Mr. Watson! Come here I want to see you!
これは最初の電話の実験で発せられたセリフだった。
発音者はアレクサンダー・グラハム・ベル。
dB(デシベル)の単位にもなっている、世界で初めての実用電話を発明した人物である。
もし、彼女だったら、最初になんて言うのだろうか。
◆
4月末 東京レース場
ハナノアカリの二戦目であった。
その日のレースは昼過ぎにあった。
『ヨォ、アカリ』
レースの少し前に、レース場の入り口の、唐楓の木の下で、春木ミノルはそう切り出した。気楽な、それこそこれからレースを観戦する
『このレースの意義、分かってるか? 勝つとどうなる?』
そのあんまりに外様の有り様に、“いちおうミノルも関係者側じゃない? ”とハナノアカリは思いつつも疑問には律儀に答える。
『勝てば、もっと大きなレースに出られる。たくさんの人の目に留まるから』
『そぉだ。デ、最終目標はなんだ。言ってみろ』
『東京優駿競走を勝つことでしょ』
ちょっぴりトゲのある言い方になってしまったかもしれない。
それも全てこの目の前の男が悪いのだとハナノアカリはひとり合点して男の顔を逸らさず見つめた。
走る理由なんて、キチンとしたものは見つからず、それでも今回走る理由は目の前の男が唆したからである。この男の“ハナノアカリの走りは金になる”という夢を叶えたいから走るのであって、決してハナノアカリ自身の為にやるべくもなかった。
『ああ、やっぱ、人間、権威に弱いからな。可哀想にも。何の力もない小娘より、東京優駿競走っていう大きなレースを勝ったヤツの言葉が強い』
少女の表情の僅かな変化に気がつかず男は上機嫌に言う。
ハナノアカリは敢えてガンと地面を、靴の調子を確かめる体を装って叩いてみた。特注のシューズは通常より重く、硬く、それはそれは昼前の街中に鋭く響き渡った。
春木はちょっと肩をすくめるだけであった。
その様にいよいよハナノアカリは我慢ならなくなって、くるりと身を翻してレース場の方へと向かった。
背後では関係者席に入れない春木が何か一言、二言言っていたが聞き流す。レースに集中する。
それでもレース場の真っ白な入り口をくぐる段になって、顔だけで背後の春木を振り返り、聞こえるか聞こえないかの声量で
『──見ててね』
と言った。
◆
「棟梁、こっちです」
「悪ぃな、テツ、席もとって貰ってな」
着物姿の矍鑠とした老人が若い大男に手を引かれてスタンドにやってきていた。客の入りはそこそこ。隙間の席も見える。
中々のモンじゃねぇか? そう思った。
と、その中に見覚えのある若い顔ぶれを見つけた。
老人は不思議そうな顔で近づくと、男たちも気がついたのかぺこりと頭を下げる。
「なんでぃ、お前ら。今日は非番じゃねぇのかい」
「あ、いや棟梁……。今日は仕事とかじゃなくてですね……」
彼らは老人の仕切る組の若い連中だった。
彼らは前回レースを観戦していた筈だ。というのも、前回はハナノアカリと檜組の顔を立てるために出席することを命じたからだった。檜組はハナノアカリに身分とすこしの資金援助をしていた。
だが、今回は棟梁自身が見学に来れた為、そのような指示は出していない。
老人は少し逡巡したあと、合点がいってニヤと笑った。
「おう、お前ぇら、またあの走りが見たいか」
「ま、まぁ……」
どんな、遅れも、困難も、全て潰して、圧して、均してやってくるような、強烈な追込み。
まさしく、一世一代の大逆転劇。
ちまたで流行ってる話も暗いものばかりだ。そんな物よりかは何倍も面白いだろうな、と棟梁は思い至り、呵呵! と声を上げた。
「棟梁、俺ら、紙を頂きました。今朝です。長い間、おせわになりました。そんで、このレースは行く前に見ておきたくて」
