俺は、生まれつき色々と欠如していた。
味覚、嗅覚、感覚、痛覚、悲しみ…細かいところをあげればキリがない。
これを薄情と捉えるか気楽と捉えるかは人それぞれだが、多くは前者だ。
後者は…俺が欠如したもので苦しんでいる者たちだろう。
そんな俺に、神は何を考えたか?
運命は何をトチ狂ったのか?
俺は……異世界へと飛ばされた。
よくある死んで転生ではない。
家のドアを開けたら異世界だ。
神は順序というものを知らないのか?
こんなもの小学生でももう少しマシな導入をするだろう。
この物語を描いている者は雑の一言で片付けられる。
という雑念という名の愚痴は置いておこう。
そこら辺の棚に。
それより、神は今この状況を何とかして欲しい。
無神論者なのが災いしたか、神は俺を見放した、或いは処分するつもりか?
俺は現在よく分からない屋敷でよく分からない奴らに侵入者扱いされてよく分からない攻撃で殺されそうだ。
あぁ、何も分からない。
家のドアを開けて中に入ったらこの屋敷の一室…メイドの自室だったようで、突如として出現するナイフを間一髪交わしては今は逃げ回っている。
気が付いたらもう一人増えている。
なんかこう…お嬢様とか呼ばれてる奴に。
槍をぶん投げられてナイフを投げられて。
今も生きている俺を褒めて欲しい。
ゴキブリでももう死んでいるだろう。
俺「だから俺は侵入者だけど侵入者じゃないって!急にこの屋敷に飛ばされたんだ!」
???「言い訳はあの世で好きなだけ言うといいわ。」
この通り、いくら説得しようと話し合いにも至らない。
まぁ、それはそうか。
さてどうしようか、そろそろ交わすのも疲れてきた。
もういっその事一撃で葬り去ってくれそうなあの槍に当たろうか。
あぁ、もういいか、それで。
どっちにしろ時間の無駄だ。
回避に専念してもいつかは当たる。
ならもう諦めた方が賢明だ。
俺「あーあ、何もかも上手くいかない人生だった。来世は神でも崇めてようか。」
そんなたわごとを口にして、俺はその一撃で死にそうな槍に自ら当たりに行った。
あぁ、当たりに行ったはずだ。
けれど…生きている。
思ったより威力が無かったのか?あの見た目で?
まぁいいか。
痛覚は無いから痛くは無いし、あのナイフにでも……そう思ったのもつかの間、槍で貫かれてからナイフが飛んでこないことに気が付いた。
おかしいなと思い俺を攻撃してきていたヤツらの方を向こうとしたが…突如として視界が反転した。
こう…倒れる感じで。
そして自分の視界に映ったのは立ったままの自分の下半身。
あぁ…痛覚も感覚も無いから分からなかったが、もう死んでいるようなものだったのか。
よろしく来世……と、いくら待っても死にやしない。
それどころか上半身も動かせるし下半身も……すごく変な感じだが動かせる。
どういうことだ?
そう思いながら奴らの方に顔を向ける。
とても驚いていた。
なんなら気味悪がっている。
人間がゲジゲジでも見るかのような感じだ。
俺「なぁ、俺…いつになったら死ぬんだ?」
???「こっちが聞きたいわ…なんで死なないのかしら?」
俺「人間って上半身と下半身が分断されたら死ぬよな、そうだよな?」
???「普通は死ぬわね。」
俺は普通じゃなかったか。
俺「なぁ、もういいだろ?俺はこの状態にされてもお前らに攻撃する手段は持ってないんだ。
勘弁してくれよ、誤解なんだ。」
???「気味が悪いからそのまま殺すわ。」
あー、なんて理不尽だ。
もう少し慈悲をくれてもいいじゃないか。
俺「そこを頼むからさ…俺は欠落者って言うんだ。
何故か今死んでない事と色々おかしいところ以外は普通の人間だ。」
???「世間一般ではそれは異常と言うのよ。
名前も含めてね。」
欠落者「失敬な、丸っきり異常者ではないんだぞ。」
???「はぁ…。」
???「そうね…咲夜、面白そうだし、ペットとして飼わない?」
待て、ペットだと?
そんな俺はモルモットじゃないんだぞ!!
咲夜「まぁ…お嬢様がそう仰るのなら…。」
レミリア「なら決まりね。
私はレミリア・スカーレット、この紅魔館の主にして偉大なる吸血鬼よ。
アナタをこれから飼ってあげるから、せいぜい楽しませてちょうだい。」
冗談じゃない。
そう口と心で言いたいところだが…まぁそれはこのメイドが許してくれなそうだ。
まぁ生きれる……ことに感謝しておこう。
欠落者「…頑張ってみましょうとも…」
なんとも雑な導入から、なんとも雑な展開へと執筆者によって導かれた俺だが…はてさてこれからどうなることやら…。