思春期ではすまない変化   作:こしょ

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思春期ではすまない変化 2話

「聞いたか? 今度土曜日にあの人たちと会おうってことになったんだけど」

 そう学校で話すと、トモキはちょっと嫌そうな顔をする。

「別に、勝手にすれば」

 そう言ってまたオレから離れて自分の友達と合流していった。なんだよ、あれ。あっちに行ったら行ったでトモキたち、こっちを見ながらひそひそ話をしている。トモキの周りの友達たちは興味津々って感じの表情だ。嫌な顔をしたいのはこっちだ。

 

 すぐに週末は来た。それまでの間、トモキもネットでなら、チャットでなら多少は話してくれるんだが、結局こないだのこと謝るとかはなくて、そういうことならこっちだって、別にいいけどって感じ。……ほんとは良くないんだけどトモキたち近づくの迷惑みたいだし……。

 オレは気が小さくもないのに傷心の心持ちで、駅の待ち合わせ場所で待っていた。もうすぐ着くよ!とメッセージが来た。慌てて周りを見たが、あくまでもうすぐなんで、まだ着いてない。気持ちがソワソワしてるから、念の為にトイレに行った。ギリギリになる前に行った方がいいみたいなので。戻ったらちょうど二人が来ていた。同時に来たのかな?

 

「驚いたよ! あなたがユキくん?」

「そうですけど、サヤ師さんですか?」

「は、はい。初めまして。あ、サヤでいいです……」

「ずっと一緒に遊んでたのに、緊張しますね」

「ええ、そうですね。緊張したのはそれだけじゃないけど……」

 サヤ師は大学生らしく、身体はオレの方が全然大きいけど、やっぱり本物の大人の感じがする。

 もう一人のフリスタは自分が女ってのを否定してたけど、普通に女に見える。でも服装がちょっと男っぽい。美少年だと言われたら信じてしまいそうだけど。たぶん、歳はオレと同じくらいだろうと思うが自信はない。

「どうも……」とフリスタは頭を軽く下げた。声は低めだった。

 ネットではクールなイメージだったけど、実際会うとやはり言葉少なで表情が硬いように見える。

 オレは若干戸惑った。初めてこうして会ってみると、色々とやはりイメージの相違がある。相手も戸惑っているみたいだ。

「まさか、こんな大人の女性だったとは思いませんでした」サヤ師が見惚れたように言ってきた。

「え? オレのことですか? オレは中学生ですよ」

「いや、どう見ても……えっ、中学生が本当にそんな姿になっちゃったんですか? あっ、あの、聞いてはいましたけど、そこまでとは……」

 と、言ったところでサヤ師はオレがちょっと落ち込んでいるのに気がついて、謝った。

「ごめんなさい、つい余計なことを言ってしまって……」

「いいですよ。まあみんな同じように驚くので」

 そうオレが答えると彼女はますますすまなそうな様子になった。その間にフリスタが口を挟んだ。

「まあ、話はどっか入ってからゆっくりしましょうよ」

 身体は小さいけど落ち着いた大人の態度で話すので、かっこいい……!ってオレたちは尊敬の目で見た。でもどこ行くか誰も何も考えていなかった。天気は良くて暖かいから、適当に歩いた。駅の近くはネットカフェがあるからあそこでもいいけど……。

 フリスタが提案したので、ファミレスに入った。それで落ち着いて、自分たちのことやあれこれを話すことができた。

 

「ああ、なるほど、それはトモキくんが悪い」

「そうでしょ?」

 サヤさんが言ってくれて、やっぱりそうだと思った。急にああいう態度なんだもん。

「でも、彼も戸惑ってるのよ、さっきの私みたいに。外見にびっくりしちゃったのね」

「……それは……まあ……そうかもしれませんが。でも、いつまで戸惑ってるんだって話ですよ!」

「……トモキくんは男の子なんでしょう?」

「そうだよ、あんな男らしくないやつでもね!」

「それじゃ普通はしょうがないかもね~……」

 オレは不満で口を閉じた。サヤさんがそれを見てまたあわあわした。この人は、大学生なんだそうだけど、ネットのいつも落ち着いた大人な印象と違って意外と子供っぽくてかわいい、とは思う。でも今はこれじゃ頼りないな……。

