馬ACCANO! ヴァッカーノ! The Rolling Bootlegs 作:4*4/2
2002年 夏 喫茶マンハッタン テラス席
「今でも信じられません・・・・・目を開けながら見た白昼夢のような」
コーヒーに口をつけ、独り言のようにつぶやいた。
ピークタイムも過ぎた夕暮れ時。テラス席では、カフェを含む4人の少女達がひと時の一杯を楽しんでいる。
「トレーナー様達は今頃、元の世界で生活しておられるのでしょうね~」
写真を眺めながら、相づちをうつブライト。その写真にはメジロブライトともう一人、金髪の美少女が笑顔で映り込んでいた。
「ブライトは、私のATMデスの・・・・・最後まであの方らしい添え書きですわね」
写真の右端に記された小さな、そして乱暴な殴り書き。
そっと、横から眺めていたメジロマックイーンが思わず苦笑してしまう。
「そういえばあの使い魔、よく使ってたけど結局どういう意味なの?ATMって」
スイーピーの疑問にブライトとマックイーンが目と目を合わせる。場に一瞬の沈黙が流れ、葉ずれの音が心地よく響き渡った。
「A(愛し)・T(てる)・M(メジロブライト)」
タイミングを合わせたかの如く、二人の答えが重なり合う。
先刻よりも長い長い沈黙の後、少女達は笑いながら異口同音に呟いた。
「最後まで、あの人らしい」
そうして4人はいつものように『思い出話』に花を咲かせた。
トレセン学園に召喚された、別の世界からやってきたトレーナーさん達『転移者』。その転移者達と繰り広げられる不思議で珍妙な物語の数々。
たった2日の間におきた嵐のような物語を・・・・・
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プロローグ
2002年4月 トレセン学園 栗東寮一室
多元宇宙論。
近代アメリカより発祥したとされる学説であり、同時にオカルトじみた思想でもあった。
一人の学者に端を発したその説は、現在の科学では『可』とも『不可』とも証明不可能なロマンのある、夢想的思想として文筆家達の中に浸透していく。
『宇宙は一つではない。星の数ほど無数に存在している』
その一つ一つの宇宙に地球と同じ惑星が存在し、人類同様の生活を営んでいる。そんな学説の所業は時に『異世界転生』という形で、またある時は『タイムリープ』の形をとり、創作者達に永遠のインスピレーションを与え続ける。
仮にこの学説を否定するのなら、"光の速さ"で434億年かかる宇宙の端。現在もなお膨張し続ける一つの宇宙。その最突端を突き抜けなければならない。
もしもそれが叶ったならば、人類の科学に不可能の文字はなくなる。
そう、不老不死さえも現実のものとなるであろう。
⇳
その部屋は、夜の闇に包まれていた。
闇の中・・・彼女は『声』だけを発していた。
黒いローブを身に着け、『使い魔召喚』の儀行う一人の少女。
彼女はその部屋で、『使い魔』を具現化させることに成功したのである。
「呼ばれて飛び出てジャしんチャーン。ご主人さま~お仕事ですのー♪」
やけにハイテンションな『使い魔』は、自らに課した制約に従い、自分を呼び出した主人に付き従う事を約束する。
「いらない」
呼び出した『使い魔』をまじまじと見つめ、ローブの少女は即答した。
「んぬぅ~?邪心ちゃんの聞き間違えかな・・・出会って5秒で戦力外通告を受けた気がしますの♪」
六芒星の頂点に置かれた蠟燭の真ん中で、『使い魔』は耳に手を宛て聞き直すしぐさをする。
「いらない!可愛くない!!さっさと帰って!!!」
少女の放った三本の矢が、邪心ちゃんの心臓(メンタル)に深く食い込んだ。
胃の奥から胃酸が上がってきたのを感じる。持病の神経性胃炎だ。
「あぁ、帰ってやる。今すぐ帰ってやる。光の速さで帰ってやるから帰還の呪文を唱えろ・・・・・小娘ぇー!!」
押し寄せる胃酸をこらえ、邪心はまくしたてる。
目を吊り上げ、顔には青筋、口からは飛沫の雨あられ。
隣の部屋から『うるっせえ!』と共に壁ドンをされるも、気にする様子は一切ない。
「知らない・・・・・そんな呪文、知らないもん」
邪心ちゃんは少し沈黙すると、にっこりとほほ笑んで・・・
彼女の視界から消えた。
「ならば仕方ねぇですの!実は帰還するにはもう一つ方法があってな、召喚者を亡き者にすればOKですの・・・ということで、グッバイ小娘!!」
飛び上がり、狙いを定め、ドロップキック。
その間僅か3秒。邪心ちゃんの下半身(蛇(コブラ))から繰り出された強力な蹴りが、少女に直撃する・・・かに思われた。
「リク・ラクラ・ラック・ライラック!」
昨日覚えたての呪文を少女が詠唱し始める。
ドロップキックの態勢を維持し、邪心ちゃんの体が空中に制止した。
「お、おいまて、やめろ。それはさすがにシャレにならんですの」
空間が曲がり、歪み、膨張する。無駄口をたたく邪心ちゃんの周りが急激な変貌を遂げていく。
「サギタ・マギカセリエス・グラキュアーリス!!」
最後の詠唱と共に、臨界点に達した空間が爆発を起こす。その威力によって、邪心ちゃんの身体は大砲玉のように飛んだ。
じゃしんちゃん とんだ
やねまで とんだ
やねを つきぬけ
かわらへ おちた