仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#32 けっちゃく

 戦線を離脱したケトシィはオーバーホールオーブを用いて重傷を負った光貴の治療に専念する。

 

「こんなところで死なせないわよ!」

 

 急ぐケトシィが呆然(ぼうぜん)としているヴォルモークを見ると、怒号を浴びせる。

 

「のえるちゃん! こないだの真希にゃン時みたいに回復手伝って!!」

「…は、はい!」

 

 ヴォルモークが善性マリスセルを使って光貴の体を癒す。

 だが、予想以上のダメージにより、体が中々治らない。

 

「今の力では、光貴さんを治すのに時間がかかります…!」

「でもこのままモタモタしてると本当に光貴さんが死んじゃうわよ!」

 

 焦るケトシィにヴォルモークが頭をおさえ考える。

 と、一つ考えが浮かぶ。

 

「……今の治療は、マリスセルを使って光貴さんの体を補っている状態にあります。ですがそのマリスセルが今は足りないのです……だから、もっとマリスセルを蓄える必要があります」

「何言ってんの、のえるちゃん」

 

 ヴォルモークが光貴の体に触れると変身が解除される。

 

「ヴォルモークの装甲を使って回復を急ぎます……いや、もっと───“私”を使います」

「私?」

 

 ケトシィが問うが、答える間もなくのえるが光貴のヴォルモシアンドライバーに語りかける。

 

「私の中にあるマリスセルの力をすべて光貴さんに託します」

「待ちなさいのえるちゃん、そんなことして…北斗ちゃんはどう思うか考えないワケ?」

 

 語気(ごき)を強めるケトシィにヴォルモークが口をつぐむ。

 

「残された人の気持ちを少しは考えなさい、自分勝手に消えようとしないで」

「……ですが!」

《…待ってください、ヴォルモーク。鳳さまを治療するだけの善性マリスセルの(たくわ)えならあります》

「───え」

《私が呼び出しました。もうすぐ到着します》

 

 すると、彼方(かなた)から白い軍勢(ぐんぜい)が轟音と共に進行してきていた。

 

「えっ、何アレ……」

《“蓄え”です》

 

 ケトシィが驚愕(きょうがく)するが、ヴォルモーク、ないしのえるが身を(てい)する必要がないと実感し、安堵の息を漏らす。

 

《鳳さまが残してくれた力を使って、オメガに打撃を与えます》

 

──────────────────

 

 変身が解除され、人の姿をさらす北斗たちを、オメガタイプは見下ろす。

 

「時間切れ…ですか」

 

 オメガタイプが不気味に口角をつり上げると、北斗は息を()んでにらみつける。

 が、オメガタイプは彼女らを攻撃しないままケトシィの離脱した方向へと進み始める。

 

「…私たちを、始末しないんですか」

「残存する仮面ライダーの無力化を優先します。戦う力を失ったヒトはそのあとで充分です」

 

 そう告げて巨体を揺らしながら動くオメガタイプに、北斗は反撃もできず、立ち尽くす。

 そんな北斗の姿を一瞥(いちべつ)してオメガタイプは進行する。

 ───が。

 

「えいっ!☆」

 

 真希が近くにあった鉄パイプでオメガタイプを叩いた。

 

「真希さん、何をやっているんですか!」

 

 咄嗟(とっさ)に北斗が真希の腕をおさえてやめさせる。

 

「そんなモノでオメガタイプを倒せるわけないじゃないですか!」

「でもなんかムカつくから☆」

 

 真希が笑うと、再びオメガタイプへと攻撃する。

 その無謀(むぼう)な突撃にオメガタイプは困惑する。

 

「…何をしているのですか」

「悪いことをしたらごめんなさいって言わないといけないんですよ☆」

「悪いこと…? 私はただ上位存在の命令にしたがうだけです」

「あは☆ はは☆ バカなんじゃないですかぁ☆」

 

 なおも効かない攻撃を続ける真希だったが、今度は楽歌がそれに続いて鉄柵(てっさく)の破片を突き刺す。

 

「ムカつくっての、私もわかるわ!」

「私も…!」

「何もしないよりはスカッとしますからね!」

 

 陽廉、碧もその場にあった棒や日用品をオメガタイプにぶつけていく。

 彼女らの無意味な行動に戸惑う北斗だったが、目の前の敵に対して何もできないのは(しゃく)だと、彼女自身も思えてきた。

 

「オメガタイプ、あなたは沢山の人を傷つけ、命を奪い、ここにいる。それなのに自分は生きたいと勝手な意見を()べた。あなたのやっていることは人の尊厳を踏みにじり、生命を冒涜(ぼうとく)する行為です」

