この世界、全然透き通った世界観で送る学園なんかじゃねぇ! 作:気分屋「星七」
転……移……?
ガタン……ゴトン……。心地よい振動に揺さぶられながら瞼をゆっくりと開く。
「あれ?寝ちゃってたか……」
目を擦り、意識を回復させながらさっきまでの記憶を思い出す。
「えっと……確か……」
確か、俺は房総の方に一人旅にきてて、それで……あぁ、そうだ。列車に乗ったんだ。それも1時間に一回しか来ないあれに。それで、入ったら思いの外太陽の日差しが暖かくてそれで……
そこまで思い出した所で俺は「あ!」と気づく。
「……ここ、何処だろ」
俺は顔を上げて扉の付近を見る。大抵の場合、ここら辺に路線図があるはずなのだ。
「あれ、ない?」
そこにあったのは一つの広告用のドア横ポスターのみで、路線図なんて最初から無かったかのように消えていた。
「あれ?変だな……」
俺がきた時にはあった筈なのだ、東京のとは打って変わってとても見やすい路線図が。
「怪奇現象……いや、あのポスターと路線図を見間違えたのかもしれないな。」
ポスターに目を向ける。ポスターは結束バンドの広告のようで、多くのケーブルを一つに纏めている結束バンドの写真が写っており、大きな文字で自己修復機能付き、今だけ限定880円と書かれていた。
「あ〜、確かにこのポスターなら勘違いしてもおかしく無いか……」
って、そうじゃ無いだろ!何だよ自己修復機能付きって!いらないだろ絶対に!しかも880ってぼったくりかよ!定価の2倍よりも高いぞ!?
「はぁ……」
無意識にため息が漏れる。心の中でポスターにツッコミを入れすぎたせいか、かなり疲れてしまった気がする。
「結局、ここ何処だ?」
ズボンのポケットに手を入れ、スマートフォンを取り出す。路線図がないならスマホを使えばいいと考えたのだ。と言うか最初からそうすれば良かったのかもしれない。
「うわ〜、圏外になってるよ」
スマホの画面を触って確認すると左上に圏外と表示されていた。こうなってしまうともう携帯電話としての価値はなくなる。使える機能は時刻の確認とカメラのみだ。
「外は…………は!?」
近くに電波塔が無いのは分かっているが、それでも他の人と出会う為の手掛かりを見つけなければ。そう思い、窓の外を見てみると俺は固まった。
「何で、大都会が見えるんだ!?」
視界に入るそれは大都会。例えるならば東京だ。房総に住んでいる方々にはとても失礼だが、田舎の方にこんな大がつくほどの都会があるとは思っても見なかった。
「………すから………大せ…………選択……」
俺が外の景色に夢中になっていると、ふと声が聞こえてきた。
「人の声?」
景色に夢中になっていたが、ここは列車。公共の場である以上、人の目があるのを忘れていた。
「大人としての…………義務…………………」
また声が聞こえてきた。多分声質からして同じ人が喋っているのだろう。
「……すから、先生。」
再び、同じ声。これが田舎特有の人がいない電車と言えども流石に喋りすぎでは無いだろうか。
「流石に、注意しに行ったほうが良さそうだな。」
俺も一応、ルールは知っている。これでも一学生。注意しに行かないほうが学生としては終わっているだろう。まぁ、
声の主に注意する為、座席から立ったものの、ここから列車内を見渡す限りでは人の1人もおらず、その暖色の座席が哀愁を漂わせていた。
「あれ?いない?」
「この捻れて歪んだ……」
被せるようにして、また声が聞こえてきた。恐らく声の音がした方向的に隣の車両からだろうか。
声の聞こえてきた方向へと、足を赴き。ゆっくりと隣の車両の扉を開ける。
「選択肢は……きっと見つかるはずです。」
予想は合っていたようで、声がよりクリアに、より鮮明に聞こえてきた。声の主は女性だろうか。
足を進める速度を少し落としてゆっくり声の主に近づいていく。
「だから先生、どうか……。」
女性の青色の髪が見えてきた。太陽の光が反射しているのか少しピンクがかった部分もみえる。頭には何かが浮いているように見える。装飾品だろうか。
「ちょっと、君、声が少し大きい……」
そう言うとその女性は驚いた表情でこちらに振り向いた。そして、目と目が合う。俺も同じく驚いた。俺は声の主、その人物を知っていたのだ。
「貴方は……何故ここに……」
「何でお前がここに……」
それもゲームの世界で。
「……連邦生徒会長」
某透き通るような世界観で送る学園RPGの謎大きキャラクター【連邦生徒会長】その人が、目の前にいた。