梔子ユメの偽者が小鳥遊ホシノにハチャメチャに愛されてバチクソ絆される話【完結】   作:異常性愛者

7 / 7

 最終話。



梔子ユメの偽者が小鳥遊ホシノにハチャメチャに愛されてバチクソ絆される話

 

 アビドス自治区 アビドス高校 屋上

 

「思えばお前が来てから一ヶ月経ったんだね」

「……そうか、もうそんな付き合いか」

 

 偽ユメを校庭で捕獲してから一ヶ月。ホシノと偽ユメは屋上でボーッとしていた。

 別に日光浴がしたいとかそういうわけではなかったがなんとなくここで話がしたいと二人共々思ったのだ。

 

「そういえば『お前』っていうのもなんだかアレだよね正直。名前付けよっか」

「要らん。俺は誰かに取り憑いてその人生を貪り利用し尽くすだけの魂だ」

「本当にそうかな~」

 

 小鳥遊ホシノは偽ユメをじっと見やる。

 瞬く双眸は心の奥底まで見透かすかのごとく────そして実際に偽ユメの心に湧き上がる正体不明の感情をなんとなく察していた。

 

「本当に私を殺すとか消す気なら、その身体でそれが出来るチャンスはいくらでもあったよね。寝込みを襲うとか毒を飲ませるとか、やれることはいくらでもあったじゃない」

 

 彼女はただ指摘する。

 その身体があれば出来たことをしなかったのは何故なのか。

 

「正直に言いなよ。アビドス(このばしょ)で過ごす内に殺意や使命感が薄れに薄れちゃって、もう私を殺す気なんて無くしちゃったからでしょ?」

「…………。違う…………」

「またまたぁ、そんなこと言ってもやっぱり────」

「違うっっ!!」

 

 ホシノは呆気に取られたような目を見開いた顔で偽ユメに向き直る。

 

「違う……俺はお前を殺さなくちゃいけなくて……でもこの身体がそれを嫌がってて……お前を殺したいのにお前は大切な『ホシノちゃん』だから……『私』は……違う、違う、違うぅ……」

 

 偽ユメは、どうしたらいいのか分からなかった。

 小鳥遊ホシノは殺すべき相手。

 そんなことを依頼主から何度も叩き込まれて、密かに見つけた梔子ユメの遺体に取り憑いてまで小鳥遊ホシノに近付いた。

 後はこれまでのターゲットのように殺すだけだった。

 

 それなのに、どうしたことだろう。

 あまりの強さにあっさり負けて捕縛された。いやそれだけじゃない。世話までされたのだ。

 一緒に適当な世間話をしたり、軽口を叩き合ったり、ちょっとしたデートなんかもした。

 

 ────それだけのことが、とても楽しかった。

 

「認めたくない……こんな、これを認めたら俺は……」

 

 頭を抱えて偽ユメはうずくまる。

 

「……そうだ。ここでお前を殺せばいいんだ」

「ちょっ……」

 

 何か怪しい雰囲気を纏った偽ユメは、そのままホシノに接近し、マウントを取る。馬乗りになってそのまま首に手をかける。

 

「ここでお前を殺してしまえば、もうこんな気持ちに惑わされなくて済むんだ……死ね、小鳥遊ホシノ……!」

「っ!!」

 

 ホシノは目をつむる。

 死への恐怖? 違う。

 『ユメ先輩』に殺されるのは嫌だから? 違う。

 偽ユメが己の心から湧き上がる感情に振り回され、苦しんでいることが、あまりに辛くて見ていられなかったのだ。

 

 しかしいずれにせよ、ホシノは偽ユメの手で死ぬ。

 梔子ユメの。今はもう亡き親愛なる『ユメ先輩』の。その手が首にかかる。

 

 ────しかし、いつまで経っても苦しくならない。

 それどころか首にかかった手に込められた力はどんどん弱くなる。

 

「うっ……ううっ……ぐす……」

 

 偽ユメは泣いていた。大粒の涙を溢し、コンクリートの乾いた地面にポタリ、ポタリと垂れ、濡らす。

 

「嫌だ……殺したくない……好きだ、好きなんだ、この場所も、お前も、何もかも……!!」

「────言えたじゃん」

 

 ふっ、と笑みを溢し、へたり込んで泣く偽ユメの肩にそっと手を置く。

 

「正直、最初に会った時はユメ先輩の身体勝手に使ってるってだけでも心底許せないやつだと思ってたんだけどさ。ずっと一緒に居るとなんだか憎めなくて……」

 

 頬をポリポリと掻き、恥ずかしげに目を背けつつ、しかしハッキリと言う。

 

「私も、好き。好きだよ」

「────小鳥遊、ホシノ……」

 

 感極まりひしと抱き合う二人は、夕焼けに照らされて眩しく輝いていた。

 

