ヒロアカ世界でLBXをアーマーとして造って戦える五条勝に憑依転生してもうた、誰か助けて 作:ジューク
「(………あぁ、散々だったなぁ…)」
最低最悪の最後だ。
50と、かなり良い偏差値の大学に入学し、大好きなダンボール戦機のプラモを作って動画にするユーチューバー大学生としてそれなりに満喫したキャンパスライフだった。
それがどうだ。ホームで酔っ払いに絡まれてる同じ大学の女性を助けようとしたら、酔っ払いに突き飛ばされ、運悪くそこへ快速特急が突っ込んできた。そのまま一気に撥ね飛ばされて終わり。
薄れる意識。その最後の思考は………。
「(………あ、そういえばミゼルオーレギオンの超ガチ塗装まだだったな)」
最後の最後まで一ダン戦ファンで有り続けた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「(あ~、死ぬって初めてだな……なんつーか、体がず~っと落ちていく感覚?)」
――ピピピピ――
「(………にしても、死んだなら俺って天国と地獄どっちだろ?嘘吐いたり喧嘩したりもしたけど、骨折したお爺さん助けるために救急車呼んだり困ってる人の手伝いも結構したからな~…微妙なラインだ)」
――ピピピピピピ――
「(…やっぱ天国なら、大量のダンボール戦機のプラモデルに囲まれて趣味に明け暮れるのが良い。個人的にはオーディーンを鎧みたいに装着、変形して空を飛ぶみたいなことしたいなーな~んて、そんな父ートこと淳一郎博士の造った装甲娘じゃねーんだし)」
――ピピピピピピピピピピピ――
「つーかピーピーピーピーピーピーピーピーさっきから耳のすぐそばでうっっさいんじゃゴラアアァァァァ!!!!!」
そう思いっきりシャウトして俺は
「………………………え?」
シャウトして数秒後、俺は目をパチクリさせながら手を見る。グー、パー、グー、パー…あれ?まさか、夢?だとしたらどんな夢だよ。いや~、ビビったビビった。そんな風に考えていると、急にドアがガチャリと開いて女性が顔を覗かせた。
「どうしたの
「………ん?」
誰だこの人。てか
「~~~あだだだだ!!??」
「ちょっ、どうしたの!?大丈夫!?」
「……あ~いや、大丈夫。ちょっと凄い悪夢を見ちゃってね。思い出したら頭痛がしただけ」
「そう?…ならいいけど。さっさと朝ごはん食べて学校行きなさい」
「はい、っと」
頭痛がした、と言うのは嘘ではない。のだが、その原因は違う。
情報だ。この世界での、自分の個人情報や常識等が決壊したダムのように流れ込んできたのだ。いや~痛かった。
この世界での
ここで少し五条勝という男についておさらい。
五条勝は初代イナズマイレブンの中で、主人公である円堂守が所属していた雷門中のライバル、帝国学園の二年生。めっちゃ大物の雰囲気出していたが帝国学園のキャラで当時唯一CVが無かった、所謂モブキャラだ。だが、公式が開催した劇場版記念の人気投票では2ちゃんねる、俗に言うVIPPERたちの策略と言う名のおふざけの末、『一日一条、五日で五条。』のモットーの下、主人公である円堂守の3倍の得票数でぶっちぎりの一位を獲得するという、人気投票界隈に伝説を作ったキャラクターだ。
その後は運営もおふざけに参加。ゲーム版イナズマイレブンGOでは裏ボス枠のめちゃくちゃ強いチームにしれっと所属しており、本人の能力こそ並だがそれぞれ各属性で最強のブロック技、『ディメンションカット』と『バニシングカット』を使うという、まさかの強者っぷりを見せる。
そして、挙げ句の果てには作品の壁を越えて、ダンボール戦機WにM・ゴジョーとして出演するなど、何気にダンボール戦機とも関わりがある。
ちなみに最近では名前が瓜二つな『五条悟』と雑コラで領域展開したりしているそうな。
だが、いざ自分が本人そっくりに転生すると…
「………悪人面だよなぁ…」
先が尖った前髪、つる無しメガネ、なんかヤバいクスリをキメたような笑顔。そりゃこんなのが1位になったら腐女子も子供も泣くわ。
「いってきます」
「行ってらっしゃい」
朝ごはんを食べ終え、制服に着替える。そのまま用意を鞄に入れて家を出た。
