梔子ユメの偽者が小鳥遊ホシノにハチャメチャに愛されてバチクソ絆される話【完結】   作:異常性愛者

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 余談:偽ユメは本来死体、あるいは気絶・昏睡している者など「意識のない肉体」であれば自由に乗っ取り、操れるタイプの霊でしたが、その肉体の感情や記憶に必要以上に共感し過ぎると「結び付き」が強くなり、魂が肉体から離れられなくなります。




アビドス高校校舎脱出計画

 

 アビドス高校 対策委員会室

 

「本当にやるのか?」

「やるしかないよ」

 

 初の邂逅から実に二週間後。ようやく少しずつ打ち解けてきたホシノと偽ユメであるが、今この時は少し不穏な雰囲気に包まれていた。

 アビドス廃校対策委員会。今や廃校寸前のアビドスを存続させるためにある委員会である。

 

 今回のホシノの目的は、この対策委員会に所属している愛しい後輩(メンバー)達の目をくぐり抜け、アビドス自治区の外縁付近に用意してある家に偽ユメを連れていくことである。

 

「別に俺はこのまま空き教室で寝泊まりしても構わんのだが」

「だめ。ユメ先輩の身体を固くて冷たい床に寝させるなんて、お前が良くても私が良くない」

「めんどくさいヤツだな……故人(こんなの)の身体などどうでもいっ」

「ん?」

「嘘ですすみません全面的に指示に従い可及的速やかに寝床を移しますので頭ブチ抜くのは止めてください」

 

 ゴリッと偽ユメの側頭部に突き付けられた銃口は、ホシノがこれまで使い込んできただけあって年季(オーラ)が尋常ではない。

 ともすればもう一人のホシノ自身とも言える。

 ゆえにその銃口越しにホシノの意を感じ取った偽ユメは即座にギブアップした。

 

「……で、具体的なプランは」

「ない。強いて言うなら裏口からコッソリ行くこと」

「不安だ……」

 

 適当を超えた適当な案をそのまま採用してしまう程に今のホシノは追い詰められていた。

 偽ユメの存在と居場所である空き教室はバレていないが、ホシノが何かを隠していることを後輩達は察しているのだ。

 

「というわけで今から行くよ。大丈夫、ちゃんとエスコートしてあげるから」

「身長と年齢で言えばこの身体の方がエスコートする側のはずなんだがな」

 

 

 

 ────結果として、ホシノ発案の住居移動作戦は成功に終わった。

 

 

 

 アビドス自治区 郊外

 

「ここが今日からお前の家だよ」

「ふむ、こんな砂まみれの自治区の家にしてはかなり綺麗に手入れされているようだが?」

「ここはアビドスでもかなり外側だからね、中心部と比べると飛び回る砂の量もそこまでじゃないし、この家は小さめだから掃除しやすい」

 

 ガチャリと扉を開けると、その中は小綺麗に整えられたワンルームがあった。

 

「アパートの一室みたいなワンルームの家……なるほど一軒家としてはかなり小ぢんまりとしている」

「これでも借金返済のために稼いでたお金から少しずつ抜いてコツコツと貯めて買ったんだよね」

「稼ぎ方については敢えて聞かんが、そんなことをして対策委員会とやらの奴等にはバレなかったのか?」

「私用で色々使うからって言ったらみんな納得してくれたよ~、いやあ持つべきは可愛くて素直な後輩だねぇ」

 

 色々とアウトな会話を重ねつつ家に入り、なんてことのないことを駄弁る。

 しばらくその中身のない会話を続けていると、後輩がバイトから帰る時間がやって来た。

 

「おっと、おじさんも帰らなきゃ~。んじゃまたね」

「……ああ」

 

 

 

 アビドス高校 対策委員会室

 

「や~、みんなお帰り~」

「あ、ホシノ先輩」

「ただいま、ホシノ先輩」

「ん」

 

 わらわらと対策委員会の部屋に入ってくる愛しい後輩のみんなに労いの言葉をかけつつ、本日のハイライトを喋る。

 時折シロコがじっとこちらを見ている時もあったが、なんとなくそれに気付かないフリをしながらホシノは今日も『一人称おじさんの昼寝大好きな先輩』として振る舞う。

 

 視線を感じる。シロコだけじゃない。アヤネも何か物申したげにホシノを見やる。

 

「……シロコちゃん、アヤネちゃん、なんかあった?」

「ん……いや」

「ホシノ先輩、これを見て貰えますか?」

「うん~? 何な……に……」

 

 アヤネの端末には偽ユメが映っていた。

 

「……え、何これ」

「ん、最近物音がよくするから、何か動物でも住み着いたかなと思ってドローンで動画撮って監視カメラ代わりにしてたら映った」

「これって今はもう亡くなってる前の生徒会長さんですよね……」

「外を歩いてるのを撮ったせいで砂嵐で輪郭がボヤけてるからよく分からないけど、私はドローンを確認した時そう思った」

「ホシノ先輩、何か知りませんか?」

 

 マズい。

 非常に────マズい。

 しかしそこは暁のホルス、おじさんモードでその追及をどこ吹く風と受け流す。

 

「……ん~、よく分からないけど、もしかしたら砂嵐の砂粒が光を反射して、ユメ先輩みたいな幻が見えたって感じじゃないかな~。

 ほら、ここはそういうんじゃないけど、砂漠は蜃気楼とか見えたりするじゃん。ああいうのだよきっと」

「そうでしょうか……」

「ん、確かに輪郭がボヤけてるから確信できないし、故人が生き返るよりはそっちの方が自然」

 

 よし、誤魔化せた。どうせ決定的な証拠はないのだ、あとは徹底的にしらばっくれればそれでいい。

 

「何? なんか心霊写真とかそういう話?」

「ある意味心霊の写真ではあるかもね~。でも多分期待してるものとは違うと思うよセリカちゃん」

 

 そうしてなんとか偽ユメの存在は後輩に秘匿することに成功した。

 

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