「ね、やっぱり名前付けようよ。ずっと『お前』じゃなんだかアレでしょ?」

「……なんか候補はあるのか?」

 

 ズビ、と鼻水を啜りながら偽ユメは訊ねる。

 

「そうだね……『アメ』なんてどうかな」

「アメ?」

「そ。ユメ先輩から『メ』を貰って、あかさたなの一番初めの『ア』を付けて『アメ』」

 

 彼女なりに渾身の出来だったのだろう。ホシノは胸を張り自慢気に語る。

 

「……ぷ、なんだよそれ、雨みたいじゃん」

「あ~、笑ったな」

「だって笑うだろこんなん……雨なんて降らない砂漠に住んでてこんな名前なんてよ」

「だからこそ、だよ」

「え?」

 

 今度は偽ユメが不思議そうな顔をしてホシノを見る。

 

「今はまだ、こんな砂漠だけどさ。いつかまたいっぱい人が来て、アビドスが活気溢れる賑やかな街になるように、雨がこの土地を潤してくれるように……って」

 

 今でもその胸に残るのは、アビドス復興の願い。高校だけではない、アビドス自治区全体を再興したいという思いは、今も胸にある。

 

「ユメ先輩の願い、まだ叶ってないけど……いつか叶えてみせるから。協力してもらうからね」

「────ふ、フフフ」

 

 偽ユメは笑う。今度は嘲笑ではなく、心の底からそれを尊いと思って、笑う。

 

「分かったよ。ここがまたみんなが楽しく住める土地に戻れるまで……ずっと一緒だ、ホシノちゃん」

「その顔と声で『ホシノちゃん』って言われるとなんかむずむずするぅ~」

「なっ、なんだと!」

 

 アビドス自治区。そこは一つの夢が潰えた場所。

 

 しかし、そこに生まれた新たな夢は、これからも決して潰えることはないだろう。

 二人がずっと一緒にいる限り。

 

 

 

                    Fin.





 これで当初書きたかったことは一通り書いたので終わりとなります。短い間でしたが読者の皆様方には誠にありがとうございました。

 続き……というか番外編的なものも今後(気が向いた時に)書いていこうと思います。
 あらすじ部分とか、私こと異常性愛者のプロフィール項に新作として書くかもしれないですね。
 もし偽ユメ達の物語の続きを見かけたらどうぞ応援よろしくお願いいたします。それでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

連邦生徒会長ポンコツ概念(作者:セレシア)(原作:ブルーアーカイブ)

 連邦生徒会長に憑依した凡人がハッピーエンドを目指して頑張るお話。▼※R-15とアンチヘイトは念のためです。


総合評価:2106/評価:8.11/完結:10話/更新日時:2024年04月17日(水) 12:15 小説情報

聖園ミカにTS転生した(作者:魔女じゃんね☆)(原作:ブルーアーカイブ)

聖園ミカに男性が憑依した話。結果、原作以上にアグレッシブな準問題児になった。ナギサ(の胃)は死ぬ。駄文注意


総合評価:3537/評価:7.33/短編:22話/更新日時:2026年06月04日(木) 16:14 小説情報

光のベアトリーチェ、アリウスに立つ(作者:吾妻西紀)(原作:ブルーアーカイブ)

ベアトリーチェに成り代わってしまった誰かと▼アリウスの立て直しに関する物語▼なお本人はポンコツとする


総合評価:8463/評価:8.71/完結:9話/更新日時:2025年05月22日(木) 15:00 小説情報

【完結】私は八薙リリカ! キヴォトスナンバーワンの天才だ!(作者:詠符音黎)(原作:ブルーアーカイブ)

 八薙(やなぎ)リリカ。▼ ミレニアムサイエンススクール所属で明星ヒマリや調月リオと並び称される天才の一人である。▼ 自らをキヴォトスナンバーワンの天才と讃え、その傲慢とも言える発言が決して驕りではないと誰もが認める頭脳を持った彼女はネルやヒマリやリオ、ウタハなどの友人達と日々楽しく学園生活を送っていた。▼ だが、そんな彼女の幸せに満ちた日々はある日崩壊する…


総合評価:1279/評価:8.63/完結:15話/更新日時:2026年05月08日(金) 21:00 小説情報

自販機がケイにメロメロになった場合(作者:十文字マトン)(原作:ブルーアーカイブ)

鋼鉄大陸にて、シャーレは持っていたすべての力をもって、自称神であるデカグラマトンとの決戦に挑んだ。▼ケイは、人という覚悟、人という意志を持って神を打ち破った。▼これですべてが終わる......はずだが!▼初めて自分を打ち倒せる存在と出会ったデカグラマトンは、ケイこそが自分の隣に立つにふさわしい存在とみなして、プロポーズをした!▼こいつバカ?▼※同作者の別のデ…


総合評価:912/評価:8.89/連載:18話/更新日時:2026年07月25日(土) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>