ちなみに、私の“個性”はイナズマイレブンやサッカーとは全く縁がない。『円』堂だけにな。どうした?笑えよ。
個性『顕現』。機械などの非生物に限り、50パーセントまで作れば、後の50パーセントが勝手に完成する、そして物質を別の物質内に格納、任意のタイミングで瞬時に実体化できる。最初の50%は自力で作らないといけない分戦闘向きとは言い切れないが、このヒロアカ世界ではサポートアイテム業界という天職がある。
そんなわけだから私はヒーロー科には行かないつもりだ。え?なんでだよって?どうやったって戦闘と言うよりは裏方でヒーローをサポートするタイプでしょ?個性的にも顔面的にも。
なので志望するは雄英高校サポート科。そこを目指してIQまさかの50ではなく350の頭脳を駆使しつつ日々頑張っている。
ちなみに、この世界の私は今まで“個性”で前世での私の最強の趣味だったダンボール戦機のアーマーを造ってきた。無論アタックファンクション、その他ギミックなどまでも完全再現。ヒロアカワールドマジで最高。
今の時点で使えるのはオーディーン、イフリート、ハーデスを除いた無印時代の全LBXとシン・エジプト(ダンボール戦機Wにて、M・ ゴジョーが使っていたLBX)だ。個人的にオーディーンはダンボール戦機の最推しなのでちゃっちゃと造りたいが、如何せん肝心の飛行ギミックの出来が甘く、中々“個性”発動領域まで届かない。というかオーディーンの飛行ギミックをそっくりそのまま再現しようものなら確実に足の関節がイカれる。特に膝と足首な。
なので膝のアーマーを変形させ、正座のような造りにすることでなんとかいけそうだが、アレンジを加えた分完成に時間がかかりそう、というのが現状だ。出来るとしたらイフリート、オーディーン、ハーデスの順だろう。てかハーデスが難しい。だってあれデータ世界にしか無いもん。てかそれよりさっさと“グングニル伝説”を完成させたい。
“グングニル伝説”(独自命名)。オーディーンのアタックファンクションである『グングニル』はイフリートやWのアキレスディード等を除く今までオーディーンが戦ってきた全てのLBXを倒してきた。その圧倒的な破壊率が一種の伝説になったのだ。『グングニル。相手は死ぬ』と、どこぞのCV雨宮天な駄女神の怒りの鉄拳のようなコメント文(主にニ○ニコ)までできたぐらいである。
そんなこんなで学校に着き、授業の用意をしていると、浮かぶセーラー服が話しかけてきた。
「おはよう勝くん!」
「おはようございます、葉隠さん。何か良いことでもありましたか?」
彼女は『葉隠透』。中学からクラスも一緒だからなのか、何かと話しかけてくる。正直顔つきもあってあまり友人はいないので、彼女の存在は嬉しい。話す内に顔も見えない彼女の感情がわかる程には仲が良い。
「えへへ~。実は、雄英高校ヒーロー科、B判定貰いました!」
「なるほど。倍率300倍のヒーロー科でB判定ともなれば、確かに理解できますね」
「勝くんも雄英だよね?」
「はい。まぁ私は“個性”上サポート科ですが」
「LBX、だっけ?あれがあったら大丈夫だと思うけど…」
「大丈夫ですよ葉隠さん。私はどちらかと言えば裏方でのお仕事が好きなので。私は私にできることを頑張るというだけの話です。そういえば、ちゃんと体術はやっていますか?ヒーロー科の入試は対仮想
「うん!勝くんのアドバイスのおかげでバッチリだよ!ありがとね!」
「お役に立ったのなら何よりです」
そうして、何気無い一日が始まる。私たちが通う中学校は三年生からヒーロー科やサポート科、普通科など、進路に応じてクラス内の各生徒ごとにカリキュラムを選べるという制度がある。全国的にもまだそこまで普及していないらしいが、個人的にはサポートアイテムを造る時間があるのはありがたい。
あとなんで葉隠さんが私を名前で呼んでいるかなんですが、彼女に聞いたところ単純に五条くんと言うより勝くんと言った方がわかりやすいかららしいです。なんだか周囲から勘違いされそうなんですがね…。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「………ん?」