 一心不乱にデザートを食べてたフリスタが、喋るには重そうな口を開いた。

「君が大人で美人すぎるからいけないのよ」

「えっ」

「中学生男子なんて性欲しかない動物なんだから、そりゃ変なことばかり考えてるのよ、普通は……ね。だから」

 オレはその言葉が疑問に思った。

「オレだって中学生だし、フリスタさんもそのくらいじゃないの?」

「私は男子じゃないし! あ……いや……」

 自白というか自爆して、フリスタも黙ってしまった。サヤは笑った。

「フリスタちゃんは女の子だよね」

 フリスタはぷりぷり怒った。

「もう、余計なこと言わないでよ! お姉ちゃん!」

「二人は姉妹だったんですか?」

 彼女たちは笑った。

「そういうわけじゃないよ、ただ仲良しだからお姉ちゃんって呼んでくれてるのよね。ユキくんよりは少し前にネットで知り合ったのよ」

 なるほど、二人は前からよく会っていたのだな。女同士だから、話が合ったのだろう。なるほどなあ。と思いつつちょっとそれは疎外感があった。だっていつも四人で遊んでたのになあ。

 でもそれは、今オレがトモキにしてるのと同じだ……こういう、仲間外れみたいなのってなぜか嫌なんだ。

「なんで落ち込んでるの?」

 フリスタが聞いてきた。

「やっぱりトモキも連れてくればよかったと思って」

「だめだめ、今日は女子会だから。男なんて混ぜちゃ」

「なんでだよ」オレは少しムッとして言い返した。「オレだって男だし、フリスタだって男みたいな格好してるじゃん」

「ばっ、バカ、こういうのは……中性的っていうのよ。あんたはガッツリ男物着てるけど」

「そうなの?」

 サヤさんに向かって聞いてみると、まあそうかもねと曖昧に答えられた。

 

「それはともかく……本題に戻るけど、本当にユキくんって男の子だったの?」

「そうだよ」

「中学生だったよね」

「うん」

「さっきもフリスタちゃんが言ったけど、それは中学生には毒よね……言いづらいけど、はっきりいうと、あなたの姿を見ると……中学生はえっちなことしか考えられなくなるのよ!」

「なっ、なんだって!」

 なんだって……。そんなことある? オレは男だぞ。

「まあ男性みたいな格好してるけど、なんか逆にスーパーモデルかなってなるし。谷間ちらちら見えちゃってるし、揺れてるし」

 胸に関しては、下着は一応つけているんだが、確かに大きさが隠しきれないし、暑苦しくて服装もゆるくしてしまう。そのせいで興奮するのか?

「顔もすごい美人だし。メイクもしてないのに……。こんなん……学校行ってるより今すぐアイドルかモデルに専業してほしいくらいだよ!」

「いやオレ……男だし……中学生だし……」

 うーん、とサヤが唸った。「そう……なのよね……中学生だなんてとても信じられないけど……。でも、ずっとネットで一緒にいたから、間違いなくそのユキくんだってことはわかる。ともかくまずは現状を認めた上で、そこからどうするべきか考えないといけないわね……」

「どうしたらいいの?」

「とりあえず露出を可能な限り少なくするか……」

「ええ? これから夏が来るんだよ!」

「せめて胸元だけは……こう……」

 サヤがボタンを止めたら逆に弾け飛んだ。

「あ、あはは……もうちょっと大きい服を着ないとだめみたいね……」

「いっそ扇風機がついてる服にしたら?」

 横から見てたフリスタが言った。

「……それだ! ……それかも?」

「いいね! かっこいいし」

 やっぱりフリスタさんなんだよなあってふたりは思った。

 

 その後はカラオケに行った。声変わりのせいで声が違いすぎて、歌うのに今はちょっと苦手意識ができている。それもあって、途中からは一緒にゲームをしていたけど楽しかった。

 なので途中でトモキを呼ぼうとしたが、トモキには断られてしまった。

「やっぱり避けられてる……」

「まあまあ、あちらはあちらの用事があっただろうから」

 サヤさんが慰めてくれた。でも、もしかしたら、オレは女子側につくかかトモキ側かを選ばないといけないのかなと悲しく思った。

「なんでよ、別にいいじゃない、こっちは誘ってあっちが断ったんだから。選んだのはトモキくんでユキくんがそれ以上何かする必要なんてないし」

 フリスタが強い口調で言った。

「そうなのかなあ」

「そうよ……」

 

 楽しい時間が終わって一人家に帰ると、またお母さんが驚いた。いつまでもぼくの姿に見慣れない。

 後でフリスタから電話がかかってきた。

「どうしたの? こんな遅くに」

 今日会った二人とは連絡先を交換していた。

「あのね……」とフリスタが歯切れ悪く喋る。「今日は楽しかった……。私、あんまりリアルで仲のいい人いないから……また遊んでくれる?」

 ぼくはドキドキしてしまった。フリスタは不思議な感じの人で、考えてることがよくわからなくて、ある意味では話しにくい。普段もそうだが、サヤさんがいなかったらどうしていいかわからなかったかもしれない。そのフリスタがこんなに素直な気持ちを話してくれるとは思わなかった。

「うん、いいよ! いつでも声をかけてよ!」

 ぼくはそう返したのだった。

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