この世界、全然透き通った世界観で送る学園なんかじゃねぇ!   作:気分屋「星七」

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ようこそ、絶望しかない世界へ!

 

「……ぅ……ぅう……ん?」

 

 何度目かのお目覚め。パチクリと瞼を開き意識を目覚めさせる。視界には真っ白なタイルで出来た天井が目に入る。

 

 おっと、このパターンは必ず言わなければならないじゃ無いか。

 

「知らない天井だ……」

 

 その声は無音の部屋に寂しく消えていく。

 

「こう言う展開って基本横に誰かいない?」

 

 誰もノリに乗ってくれなかった悲しみから1人、愚痴をこぼす。しかし、その愚痴もまた部屋の中に寂しく消えていくだけだった。

 

「う〜ん、とりあえず記憶の整理を行おう。俺はどうしてここに寝てたんだ?」

 

 意識を失ったのはあの戦場ってのはわかるんだけど……一体何が原因で意識を失ったんだ?確かヘルメット団を煽って……それで……それで…………うん。思い出せないわ。

 

 まるで何かに記憶をブロックされているかのようにその記憶だけ出てこない。と言うか、思い出そうとすると頭がすごい痛くなるから思い出せない。

 

「はぁ、でもここがキヴォトスなのは確実か。」

 

「ちょっと部屋の外でも見に行こうかな?」

 

 右足、左足の順番で自分の寝ていたベッドから足を下ろす。足が地面につくと全身を前に起こし立ち上がった。

 

「う、ちょっと立ちくらみが…………」

 

 視界の縁からじわじわと暗くなっていく。咄嗟に壁に寄りかかったので、何とか体のバランスを保つ事ができ、倒れる事は防げた。

 

「…………ふぅ。」

 

 視界がだんだんと明けてきて暗闇が消え去った事を確認するとため息をつく。同時に壁から体を離し、歩き始めた。

 

「ここはメディカルルームだろうか。」

 

 既視感のあるベッド、その周りのカーテンを見て言葉が漏れる。それは元の世界の保健室でよく見たものだった。

 

「やっぱり返答者はいないよね……」

 

 とりあえず、ジャッとカーテンを開けて周りを確認する。部屋の内装はシンプルなもので、扉にベッドにカーテン。ついでにちっぽけなデスクと大きな姿見が目に入った。本当に保健室に居るみたいだ。

 

「扉の方には必ず行くとして……、やっぱり自分の身体の異変は気になるよね。」

 

 俺は扉を横目に、身長2mでも全身が映るほど大きそうな姿見に近寄っていく。

 

「え…………だれ?この美少女……あれ?俺?」

 

 姿見に映るその姿はキヴォトス人特有のアレ(ヘイロー)がついた、美少女で。髪の毛は薄く金髪。顔はシュッとしていてクールな印象が見られる。身長は体感的に元の176cmから-20cmしたような感じだ。あくまで感じなので正確にはわからないが……。

 

「え、何でこんな見た目になった?……あ」

 

 声を出した事で気づく自分の声の変化。今の声は元の俺とは全く違う声になっており、あの時叫んだ声と一致する。残念ながら衣装は元々着ていた俺の服なせいで、見た目はかなりダサくはなっているものの、顔といい声といい、全体的な可愛さでプラスマイナス0だろう。

 

「うーん、わからないな……」

 

 とりあえず、考える事はやめて自分の可愛さに見惚れるとしよう。まずは、可愛げのあるポーズをとってみる。うん。可愛い。次に、ポケットに手を突っ込んでちょいとワルなポーズをとってみる。うん?何か手に当たったな。

 

 手に当たったそれを掴んで目の前に持ち上げる。

 

「は?何でこれがここにあるんだよ。」

 

 その黒い見た目のそれはどこからどう見ても大人のカード(譲り物)だった。

 

「いや、よくよく考えればそうか。一度使って消える物じゃ無いよね。」

 

 一度使って手元から消えた方が不自然だ。だからと言ってポケットに入っているのは不自然なのだが……。

 

「でも、この身体になった理由が分かったし良いか。」

 

 多分ではあるのだが、俺の身体と服以外の所持品を代償に辿り着く世界線を変えたのだろう。そんな物で辿り着く世界線を変えられるのか?とも思ったが、元の世界の事が入ったスマートフォンやキヴォトスに先生以外に見たことのない人型の男の身体など貴重な物が無くなっているし、つまりはそう言うことなのだろう。

 

「それじゃ、外に向かうか。外に行かない限り何も始まんないしね。」

 

 歩いて扉の前に行き、開けようと扉に触れたら勝手に動き始めた。

 

「うわ、すご……半自動ドアとか金かけてるな…」

 

 ウィーンと音がして扉が開く。

 体感的に保健室に居る気分だったので、すごいと思ってしまった。扉は横に開ける物と言う固定概念が脳に染み付いていたのだろう。

 

「へー廊下は白と青色っと…………連邦生徒会か?」

 

 廊下の寒色を使っているのは確か、連邦生徒会とミレニアムだけのはずだ。俺の気絶したであろう場所的に連邦生徒会のはずだ。

 

「えーと、地図とかないかな……」

 

 何にしろ地図を探さないと今の自分の居場所がわからない。もし、ここが願った通りプレナパテス世界線だったのなら早く先生に会わなければいけないのに。えっ?もうあったじゃないかって?一方的にこっちから見えてたからノーカンで。

 

「地図…………地図…………地図…………ふがっ!?」

 

 廊下のちょうど曲がり角に差し掛かったところで誰かにぶつかってしまった。

 

「す、すみません……」

 

"ごめんね。大丈夫かな?"