ホームルームが終わり、帰宅の用意をしていると、携帯が振動していることに気づいた。誰からか確認をすると、よく見知った名前だった。
「ねーねー勝くん!放課後マック行かない?」
「………あ~、すみません葉隠さん。少し先約がいますので、今日はこの辺で失礼します」
「………?そう…」
「ええ。では、また明日」
「………………」
教室を出ていく勝の背中を、葉隠はこっそりと追跡し始めた。
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勝はテクテクと優雅に、しかし目立ち過ぎないように通りを歩き、やがて『la collasion』(フランス語で『軽食』の意)と書かれた喫茶店に入った。そこには既に先約がいたので向かいの席に座り、やって来た店員にミルクティーを注文した勝は改めて相手に向き直った。
「…さて、小大さん。今日はどうしました?」
「…ん」
向かいの少女――勝の小学校時代からの仲であり、勝の数少ない友人の一人でもある小大唯は小さく頷いた。
説明すると、保育園から小学校卒業まで勝と唯は一緒だったが、それは小大の父親が東京で仕事をしており、母親が島根で持病の治療に専念していたから。その後、小学校の終わり頃に母親の容態が快復し、故郷の島根へ戻ることになったため、敢えなく二人は別々の中学校になったのだ。しかしその後、唯は雄英受験のために静岡にあるアパートへ引っ越し、現在はこうして会えるようになっている。*1
だが、唯は口数が極端に少ない。勝のような友人以外には、基本的に「ん」と「ね」しか言わないため、コミュニケーションが取り辛いのだ。当の勝と話す時ですら、たまにこうなってしまう。
「………最近、周りの男子の様子がおかしい」
「男子…ですか?」
「ん」
「ふ~む……(この子、気づいているのか単純に鈍感なのか…この子は良くも悪くも純粋ですし、おそらくは後者ですかね。まったく無自覚な美人とは辛いものです)」
唯は口数こそ少ないが、顔は美人だ。唯と同じ中学校の他の男子生徒から聞いた話だが、彼女の中学校には非公認の彼女のファンクラブがあるらしい。
そして唯は中学三年生。ここまで来れば、もうわかるはずだ。彼女が今年度に居なくなるため、どうやって告白、あわよくばお付き合いしようかと逡巡しているのだろう。まぁ、当の本人はそれを知るどころかまず自分のファンクラブの存在そのものを知らないのだが。そんなことを考えていた勝は店員が持ってきたミルクティーを音を立てずにコクコクと飲み、カップを皿にカタリと置く。そして一呼吸おいて口を開いた。
「今はまさに受験シーズンですし、日夜勉強続きで大変なのでしょう。徹夜なんかをすると自律神経も乱れますし、そのせいで少し周りに敏感になっているのだと思いますよ。我々学生にはよくある話です」
「…ん。ありがとう」
「どういたしまして。というか、このようなお話であればLINEとかでもいいのでは?」
「……お腹、空いてた…」
「なるほど。だから既に……これはオムライスのお皿ですか?」
「………ん」
「そうでしたか。これは失礼しました。お詫びと言っては難ですが、勘定は私が払っておきます」
勝はそう言って荷物を肩に掛け、内ポケットから財布を出して伝票を手にレジに向かおうとすると、予想外の人物と出くわした。目が合った、ではないのは彼女の目がどこかわからないからだ。
「………一つお聞きしたいのですが、なんで葉隠さんがここにいるんですか?」
「え?い、いや~、たまたま通りを歩いてたら勝くんが入るの見ちゃって。そしたら…すっごく仲良さそうに女の子とお話してたから」
「あぁ、そういうことでしたか。あ、彼女は小学校時代の友人の小大唯さんです。貴女と同じ雄英高校ヒーロー科を目指している方で、今日は最近クラスの男子の様子がおかしいという彼女の相談に乗っていたところなんですよ。小大さん。こちらは中学校の友人の葉隠透さんです」
「……よろしくね唯ちゃん!」
「ん。………よろしく」
「おや、珍しいですね」
