仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

29 / 36
#29 ごうりゅう

「遅くなりました…大神のえる、今より仮面ライダーに合流し、マリスセルを排除します!」

 

 高々(たかだか)と宣言し、白銀(はくぎん)のヴォルモークはアトラクネデルタに立ち向かう。

 

「マタ新シイノガ…死ネェッ!!」

 

 アトラクネデルタがヴォルモークへと鎖を巻きつけ、身動きできなくする。

 が、マリスセルで構成されているその鎖はヴォルモークの能力で善性化、粉微塵(こなみじん)になって形状を再構築、ヴォルモークの剣となる。

 

「こういうのも名前あった方がいいかなー、“ほえるちゃん的には何がいい?”」

 

 急にほえるの名を出して独り言をつぶやくヴォルモークに一同が混乱する。

 

「何言ッテヤガル死ネッ!」

 

 鎖で自らの腕を巻いて強化したアトラクネデルタの拳がヴォルモークへと見舞(みま)われるが、ヴォルモークの放つ一閃(いっせん)がアトラクネデルタの腕ごと斬り落とした。

 

「『イディアルカリバー』? えー超かっこよ! ほえるちゃんネーミングセンス天才じゃん!」

 

 そういってはしゃぐヴォルモークに、ラポールが問う。

 

「ねぇ、何があったの? のえるがほえると、しゃべってるの?」

「その通り。私がマリスセルとして進化をしまくったことでほえるちゃんの意識を残しながら私がここにいられるようになったの」

「さっぱりわからん!」

 

 野次(やじ)を飛ばす俊鼠に、ヴォルモークは笑いながらですよね、と返す。

 

「まぁつまり、私とほえるちゃんが一心同体となってみんなの助けになれるワケです!えっへん! …この力、名付けて───」

 

 ヴォルモークが耳を傾げる動作を行うと目の色が青から赤に変化し、格好(かっこう)よく剣先をなでて、新たな力の名を告げる。

 

「仮面ライダーヴォルモーク…『イディアルファントム』。それが私“たち"!」

 

 ほえるのネーミングセンスによって名付けられた白銀のヴォルモークは、腕を再生させたアトラクネデルタの猛襲(もうしゅう)を受ける。

 

「! のえるちゃん!」

 

 今度はのえるの意識が表象化し、目の色が青に戻ると、イディアルカリバーでアトラクネデルタの放つ鎖を防ぐ。

 

「油断もスキも無いですよ、八雲さんっ!」

 

 一旦アトラクネデルタを蹴り飛ばし、仮面ライダーらが集合する。

 

「あの蜘蛛オンナ、ほんっとうにウザい! こっちがトドメを刺さないのを良いことに何度も復活すんのよ!」

 

 俊鼠からの愚痴(ぐち)を交えた説明に、ヴォルモークが知恵をしぼる。

 理想を現実にできる、それほどの力を持っているならばと思考を重ねる。

 

「じゃあみんなが強くなるような装備をくっつけましょう!」

 

 ヴォルモークの進言とともに、新たなメディックシグナルが人数分生成される。イディアルファントムにも似た白銀色(はくぎんしょく)のそれを受け取った仮面ライダーたちが、それぞれ起動させていく。

 

TerminateUnit(ターミネイトユニット)

 

 その音声に驚いたのはヴォルモークだった。

 

「ほえるちゃんいつの間に名前を!?」

「まだヴォルモシアンさんが作ってなかったTとUのメディックシグナル、気に入ってくれたかな?」

 

 その姿は一人で会話しているように見えて少し滑稽(こっけい)だが、そこにほえるとのえるが共存している何よりもの証拠だった。

 そして、のえるが作りほえるが名付けることで生み出されるモノには確かな役割と力が与えられ、彼女らが想像もしないほどの本領を発揮するのだ。

 

「そういえば真希さんケガしてるみたいですけど…!」

「ええ、今私がなんとか治療してるけど……なんとかならない?」

「なんとかします!」

 

 そうはっきり言ってみせると、ヴォルモークが真希の体に触れる。

 

「真希さんの体治ってください!!」

 

 すると善性マリスセルが真希の体内で新たな細胞となり、瞬時に修復をとげる。

 意識をなくしていた真希も、体が楽になり目を開ける。

 

「んぁ…なんかフワフワする……」

「真希さんはここで休んでてください、あとはみんなでやりますから!」

「のえるちゃん? 銀色だー…☆」

 

 そう言って笑うと、真希は眠る。

 

「真希さんはとりあえずここにいて大丈夫でしょう…私たちで守りますから」

「そうしたらこの力、使ってみましょう。いぶさんも」

 