「……そうか」
そう言った、日焼けの男は爽やかに歯を見せた。なんの衒いもない、夏雲のような態度だった。
「最後だからってワケじゃないです。また、見にきたいから、あの最後までどうなるか分からない脚を」
まだ一回しか見てないんですけどね、と苦笑して。
そうだ。レースはお目当ての展開が見れるなんてそうそうない。真剣勝負だから、そうなる。
若い男たちは目線をターフへと戻す。
横顔には暗い影などなく、仲間と口元に笑みを浮かべ、ただただこれから始まるレースを楽しみに待つ子供のようだった。
……
……
◆
一歩踏み出すごとに、足全体の筋肉を使う。そのくらいこの靴は重量があった。
間も無く出走だ。
芝の上に降り立って感触を確認する。
今回のレースはハナノアカリを含めて六人。
ゲートに向かう前に、勝気な目をしたウマ娘に“アンタには負けないよ、いいかい”と宣戦布告をされたがそれはそれ。
彼女の名前はツキノエといって逃げの名手だと言われていた。競技用の体操服装に小さな達磨の根付けを付けていて、片目だけが黒かった。
いつか目を入れる日が来るのかな、それはいつなのかな、なんてハナノアカリはちょっと思って、レースに関係ないと思い、一つ頭を振って考えを追い出した。
ひゅるひゅると菖蒲色の髪が視界をかすめて、ゲートイン。
扉の鉄の匂いがして、少しばかりの歓声が静まり、──開く。
『サァ、スタートしました。どういった立ち上がりになるのか──先行を行くのはやはりツキノエ、続いてトキノツバも続いて行きます』
グッと足を踏み込めば、地面に突き刺さる感触。
芝の下まで力が届く。
(今までと、違う!)
足が滑らない。体がふらつかない。
蹄鉄が芝を穿ち、凸凹を均し推進力になっていく。
そこまで確認するとハナノアカリはひたすらに前を向いた。
びゅびゅうと風を切る音が耳に響いて、目の前には5人の背中があった。
◆
『開始からずいぶんと苛烈でしのぎを削る様な展開となりました。珍しいですね。ツキノエが悠々と先頭を飛ばしていきます。まもなく最初のコーナー、その少し前に坂があります』
東京レース場はその坂をいかに攻略するかにかかっていると言われている。飛ばし過ぎれば後の末脚が無くなり、ゴール前で逆転される。
飛ばさなすぎれば、位置取りが不利な外や荒れたバ場になり、それも体力を削る。
そんなんだからこの千六百メートルは、体力を削るレース展開になりやすかった。だから、ツキノエが選んだ策は一つ。
(このまま飛ばす!)
一番前で風を受ける少女は頬を流れる汗を感じながら脚に力を込めた。まもなく最初のコーナーの終わり。
ちら、と横目で他のウマ娘を伺えば皆一様に青い顔をしていた。
それもそのはず。何故ならこれが彼女の、今回仕掛けた“戦法”であるから。
『第一コーナーを通過、おおっと、場内どよめきです。早い、速い! 明らかにペースがおかしいぞ! 先頭は持つのか!?』
つまりはそう言うこと。
高速のペースで以って全てのウマ娘を疲弊させ、最後は保ったリードのまま一着で駆け抜ける。
ここまで綺麗に皆んながひっかかったのは、最初はあくまで少し早い程度にしておいて、段々と、速度を上げていったから。こうなったら、もう、分からない。遅効性の毒のように体力は削れていく。
続いてすぐに二度目のコーナーを経て、前を見据えればもう最終直線。
少ない酸素の頭でツキノエは考える。考える。
ここから逆転される要素は何か。
自身の体力が切れてバテる?
それは無い。この日のために、この戦法のために練習を重ねてきた感覚に狂いはない。自身のゴールまで走り切れる体力の管理は徹底している。
最終直線の半ばで後ろのウマ娘が前に出る?
