馬ACCANO! ヴァッカーノ! The Rolling Bootlegs   作:4*4/2

1 / 3
 


エピローグ1 

2002年 夏 喫茶マンハッタン テラス席

 

 

「今でも信じられません・・・・・目を開けながら見た白昼夢のような」

 

 

 コーヒーに口をつけ、独り言のようにつぶやいた。

 ピークタイムも過ぎた夕暮れ時。テラス席では、カフェを含む4人の少女達がひと時の一杯を楽しんでいる。

 

 

「トレーナー様達は今頃、元の世界で生活しておられるのでしょうね~」

 

 

 写真を眺めながら、相づちをうつブライト。その写真にはメジロブライトともう一人、金髪の美少女が笑顔で映り込んでいた。

 

 

「ブライトは、私のATMデスの・・・・・最後まであの方らしい添え書きですわね」

 

 

 写真の右端に記された小さな、そして乱暴な殴り書き。

 そっと、横から眺めていたメジロマックイーンが思わず苦笑してしまう。

 

 

「そういえばあの使い魔、よく使ってたけど結局どういう意味なの?ATMって」

 

 

 スイーピーの疑問にブライトとマックイーンが目と目を合わせる。場に一瞬の沈黙が流れ、葉ずれの音が心地よく響き渡った。

 

 

「A(愛し)・T(てる)・M(メジロブライト)」

 

 

 タイミングを合わせたかの如く、二人の答えが重なり合う。

 先刻よりも長い長い沈黙の後、少女達は笑いながら異口同音に呟いた。

 

 

「最後まで、あの人らしい」

 

 

 そうして4人はいつものように『思い出話』に花を咲かせた。

 トレセン学園に召喚された、別の世界からやってきたトレーナーさん達『転移者』。その転移者達と繰り広げられる不思議で珍妙な物語の数々。

 たった2日の間におきた嵐のような物語を・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

=================================

 

 

プロローグ

 

 

2002年4月 トレセン学園 栗東寮一室

 

 

 多元宇宙論。

 近代アメリカより発祥したとされる学説であり、同時にオカルトじみた思想でもあった。

 一人の学者に端を発したその説は、現在の科学では『可』とも『不可』とも証明不可能なロマンのある、夢想的思想として文筆家達の中に浸透していく。

 

 

 『宇宙は一つではない。星の数ほど無数に存在している』

 

 

 その一つ一つの宇宙に地球と同じ惑星が存在し、人類同様の生活を営んでいる。そんな学説の所業は時に『異世界転生』という形で、またある時は『タイムリープ』の形をとり、創作者達に永遠のインスピレーションを与え続ける。

 

 

 仮にこの学説を否定するのなら、"光の速さ"で434億年かかる宇宙の端。現在もなお膨張し続ける一つの宇宙。その最突端を突き抜けなければならない。

 

 

 もしもそれが叶ったならば、人類の科学に不可能の文字はなくなる。

 そう、不老不死さえも現実のものとなるであろう。

 

 

 

                ⇳ 

 

 

 その部屋は、夜の闇に包まれていた。

 闇の中・・・彼女は『声』だけを発していた。

 黒いローブを身に着け、『使い魔召喚』の儀行う一人の少女。

 彼女はその部屋で、『使い魔』を具現化させることに成功したのである。

 

 

 

「呼ばれて飛び出てジャしんチャーン。ご主人さま~お仕事ですのー♪」

 

 

 やけにハイテンションな『使い魔』は、自らに課した制約に従い、自分を呼び出した主人に付き従う事を約束する。

 

 

「いらない」

 

 

 呼び出した『使い魔』をまじまじと見つめ、ローブの少女は即答した。

 

 

「んぬぅ~?邪心ちゃんの聞き間違えかな・・・出会って5秒で戦力外通告を受けた気がしますの♪」

 

 

 六芒星の頂点に置かれた蠟燭の真ん中で、『使い魔』は耳に手を宛て聞き直すしぐさをする。

 

 

「いらない!可愛くない!!さっさと帰って!!!」

 

 

 少女の放った三本の矢が、邪心ちゃんの心臓(メンタル)に深く食い込んだ。

 胃の奥から胃酸が上がってきたのを感じる。持病の神経性胃炎だ。

 

 

「あぁ、帰ってやる。今すぐ帰ってやる。光の速さで帰ってやるから帰還の呪文を唱えろ・・・・・小娘ぇー!!」

 

 

 押し寄せる胃酸をこらえ、邪心はまくしたてる。

 目を吊り上げ、顔には青筋、口からは飛沫の雨あられ。

 隣の部屋から『うるっせえ!』と共に壁ドンをされるも、気にする様子は一切ない。

 

 

「知らない・・・・・そんな呪文、知らないもん」

 

 

 邪心ちゃんは少し沈黙すると、にっこりとほほ笑んで・・・

 彼女の視界から消えた。

 

 

「ならば仕方ねぇですの!実は帰還するにはもう一つ方法があってな、召喚者を亡き者にすればOKですの・・・ということで、グッバイ小娘!!」

 

 

 飛び上がり、狙いを定め、ドロップキック。

 その間僅か3秒。邪心ちゃんの下半身(蛇(コブラ))から繰り出された強力な蹴りが、少女に直撃する・・・かに思われた。

 

 

「リク・ラクラ・ラック・ライラック!」

 

 

 昨日覚えたての呪文を少女が詠唱し始める。

 ドロップキックの態勢を維持し、邪心ちゃんの体が空中に制止した。

 

 

「お、おいまて、やめろ。それはさすがにシャレにならんですの」

 

 

 空間が曲がり、歪み、膨張する。無駄口をたたく邪心ちゃんの周りが急激な変貌を遂げていく。

 

 

「サギタ・マギカセリエス・グラキュアーリス!!」

 

 

 最後の詠唱と共に、臨界点に達した空間が爆発を起こす。その威力によって、邪心ちゃんの身体は大砲玉のように飛んだ。

 

 

 

じゃしんちゃん とんだ

やねまで とんだ

やねを つきぬけ 

かわらへ おちた

   

  

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。