仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#30 なかま

 一同が施設に戻ると、彼女らを出迎えるように碧とその母親が立っていた。

 

「おかえりなさい!」

 

 目を丸くする面々に碧が母親を見ると、おもむろに説明をはじめる。

 

「私も戦うために戻ってきたんですけど…お母さんもついてくるって聞かなくて」

「お父さんも来ますからね、これからよろしくお願いします」

 

 光貴が職員に目を配ると、詳しい説明を付け足す。

 

「鳳さんはお忙しいと思ったので、こちらで話を進めてしまいました」

仕方(しかた)ない、許可しよう。それと狩屋が倒れたので医務室で任せておく」

 

 光貴が報告すると肩を()んで執務室へと向かう。

 

「飯沼は改良したリミディウムドライバーの説明を受けるように、大神はあの白銀のヴォルモークについて詳しく説明してもらう。執務室に来てもらうぞ」

「はっ、はい!」

「了解で~す」

 

 執務室に向かう光貴とのえるを見送った一同が、碧を見つめる。

 彼女の姿を見て、思わず北斗が口漏らす。

 

「碧さん……」

「お久しぶり……ですかね、みなさん」

 

 碧が微笑むと、彼女の母親が礼をする。

 

「碧の母親です、これからよろしくね」

「なんで母親同伴?」

 

 楽歌が突っ込むと、碧が苦笑いする。

 

「私が戦うって伝えたら聞かなくて……すみません、みなさんのご迷惑に…」

「いえ、とてもいいことだと思います」

 

 北斗が微笑む。

 

「北斗ちゃん、笑ってるじゃない!」

「あ、ほんと…でも、なんか嬉しくて。他の人のことでも、お母さんがそうやって想ってくれるのって特別なことで、素敵なことだと思うから」

「そんな凄いことなんですかね…私としては困っているくらいで…」

「何よ困ってるってー!」

 

 すねる母親にため息をつく碧だったが、彼女らの姿が北斗にとっては(まぶ)しかった。

 

「あの…碧さん、それにお母さまも……北斗さんは少し前にご家族を亡くしたばかりで…」

 

 陽廉の説明に碧が絶句する。

 

「そうだったのね…もしかして他の子も?」

「いえ、みなさん家族はいると思いますが……身近な人を亡くしたのは……」

 

 碧の方を見る陽廉だったが失言してしまったと勘付(かんづ)き、口をおさえる。

 

「大丈夫です、陽廉さん。猿堂さんのこと、もうママには伝えてあります」

「碧が大変だったのは聞いてるわ。ここにいる人たちも…大変だったのね」

 

 同情する碧の母親だったが、陽廉はそれを聞いて表情を曇らせる。

 

「っ…ママ!」

「ごめんなさい、不躾(ぶしつけ)だったわね。…お詫びに何かご飯作るからみんなで食べましょう!」

「ご飯なら配食があるから…」

「そうなの? ちゃんと栄養のあるもの食べてる? しっかり食べないとダメよ!」

 

 問答を続ける碧らに、楽歌はなんなの、と眉をひそめる。だが、北斗にとっては懐かしさすら覚える光景であった。

 

「碧さん、それに碧さんのお母さん。これからよろしくお願いします」

 

 北斗が頭を下げると、2人も礼を返す。

 

「なんだかにぎやかになったわねぇ」

 

 いぶが笑うと、陽廉がそうだ、と碧へ伝えることを思いだした。

 

「碧さん……八雲を倒しました」

「……」

厳密(げんみつ)には、八雲の死体を使ったマリスセルをみなさんで倒しました。なんだか敵討(かたきう)ちって感じじゃなかったんですけど、私は華に───何かしてあげられたでしょうか」

 

 表情を落とす陽廉に、碧が言葉をかける。

 

「…事情は詳しく知りませんが、あのマリスセルを倒せただけでも…陽廉さんは大切な人のためにできることは果たせたんじゃないかって思います。これでもう八雲手繰によって犠牲になる人はいなくなったわけで……それに私も、八雲をあんまり許せてなかったから、良かった、って思ってます。本当にありがとうございます、陽廉さん。これで良かったんです」

 

「そう言ってもらえると、なんだかここまでやってきた意味があったと思えます。ありがとうございます、碧さん」

「…はい!」

 