「「?」」
顎に手を当てて言う勝に二人は首を傾げる。
「いえ、小大さんはあまり喋らない方なので。初対面の葉隠さんとすぐに言葉を交わすのは少し珍しいことなんですよ。お互いに意気投合したようで何よりです。それじゃあ、私はここで――」
勝が踵を返そうとしたその時、突如大きな震動と共に轟音が鳴り響いた。
『!?』
「これはいったい!?――…
勝が窓から外を見ると、ギリギリで視認できる角度から大きく筋肉質な敵が車を両手でバーベル上げのように持ち上げ、近くの別の車に叩きつける様子が見えた。
「オラアァァ!!」
敵とは百と数十メートル程は有るにも関わらず、これほどの声量ということは、異形型。見た目通りパワーに優れたタイプだろう。それを理解した勝の行動は早かった。
「お客さんたちとマスターは裏口から避難を!幸い敵が暴れてるのは反対車線。裏口から逆方向へ避難すれば安全です!葉隠さんと小大さんも今すぐ避難してください!私は近隣住民の避難誘導をします!」
「待って勝くん!危険過ぎるよ!」
「ん。勝も避難するべき」
「…私は悪人面ですが、心だけは常に善人で在りたいのです。人々を見過ごして、どうして自分だけおめおめと逃げられましょう。例え危険だろうと、私は行きます」
「………なら私たちも行く。私なら敵に見つからず救助ができるし」
「…私も瓦礫の撤去ならできる」
「…本当ならば、私の勝手な行動に友人であり、守るべき淑女である貴女方を巻き込みたくはありませんが、たしかに貴女方の言う通りだ。なら、二人は一緒に行ってください。気をつけて。では行きますよ。3、2、1………ゴー!」
ドアを開けて、三人は敵と反対側に駆け出す。だが、ここで早くも勝の想定していた最悪の事態が起きてしまった。
「ん?女ァ…?何…してんだよゴラアァァア!!」
敵が反対側に走る勝たちに気づき、持ち上げていた軽トラを投げつけてきた。
「!?二人共、避けてください!!」
「「っ!!?」」
二人はなんとか脚をグリップして加速、軽トラを回避した。だが、敵は早くもそばの建設現場らしき所に山積みになっていた足場用の鉄パイプを幾本も鷲掴みにする。
「ウゼェんだよォォウグォッ!?」
そして敵が二人目掛けて鉄パイプを投げようと振りかぶった時、蒼いエネルギー弾が敵の右二の腕に直撃した。
「てて………!何だテメェ!!」
振り向いた先には、小型の銃を構えて銃口を敵に向けた勝がいた。
「…!勝くん!?」
「……
「…勝?」
「…ハッ!テメェみたいな悪人面がヒーローだとォ!?笑わせるのも大概にしやがれ!」
「…そうだ。オレは悪人面だし、“個性”だってお世辞にも戦闘向けではない。だが、これだけは言わせて貰う。
人を救う権利は善人悪人関係なく誰もが持っているものだ!!!」
彼に似合わない程に勝は叫び、鞄から一台のヘッドギア型のアイテムを装着して何かを呟いた。
「
その瞬間、勝の周りに水色の円柱形の不可侵のエリアが展開される。そして彼の周囲に白と蒼を基調としたアーマーのパーツが展開され、脚部から次々と装着される。そして仕上げとばかりに勝の頭部に両側からメットが装着され、顔を覆うマスクがスライドしてくる。最後に古代ヨーロッパのコロシアムの剣闘士のような赤いS字型のトサカが頭に嵌められ、起動したように目が黄色く発光した。
その左手には円形に2ヵ所の窪みと中央に大きなニードルが付いた盾、右手には立派な騎士槍が握られている。
その佇まいはまさしく“騎士”。あまりの変貌に驚いた敵だったが、すぐに威勢を取り戻した。
「何かと思えば…何だそのコスプレはァ!?んなハリボテでヒーロー気取りってか!!?」
敵がそう叫ぶと、勝はぐっと体勢を低くして盾を前に、槍を構える。そして敵の咆哮に一切動じることなく言った。
「ハリボテかどうかは…戦えばわかりますよ!」
そう言い放つと、勝は凄まじい速さで敵に走り出した。敵は迎え撃たんと勢いよくストレートを振るったが、次の瞬間、敵はその目を見開いて狼狽した。
「フン………!なにィ!!?」
「はぁっ!!!」
振るったストレートを勝は軽くジャンプして躱し、逆にその太く長い腕を足場にして駆け、その槍を右肩の関節部に突き刺した。