 いぶにもターミネイトユニットが与えられ、起動させる。

 ラポールの呼びかけに(こた)え、一同がターミネイトユニットを装填、変身する。

 

《Project Start…TerminateUnit───Change The Rappol》

《Project Start…TerminateUnit───Change The Luxhus》

《Project Start…TerminateUnit───Change The Syunso》

《Project Start…TerminateUnit───Change The Caitsith》

 

 4人がそれぞれ白銀の装甲をまとって、構える。

 

「これで…八雲を倒せるんですね」

 

 陽廉の質問にはい、と強くヴォルモークが答える。

 

「倒ス? オレガ殺スンダヨッ!!」

 

 襲いかかるアトラクネデルタをルキフスが(むか)えうち、拳を腹に食らわせる。

 

「ゴボォッ!?」

「…攻撃の威力が桁違(けたちが)いになってる……これなら───」

 

 ルキフスがさらに攻撃を繰り出し、アトラクネデルタを圧倒していく。

 

「陽廉さん、それだけじゃないんですよ!」

 

 ターミネイトユニットにはメディックシグナルを認識するアダプターが増設されており、これを使うことでゼノクロスと同様に他のメディックシグナルの力も使用できるのだ。

 だが、ゼノクロスと異なるのは、“既存(きぞん)のメディックシグナルの強化”が目的ではなく、“その力をターミネイトユニット側に付与する”ことが目的であることだ。

 これにより今まで使用してきたメディックシグナルの運用方法を大きく変えずに、単純に威力が上がった状態で使用できるのだ。

 

「つまりこういうことでしょ!」

 

《BlazeBullet Unity(ユニティ)

 

 ブレイズバレットを読み込んだターミネイトユニットによって、ブレイズバレットと共に出現する拳銃、バレットブレイザーが手元に現れる。

 そこから放たれる射撃は銃弾を越えて大型の熱線となり、アトラクネデルタの左肩を消失させる。

 

「狙いがブレたけど…ヤバい威力ね」

「これがターミネイトユニット…!!」

 

 その力に感嘆するルキフスは、ヘイストハックを読み込ませ、大量のドローン兵器を生み出す。

 自立稼働(かどう)するミサイル搭載型ドローンの掃射でアトラクネデルタが肉塊(にくかい)と化す。

 

「…やった───」

 

 なんとか撃破したと思ったルキフスだったが、肉塊が動きだしたのを見て警戒を強める。

 

「まだ生きてんのぉ? キモいわね…」

「少し様子をうかがいましょう」

 

 ラポールの判断を受け、全員が武装を構えながら肉塊の動きを確かめる。

 すると、肉塊がアトラクネデルタの形状を取り始め、再生していく。

 

「今のうちに攻撃しちゃった方がいいんじゃない?」

 

 一歩近付く俊鼠を、ルキフスが止める。

 

「見てください、背中の方…赤い球体が筋肉に包まれて、そこを中心に再生が加速しています」

「多分アレ、オメガタイプにあった“核”だ、あれを破壊すれば倒せるはずです!」

「ならそれこそ今のうちに…!」

 

 焦る俊鼠の前にルキフスが立つ。

 

「弱点が分かったのなら、私が倒します。八雲手繰との因縁を…人を襲うマリスセルの進化を…ここで終わらせます」

「…陽廉、暴走しないでよ。アンタ個人の復讐でこのチャンスを台無しにはできないから」

「分かってます、そのために私は、仮面ライダールキフスとして、ここにいるんです。みなさんの未来のため、マリスセル・デルタタイプを()ちます」

 

《CrimeChain Unity》

 

 クライムチェーンの力を付与したルキフスが鎖を腕から射出し、アトラクネデルタを拘束する。

 

「私たちも力を貸します!」

 

《KaleidoKnuckle Unity》

《FatalFang Unity》

 

「オ前ラ死───!」

 

 ラポール、ケトシィも加わり、復活したアトラクネデルタの体をそぎ落とす。

 

「陽廉さん、今です!」

「……!」

 

 ルキフスがターミネイトユニットを再び押下し、その力を極限まで解放する。

 アトラクネデルタの露出した核へと鎖を絡ませ、破壊する。

 

《Exterminate End》

 

 瞬間、アトラクネデルタの体が崩壊する。

 

「死ネ…死ネ───」

 

 アトラクネデルタがその体を再生、分解させながらルキフスに(つか)みかかる。

 が、力を入れる前に崩れ去る。

 

「八雲、手繰……」

「陽廉さん」

 

 ラポールが声をかけると、ルキフスが顔を上げる。

 