──────────────────

 

「───だいたい話はわかった、大神のえるの学習が進行し、それにともなって善性マリスセルの操作が可能になった…それで仮面ライダーの新たな強化をおこなったということだな」

 

 のえるからの説明を要約して復唱した光貴が(あご)に手を当ててうなづく。

 

「私、ヒトの役に立てたでしょうか」

「充分人のためになっていると言えると私は評価している。…どうしてだ?」

「どうしてって……私、ほえるちゃんからヒトのことを学んで…いや、今、大神のえるとして生きているんですけど、ヒトはとても優しくて強い、でも弱いって思うんです。だから私の力で守れるなら…守りたいって思うんです」

「人が好きなんだな」

 

 はい、とのえるが小さく返事をする。

 

「私は、君が───マリスセルとして生まれた大神のえるが、人類の味方として戦ってくれることに感謝している。君がヴォルモークとして戦ってくれたその時からこの感謝は変わらない」

「なんですか急に、ほめたって100万のえるポイントしかあげられませんよ?」

「いやな……君は自分が消えてしまっても良いと考えながら生きているように思えてな」

 

 はい? とのえるが問う。

 

「大神ほえるの体を間借(まが)りして存在していることに負い目を感じているんじゃないかと思ってな。考えすぎだったか?」

「いえ…図星(ずぼし)です」

 

 照れくさそうに笑うのえるに、光貴はため息をつくと少し微笑む。

 

「少なくとも熊谷は、大神のえる…君を大切に思ってくれているはずだ。たとえマリスセルとして生まれた命であっても、けして粗末にはするなよ」

「……光貴さんってすごい優しいですよね」

「なんだ急に、褒めたって100万鳳ポイントしかやれんぞ」

 

 光貴の珍しい冗談にのえるが笑うと、執務室をあとにする。

 

「熊谷のためにも、生きたまえよ」

「…わかりました!」

 

──────────────────

 

 真希が目を覚ますと、北斗がベッドの横の椅子に座っていた。

 

「おはようございます、真希さん」

「北斗ちゃん…おはよう☆ どうしてここにいるの?☆」

 

 起きがけであろうと真希はキャラを崩さず、笑顔を見せる。

 その姿に彼女が元気であると北斗は安堵(あんど)する。

 

「真希さんが心配だったんです。でもその様子なら何も問題なさそうですね」

「……問題あるよ、死にかけたんだから……そうだ、北斗ちゃんを傷つけたバチが当たったんだよ」

「私はもうあなたを許してます。だから問題、ありません」

 

 真希がうつむいたまま北斗を見つめる。

 

「ご飯できてますよ、今日から飯沼さんのお母さんが作ってくれるそうです」

「ん?☆ え?☆ 何?☆」

 

 状況が飲み込めず真希が困惑する。

 

 

「こういうことです」

「あなたが真希ちゃんね? 話は聞いたわよ~……夢を持つのはいいことだけど、人様に迷惑かけちゃダメですからね!」

「あっはい…☆」

 

 いきなり登場した碧の母親に説教され、その場に硬直する真希を楽歌が笑う。

 

「アハハ! あのイカレ女が説教されてる!! 傑作(けっさく)ねハハハ!!」

「楽歌ちゃん汚い言葉を使っちゃいけません!」

「はい」

 

 自分まで説教を食らった楽歌にいぶが肩を置く。

 

「ハタチ過ぎて怒られんの、クるわよね…」

「同情しないで」

 

「それはともかく……今日はお刺身よ!」

 

 刺身と聞いて、真希をのぞいた全員が振り向く。

 

「お刺身!?」

 

 喜ぶいぶに碧の母親が満面の笑みを返す。

 

「確かお刺身って東京湾が使えなくなって以来高くなってたハズじゃ…」

「君たちの活躍に対する褒賞(ほうしょう)だ」

 

 そう言いながら光貴が広間へと足を運ぶ。

 

「光貴さん! 一緒に食べませんか?」

 

 ほえるからの誘いに光貴が少し考えてからうなづくと、人数分用意された食事の前に座る。

 

「…私の分まで用意、されているのか?」

「ほら、鳳さんも仮面ライダー! になって戦ってるんでしょう? だったらちゃんと食べてみんなの助けになってもらわないと」

 