「ぎゃあぁあアァァ!!!??こんの、糞餓鬼ィィ!!!」
「ッ!!ほっ!」
地面に降りた勝に敵は拳を振るうが、勝は冷静に盾を構える。そして拳は盾に直撃し、勝は十数メートル程飛ばされるが、空中で槍をアスファルトに突き立ててブレーキ。そのまま数メートル滑走して着地した。そして当の敵は…――
「いっ…でええぇぇえぇ!!!??」
左手の中指に空いた傷口から血を流しながら叫んだ。勝は体勢を取り直しながら冷静にその叫びに言い返す。
「この大きさのニードルが付いた盾をあのスピードで、しかも素手で殴ったのです。まさか、慣性の法則を知らないのですか?空中にある物体でも、強い力をかければその場に留まろうとする慣性が働く。その傷は純粋に貴方の拳の威力が原因なのですよ?さて、これで手は全滅でいいですね。そろそろ終わりにしましょう、ッ!」
そして駆け出す勝を見て、敵は勝が次で自分を倒しにかかると理解した。が、敵もただでは終わらない。
「ふざ…っけんなあああ!!!!」
敵は大の字になった成人程の大きさの平を持つ足を四股を踏むように上げ、勝を踏み潰そうと一気に落とす。だが、その程度の抵抗は無意味だった。
「ふっ!!!」
勝は地面をスライディングし、間一髪で踏み潰しを回避する。そしてお返しとばかりに槍を地面に突き立て、棒高跳びの要領で鋭い蹴りを敵の土手っ腹にお見舞いした。
「ぐおおおおおぉぉ!!!?」
そのまま敵は5メートル程宙に浮く。そしてすぐさま予想落下地点から距離を取った勝は槍を構えて呟いた。
「はあああああああっっ!!!!!!」
「ぐああああぁぁぁ!!!?」
勝が片手で槍を高速回転させると、蒼白いエネルギーが槍に集中していく。そのまま槍を突き出した。エネルギーは文字通り光の槍となって地面に落ちる直前の敵に命中、同時に勢いよく爆発した。爆煙が晴れると、ボロボロのまま気絶した敵が横たわっていた。
「………
敵の沈黙を確認した勝はアーマーを解除する。自動で空中に分離されたアーマーは光の粒となってヘッドギアの内部に消えていった。と、そこへ避難誘導を終えた葉隠と小大が走ってきた。
「あぁお二人共、無事でしたか。住民の避難誘導の方は完了したようですね」
「終、わ、っ、た、け、ど!!勝くん!!なんであんな無茶したの!!?」
「ん!心配した………!」
「………」
二人が詰めよって矢継ぎ早に追求すると、勝はバツが悪そうに後頭部を右手でポリポリと掻きながら口を開いた。
「……私の顔はこの通りで、お世辞にもヒーローとは言えません。別に親を恨むわけでもないし、私自身しょうがない事であると理解しています。ただ、強いて言うなら………『あの瞬間だけでも、貴女たちを守るヒーローになりたかった』…ってとこですかね」
「「!!」」
「お恥ずかしい話です。今のは受験シーズンで疲れた一学生の独り言だとでも思っててください」
「………ううん、勝くん、かっこよかった!!」
「ん!!」
「………ククッ、ありがとうございます」
その後、到着したヒーローと警察に勝はこっぴどく叱られてしまっていた。さすがに公道のど真ん中で持ち出し許可を得ていたと言えどサポートアイテムで、しかも無許可で敵を倒したのはアウトだったようだ。だが、そのお陰で多くの人命が助かったのも事実、とのことで逮捕や少年院送り、とかの重いことはなく、せいぜい注意されただけだった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「…あれからもう数ヶ月、ですか。時間の経過とは必死になればなるほど短く感じますね」
学ランを着た勝は校門を軽く見上げ、中へ……
雄英高校の敷地内へ足を踏み入れた。サポート科の会場に向かっていると、周りからひそひそ話が聞こえてくる。耳をすますと、「何だアイツ」「顔ヤバいだろ」「まさか、敵?」といったくだらない内容が聞こえてきた。
「(…人を傷つけることを平然と口にする奴らが雄英に入ろうとすることの方が私としてはどうかと思いますが…)」
