仮面ライダーヴォルモーク   作:虎ノ門ブチアナ

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#35 えぴろーぐ きずな

 2055年12月。

 MRPの終了から数ヶ月が経過し、肺炎性新病原生物───マリスセルと人類の戦いは大きく変化した。

 

 東京からの渡航により世界中に残存しているマリスセル感染者のために、各国に治療薬『ティオーロ(じょう)』が配布され、日本をはじめとした感染国での被害が(いちじる)しく減少した。これは以前真希が実験を受けた際の抗体から構築された薬品であり、真希の聞き及ばない場所で彼女が多くの人を救っていた。

 

 一方、東京ではフェクシアによるマリスセルの善性化が進められていた。

 ゾエティックジールの能力でマリスセルを無毒化する作業は途方もない時間を要するが、いつかの東京の平和のため、フェクシアは稼働限界付近まで行動し続けていた。

 

《鳳さま、そろそろ刻限(こくげん)です、戻りましょう》

「了解しました、ですがもう少しだけここにいさせてくれませんか」

 

 フェクシアが頼むと、その場で目線を上げる。

 そこには、古めかしい民家が建っていた。

 

「私の実家です、両親はだいぶ遠くへ避難していますが」

《そうでしたか…ここへ来るのは久しぶりになりますか》

「ええ、少しだけ、昔のことを思い出してしまいました」

 

 そういってフェクシアが笑うと、飛翔してそこから離れる。

 と、上空から何かが飛来してきていることをヴォルモシアンが感知した。

 

《! …鳳さま───》

 

 飛来してきた物体は浅草、雷門付近に落下し、大きな衝撃と共に生じた煙の中からその姿を見せた。

 煙から徐々にシルエットをあらわにするそれは、明らかに人型であった。

 

 その姿を見つけた光貴は、(つの)る不安を押し殺しながら急行する。

 

《…あれは恐らく、私と同じ…ヴォルモシアンです》

 

 フェクシアが警戒を強めると、人型の影は煙を払ってその姿を見せる。

 飛来してきたヴォルモシアンと(おぼ)しき生命体は、機械の体を身にまとっていた。

 と、その生命体は辺りを見回して、フェクシアを発見する。

 

「! 捕捉されました」

 

 生命体はフェクシアを見つめたまま、首元の機械を操作しながら言葉を発し始める。

 

「~~、~~~!~~~!」

「あれは、ヴォルモシアンの言語ですか?」

《“何か話してくれ、攻撃の意志はない”とおっしゃっています》

 

 ヴォルモシアンからの説明を受け、フェクシアが地上に着地し、ゆっくりと生命体へと近付き、話かける。

 

「……私はこの星、地球の住民だ。君がヴォルモシアン、とある惑星から来訪した地球外生命体であると推測している」

「あー…分かった、この星の言語に設定完了した。協力ありがとうな、地球のヒト」

 

 そう軽快な口調で感謝する生命体に、フェクシアは構える。

 

「警戒されてるな、ヴォルモシアンって俺たちを呼んでるってことは…こっちの事情を知ってんのか?」

「我々にとって有害な生物を拡散し、侵略、支配を企んでいると聞いているが」

「ん~、そこまでご存知なら話が()えーや。俺の目的は簡単、『スルヴィ』で滅ぼせなかったって報告が上がったこの星をお掃除することだ」

 

 そう告げると、その生命体は一瞬でフェクシアの背後へ回り、手から発生させた光の刃を振りかぶる。

 が、フェクシアもその速さで斬撃を回避し、リンクスレーザーで生命体を牽制(けんせい)する。

 

「やはり敵対するか、ヴォルモシアン!」

「やだなぁその呼び名、お前地球人って呼ばれて嫌な気持ちしない? 俺はする」

 

 上空に繰り出した生命体が再びフェクシアを斬りつけるが、なんとかかわす。が、その隙に生命体に組みつかれてしまう。

 

「俺は惑星ヴォルモスのお掃除屋、『ヴリエダ』と呼んでくれ、失礼の無いようにな」

「───!」

 

 リアクトロアーの爆音でその生命体、ヴリエダを攻撃するが、いつの間にかかわされている。

 

「…素早い…!」

「俺ら電子生命体が外で活動するための(よろい)、フォーザリアー。なかなかキマってんだろ? まぁこの星にも似たようなモンがあるとは思わなかったが…!」

 

