怪文書注意です。記憶と香り、大事ですよね。
ドリームジャーニーならやりかねない()
昔話と銘打っていますが、そこまで深く関係ないです。文体くらいしかそれっぽくないです。
むかしむかし、あるところに、トレーナーという人がいました。
彼は底抜けに人柄が良く、具体的には、
・電車の席を当たり前のように譲る。
・クズなお友達にも平気でお金を貸す
・とにかく自己犠牲と言うか尽くす喜び精神が高い
というような人物でした。彼がなぜそうなのか、少しだけ辛い彼の過去にありましたが、ここでは深く書きません。
ある日トレーナーがとあるウマ娘のラストランを見ていると、身長の小さい、ウマ娘が席を探していました。
トレーナーは「ここ、使うかい?」と席を譲りました。
──
それから数年後、その小さいウマ娘はなんとかしてそのトレーナーと契約をすることができました。トレーナーはのんのんとトレーニングをしていると、ある時、彼女からする香水の香りにふと記憶の欠片が引っかかりました。契約する直前に、席を譲ったウマ娘であるとは分かっていたのですが、ソレよりももっと深い所に記憶があったのです。今が地上だとするなら、その記憶は地下室の、ジメジメした所にずっと保管されているようなものです。もっと例えるなら、記憶と自我があやふやで、世界が、コーヒーにミルクを入れ偏りながら、ごちゃごちゃと混ざっていたとき、そんな時に、トレーナーにとっての、はっきりとその標となっていた、誰かの香りでした。おそらく誰もが通る道の一つである「初恋」というものでしょう。しかしながらおかしな話で、そもそも彼の古い記憶では、そのウマ娘は生まれてはいません。しかし、その香水の匂いが、その「初恋」と呼べる人がいた事を証明しているのです。
さらに不思議なことが起きました。日に日にその引っかかる記憶が増えていくのです。そしてトレーナーからこれと言ったトラウマが出てこなくなったのです。
人間誰しもはトラウマを抱えているものですが、トレーナーは最近、これと言ったトラウマがないのです。
小学校では、クラスで馴染めず、一人で教室の隅で本を読んでいたはずでしたが、実際はとあるウマ娘といっしょに、鬼ごっこやかけっこをしていたそうです。何回やっても「彼女」には勝てなかったのが懐かしい思い出として、あの香りといっしょに保存されています。
中学校ではガキ大将にいじめられていたはずでしたが、実際はとあるウマ娘と仲睦まじく勉強していたそうです。そういえばトレーナーを志したのは、一緒にいた「ウマ娘」を将来的に育成して立派なレースで勝たせてあげたいという思いがあったからでした。
高校に入って、とある人に告白して盛大に振られたトラウマがそこにはあったはずですが、懐かしい香りを漂わせていた「彼女」から二つ返事をもらえていたことになったのです。トレーナー学校に行ったときも、トレーナーになってすぐも、いつも隣に彼女がいました。手のことは詳しく覚えていませんが、まるで今契約しているウマ娘と瓜二つでありました。
「トレーナーさん、どうかされましたか?」
そのウマ娘は、最近不思議な事が多くて、少々疲れているトレーナーに優しく声をかけます。
「ああ、ごめんね、少しめまいがしただけなんだ」
「無理はいけませんよ。しっかりやすんでくださいね」
そのウマ娘はニッコリと微笑んで、その場を後にしました。トレーナーにはその笑顔だけで十分に疲れが癒された気がしました。以前では彼女の笑顔をみただけでここまで元気になったことは無いので不思議だなあと感じましたが、それ以上深くは考えませんでした。
さて、次の日になって、トレーナーは不可解なことに遭遇します。
現在進行系で付き合っている人がいるのです。
相手は、モヤがかかって詳しく浮かべることができませんが、確実にいるのは確かです。トレーナーは流石にこれは何かがおかしいのではないかと、考えましたが、もうそれ以上は疑うようなことはしませんでした。なぜなら何が本当だったから忘れてしまったからです。 幼少期に、初恋のウマ娘がいて、最初から高校時代に付き合っていたウマ娘がいて、現在進行系でウマ娘と付き合っているのが真実で、最初から、振られた思い出や、トレーナーとして一人で仕事をしていたことが勘違いだったのかもしれません。トレーナーはもはや深く考える必要はないなと思いました。だって今の生活が幸せですから。「彼女と一緒にいること」これ以上の喜びが彼には見つけることができませんでした。
この生活を受け入れるのです。それから彼の人生は、今も昔もこれからもバラ色になりました。
物心付く前からとあるウマ娘が好きで、そのウマ娘とはずっといっしょに過ごしてきて、今ではトレーナーの奥さんです。
「ジャーニー。おはよう」
「おはようございます。すぐに朝ご飯をつくりますね」
「ありがとう」
今日の朝も、こうやって奥さんのウマ娘と幸せな生活を送るのでした。
奥さんが横を通ると、あの、一生を書けて染み付いた、忘れることはない、忘れられない香水の匂いがします。
めでたしめでたし