この世界、全然透き通った世界観で送る学園なんかじゃねぇ! 作:気分屋「星七」
大事なことなのでもう一度。第3章から繋がるのは重々承知しています。
「はぁ…………はぁ…………」
無闇やたらに走り続ける。あまりに走り過ぎた為か脇腹がかなり痛くなっており、息も乱れている。
あの時、あの場所で見た手紙はアビドスに向かうとの旨が書かれていた。それも、よりにもよって
「クソっ……!!」
今の見た目になってから初めて汚い言葉を使う。今の見た目になってから使いたくなかったが、本当の自分が声を出している気がする。
「右……!」
本来であれば、電車に乗った方が早くアビドス自治区付近に着くだろう。だが、スマホも無く、方向音痴の俺からしたら走った方が圧倒的に良い。きっと、迷子になってしまうからだ。それに、今の身体なら全力を出せば車と同じ速度で走れてしまう。……神秘の量にもよるのだろうが。
「あれ……は…………!」
目の前に見えるショッピングモール外周の床にアビドスの象徴とも言って良い
「こっちに…………曲がれば!!」
砂の飛んでくる方向へと曲がり、アニメやゲームで見た事のある場所に辿り着いた。
「はぁ…………はぁ…………」
「やっと……ついた……」
D.U.を走って幾星霜。ゲヘナ、ミレニアム等、関係のない自治区に迷いこむ事もあったが、何とかアビドス自治区(カイザー所有地)まで辿り着く事が出来た。
「……急が……なきゃ」
人間としての本能からか、身体に埋め込まれた全内蔵達が、「これ以上はダメだ」と、俺を引き止めようとしてくる。だが、一歩、また一歩と足を動かしていく。
俺は知っているのだ。ここでの最初の被害者は先生である事を。そして、その先は
「…………あがっ!!」
砂に足を取られて盛大に転ぶ。走るのをやめたせいか、転んで足が止まったせいか、足にどっと疲れがやってきた。……いや、足だけじゃ無い。内蔵もだ。
「ゴホッ…………ゴホッゴホ……」
咳が止まらない。それに、脇腹がすごい痛い。口はもう血の味しかしない。まるで身体の内部でデモが起きている様だ。
「ゴホッ…………エホッゴホッ…………」
「……スゥゥゥ…………」
一時、咳が止まったタイミングで大きく息を吸う。そして、吸った分を大きく吐く。
「……ゴホッ…………はぁ……」
体内デモが収まり、息が整っていく。たまに咳き込むが、そこは誤差だろう。
「……それにしても、ゴホッ……アビドス高校はどこだ?」
辺り一面のビル群それと道路、歩道に広がる砂景色。一枚絵で見た事はあってもそれからアビドス高校へ繋がる道がわからない。こういうのは俺の唯一の弱点と言っても良いだろう。
少し息を整え、ガードレールに手をかける。立ち上がった時に気づいたのだが、足が鉛の様に重い。
「ちょっと……聞き込みするか……ゴホン……」
「えっと、すみません。」
近場にいた、チワワの様な可愛らしい見た目をした人に話しかける。
「ん?何かようか?嬢ちゃん。」
嬢ちゃん?あぁ、そう言えばそうだ。今の俺は私であり、女だったんだ。忘れていた。
「あの……アビドス高等学校って何処にありますか?」
「アビドス高等学校…………あぁ……あれか……、それなら私よりも、向こうの案内板を見るといい。」
チワワさんは建物の手前にちょこんと立っている案内板を指差す。
「聞きたい事はそれだけかな?私はこれから用事が入っているのだが……」
「あぁ、すみません。聞きたい事はこれだけです。教えてくださりありがとうございました。」
「…………」
私が深くお辞儀をすると、チワワさんは何も言わずに立ち去っていってしまった。もしかしたら、相当急いでいたところを止めてしまったのかもしれない。
「アビドス高校は……あと4km奥の方か」
意外と近くにあることを知った私はガードレール沿いに歩き始めた。