 なんとか反撃しようとフェクシアが突撃するが、体が思うように動かない。

 

「くっ…!」

《稼働限界です、鳳さま!》

「ですが……!」

「その鎧、活動時間に制約があんのか、ま、そんなモンか。いいぜ、俺の目的はお前をここでブッ倒すことじゃなくて、普通に街を破壊したり、ヒトを沢山殺すことだしな…逃げなよ」

 

 悔しさを噛みしめるフェクシアだったが、地上に降りた瞬間に変身が解除されてしまった。

 何も成す(すべ)がなくなり、光貴はただヴリエダをにらむ。

 

「逃げろって、殺しちゃうぞ?」

《鳳さま、今は撤退を!》

 

 と、フェクシアの戦闘を確認していた自衛隊による援護射撃と、光貴を回収するための車両が到着する。

 

「鳳さん、あとはこっちに任せて、逃げてください!」

「…すみません」

「なぁに、マリスセルのときはお世話になりっぱなしだったんでお互い様ですよ! さ、早く!」

 

 光貴が乗車すると、一気に施設へと戻り、自衛隊の射撃、砲撃が強まる。

 だが、強力な装甲を身にまとったヴリエダに対しては足止めにしかならない。

 

小賢(こざか)しいっていうのかな、こういうのって。ま、そのためにスルヴィを持ってきたんだけどネ」

 

 爆炎の中でヴリエダが腰からカプセルを取り出し、2体の怪物を召喚する。

 その姿は獣と人を組み合わせたような出で立ちであったが、明らかにマリスセルであった。

 

──────────────────

 

「これで昼休みか…」

「お疲れ様、北斗ちゃん! 紅茶入ったよ~」

 

 エプロン姿ののえるがオンライン授業を終えた北斗をねぎらう。

 と、インターホンが鳴り、のえるが玄関へと向かう。

 

「ほえる、何か頼んだのかな」

「はて、とりあえず私が出るから北斗ちゃんは休んでてよ」

 

 のえるが元気よく扉を開けると、そこには申し訳なさそうに立っている東京市の職員がいた。

 

「緊急事態です、皆さんの力を貸してください」

 

 思わず玄関に出ていた北斗、そしてほえるが、呆然とするのえるを見て、悪い予感に心臓の鼓動を早めた。

 

 

 職員らによる招集がかかったのはほえるらだけではなかった。

 陽廉、碧、楽歌、いぶ、真希も施設に集められ、広間で待機していた。

 

「ほえるさんにのえるさん、北斗さんも…お久しぶりです」

「数ヶ月ぶりですね、陽廉さん」

「連絡先聞いておいて全然お話できず…すみませんでした」

「今度遊びに行きましょうよ、碧さんも一緒で!」

「わ、私もですか?」

 

 うん、とほえるとのえるの声が重なる。

 すると、ちょっと待って、と話に中断が入る。

 

「それで悠長に話している場合じゃないんでしょ?」

 

 話を切り出したのはリクルートスーツ姿の楽歌であった。

 

「再開を喜んでる場合じゃないってのはそうだけど…酷な話よねぇ、こんな若いコたちにまた戦えって」

「詳しい話は聞いてないですけど、わたしたちが呼ばれたってことは戦うに間違いありませんよね☆」

 

 いぶと真希の話に一同が気を落とす。が、ほえるは一人立ち上がると、真剣な眼差しを(みな)に向ける。

 

「私は…戦います。それで多くの人たちの笑顔、幸せが守れるなら」

「ほえるちゃんなら…そういうか」

 

 のえるが呆れたように笑う。

 

「全員揃っていたか───」

 

 光貴が広間に来ると、覚悟を決めたそれぞれの表情を見て言葉を詰まらせる。

 

「呼んでおいてなんだが…また戦いに巻き込んでしまう結果になりすまない。新種のマリスセルを(よう)するヴォルモシアンの出現にともない、優位性が高い仮面ライダーでの戦闘経験がある君たちに協力を依頼したのだ」

「この()に及んでウダウダ言う気は無いわよ、でしょ」

 

 楽歌に問われ、一同がうなづく。

 それを見て、光貴が頭を下げる。

 

「ありがとう、そして申し訳ない。どうか人類の存亡のため、今一度力を貸してほしい…!」

 

──────────────────

 

