梔子ユメの偽者が小鳥遊ホシノにハチャメチャに愛されてバチクソ絆される話【完結】   作:異常性愛者

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 長めの余談:
 前話は第一話の

>その内乗っ取った他人の身体でブラックマーケットの品物の輸送など後ろ暗い部類の仕事を行い、報酬を得て暮らしていたという。

 のくだりが伏線になっていたのでなんとなく察せた方も多かったのではないでしょうか。
 ちなみに偽ユメはその気になれば取り憑いた身体を薬でアヘアヘにすることもできますし、縄張り(テリトリー)に誘い込めばヴァルキューレの生徒にも取り憑けて意のままなのでブラックマーケットでは取引相手として絶大な人気を誇りました。
 それがホシノに骨抜きにされたのはある意味災厄級の爆弾を一つ潰したことになると思います。
 そんなわけでデート回です。



逢瀬

 

 某自治区 デパート

 

「ユメ先輩はいつもの制服が一番だけど、こ~いうフリフリのワンピースもいいねぇ~。特にこう……おっきいのが強調されて……うん」

「さっきから言葉選びが女子のそれじゃないのは大丈夫か?」

「大丈夫、問題ないよ」

「本当に大丈夫か……?」

 

 アビドスから少し離れた他自治区のデパート。

 ホシノと偽ユメの二人はさも男女の逢瀬(デート)のごとく、そこでショッピングを楽しんでいた。

 

「いや~、ユメ先輩が美人だから洋服選びが楽しくて楽しくてしょうがないよ。中身がお前なのはちょっと不満だけど」

「すまんて……」

「悪いと思うんなら黙って付き合って」

「それは構わんが……貴様の分の服は要らんのか?」

「え~? こんな“ちんちくりん”の身体でオシャレな服選んでもねぇ~」

「まだ胸のこと笑ったの根に持ってんのかよ……」

 

 呆れる偽ユメを尻目に次の店へと足を進めるホシノはさも当然とばかりに偽ユメを『早よ来い』と手招く。

 

「ここいらでご飯にしよっか。ここのフードコートはユメ先輩がまだ生きてた頃に行った事があってね、ラーメンが美味しいんだよ~」

「ラーメンなら柴関があるだろう? そこじゃダメだったのか?」

「せっかくデートするならいつでも行ける所じゃなくて遠出してご飯を食べたいのが女の子なんだよ」

「……それもそうか。いや、そもそもデートで食う昼飯がラーメンなのもなかなかにワイルドな気がするが」

 

 梔子ユメの肉体から記憶を探り、小鳥遊ホシノが梔子ユメとここに訪れた記憶を手繰る。

 偽ユメはそこで梔子ユメが小鳥遊ホシノと一緒にラーメンを食べた記憶に没頭し、ホシノがここにこだわった理由の一端を理解する。

 

 ぼおっと身体が熱くなる。冷房の効いたデパートで熱中症などあり得ないが、これはどうしたことだろうか。

 

(またこの身体が小鳥遊ホシノとの『思い出』に反応しているのか?)

 

 何度も肉体の記憶を掘り起こしたせいか、『思い出』に残る場所に来ただけで身体が熱くなり、ホシノとの逢瀬(デート)に喜んでしまう。

 これはいけない。自分は小鳥遊ホシノの抹殺に来たというのに、これではいけない。

 この肉体にはもはや元の魂も人格もないというのに、ただの記憶だけで新たな宿主として肉体を支配しているはずの自分に影響を与えている。

 

「こんなことなら、コイツに取り憑くなんてやめておけば良かった」

 

 ボソリとホシノに聞こえぬように呟く。

 

 

 

 フードコート

 

「…………うまい、な」

「でしょ?」

「柴関のやつとはまた違った味わいだ……麺の太さもあそことは微妙に違う。それでいてよくスープに絡むから繊細で深みのある味をしっかり堪能できる」

「あれ、あそこのラーメン食べさせた覚えはないけど」

(コイツ)の記憶だよ」

「ああ……」

 

 食事を終えた二人は再びショッピングを再開する。

 アンティークから最新家電、人気漫画の新刊から古典小説など、様々なものを見て回る。

 

「あ、これ面白~い、壁面に貼り付いて掃除してくれるルンバだって。買ってみたいなあ」

「アビドスで使ったらすぐに砂が詰まって壊れるだろうな」

「見て見て金のシャチホコ~」

「そんなどこにでも売ってそうなもん買ってどうする」

 

 時間はあっという間に過ぎていく。

 

 

 

 アビドス自治区 隠れ家(セーフハウス)

 

「いや~、今日はたくさん買い物したねえ」

「途中から袋がかさ張りまくってロープで縛って運んでいたのは見ないことにするぞ……」

「気にしない気にしない。で、どだった?」

「あん?」

「今日のデートの感想。まさか何もないとは言わないよねえ」

「…………」

 

 一瞬の沈黙。その間に偽ユメの脳内ではいくつもの思い出が駆け巡っていた。

 生前の梔子ユメがホシノと過ごした数多の思い出の中に、自分が過ごした一日が新たな1ページとして刻まれる感覚に戸惑いを見せつつ、満更でもなさそうに一言、ホシノに向かって放つ。

 

「────『うん、今日はとっても楽しかったよ。ありがとうね、ホシノちゃん』」

 

 それは『梔子ユメ』としてか。あるいは自分自身としてか。

 いずれにせよ、かつて裏社会で猛威を振るった悪霊はもはや言い訳もできない程に小鳥遊ホシノによって心を溶かされていた。

 

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