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「………………」
見渡す限り全てが軍事基地。砂の量も先程とは比べ物にならないほど増えている。
「うん、迷った。」
私にアビドスは苦手だ。ただでさえ方向音痴なのに、砂嵐に襲われては、何処かわからなくなってしまう。現に、今さっきもちょっとした砂嵐に襲われて方向感覚が失われてしまった。
「一応、体感3kmは進んだ筈なんだけど……」
足も走れる様になってはいるが、誤った方向に走る訳にも行かず、立ち往生する羽目になってしまった。
「う〜ん……誰か〜!!助けて〜!!」
人影は見ないが、ここは軍事基地。人の10人や50人くらいいるだろう。
「お〜い!!…………うわ……」
1人、大声を出していると、基地の少し広めのテントから人が出てきた。だが、出てきた人はヘルメット団員だった。軍事基地、少し警戒するべきだったな。
「何だおまえ?うるさいぞ!入り口にあたしらに依頼があるなら向こうの掲示板に貼れと書いてあっただろう!!」
「あの、違うんです。砂嵐に巻き込まれて迷子になってしまって…………」
「アレで迷ったか…………そうか……そうか!!」
そのヘルメット団員は自分で何かを理解すると、「今は、人も少ない……だが……」などと1人でぶつぶつ言い始めた。
私は嫌な予感がして足音立てずに後ろに下がる。
「あはは……ごめんなさい。すぐ出て行きますから……」
じわり、じわり。バレない様に足を動かして下がっていく。今、面倒ごとに絡まれてる時間は無いのだ。
「ん?何で下がってるんだ?」
やばい、バレた。
「いや、下がってなんか無いですよ……あはは……」
「お金次第で、道案内してやろうと思ったんだが……」
ピタっ。後ろに下がっていた足が止まる。
「本当ですか?」
「まぁ、
明らかにぼったくる気満々だが、アビドスに送ってもらえるならそれでもいい。たとえ、今の全財産がなくなったとしても。
「今、一応手持ちで3万円持ってます。」
「そうか、なら3万ピッタリで道案内をしてやろう。」
「じゃあ、それでお願いします!お金はついてからでもいいですか?」
「勿論いいとも。」
よし、騙されやすい馬鹿の真似、成功だ。これでスムーズにアビドス高校に向かう事が出来る。
「それで……何処に案内すればいい?」
「
「………………アビドスだと?このタイミングに?」
再び、そのヘルメット団員はぶつぶつ考え始めると、ポケットに手を入れ、何かを取り出す。そして、それに話しかけるとこちらに銃を突きつけた。
「まさか……変装までしてあたしを連れ出し、人質にしようなんてな…………」
「え?何のこと?」
「とぼけるな!!ついさっき、アビドスに向かったうちらの部隊を壊滅させただろ!!」
「あ…………」
別に私が何かした訳じゃ無いが何となく察せた。恐らく先生達がカタカタヘルメット団を追い返した後、追撃をする前の時間に私はこいつらのアジトへ来てしまった訳だ。確かに、今アビドスに道案内してほしいとか、罠でしか無い。
「…………面倒事は避けたかったんだけど。」
このタイミングに私がここに来たことで、アビドス高校は人質作戦を行う学校なんて不名誉な噂がたってしまうなんて事は避けなくてはならない。絶対に。
ポケットから銃を取り出す。取り出したのは初心者向けのハンドガンの方だ。
「…………先生が無事そうなら時間はあるよね」
取り出した銃を相手に突きつける。
「障害物は排除させてもらうよ」
相手と同時に引き金を引く。私のハンドガンに比べ、敵はアサルトライフルを使っており、弾速は相手の方が早い。視線を動かして、弾が見える事を確認し、わざと腕を腕を前に出しあたりに行く。
「あは!これで正当防衛、成立だ!!」