それも無い。今まで後ろにピタリと付いてきたウマ娘が、ここからさらに速度を上げるような体力は残ってない。あるのは最後尾の、体力を温存しているウマ娘だけだ。
そう、一番あり得るのは──
最後に末脚で抜かれる?
これだ。
『最終直線、多くのウマ娘がスパートをかけて行くが、鈍い、にぶい! 先頭との差は4バ身ほど、ツキノエも苦しい表情ですが逃げる逃げる! このまま逃げ切り勝ちなるかーっ!?』
最後尾。
これまでのレース展開に付き合わず、データの蓄積を知っているような不気味な虎視眈々。
ハナノアカリだ。
尋常ではない末脚の持ち主だ。
(だけど、アンタには弱点がある──!)
ツキノエは酸素不足で苦しい表情の中ですこし笑った。
それはハナノアカリの練習風景から、初戦のレースまでを見て気が付いたこと。
元より彼女が強敵の匂いをしていると感じ取ったからこその観察、そして発見。
ハナノアカリには弱点があった。
スパートを掛けたら、位置取りを変更出来ないこと。
それだけ? と思われるかもしれないが、関係者からすればこれはとても大きなことだ。レースの途中に読み合いや迫り合いをする理由の一つが位置取りを有利にするためなのだ。
そのくらい、スパートをかける位置は大事だ。
周りを囲まれれば抜け出せないし、内側に閉じ込められれば大回りで体力と時間を使う。
だから、一度スパートをかけはじめたら変更できないハナノアカリは致命的なのだ。
それは靴の重さと、走り方によるもの。
確かに彼女の豹のようなスパートは強い。だが、それが弱点にもなり得る。
ハナノアカリはここまで来て、まだスパートをかけていない。そうするようにツキノエが位置を調節してきた。このまま蓋をして、ハナノアカリがスパートをかけてもどうにもならない距離まで、封じる。
『先頭はツキノエ、二番手のトキノツバも追い縋るが体力の限界か──? 加速は緩やかです! ゴールまであと400!』
ハナノアカリのフォームは独特だ。異様だと言っていい。過言じゃない。姿勢を低くして一直線に矢のように駆けるやり方は、足を振り上げて地面に深々と差し、体重を込めた在らん限りの力で押すことで推進力にしている。
(道はここまで塞いだ! なら、あとは私が駆け抜けるだけ!)
それは横方向の落下に似ていた。そのくらい速い。
だからこそ、細かな進路変更や位置どりが出来ないのだが。
だから。
だから、ハナノアカリは──
その直線が空くことを待っていた。
「えっ」
メギリと異音。
全力疾走の足跡の中でもハッキリ聞こえた。
それは、それは紛れもなく、地面を抉る音。
彼女のスパート音!
『ツキノエ逃げる、トキノツバ追いかけ──こ、こでハナノアカリが来たぁ!! スパートをかけました! 一気に姿勢を低くして、バ群の真ん中を矢のように上がってくる!』
なぜ!?
ツキノエは困惑した。
スパートをかけられないように、道は塞いでいた筈。なのに、何故走れる?
(……そうかっ!?)
