に関係ないことはどうでもいい情報でしかないのだ。

 そうやって過ごすクラスメイトに、自分の戦ってきた環境が否定されるのが怖くて、碧は何も話しかけられなかった。

 

 

「えっ嘘~、横須賀に新しいマリスセルが現れたの!?」

「そうそう、それでさ…マリスセルじゃないなんか鎧つけたヒーロー? みたいな人たちが出てきて戦ってるらしいよ」

 

 その噂が耳に入った碧がさらに聞き耳をたてる。

 

「ヒーロー? 何それ」

「多分自衛隊の新しい武器かなんかだよ、いっつもなんとかしろって言われてたし」

「私たちんところにも来たらやだなー」

「大丈夫だよ、この辺海から遠いし」

「そうそう、こっちってマリスセル感染した人全然いないよね、じゃあ大丈夫か」

「それでさ───」

 

 それで話題は終わってしまう。だが、その情報だけで碧は仮面ライダーが戦っているのだと確信し、ネットニュースを(あさ)る。

 投稿された記事を見つけると、そこにのせられていた写真を見て、ラポールや俊鼠の姿だと実感した。

 

(まだ…あの人たちは戦ってるんだ……たしかに当たり前だよね、まだマリスセルはいなくならないし、戦う必要はあるもん)

 

 そう頭を巡らせつつ、碧は心の中に迷いが生じていた。

 彼女らが戦っていることを知りながら、自分はこうして日常に戻っていいのか。

 

(あの人たちは、戦って、また…死んじゃうかもしれない)

「…そんなの嫌だ」

 

 碧がつぶやくと、血相を悪くしている彼女にクラスメイトが話かける。

 

「飯沼さんどうしたの? 体調悪い?」

「一緒に保健室行く? 大丈夫?」

 

 クラスメイトの言葉も、表情も、本当に優しかった。

 このクラスを牛耳(ぎゅうじ)っていた朱李がいなくなり、素直に碧を助けられるようになったのだ。

 本当は碧にとってもクラスメイトにとっても、嬉しいことなのかもしれなかったが、碧はその優しさが朱李の死によってもたらされたのではないかと考えていた。

 

「あの……猿堂、さん…覚えてますか」

「…うん、マリスセルで亡くなっちゃったって先生から聞いたけど……飯沼さんあの子にいじめられてたよね? だからもう大丈夫じゃない? 本当にあなたが嫌いでいじめてた子なんて猿堂さんくらいだったし、もう誰も飯沼さんをいじめいないよ」

 

 苦しそうな笑顔で告げられた。

 本当に碧を心配し、今までいじめを無視していた人間として罪悪感におしつぶされながら言葉をひねり出しているようだった。

 

「もう猿堂さんは学校に来ないから、安心してここにいるといいよ、飯沼さん」

 

 その言葉に碧は胸を締めつけられる。

 朱李はたしかに自分をいじめていたが、彼女がそうせざるを得なかった環境、感情を知ってしまったのだ。

 

「猿堂さんは、ひとりぼっちだったんです。それを、誰も、分かってあげられなかっただけなんです」

「飯沼さん?」

「───なんでもありません」

 

 そうつぶやくと、荷物を持って碧は教室を出る。

 

「ごめんなさい、今日は早退します。先生に伝えておいてくれると嬉しいです」

 

 クラスメイトに頭を下げ碧が立ち去ろうとすると、あの、とクラスメイトが引きとめる。

 

「猿堂さんのこと……今度くわしく教えて」

「私たちだって心配なんだよ」

 

 彼女らからそう伝えられ、碧は“嬉しかった”。

 朱李を理解しようとしているのは自分だけじゃない、彼女はまだ忘れられていない。その事実が朱李の死にとらわれていた碧の重荷を軽くしたような気がした。

 

 

 学校を出た碧は、臨時東京市庁のホームページからマリスセル衛生対策委員会に電話をかけると、緊張をおさえながら要件を伝える。

 

「わたし、第9企画? の計画に参加していた飯沼といいます。鳳さんという方は、いますか?」

「第9企画、ですか?そのような部署はこちらには───」

「MRPです、そういえば分かりますか!」

「……それを知っているなら、本物の関係者みたいですね、鳳は出ていますので他の職員につなぎます」

 

 相談窓口で対応してくれた女性がそういって代わると、第9企画に所属する職員が出る。

 