次に自分の撃った弾が相手の頭部に命中する。だが、1発程度じゃ、相手は何の変化も見せない。そこまで痛くはなさそうだ。
「これならどう?」
一度目の弾が当たった場所と同じ場所めがけて、2発目、3発目と弾を撃っていく。
「…………」
しかし、かろうじて当たったのは2発目だけで、3発目はヘルメットをかするだけだった。やはり、同じ速度で動く的では無い、初めての銃を使った対人戦。そう上手くは行かない様だ。
「調子に乗るといけないよな。」
弾が当たらなかった事もあり、
「っな!?……近寄ってくるなぁ!!」
「そんなに乱雑に撃ったら当たらないって……」
サッサッと弾をかわし、敵との距離を0mまで縮める。そして、相手が近接戦の構えになる前に足払いを決め、相手のバランスを崩した。
ドサッと音がして、相手が地面に倒れ込む。隙を与える暇なく銃を取り出して、先ほどの位置に6発一気に撃ち込んだ。
「よし、これで終わ…………っ!!」
パキリと相手のヘルメットが破壊された事を確認したその時、何処かからパァンと銃声がした。慌てながらも咄嗟に後ろへと飛ぶ。
「予想はしてたけど、やっぱり敵は1人じゃ無いよね。」
先程自分がいた位置に弾が飛んできているのを見て、咄嗟に下がって良かったと安堵する。
だが、敵の量には安堵できない。気付かぬ間に敵の増援が来ていた。見える範囲で目の前に10人。後ろに5人。左右にスコープの光が二つ。計17人と言ったところか。
「ま、全力を出すとしますか……!」
今持っている銃を元の位置にしまい、胸ポケットからもう一つのハンドガンを取り出す。この銃は手動で安全装置を外さないといけないらしい。だが、大丈夫。この銃は最初から撃つ気などないからだ。
「1!2!3!……」
あえて敵に接近し、銃の持ち手の部分で思いっきりヘルメットを叩き割る。案の定成功したが、これなら前回よりも力を入れずに相手を無力化出来ると思ったのだ。ガスマスクっぽい仮面をつけているやつも同様にぶち壊していく。
「……12!13!15!」
地上にいる奴らはあらかた無力化させることに成功した。途中から、「シャーレの!!」とか、「ゴリッ…!」とか、言う奴もで始めたが今は静かにしてくれているので助かる。だが……
「ああっ!!むかつく!!」
左右からのスナイパーの弾は永遠に飛んでくる。かわし続けてはいるが、すごくうざい。あいつら仲間に当たる危険性も考慮しろよ!!
「この銃は使いたく無かったけどやってやるよ……」
「確か……説明書には…………ここか……」
手動でトリガー近くの安全装置を外し、1発真上に撃ってみる。パァン!!。さっきガンショップで聞いた音がリピートされた。
「まずはお前だ。」
スナイパーの弾をサッと避けると右のやつから狙って撃つ。少し待っても弾が飛んでこなくなった事を確認すると、次の敵に標準を合わせる。
「次にお前だ。」
少しカッコつけようと、飛んでくる弾に弾をぶつけて、被弾を回避する。そこからの倒し方はさっきと同じで、スコープの光に向けてデザートイーグルを撃ち込んだ。再び同時間待って、相手の弾が飛んでこなくなった事を確認する。
「……やっぱ、手応えが無い。近接戦をしすぎて感覚がバグったか?」
敵を殴ったりしていた右手をグーパーして、感覚を確かめる。特に変化は感じられない。
「増援も無さそうだし、これで全員か?」
目の前に広がる奴らを再び確認すると後ろから声がかかった。
「うへ〜まさか、先客がいるとはね〜。」
おいおい、この声はまさか、あのピンク髪じゃあないのか!?
声のした方に急いで振り向く。見えるシルエットは4人。それとドローンが一機。
「まさか──!?」
「こんな所で何をしてるのかな?ゴリラちゃん?」
「え?」
小鳥遊ホシノを筆頭にアビドス対策委員会の面々がそこにいた。