 

 な!?せ、先生!?何故?

 

 "ビックリさせちゃったかな?"

 

「い、いえ、大丈夫です……」

 

 あ、あぁ、連邦生徒会が関わる建物で、先生がいる。何となく分かってきた。ここはきっとあそこなのだろう。独立連邦捜査部、シャーレなのだろう。

 

 "私は独立連邦捜査部、シャーレの先生だよ"

 

 ゲームでしか見たことのない台詞を実際に言われるとちょっとじんわりくる物だ。例えるならば漫画の台詞がアニメで詠まれた時に感じるアレと似ているだろう。

 

 "そう言えば、もう怪我は治ったのかな?"

 

「怪我?何のことですか?」

 

 "ほら、ここの怪我だよ。"と言って先生はおでこに触ってくる。どの世界線でも先生のセクハラ癖は治らないらしい。

 

「おでこに怪我?ごめんなさい。記憶にないです……」

 

 "ハスミに撃たれたんだよ。記憶にない?"

 

「ハスミ?……あぁ……」

 

 だんだんと失った記憶が戻ってくる。そうか、撃たれたのかハスミに…………ハスミに!?

 

「何でおr……ッエフン、私が撃たれたのですか!?」

 

 危ない、危ない。今の俺は美少女なんだ。それも俺とか言うのは似合わなそうなそんな美少女なんだ。頑張って第一人称私を定着させていかなければ。

 

 "いや、彼女達に悪気は無いよ。強いて言うなら私の指揮ミスかな。"

 

「指揮ミス?」

 

 先生に限ってそんなことする訳ないと思うのだが……、もしかして、プレナパテス世界線だからこう言うこともあるのか?

 

 "うん、弾丸に撃たれながら笑顔で向かってくる人がいたら恐怖を感じるでしょ?"

 

 [悲報]全て俺のせいだった。って!いやいやそうじゃないだろ!

 

「何で、大方私のせいになってるんですか!」

 

 "あはは、嘘だよ。正直に言えば、怪我を少なく無力化させるためかな"

 

「無力化?」

 

 "うん、君の後ろの方に強い子がいたからね。銃撃戦になったら巻き込まれちゃうでしょ?"

 

 "だから、ハスミに弱めの威力で撃ってもらったんだけど…………"

 

 まぁ、理由も通ってるし、先生は悪くないのかも。ただ、一時的とは言え記憶を失う程の威力って何なんだ?

 

 "銃って弱めに撃っても威力変わらないの忘れてたよね。"

 

「おい!納得しかけてたのに一気にダメになったぞ!」

 

 "本当にごめんね。すごく反省してるよ……"

 

 目の前で先生が頭を下げた。普通だったら当たり前だと思うのだが、なんか先生が、それも未来のプレ先がやるとかなりの罪悪感が襲ってくる。

 

「あ、あの!お……私、許しますよ。先生の事。」

 

 "本当に?私としてはどんな事でもする予定だったんだけれども……"

 

 何でも!?いや、本当か?実際ゲームではクレジットが死ぬほど集まったが、こっちの先生がそうだとは限らないし……と言うか、就任したばっかで給料すら貰えてない状態なんじゃないか?まぁ、それはそれとして……

 

「何でもって本当ですか?」

 

 "私に出来る限りのことはだけどもね。でも、もう許されちゃったしなくても良いよね。"

 

「私、先生の事まだ許してませんよ?」

 

 唐突に許した宣言を手のひら返ししたが多分先生なら圧かければ通るだろう。

 

 "いや、でも……さっき許したって……"

「言ってませんよ?」

 

 先生は自分の左手の方を確認して、今は何も持ってない事に気づくと、がっかりした様に見えた。

 

 "…………分かった。大人に二言は無いよ。じゃあ、何をすれば良い?"

 

「………………」

 

 そこで俺は固まる。大抵の人は皆この場面で固まるだろう。何故ならば、そう、何でもって言われると何が欲しいのかしたいのか、わからなくなってしまうのだ。現に私が陥っているのもこの状況である。

 

「えっと…………じゃあ…………じゃあ…………」

 

 脳をフルで稼働させる。何か全てを凌駕する様な選択はないのか、それが正しいと本当に思える物はなんなのか、それを必死に考える。

 

「服は…………確かにありだ。でも……いや、うん。そうした方がいいかも」

 

 "それで結局、何をして欲しいんだい?"

 

 服が欲しい。そう言おうと、先生の顔を見る。多少の緊張を抑えるためにズボンのポケットに手を入れた時にそれに触れた。

 

「あ……これは……」

 

 それに触れた時、自分がこの世界を救えなかった時にどうなるのかそんなバッドエンドが脳裏をよぎる。あの時、ゲームで見たシロコの絶望した顔、色彩によって終焉しか生まれなかった残酷な世界。そして、生徒は頼みましたと言うあの先生の一文(最後の願い)。その全てがこの世界で起こったその全てが発祥だと、自覚する。

 

 服なんて陳腐な物ではなく、選ぶ選択肢はこれだろう。大人のカードに触れた瞬間から、その選択肢は出てきた。否、その選択肢しか存在しなかった。

 

「…………それじゃあ、私は……シャーレに所属したいです。」

 

 目の前で先生を守り、生徒を守るため。あの絶望を、あの悲劇を、二度と見ない、起こさないためにも。そして、推しに傷一つすら、つかせないようにするためにも。

 

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