一輪の花。どことなくもないただ変哲のない花。誰かが育てたかあるいは自然に咲いた花。その花を無造作に男は千切り取り散らす。地面に落ちる花弁当ひとつひとつに名前をつけてあけなければ、花が散らされた意味がないのだろうか、とも男は考えやる。
やがて男は意味のないことだと思い至り、男はまた花を千切りとる。取っては散らし、散った花を見る。
男はもう狂っている。その意味のない行為に酔いしれている。いかに馬鹿馬鹿しい行為かと自虐的に笑う。
まともである事になんら意味などない。狂ってしまえば狂っていれば、世界など、自在にどうとでもなると男は狂った頭で考えている。
散った花はアスファルトを彩っていた。月明かりに照らされた男は正に狂っているとしか形容できない姿で、その行為自体に陶酔し声もなく笑っていた。
都会の花などいくつもないのだ。その花を千切り散らす。見つけ千切り散らす。狂っている頭で狂っている考えで狂っているから花を千切り散らす。
正気など失ってしまえばいい、男は投げやりに考えながら、その衝動に身を委ねた。
誰が見るのだと、誰が咎めるのだと、誰が関わるのだと、ぐるぐると花を千切り散らしながら、そんな考えを巡らせながら、いくつもいくつも花を千切り散らす。
誰も見ては見ぬ振りをした。見ても見ない事にした。醜悪な姿を見なければ、また自分も正気なのだと思えるからだと男は考えている。
いずれは誰かが見咎める。いずれは誰かが狂気を指摘する。それが恐ろしい、とても恐ろしい事だと男は考える。花を千切り散らす事にだけ没頭したい。その反面誰かが咎めるのを待ってさえいる。
愚かしい、ああ愚かしい、つくづくどこまでも救えない。狂ってしまった事すら救えない。恐れ狂ったふりをする。男は恐れ怯えていた。けれども花を千切り散らす。ただ千切り散らす。
やがて男に声を掛ける物好きが現れる。男はその声に振り向くべきか、花を千切り散らす事にするのか答えを出せないでいる。 声に応えて花を散らすも、耳を塞いで花を散らすも、花を散らす事には変わりない。
花は千切られ散らされていく。男だけではない。それは幾人もの手によっていくつもいくつもの花が千切り散らされていく。
男もその一人に過ぎない。男もただその一人に過ぎないのだ。
今日も咲いた花は千切り散らされていく。冷たいアスファルトに花弁だけが残されて彩っていた。
言葉もなくただ静かに花弁はアスファルトを彩った。
なんとなくよそで書いた作品に付け足しただけのモノ。