 続いて広間で敵の概要と戦闘の詳細が光貴より説明される。

 2体の新種マリスセルはワニ型の『イプシロンタイプ』、ヘビ型の『ゼータタイプ』と呼称され、敵性ヴォルモシアン、ヴリエダの命令によって東京の破壊活動を始めていた。

 ヴリエダはその様子を観察し、行動を停止している状況にある。

 自衛隊と衛星対策委員会によりイプシロンタイプ、ゼータタイプからの防衛が続いているが、戦力は削られるばかりであった。

 

「───兎角(とかく)、マリスセルに対して有利な私たちの出動が強く求められている。幸い現場はここより近く、急行が可能だ。頼むぞ諸君」

 

 光貴が告げると、職員らによってほえるを除いた各員にアタッシュケースが用意される。

 

「あれ? 私のは…」

「同行してもらってなんだが君はマリスセルの抗体を持たないだろう、変身は不可能だ」

「いやでも私だって力に───」

 

 と、のえるが肩を叩く。

 

「私、ほえるちゃんと一緒に戦います! その方が頑張れる気がするので!」

「…のえるちゃん」

 

 のえるがほえるへと手を差し伸べる。その手にほえるが触れると、のえるが粒子化し、2人の体が一体となってかつてののえると同様の状態になる。

 

「合体っ!!」

「なんでもアリねアンタら」

 

 楽歌からの一言にのえるは笑う。

 

「それと陽廉、一ついいか」

「わっわわ私スか!?」

「ああ」

 

 光貴が陽廉へと声をかけると、職員がもう一つアタッシュケースを用意し、光貴に手渡す。

 

「フェクシアのエネルギー充填が間に合わんゆえ、これを使う」

 

 そういって光貴が見せたのは、アトラクネの識別がなされたリミディウムドライバーだった。

 

「これを使って私も出る。陽廉には…(こころよ)い話では無いだろうが」

「…アトラクネ、ですね……使えるモノは、使いましょう」

 

 不敵に笑ってみせる陽廉に、光貴はありがとう、とつぶやく。

 

「それと飯沼」

「えっわわ私れすか!?」

「ああ」

 

 既視感のあるやり取りをしながら、光貴が碧の持つベルトを指さす。

 

「そいつは猿堂のエイブと設計を統合させて新造した。メディックシグナルもナスティネストとデアリングダガーの能力をかけ合わせた新型になっている。今ここにいない戦士の分まで、戦ってほしい」

 

 『エイブプロシオン』と識別に表記されたベルトを見て、碧は顔を強張(こわば)らせる。

 

「光貴さんも、猿堂さんのこと…忘れないでいてくれたんですね」

「当然だ…彼女を守れなかったのは、我々の責任だ」

「その責任、私にも背負わせてください」

 

 ベルトを握って碧が言い放つと、光貴は神妙な面持ちでうなづく。

 

「以前との変更点は以上だ。急ぐぞ諸君」

 

──────────────────

 

《RemediumDriver》

 

 施設の外に出揃った各員がベルトを装着し、メディックシグナルを起動、装填させる。

 

「準備はいいな」

 

 光貴の言葉に各々が返事をすると、前を見つめて声を重ねる。

 

「変身!」

 

《Project Start…PersonaPhantom───Change The Wolmoke》

《Project Start…ImagineerIce───Change The Rappol》

《Project Start…HasteHack───Change The Luxhus》

《Project Start…StraightSword───Change The Tioro》

《Project Start…BlazeBullet───Change The Syunso》

《Project Start…FatalFang───Change The Caitsith》

《Project Start…MaterializeMesser───Change Ave&Procyon》

《Project Start…CrimeChain───Change The Atlachne》

 

 8人のライダーが立ち並ぶと、ライドスフレに乗り込み敵地へと向かう。

 

 

「───新しいのが来たか」

 

 マリスセルが蹂躙(じゅうりん)するさまを東京スカイツリーから眺めていたヴリエダがライドスフレで駆ける仮面ライダーを見つけると、350メートルの高さから着地し、移動する。

 

 イプシロンタイプが大口を開けて対戦車ミサイルを噛み砕く。

 その戦力差に絶望する自衛隊だったが、後方から通信が入る。

 

「こちらは衛生対策委員会第9企画! 戦闘している自衛隊員は後退し、対処をこちらに移譲(いじょう)してもらう!」

 