「だからどうしたというのです」

「嫌いです、あなたが」

「だからどうしたというのですか…!」

 

 北斗が手のひらにおさまるくらいの大きさをした瓦礫(がれき)を持つと、オメガタイプに投げつける。

 

「話をしましょう、とさっき言いましたが、議論する気が失せました!」

「どうしてそうなるんですか?」

 

 オメガタイプの問いかけに北斗は思わず笑みをこぼした。

 

「光貴さんを傷つけながらそのことを気にもかけないの、なんかじわじわと気分悪くなってきましたので」

「たったそれだけで?」

 

 オメガタイプの一言が、さらに彼女達の怒りを増長させる。

 

「やっぱりこんな奴対話拒否よ! 北斗!」

「同感、です!」

「ムカつきますね☆」

「はぁあああ───!」

 

 その場にあるものを余すことなく使ってオメガタイプにぶつけていく面々に、ついに(しび)れを切らしたオメガタイプは巨腕を振るって彼女らを潰さんとする。

 

「人とはやはり(おろ)かで(みにく)い……これ以上邪魔するなら死んでください」

 

 巨大さを感じさせない速さで腕を突き出すオメガタイプだったが、“何か”によって彼女らが守られた。

 

「これは───」

 

 北斗が見上げると、マリスセルの群集が一同の盾となりながらオメガタイプに組みついていた。

 

「マリスセルぅ!?」

 

 楽歌が驚嘆(きょうたん)の声を上げると、そこに光貴を背に乗せたケトシィのライドスフレがやってくる。

 

「光貴さんが回収してたマリスセルだって! これを使ってのえるちゃんに力を集めるの!」

 

 必死に呼びかけるケトシィだったが、そこで電力を消費しきり、変身が解かれる。

 

「いぶさん、光貴さんは……」

 

 心配して駆け寄る北斗にいぶは神妙(しんみょう)面持(おもも)ちを返す。

 外傷はすべて治ったが、意識が戻らないのだ。

 

「光貴さんのことはとりあえず…大丈夫、だから。今は手持ちのメディックシグナルを全て起動させて!」

 

 いぶがその場にいる全員に伝える。それを聞いて一同がメディックシグナルを取り出す。

 

「さっきの“のえるに力を集める”って言ってたけど、アレと関係あんの?」

 

 楽歌の質問に、光貴の腰に巻かれたヴォルモシアンが答える。

 

《仮面ライダーはマリスセルによって構築された装甲です。ならば今集まっているマリスセルと、メディックシグナルによって転送されるライダーの力を結合させて、フェクシア以上にオメガを圧倒できる最強の仮面ライダーを完成させられるかもしれません。推測にすぎませんが……》

「やらないよりはいいです、何事(なにごと)も!!」

 

 ライドスフレに乗ったのえるが到着し、高らかに叫ぶ。

 

「マリスセルを使ってヴォルモークを強化できるのか試してみました、その感じだとなるたけ使うマリスセルが多い方が強くなります」

 

 マリスセルの大群がオメガタイプの攻撃を(しの)ぐが、押され始めている。

 

「とにかくみなさん、力を合わせてあのオメガタイプ(金ぴか)をぶっ飛ばしましょう!」

 

 のえるの叫びを聞いてそれぞれが笑みを浮かべる。

 そして、各々(おのおの)が持つメディックシグナルを起動させていく。

 光貴が持っていたものも、全員で分担して押下(おうか)する。

 

 

《AssaultArmour》

《BlazeBullet》

《CrimeChain》

《DaringDagger》

《EquipmentElement》

《FatalFang》

《GatheringGadgets》

《HasteHack》

《ImagineerIce》

《JetJavelin》

《KaleidoKnuckle》

《LinksLaser》

MaterializeMesser(マテリアライズメッサー)

《NastyNest》

《OverhaulOrb》

《PersonaPhantom》

《QuestQuartz》

《ReactRoor》

《StraightSword》

《TerminateUnit》

《VigorousVolcano》

《WieldWing》

《XenoX》

《YearningYouth》

《ZoeticZeal》

 

 

「なんか知らないメディックシグナルなかった?」

《鳳さまが開発段階でまだ実装していなかったものも含まれています。ヴォルモーク、押下ありがとうございました》

「なんのなんの」

 

 呆気(あっけ)に取られる楽歌を尻目に、のえるは不敵に笑う。

 メディックシグナルから放たれる粒子は、白銀の光となってのえるの持つイディアルファントムに集束(しゅうそく)していく。

 