 残った周辺のマリスセルが他のライダーによって(またた)く間に全て排除されると、戦闘が終了し一同が変身解除後、陽廉に駆け寄る。

 

「陽廉ちゃん!」

 

 いぶが陽廉に抱き付くと、陽廉が驚いて目を回す。

 

「よく頑張ったわね、陽廉ちゃん!」

「あばばいぶさんばばば…」

 

 楽歌に引きはがされていぶが離れると、ようやく陽廉が息をつく。

 

「陽廉さん、その…あなたの個人的な話に首は突っ込めませんが……お疲れ様でした」

 

 北斗からねぎらいの言葉をかけられ、陽廉は笑う。

 

「八雲はもうすでに死んでました。私が倒したのはあいつの死体を利用したマリスセルにすぎません。結局、殺すことも、裁くこともできなかった───でも…私が正しいと思えるやり方で、人々を襲う敵を倒せましたから結果オーライ…ですね」

 

 陽廉から(つむ)がれる言葉に、彼女の決意を聞いていた真希が微笑む。

 

 

「それとのえる!」

 

 北斗が急にのえるの肩を掴んで声を(とどろ)かせる。

 

「体、大丈夫なの!? ほえるが急に倒れたのに、こっち来てくれたけど…」

「うん、ほえるちゃんの体力が切れちゃってクラッとしちゃったけど今はもう大丈夫!」

「そう…」

 

 北斗が安堵(あんど)すると、のえるを抱きしめる。

 

「なんかより一層(いっそう)距離近くなってない? あの2人」

 

 いぶが首をかしげると、彼女らの邪魔をさせまいと楽歌が彼女の頭を小突(こづ)く。

 

 

 ようやく一段落(ひとだんらく)して陽廉が一息つくと、光貴に連絡する。

 

「鳳だ、こちらはオメガと戦闘後逃げられ、周辺のマリスセルを排除した。そっちはどうだ?」

「アトラクネデルタを撃破しました。みなさんのおかげです」

「…わかった、期待以上の成果だ。そちらに回収用の車両を向かわせるゆえ、マリスセルを一掃(いっそう)しておいてくれ」

「それならもう終わりました───」

 

 陽廉が報告し終わる前に連絡が切れる。

 光貴が移動用車両に乗りながらこちらに到着したのだ。

 

「…君たちの力には驚かされた、これならオメガタイプも打倒できるかもしれんな」

 

 光貴の元に全員が集まる。

 

「大神、君は…」

「はい、何とか復帰して、進化して、新しいパワーで勝っちゃいました」

 

 それを聞いて光貴が言葉を失う。

 

「…帰還後詳しい説明を求める。それで、狩屋はどうした?」

「アトラクネデルタにやられたあと、のえるの治療を受けて寝てるわ」

 

 楽歌が親指でさす方向で真希が幸せそうに眠っている。それを見て安心したのか光貴が息をつくと、少し微笑(ほほえ)んだ。

 

「凄いな、君たちは」

「ほめるくらいならお金ちょうだいよ」

「……」

 

 楽歌からの指摘に光貴は眉をひそめる。

 

「まぁ、公務員程度の報酬は出すつもりだが」

「安くなってない!? こっちはやってること変わんないのよ!」

「そうは言っても税金にも使い道があるんだが」

「低賃金反対! 報酬上げなさい!」

 

「みんな、こういう大人にはなっちゃダメよ」

 

 いぶが告げると北斗、のえる、陽廉が静かにうなづく。

 

「とにかく戻るぞ、今後(きた)るオメガとの決戦に備えなければならないからな」

「はーい」

 

 車両に真希が寝かされ、各員が乗り込むと、その場をあとにする。

 

──────────────────

 

 東京湾、海底。

 自分たちが到来した宇宙船の(かたわ)らで、オメガタイプはマリスセルの群れを吸収していた。

 

「痛み…怒り…苦しみ……こんなものを持つ不条理な生命体など、やはり我々によって滅ぼされるべき……」

 

 マリスセルと融合して肥大化(ひだいか)していくオメガタイプは、フェクシアによって植え付けられた人の情報、感情を処理しきれずに心を(たか)ぶらせる。

 

「仮面ライダー…仮面ライダー……ヴォルモシアンの侵略を遂行(すいこう)するため、消さねばならない、()まわしき力……!!」

 

 仮面ライダーに向けられた負の感情に(あら)わにすると、オメガタイプが巨大化し、腕や目、口などの体の器官を増殖(ぞうしょく)させて強化させていく。

 

「ゆる…さない……ッ!!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。