そう思いながらサポート科の会場に向かっていると、勝は見覚えのある人物に遭遇した。
「………ん?」
勝の前から反対側から少し黄色がかったブロンズへアの男子生徒がポケットに両手をつっこみながら歩いてきた。どこかで見た顔だと思いながら勝は記憶を掘り起こし、やがて一人の人物を思い出した。
「(…ああ、『ヘドロ事件』の…………たしか、爆豪勝己でしたか。あの事件は同級生らしき無個性の少年が助けに行ったらしいですが、彼のような人材こそヒーローになるべきなのですがね…)」
勝はトラブルに巻き込まれないよう、左に寄ってそのまま進んだ。が、それはむしろ逆効果だったのかもしれない。
「………何の御用ですか?」
「だーってろ、クソ敵野郎」
彼の進行方向にその爆豪が立ち塞がったのだ。
「『敵』とは、“個性”を用いた犯罪行為を行う犯罪者の総称です。私は犯罪なんて犯してもいませんし、“個性”だって使っていない。貴方が私を『敵』と吐き捨てる権利など無いと思いますが。それと、初対面の相手に『クソ』などと言ってはいけないことすらわからないのなら早急に保育園へお帰りになることを勧めますが」
「あ"ぁ"!!?舐めてんのかクソが!!!」
「いえいえ、初対面で他人を敵呼ばわりするお方ほどではありませんとも。それより、ヒーロー科の受験会場は向こうですよ?私はサポート科なのでこちらですが、早く行かないと遅刻になると思いますが」
「………チィッ!!」
爆豪は大きく舌打ちをするとドスドスという擬音が聞こえそうな勢いでヒーロー科の受験会場へ向かっていった。先ほどひそひそ話をしていた生徒たちも、勝から何かを言われるのを恐れたのか、そそくさと各々の受験会場へ向かっている。そして勝も腕時計をチラリと見ると、サポート科の受験会場へと足を進めた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「(…さて、点数は問題ないでしょうが設計図の方はどうですかね……一応AX-00と各種ウェポンの設計図をブチ込んでおきましたが、ま、大丈夫でしょう)」
目標通り一時間中三十分で全科目全問解答し、十分で見直しを終えた結果特にわからない問題などは無かったため、勝は残り時間ペンを高速回転させること程度しかやることがなかった。サポート科の試験のみに毎回ある『アイテムのラフ設計図(簡単な仕組み込み)』も事前に温めていた内容を楽々解答。問題はないだろうと勝はアイテムを自宅でチューニングしながら考えていた。
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「……以上が受験結果です」
「しかし、色々と今年は面白いな」
「レスキューP0で一位と敵P0で七位…彼らは同じ中学校だったか」
会議室では、雄英の職員たちが受験結果を改めて見直していた。話題はほぼヒーロー科ばかりだったが、ショベルカーのようなメットを着けた低身長の男――サポート科担当の掘削ヒーロー『パワーローダー』だけは少し違った。
「………くけけ…」
「おや、どうしたんだい?」
「…いえ、
「?どういうことだい?」
「これを見てくださいよ。受験結果、国数英理社全てオール満点。サポート工業科目も同様。そして何より恐ろしいのがこのラフ設計図。タイトルは『無個性、及び弱個性の人間用パワードスーツのプロトタイプ』だそうです。が…はっきり言ってこの生徒は化け物だ。プロトタイプと書いてありますが今すぐ警察なんかで採用してもおかしくないレベルの完成度です」
「………なるほど………………」
黒スーツを着た白い毛並みに目元の傷が目立つハツカネズミ――人間以上の頭脳という“個性”を持つ雄英高校校長『根津』は資料を見る。その声こそ平静だが、顔には若干の汗が滲んでいる。彼?もその出来が恐ろしく感じているのだろう。
「………うん、たしかに凄いね。では彼のことはよろしく任せたよ」
「了解です。…さて、どうなるのやら…くけけ」
パワーローダーは楽しみだ、と言わんばかりにくつくつと笑いながら資料を捲った。
勢いって怖いね。
その内エターナルサイクラーでも造りそうだなコイツ