「みんなの、みんなの力をッ、一つに……ッ!」

 

《IdealPhantom》

 

 のえるの腰に生成されたリミディウムドライバーにイディアルファントムを装填し、彼女はオメガタイプへとその言葉を高らかに叫んだ。

 

「───変身ッ!!」

Bark(バーク) And Barth(バース)…IdealPhantom───Change The Wolmoke!》

 

 のえるの体が白銀に輝き、戦士の装甲を出力していく。

 その(まばゆ)さをかき消さんとオメガタイプが複腕で連撃を繰り出すが、その攻撃にまったく手ごたえを感じない。

 触れた瞬間、拳が消え去っていくのだ。

 

「何が、起こった───」

「あなたの体を“侵食”しました」

 

 侵食。その言葉を聞いてオメガタイプは状況を察知する。

 その戦士はゾエティックジールに見られたマリスセルのハッキング能力を自分のマリスセル操作と合わせて拡大解釈し、オメガタイプの体を善性化させていったのだ。

 触るだけでもオメガタイプを無力化できる、それがその戦士の力であった。

 

「あなたは……!」

 

 (いきどお)るオメガタイプを前に、一同から歓声が上がる。

 

「こ、これなら、いけます!!」

「のえるさん、お願いします!」

「やっちゃってください☆」

「アタシたち丸腰だから頼むわよー!」

「オメガに勝ったらお姉さんご褒美あげちゃうわよっ!」

「…のえる、それにほえる……それがあなたの戦う姿、なんだね」

 

 北斗が白銀の戦士───仮面ライダーヴォルモーク イディアルファントムを見守って、強い眼差(まなざ)しを送る。

 

「いっくよ~、みんなを守るんだ!!」

 

 その叫びと共にヴォルモークが走ると、イディアルカリバーを手元に展開し、オメガタイプの腕部めがけて振るう。

 思わずオメガタイプが防御姿勢を取るが、巨腕を断裂して粒子化させる。

 オメガタイプが腕を再生させようとするが、周囲には善性化したマリスセルが()い、オメガタイプとの同化を(こば)む。

 

「ここにはあなたの味方なんかいない……ヒトを敵に回した罪はつぐなってもらいます!」

 

 イディアルカリバーが次々とオメガタイプの腕を切り落としていく。

 その度に重厚な質量を持っていたであろう(かたまり)がいともたやすく瓦解(がかい)し、粒子となって散っていく。

 

「私の…体が……!」

「これが、死んでいくということです」

 

 ヴォルモークはさらにオメガタイプの脚部を切り落とし、その場に胴体を倒れさせる。

 

「痛いですか?」

「ああ…痛い、とても痛い……!!」

 

 全身をめぐる鋭い苦しみが、オメガタイプの憎悪(ぞうお)を膨れ上がらせる。

 

「どうして…仮面ライダー……どうして私を傷つける…」

「いまさら聞きますか?」

「ただ…命令にしたがっただけなのに…私は、何もしてないのに!」

 

 まだそんなことを、と流石のヴォルモークも語気を強める。

 

「私は…命令を遂行(すいこう)する……こんなところで死ぬ、わけには、いかない!」

 

 オメガタイプが胴体を収縮させて手足を再構成する。先ほどよりも小さくなってしまったがようやく動けるようになり、その場から脱出するため跳躍する。

 が、目の前にヴォルモークが立ちはだかる。

 

「“死にたくない”、そう願うには、あなたは───マリスセルは、多くの人を傷つけすぎました」

 

《Ideal End》

 

 ビルの屋上にてイディアルカリバーを構え、ヴォルモークが一瞬でオメガタイプを両断する。

 その一閃(いっせん)は核に到達し、刃が入っていく。

 

「まだ…まだァ! 私は……ヒトを殺し尽くすまで、死にはしない!!」

 

 オメガタイプの怒号(どごう)に、ヴォルモークの瞳が“赤く”輝く。

 

「───私と北斗ちゃんの時間を奪っといて…そんなこと、絶対許さないッ!!」

 

 イディアルカリバーで斬りつけたまま、ヴォルモークとオメガタイプが地上へ落下する。

 重力の勢いを味方に、刃を叩きつけると、核が真っ二つに割れ、オメガタイプが肉体を保てなくなる。

 

「私は…ヒトを……! まだ…!」

「はぁぁぁあ!! 消えろマリスセル……人類の、勝ちですッ!!」

 

 太陽がヴォルモークを照らす。

 オメガタイプとの決戦に勝利し、人は新たな朝をむかえた。

 

 

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