 碧の母親からの激励(げきれい)に感謝しながらも、光貴は慣れない優しさに(ほお)をかく。

 

 全員が席につくと、ほえるが手を合わせる。

 

「それではみなさんも! いただきます!」

「いただきます」

 

 声は揃わないが、それぞれの口からその言葉が発せられる。

 

「まさかこうやってみんなでテーブル囲んでご飯を食べる日が来るなんてね」

 

 楽歌がいぶに話しかけるが、彼女はまったく耳を貸さず、刺身にありついていた。

 

「…好きなの、刺身?」

「ええ、お魚にはみんな目がなくってぇ、ヒモやってると高い食材なんてありつけないから久しぶりなのよぉ」

 

 子供のように喜ぶいぶに楽歌はマグロの切り身を一切れ分ける。

 

「えっえっ何してんのよ!?」

「そんな驚く? アンタが好きだって言うから……」

 

 目に涙を浮かべるいぶに楽歌は少し距離を置く。

 

「やっぱ楽歌ちゃん好き…」

「…別に感謝されたくてやった訳じゃないから…さっさと食べなさいよ」

「ええ!」

 

 

「お刺身、最近見ませんでしたからねー☆」

 

 そう言いながら卓上のラー油を手に取る真希に、あの、と陽廉が声をかける。

 

「どうしました?☆」

「いえ…あの、考えすぎなら、いいんですけど……今日はご飯混ぜるの、やめた方がいいと思います……」

 

 しばし硬直した真希が刺身を見つめると、味噌汁をすする。

 

(真希さん…! 成長ですね…!)

 

 感激した陽廉が大きくうなづく。

 

 

「それで、私の力でみんなを強くすることがわかりまして…」

 

 遅れて合流した碧にのえるが新たな力を説明する。と、碧の母親が聞き耳を立てる。

 

「ちょっとママ、今大切な話をしてるから…」

「母親としてはその“戦い”っていうのがどういうものか気になるのよ」

「安心してくださいママさん、仮面ライダーはもっと強くなってます。碧さんが危険な目にあう可能性はかなり減ってきています! それに碧さんはここまで頑張ってきた強さがあります、心配いりませんよ!!」

 

 胸を張って主張するのえるに、碧の母親は娘を見て閉口する。

 

「───」

「何、ママ」

「あなた少し大きくなった?」

「…背大きいの気にしてるんだけど」

 

 照れる碧に彼女の母親は少し笑うとのえるにもその笑顔を向ける。

 

「碧をよろしくお願いします」

「お願いされずとも、碧さんなら大丈夫ですよ、ね?」

「聞かれても答えづらいけど……まぁ、私……生きてやりたいことがあるから、死なないよ」

「…そう、何をしたいのかは無事に帰ってきたら聞いてあげる」

仲睦(なかむつ)まじい親子愛ですね!」

 

 飯沼家の交流にのえるは嬉々(きき)とする。

 

──────────────────

 

「ごちそうさまでした」

 

 やはり声は揃わないが、それぞれが食に感謝してその言葉を口ずさむ。

 次にこうして楽しく食事するのがいつになるのかさだかではないが、光貴は次回を信じて口を開いた。

 

「また君たちと食事を共にしたいな」

「光貴サンでもそういうこと言うんだ……」

 

 思わず声に出してしまう楽歌に光貴はにらみをきかせる。が、すぐに微笑んでしまう。

 

「───ふ…なんだか君たちと出会って1ヶ月しかたっていないのが信じられんな」

「たしかにまだ1ヶ月ね」

 

 いぶが復唱すると、一同もたしかに、とうなづく。

 

「なんかそうだとは思えないくらい……なんていうか───」

「仲良しになりましたよね、私たち!」

 

 出てこなかった言葉を付け足すのえるに楽歌は口をつぐむ。

 

「まぁ良く言えばそうかもしれないけど……ねぇ?」

 

 いぶが笑うと、陽廉が目線を落としながらつぶやく。

 

「私たちの距離って、まだ仲良しっていうほど縮まってないと思います。でも、それでも…なんだかほっとけないって、ただの他人じゃないって思うんですよね」

「そう! それ!」

 

 陽廉の考えにいぶが賛同すると、光貴もそれに同意するように笑う。

 