 瞬間、アトラクネの鎖がイプシロンタイプを(しば)り、俊鼠の銃撃が攻撃する。

 

「光貴サン、撃ってはみたけどかったいわねアイツ!」

「手加減ナシ、私がやっつけます!!」

 

《IdealPhantom》

Bark(バーク) And Barth(バース)…IdealPhantom───Change The Wolmoke!》

 

 ヴォルモークがイディアルファントムに強化変身し、イプシロンタイプに触れる。

 その瞬間マリスセルで構成された体は善性化されて粒子となって消える。

 

「…触れただけで消えた」

「強いですね☆」

「チートじゃない!!」

 

 驚くラポール、ティオーロ、俊鼠を尻目にヴォルモークが体を構える。彼女の目が赤くなると、ほえるが指示を出す。

 

「マリスセルはもう一体いたはず! さっさと倒しましょう!」

 

 

 ルキフスがドローンを使って索敵、瞬時にゼータタイプを発見し全員に情報を共有する。

 その情報はライダーのセンサー内部でモニターされる。

 

「急ぐぞ、諸君!」

 

 アトラクネが鎖を周辺の電柱に巻き付けて、それを引っ張ることで移動していく。

 

「さながらスパイダーマ───」

「楽歌ちゃん言ってる場合じゃないでしょ!」

 

 ケトシィに背中を叩かれ、俊鼠が走る。

 彼女らを追うように他のライダーも移動する。

 

 

 ゼータタイプはヘビのように柔軟な肢体(したい)を駆使して戦車隊を翻弄する。

 が、そこにラポールの形成した氷柱が大量に出現し、ゼータタイプの動きを止める。

 

「…やはりヘビの姿らしく、急激な気温変化には弱い…ですか」

 

 しかし力の浪費でラポールのバッテリーが激しく消耗する。

 が、ヴォルモークが彼女に触れるだけでバッテリーが回復していく。

 

「ほえる、ありがとう」

「うん!」

 

 大きくうなづいたヴォルモークは、早速ゼータタイプを消滅させようと飛び出すが、体を器用にうねらせ、ヴォルモークの攻撃をかわす。

 が、その先にはエイブプロシオンが待ち構えていた。

 

《MaterializeMesser End》

 

 周囲に網が張られ、ゼータタイプの動きを完全に止めると、エイブプロシオンの握るダリングエッジが突き刺さる。

 苦しみもだえるゼータタイプに容赦なく俊鼠の弾丸、ケトシィとティオーロの刃、ルキフスのドローン砲撃が通っていく。

 

「一気に片付けられたか―――いや待て!」

 

 アトラクネがいち早く何かに気が付くと、鎖をゼータタイプの亡骸(なきがら)であろう物体に巻き付ける。

 が、それはゼータタイプの“皮”のみであった。

 

「まさか…」

「脱皮ィ!?」

 

 驚愕(きょうがく)しつつもラポールと俊鼠が逃走したゼータタイプへと氷柱と弾丸を放つ。

 が、俊敏(しゅんびん)な動きでかわされ、ルキフスの背後を取った。

 

(───やられる!)

 

 だが、ルキフスは鎖を全身に巻き付けたアトラクネによって防御されていた。

 

「無事か陽廉!」

 

 まさかアトラクネに助けられるとは、と数奇な偶然に陽廉が苦笑いすると、ドローンを操作し援護する。

 

「今度は熱いのいっちゃいます☆」

 

《Project Start…EquipmentElement───Change The Tioro》

 

 ティオーロがイクイップエレメントに換装し、ゼータタイプに炎を浴びせる。

 温度変化によってゼータタイプが動きを止めると、一斉にライダーたちが攻勢(こうせい)に出る。

 

「はぁあぁあああ───!」

 

 ラポール、ルキフス、ティオーロ、俊鼠、ケトシィ、エイブプロシオン、アトラクネの持つダリングエッジがゼータタイプに突き刺さり、切り裂かれる。

 

 が、ゼータタイプは再び脱皮し、傷ひとつ無い状態で復活を遂げる。

 ライダーに囲まれたその場から離れようと体をうねらせたとき、目の前にはヴォルモークがいた。

 

「念には念を、脱皮が一回とは限りませんからね」

 

 イディアルソードがゼータタイプを縦に両断し、消滅させる。

 

 

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