この世界、全然透き通った世界観で送る学園なんかじゃねぇ!   作:気分屋「星七」

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いざ、キヴォトスへ!

 

 はぁ……、最悪だよ。どうしてこうなった。

 

 目の前で行われている光景を見て、少女からため息が漏れる。

 

 右手左手をグー、パーしても慣れない感覚。喉に生じる謎の違和感。掴めない身長の感覚。

 

「どうしてこうなった……どうしてこうなった!どうしてこうなった〜!!!」

 

 その少女の悲痛な叫びは誰に届くこともなく目の前で行われているそれに打ち消された。

 

─――――――――――――――――――――――――

 

 時は遡る事、1時間前……

 

「何でお前がここに、……連邦生徒会長」

 

「私の事知っていましたか……」

 

「勿論知っている。その上で何故ここにいるのか問いたい。」

 

 ゆっくりと気持ちを落ち着かせながら問う。正直に言って、今、とても困惑しているのだ。何故、連邦生徒会長がここ(現実世界)にいるのか。

 

「……わかりました。では、まず身の上話といきましょうか。」

 

 そこから、連邦生徒会長の長い長い話が始まった。自分は元々この立場に就くような人物では無い事や、キヴォトス外からきたオーパーツを使用して、()()を積んできた事。最終的に経験では、いや、自分では救えないものが合った事などなど。

 

 そこから一時間弱。連邦生徒会長の話は「だから、私はここにいるんです」と言って終わった。

 

 いや、そうじゃ無い。別にここ(列車内)にいる話を聞いたわけじゃ無いんだが。ここ(現実世界)に何でいるのか聞いただけなんだが。

 

「いや、そうじゃなくて……何で連邦生徒会長がゲームの世界じゃなくて現実世界にいるのか聞きたかったんだが……」

 

「ゲーム?現実?何を言ってるんですか、貴方は。」

 

 何だ?何かが引っ掛かる。

 

「なぁ、話変わるけどさ、これは、この列車は房総のあの秘境が始発だったよな……」

 

「房総って何処ですか?始発は知りませんがこれはキヴォトス行き…………っ!まさか貴方、楽園からの追放者ですか!?」

 

 あー、点と点が繋がった。多分()()()()()なのだろう。

 

「あー、うん。そうみたい。」

 

 エデン条約編のセイアの台詞を思い出す。確か、キヴォトスの人々の原初は楽園からの追放者だとか何とか言ってたな。もしかして、俺が勉学が嫌いだからと言う理由で学生の身分をほっぽり出して家出したのが関係しているのだろうか。

 

「はぁ……大変な事になりました。」

 

「大変?」

 

「はい。このままでは確実な未来(ハッピーエンド)が崩されかねません。」

 

 あ、と思い出す。今さっきまで、連邦生徒会長が誰かに何かを言っていた意味を。ここはブルアカのプロローグなのだ。それも正史のブルアカの。

 

「あー、なるほど。(不確定要素)がいると結末が変わる。バタフライエフェクトが起きるわけだ。」

 

 連邦生徒会長は何かを思い出したかのように顔が曇っていく。

 

「はい……。それに貴方が自分から楽園を抜け出したのならともかく、楽園側からの追放ですので。キヴォトス行きは決定してしまっています。」

 

「でも、止められないと……」

 

 うーん、どうしようか。俺が家出したばっかりに多くの推しに迷惑をかけかねない状況になっている。現に連邦生徒会長にこんな曇らせ顔をさせてしまっている。うーん。

 

「キヴォトス行きは決まってるとして、その世界線は決まっているのか?」

 

「それは……分かりません。……ですが、これを使えば何とかなるかもしれません。」

 

 連邦生徒会長は胸ポケットから例のものを取り出すと俺に渡してきた。

 

「こ、れは…………。」

 

 それは何度も見たことがあった。何なら重要な場面で使ったことすらあった。

 

「これは()()()()()()です。」

 

「…………何故。連邦生徒会長がこれを?」

 

「多くの人を救うのに必要でした。……まぁ、結果的に私はもうこれを使えなくなってしまったのですが。」

 

「使えなくなった、と言うのは?」

 

「これを使うには代償が必要なんです。大人の場合には生と時間を。子どもの場合には経験、またはそれと等しく重要な何かを。」

 

 ハイリスクハイリターン。そんな言葉が頭に浮かぶ。要するに大人が使えば、代償ありの強いアイテム。子供が使えば、人生の全てを破壊しかねない代物なのだろう。

 

「そして、自分自身のほとんどを代償にして…………先生に託したのでもう、払える代償がないんですよね。」

 

 恐らく、今の間は…………いや、何でもないか。

 

「じゃあまだ、俺なら使えるわけか。」

 

「はい、そういう事です。」

 

「なら話は早いね。」

 

 黒いそのカードに願いを込めて目を閉じる。実際、代償が何なのかわからない。それでも、自分のせいで推しが傷ついてしまうのは絶対に嫌だ。

 

「えっ!?あの!使うの早くないですか!?そんなに考えなしで使ったら後悔しますよ!」

 

 連邦生徒会長のパニックになったような声が聞こえてくる。でも、残念ながら止める事はできないみたいだ。手にもっているその黒いカードが瞼越しに白く輝いて見えるのだから。

 

「……あの……聞こえて…………」

 

 だんだんとその声は遠ざかっていく。ブルアカのプロローグでは夢オチみたいな感じで始まったが、俺の場合もそうなのかもしれない。そして、俺は暗いくらい闇の中に意識を放り投げた。

 目が覚めると現実世界……なんて事は無く。目の前には見覚えのある生徒と見知った敵モブ。それに、危ない銃器があった。

 

「ん?あれ?ここどこ、戦場?」

 

 まるで戦いが繰り広げられる3秒前。見たいな瞬間に目覚めてしまったわけだが……。どうなるかは想像につくよね。

 

 "皆んないくよ!"

 

 遠くからそんな声が聞こえてくると、見知った奴ら全員が銃撃戦を始めた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

 …………そして、今に至ると。

 

「いや、本当にどうしてこうなった!!」

 

 大声をかき消す終わらない発砲音に弾丸の雨。そんな戦場の真ん中にいる俺。しかも、俺の位置が悪いせいで皆んなの囮になってるんだけど!!うわっ!危ないって!

 

「声おかしい!何だこれ!」

 

 喉が変なのだ。渇いたとかそう言うのじゃ無くて、なんか違和感を感じる。何なら声高いし、おかしいって。

 

「おら、くらえ〜!!」

 

「ヘルメット団が1人に群がんなって!……いや、群がるか。」

 

 慌てながらも、弾を回避して、回避して、回避して、あれ?当たんなくね?

 

「おいおい、当ててみろって!」

 

 う〜ん、挑発はしたものの、俺の体力も無限にある訳じゃ無いしこのままじゃジリ貧だ。援護射撃の一つでも欲しいのだが…………おや?青髪のあの人はユウカ早瀬さんじゃ無いですか!

 

「おーい!!」

 

 推しの顔を見れてちょっと笑顔が隠せなくなってきたかも……やばい、推しにこんなキモい顔見せたく無いんだけど……

 

「目標捕捉。逃しません。」

 

 ん?今なんか聞き覚えのある声が…………あがっ!

 

 ヘルメット団とは別の方向から飛んできた弾がおでこにクリーンヒットする。俺はそうして再び意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 





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