「近からず遠からずか、妙な関係性だな」

「でもなんだかそれが合ってるように見えるわよ?」

 

 碧の母親からの一言に全員が目を丸くする。

 

「できるならもっと仲良くなりたいですよ?☆」

 

 続く真希の言葉にさらに一同が啞然(あぜん)とする。

 

「こういう言い方はアレだけど、アンタ一度のえる殺しといて良く言うわね……」

「私はもういいですよ! …ふんふん、ほえるちゃん的にもOKだそうです!」

(ふところ)深いわねアンタも…」

 

 楽歌が眉をひそめると一同が笑う。

 

「笑いごとじゃないでしょーがァ!」

 

 さらに興奮する楽歌に、北斗が思わず笑ってしまう。

 

「…っふふ」

「───笑った」

 

 驚く真希に思わず北斗が口元を隠す。

 

「今笑ったよね!?☆」

「はい…なんだか、笑えました」

「えっどうして、どうやったの!?☆」

「何か、嬉しかったんです。みなさんと一緒にいられるのが。前はあまり自覚しなかったんですけど、最近になって、笑っているみなさんの顔がすごく眩しくて、綺麗に見えるんです。そしたら自然と口角が上がっていました」

 

「きっと北斗ちゃんは、みんなといたいんだね。せっかく出会えたみなさんも…大切な人を(うしな)ってきたからこそ、今の関係が大事だって思えてくるんじゃないかな?」

 

 のえるに肩を抱かれて問われると、北斗は静かにうなづいた。

 

「私たちはまだ出会って間もない間柄(あいだがら)ですが、一緒に戦って、休んで、食事をした───そうして時間を共にしてきたみなさんは私にとってはかけがえのない、大切な存在なんです」

 

 かけがえのない大切な存在。それを聞いてそれぞれが亡くしてしまった大切な人のことを思い出す。

 

「私はみなさんを喪いたくない…そのために戦います」

 

 北斗がそう告げると、のえるが彼女の手を取る。

 

「親友の体を使ってる私を許してくれた優しい北斗ちゃんを、私も喪いたくない」

「私に味方してくれたとき、本当に心強かったです。今度は私が北斗さんの味方になります」

 

 碧が北斗の隣に立つ。

 

「私…北斗さんの友達なので…ッ!」

 

 陽廉がさらに並ぶ。

 

「そういう流れ? アタシ苦手なのよね、団結的なソレ」

「友達じゃなくてもいいです。それでも楽歌さんはこれまで何度も私たちを助けてくれましたから」

「…じゃないと死にそうで危なっかしいじゃない。アタシの前で死なれたら寝覚めが悪いのよ」

「出た、ツンデレ〜」

 

 いぶに茶化され、楽歌が眉をつり上げる。

 

「バカにしてんじゃないわよ、アタシにだってお金以外にも大切だって思うモンがあんのよ!」

「分かってるわよみんな、だから楽歌にいてほしいんじゃない。あなたもかけがえのない存在なのよ、あのコたちからしたらね?」

 

 楽歌を説き伏せたいぶがそうでしょ? と笑う。

 それに北斗はうなづく。

 

「いぶさんも、大切なひとです」

「そう言われたら私だって何かしてあげたくなるじゃない!」

 

 いぶが北斗を抱きしめる。

 

「ここにきて、なんだか全員がまとまってきたな」

 

 光貴が笑うと、団結の意思を見せる面々へと説く。

 

爪弾(つまはじ)き者の集まりが、得意分野を活かしてマリスセルを倒してやるんだ」

「なんスか急に?」

「かつて私に協力してくれた曲者(くせもの)たちに告げた言葉だ。君たちも大小あれどクセがある……そんな君たちだからこそ、協力すればお互いの持つモノ以上の力を発揮し、マリスセルにだって勝利できると私は期待しているんだ」

 

「光貴さん、ホントに丸くなりましたよね」

「ほんとほんと、第一印象とかひどかったじゃない」

 

 光貴の態度に茶々を入れるのえるといぶに彼女はため息をつく。

 

「昔のことはいい、今こうして一致団結できたことが重要だと思う」

 

 それぞれの顔を見て、光貴が口を開く。

 

「倒すぞ、オメガタイプを」

 

 一同が強くうなづく。

 

 

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