バ群の真ん中だ。
たくさんのウマ娘が、前のレースから通ってきた
背後の4人が、道を避ける。
それを踏み均してやってきたのだ。
『なんっという加速! 頭を下げた独特のフォーム! 速い、加速が1人だけ目に見えて分かるようです!』
始めてみる観客は口を開けた。
瞬きを忘れた。
誰よりも低く、踏み込んだ姿勢は、彼女の為に誂えた特注の靴のお陰で更に深くなった。
靴の重さが、重力と、走る少女の加速と合わさって、途轍もないエネルギーを得て、地面に振り下ろされている。
そうして足を地面にアンカーのように深々と突き刺し、そこから来る安定感を、全て力の伝導に使う。他のウマ娘が、片足ぶんの重さ──10キロで力を込めるのに対して、ハナノアカリは体全部の体重を加速に使っている。
だからこそ、だれより一歩の加速が大きくなる。
ぐんぐん、と一人だけフィルムの早回しのように、森林を駆ける虎のように。
「なんじゃありゃ、なんつー広い歩幅じゃ……」
色白の真面目そうなタイピストが呆然と呟く。
菖蒲色の少女の、常人の2倍もありそうな広いストライドに手がカタカタと震えていた。
『ハナノアカリ迫る、ハナノアカリ迫るッ! 先頭までニバ身、一バ身……も無い! 抜けた、抜けた! ハナノアカリが抜けて、先頭で、今、ゴールッイン!!』
一瞬の静寂があった。
何が起きたのか理解するための時間があった。
「お」
それを打ち破ったのは、襤褸の帽子を被った少年だった。
彼が手を打ち鳴らして歓声をあげた。
次の瞬間、爆発するように他の観客も手を天へと突き上げて、快哉を叫んだ。
『一着はハナノアカリっ! 一着はハナノアカリです。目を疑うような加速で全てを抜き去って逆転です!』
拍手の中で、中心にいた菖蒲色の少女は観客席を見上げて、その中に財布を握りしめて喜ぶ三流詐欺師の姿を見て、すぅ、と目を細めた。
その表情は気持ちよさそうに、疲れに身を任せるように。
こうしてハナノアカリは初勝利を挙げた。
◆
良かったなぁ、なんて思いながら一歩、一歩。
今日は祝勝会かもしれない。2日前に、聞いてないフリをしたけどミノルが酒屋のおじさんと話しているのをこっそり聞いていたし。
がちゃん、がちゃん。
地下バ道は、空気がひんやりしてて音が反響する。
もう誰も居なくて、他のみんなは先に引き上げていて、最後はワタシだからこの道も独り占めだなあ、なんて思いながら。
がちゃん、がちゃん。
等間隔に付いた白熱灯は地面の色をくっきりと形取っている。赤茶色の地面。
横に目を向けると、時折ある鉄のドアは上部に『室控一第』と書かれていて、進むにつれ番号はどんどん増えていく。出口前がなんと1番番号が大きい。逆じゃない?
がちゃん、がちゃん。
誰もいない地下を歩く。
靴についていた芝や土くれは、歩くたびに段々と取れていって、いまはほとんど付いていない。清掃のひと、汚してゴメンナサイ。この靴、溝にすごく土が挟まるの。
がちゃん、がちゃん。
がちゃん、がちゃん。
がちゃん、がちゃん。
「あれ?」
つかない。
出口に、着かない。
いくら歩いても、歩いても、地下バ道は続き、音は洞窟のように反響し、もう数百メートルは歩いたのに景色は変わらない。10分は歩いた。
横の扉にかかってるドアの上部プレートの文字は『室控七二〇二第』となっている。
やがて、白熱灯が無くなって、代わりに天井から白い光が降ってくるようになり、地面と壁を白色に染めていった。
それでも歩いていくと、とうとう通路は真っ白になって、回廊のような体を成してきた。
がちゃん、がちゃん。
すると通路の両方には十字の木が入ったはめ込み窓が出てきて、アトリエのようになった。天井からは筋になった白い光が差して、通路を照らしてる。
ハナノアカリは気になって、壁にちょっと寄って窓を覗き込むと、海、空、山、人里、
その中でも大きな窓は大抵、レースが行われていた。
それも、いろんな時代のレースが。
一つの窓に寄って見てみると、植物を服としているような時代のレース。顔に泥のペイントがされたウマ娘が走っている。