「飯沼さんですね、ここに連絡したということは…」

「私をまた仮面ライダーにしてください。みなさん戦ってるのに、私だけ普通の生活に戻って、マリスセルを見て見ぬふりなんてできません。猿堂さんの分まで生きるために、今私にできることをやりたいんです」

「…かしこまりました。鳳さんはこうなることを分かっていて、“ご家族に相談しろ”と伝言を残しています。まずは家の方とお話してご理解を得てからにしてくださいね」

「分かりました。でも、必ず、力になります!」

 

 強い意志を伝えた碧は電話を切ると、家にいる母へと電話をかける。

 

「もしもしママ? こないだの検査の件だけど、私また行かなきゃいけないみたい」

「何それ? ママ何も聞いてないけど」

 

 家族を心配させるのは目に見えている。それは非常につらかったが、ここで立ち止まって、一緒に戦ってくれた人々を見殺しにするのはもっとつらかった。だから、最後まで伝える。

 

「どこまで話していいか分からないけど、話さないと分からないと思うから、全部言うね」

 

 こうして碧はMRPのこと、クラスメイトの朱李の死、そこで出会った大切な人々のこと、また仮面ライダーとなって戦うことを母に告げた。

 混乱する碧の母だったが、碧の意志が固いことを知り、分かった、と言葉をもらした。

 

「でも、碧はまだ子供よ。あなたの行動に親が責任を持たないといけないし、危険なことは止めなきゃいけない」

「それは…分かるけど……」

「お母さんも行きます」

「え」

「お父さんも連れていきます」

「えっ」

「というわけでどこ行けばいいのか教えなさい」

「私もよく知らなくて…」

「じゃあ一緒に行くわよ!」

 

 碧の決意よりも強情な母の熱意に、碧がため息をつく。

 

「でも、ありがとう。光貴さんと相談してみる」

「碧が思い悩んでるのは分かってる、だから少しでも力になるわよ」

「本当にありがとう、ママ」

 

──────────────────

 

 碧が動き出していたころ、目を覚ましたのえるは自動的に出現したベルトを見て、マリスセルとしての力が強まっていると感じていた。

 ガレージへと走りながら、この力について詳しいであろうヴォルモシアンへと問う。

 

「ヴォルモシアンさん、もしかして私、マリスセルを操作できるようになってきてませんか?」

《そのようですね。特に、以前は悪性のマリスセルを使用していたようですが、私の分析によると、現在使用しているのは善性のマリスセル───つまり大神様はマリスセルでありながら人を感染させずにその力を()るえるようです》

「最近いろいろと学ぶことが多かったから進化しちゃったのかもしれません。とにかく、この力があれば今からみんなを助けられると思うんですけど?」

《ヴォルモシアンと同質の力ならば、新たな装備を作り出して皆様のもとへ行けるかもしれませんね》

 

 それを聞いてのえるが不敵な笑みを浮かべる。

 

「じゃ、試してみますか」

 

 ガレージに出たのえるが念じると、白銀のメディックシグナルが生成されていく。

 

「あっちょっと難しい」

《体を修復する際のイメージで、場に粒子を収束させるように、形をなしていくのです》

「う~~ん、こうか!」

 

 のえるが眉間(みけん)にしわを寄せると、メディックシグナルがついに具現化(ぐげんか)し、誕生する。

 試しにメディックシグナルのスイッチを押すが、何も反応しない。

 

「あれ?」

《動作に関するイメージが固まっていなかったのでしょう。どんな音声が鳴るのか、どんな力を有しているのか、それを具体的に想像して、力を与えるのです》

 

 それを聞いて、のえるは自分の持つ創造力をふくらませる。

 

「みんなを助けられる力、ヒトが持ってるモノを組み合わせて、ひとつの力にするんだ…!」

 

 何度もメディックシグナルを押下(おうか)し、イメージを()きあがらせながら力を込めていく。

 

「とにかくみんなの所にひとっ飛びする感じで!!」

 

《―――!》

 

 メディックシグナルから音声が鳴り、起動する。

 

「いけた!」

《この力にはまだ名前が無いようです、ゆえに未完成かつ不完全です。しかし、だからこそ、無限の可能性を秘めていると思われます》

「不完全か…ちょっと不安だけど、とにかく飛べればいいんだ!」

 

 そのメディックシグナルをベルトに装填し、のえるは体に力を込める。

 

「変身!」

 

《Project Start───Change The Wolmoke》

 

 その音声とともに、白銀のヴォルモークが爆誕する。

 

「なんか…キレイ」

 

 ヴォルモークがつぶやくと、全身にエネルギーが満ちていくのを感じる。

 

「とにかくこの力なら……みんなの元へ!」

 

 そう叫ぶと、それがのえるの願いであると認知したのか、メディックシグナルの力で仮面ライダーたちの座標と方角が装甲内の画面に示される。

 

「すごい…! 私の願いが叶ってくみたい!」

 

 万能ともいえる力を手にしたヴォルモークは自信に満ちた笑みを浮かべると、さらに願いを告げていく。

 

「足にすごい飛べるやつ付けて!」

 

 脚部にブースターが取りつき、エンジンを点火させる。

 

「翼もほしい!」

 

 背部に翼が生え、軌道制御(きどうせいぎょ)(にな)う。

 

《これが、進化したオメガタイプの力…!》

 

 驚くヴォルモシアンにヴォルモークがうなづくと、大空を見上げて、一気に飛び立つ。

 

「いっくよ~、みんなを助けるんだ!!」

 

──────────────────

 

 一方、横須賀。

 真希がアトラクネデルタに深手を負わされ、意識が薄れていくなか、ラポールは怒りに()られてカレイドナックルで敵に挑んでいた。

 

《Project Start…KaleidoKnuckle───Change The Rappol》

 

「よくも真希さんを!!」

《アイツ、死ヌノカ、面白ェナ!》

「ぅあああッ!!」

 

「落ち着いて北斗ちゃん! 真希にゃんはまだ…生きてるから!」

 

 オーバーホールオーブで真希を治療しながらケトシィが叫ぶが、その声はラポールには届かない。

 いつもの冷静さを失った彼女の攻撃ではアトラクネデルタに勝ち目はない。

 

「このままじゃ北斗も()(まい)よ、なんとか引っ張り上げないとそのうち命に関わるわよ!」

「それなら私が援護します!」

 

《Project Start…GatheringGadgets───Change The Luxhus》

 

 ルキフスがギャザリングガジェッツに装備を変え、拳銃でアトラクネデルタを狙う。

 素早いアトラクネデルタに銃弾を当てることはできなかったが、狙いを変えることには成功した。

 

「今度の相手は私だ、殺人鬼!」

「オ前モ…死ニタイノカ…!」

 

 アトラクネデルタがルキフスを狙っているうちに俊鼠がラポールと合流する。

 

「落ち着きなさい北斗、真希はまだ生きてる。今は脳死で突っ込まないであのイカレ殺人犯の気をそらすのに集中して、アイツを倒す方法を考えるべきよ」

「…すみませんでした、でも…許せなくて」

「そういうのはあとにして、陽廉だってそうしてる」

 

 俊鼠に()かれ、ラポールがようやく息を整える。

 

「すみませんでした、陽廉さんの援護を開始します」

 

 ラポールが走り出し、氷を発生させアトラクネデルタの動きを止める。

 

「ッガァァア!」

 

 氷に触れたとき、善性マリスセルのハッキングが開始され、アトラクネデルタが体を強張(こわば)らせる。

 が、すぐに体の自由を取り戻し、鎖を振り回して氷を破壊する。

 アトラクネデルタがそうしている間に彼女の右胸へとルキフスが長刀を突き刺す。

 

「真希さんの分だ…!」

 

 長刀が刺さってもなお動き続けるアトラクネデルタに、ルキフスが拳銃で全身を撃ち続けるが、制止しない。

 

「効カネェンダヨッ!」

 

 アトラクネデルタが叫ぶと、治療の終わっていない真希のもとへと走り出す。

 

「あいつケガ人の所に!」

卑怯(ひきょう)…!!」

「させてたまるか!」

 

 身動きの取れない真希を始末せんと走るアトラクネデルタを俊鼠、ラポール、ルキフスが追いかける。

 が、彼女らが止める間もなくアトラクネデルタの鎖が真希とケトシィへと襲いかかる。

 

「駄目だッ!!」

 

 ラポールが必死に声を上げ、鎖の前に立ちはだかる。

 自らを犠牲にして真希たちを守ろうとするラポールに鎖が突き刺さる。

 

 ───ように見えたが。

 

「…?」

「ただいま、ケガしてない?」

 

 上空から飛来した白銀の戦士がラポールへの攻撃を防御しながら告げた。

 彼女に守られ、無傷のラポールがうなづくと、戦士はその場にいる全員へと言い放つ。

 

 

「遅くなりました…大神のえる、今より仮面ライダーに合流し、マリスセルを排除します!」

 

 

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