離れる。
少し前にまた、覗けるくらいの大きな窓がある。
端から数えて三つ目の窓に手をかけて覗いてみると、中には甲冑のようなものを着て、駆けるウマ娘。真剣な表情で、色違いの甲冑と背の低い草原で競い合ってる。いくつもの“のぼり”が風に揺れていた。
離れる。
また少し前に大きな窓があるので、歩く。
寄って見てみると、六つ目の窓には着物を着る時代。七つ目は膨らんだ洋服を着る時代。
そして、10個目の窓は、真っ赤に染まっていた。
のっぺりとした赤色は光を通さず、暗い。
ハナノアカリが窓から離れて通路を進むと、やがて真ん中にポツンと木でできたロッキングチェアがあった。その座面に何か置いてある。
歩いて、座れるくらいの位置まで来て見ると、それはタッチスクリーンの携帯電話だった。
「なんで……?」
明らかに時代に則さない、異質な物の前に竦む。
だが、ハナノアカリは早く帰りたかったし、このへんな空間から出なきゃいけないので躊躇うことなくソレを手に取った。
画面をタッチすると、立ち上がったスクリーンには、中央に寂しくポツンと黒電話のアプリケーションがあった。
タン、と軽くタップしてみる。
トゥルル、トゥルル。
ト
ゥ
ル
ル
微睡の揺蕩いの中に、鋭く携帯の着信音が入ってきた。
ハッ、として顔を上げるとそこは自室の机で、数学の教科書とノートを開いたままうたた寝をしていたようだった。
「で、電話っ!」
いけない、と思い机の端に押しやっていた携帯を手に取る。ズレていたメガネを片手で直して手元を見れば、着信はまだ続いており、バイブレーションの振動が皮膚を揺らした。
画面には現在時刻の19:36という数字と受話器のマーク。
誰から掛かってきたものか確認しようとすると、手が滑って電話に出てしまった。
『あれっ!? 繋がるの!?』
そして、パッと切り替わる画面。
どうやらビデオ通話だったようで、画面の向こうには驚きに口をぽかんと開けたウマ娘が映っていた。
目元はすこし垂れていて、長い睫毛と相まって穏やかな顔つきにみえる。見覚えは、あまりなかった。寝起きのぼんやりとした頭ではうまく記憶の引き出しが開かない。
通話相手の彼女は瞬きを二、三回してゆっくりと息を吐いた。
そして感嘆したように、口を開いた。
『不思議なこともあるんだねぇ……おりょ、もしかして寝てたの起こしちゃった? ごめんね』
画面の向こうの彼女はそう言って、口元に手を当てて謝罪のポーズを取る。その時に髪が少し揺れて、液晶を彩った。
その髪はまるで淡い
「いえ……大丈夫ですっ。私が寝てしてしまっていただけなので」
そう言ったら、淡い
『分かるよ、ワタシも數學、苦手なんだよね。眠くなっちゃうよ。どうにも言ってることから式が出てこなくって』
そう言って彼女は右手をぐいと頬に持ってきて、手首の付け根で払うように汗を拭った。
よくよく見れば古いデザインの体操服を着て汗をかいている。
今日は平日で、今は夜で、レースは基本的にやっていない筈だった。
そんな考えをよそに、彼女はまた画面の端を覗き込むようにして、にへら、と相好を崩した。砕けたように笑う少女だった。
『きれいなお部屋だね、キミのとこ。すてきなお部屋だね。ワタシの部屋はね、同室の子はすごく可愛くて、いじらしい子なんだけれども、すこし壁の木が腐っててさ。ささくれが枕元の羽目板のところにあるから、ときどき寝るまえに取ったりしてるんだ』
火照ったように赤らむ頬、滑らかに回る口。
その様から彼女はどこか、熱に浮かされて浮き足立っているようにも見えた。
そこでゼンノロブロイはかねてからの疑問を口にした。
「あの、つかぬことをお聞きしますが、あなたのお名前は何でしょうか」
『ウン? ワタシ? ワタシの名前は──
こうして、こうしてビデオ通話は繋がった。
小さな五インチほどの画面を通じて、つながった。ギュルギュルと時間と因果の歯車が加速し出す。
あり得ない現象に、歴史書のインクが震える。
1人の少女と、1人の少女がいる世界が時間が。これこそ正に──
──ハナノアカリ、だよ』