この世界、全然透き通った世界観で送る学園なんかじゃねぇ!   作:気分屋「星七」

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 閑話出すの遅くない?って思った皆さん。すみません。名前考えてたら時間が溶けていきました。






閑話〈とあるヘルメット団の記憶①〉

 

 リーダーが新しい子を連れて来た。ただ、その子の雰囲気は異様で、光のない目。ボロボロになったトリニティの制服。その全てが、訳ありである事を物語っている。

 

「リーダー、その子は?」

 

「近くの路地裏でうずくまっていた所を拾った。」

 

「どうすんの?うちらも今日を生きるので精一杯なんだけど……」

 

「それに関してはあたしがどうにかする。」

 

 リーダーはあたしの発言に間髪入れずに言い切った。それほどに、その子に思い入れがあるのだろうか。

 

「それはわかった。……けど、リーダーはその子に何か思い入れでもあんの?」

 

「一応……な。あたしも辛い環境にいた所を元リーダーに救われた身だ。こいつも救ってやらないといけない気がしてな。」

 

「ふーん、そっか。」

 

 思い入れと言うにはあまりにも単純な理由で、少し後悔した。そして、その子に対する興味も、ゆっくりと冷めていっているのを感じた。

「ふぅ……。」

 

 今日もブラックマーケットでの仕事を終わらせて、アジトへ帰宅途中。今日はいつもと違う仕事にありつけて珍しく早帰り出来たので銃のメンテナンスと服装のチェックに時間を割けそうだ。なんて思いながら、長い道のりの末、玄関前に辿り着く。

 

「あれ、声が聞こえんな。誰かいんのか?」

 

 まだ、時間は17時を過ぎた辺り。普段、アジトに誰もいない時間帯。それにも関わらず、アジトの中から歌声が聞こえて来た。

 

「いや……敵か?」

 

 今日はあたし以外、皆おんなじ仕事に出ているので早帰りしているのはおかしい。

 うちらのアジトが治安維持隊にでもバレたのかと思い。銃を構えてゆっくりと玄関扉を開ける。ガチャリとドアノブが鳴るが歌声は止まらず歌い続ける。ドアノブを開ける音が聞こえていないのだろうか。

 

「いない……いや別の部屋にいるだけだな。」

 

 玄関内に入ると歌声がより鮮明に、より大きく聞こえてきた。玄関前でも聞こえてきた歌声。聞こえてくると言う事はそれ相応の距離で歌っている。そのように考えていたが外れていたようだ。

 声の大きさからして、恐らく玄関から廊下を右に行ってすぐ左にある部屋。アジト唯一の畳部屋から聞こえてくる事が予想できた。

 

 恐る恐る、声の大きくなる方へ銃を構えて廊下を進む。止まって仲間に連絡するなんて選択肢など存在していない。あたしがヘルメット団第七部隊で一番弱いのは理解しているつもりだが、メンタルまでは弱くないと、心の自分が、今の自分を否定し、頼る事を否定し、身体を前に突き動かす。

 

「…………すぅ……はぁ……」

 

 声の主がいるであろう扉の前まで辿り着くとその引き戸にゆっくりと手をかける。

 

「きっと大丈夫。どんな敵でもあたしならやれるはず。」

 

 そして、その手に力を入れ、引き戸を勢いよく開いた。

 

「だれだ!!」

 

 歌声の持ち主を見るより先に大きな声を出す。これは仕事で学んだ牽制術の一つでもある。

 

「…………ひっ!」

 

 声のした方、そこに銃口を向けるとそこには見た事がある奴がいた。

 

「何だお前か…………。ごめん、敵だと思った。」

 

「あ……あ……あぁ……」

 

 正体はあのリーダーが連れて来た子だった。そいつはかなり驚いた顔をして、こちらを凝視している。

 

「お前、喋れたんだな。」

 

 あたしがそう聞くと、心が落ち着いたのか、あたしと初めて会った時と同じ表情に変わった。

 

「……え……あ……うん。」

 

 やや喋り声がぎこちない。対人での話し合いに慣れていないのだろうか。

 

「………………」

 

「………………」

 

 気まずい。どうしたら話を広げられるんだ?うちは基本、仕事の話しかしないから、何を話せばいいのかわからないのだ。

 

「え〜と、お前…………さっきの歌、歌わないのか?」

 

「……もういい。」

 

「そっか……」

 

 あたしが切り開いた唯一の会話の切り札が一瞬にして消え去る。そしてまた、気まずさが訪れる。

 

「…………」

 

「…………」

 

「お前、名前は?」

 

「私の……名前。國司田 ナグサ(くにしだ なぐさ)……」

 

 このアジトにこいつが来てから早数日。モブAとしか見てなかったこいつにちゃんと名前がある事を知った。

 

「……終わり」

 

「じゃあさ、好きなものは何だ?」

 

「…………………………ない」

 

 自分がこの子に銃口を向けた手前、これからの関係の為にも適当に会話をしていく。驚かせた挙句に何もしないって言うのはしたくない。それをしたらあたしが自分(あたし)を嫌いになる。

 

 そして、その後も軽く質問をしたり、ここについてどう思うか聞いたり、逆に自分の自己紹介をしたりもした。

 ナグサは少し話し慣れたのか言葉が綺麗に紡げるようになっていった。だが、あたしが次の会話に持って行こうとしたら、ナグサが「まだ出て行かないの?」と聞いて来た。

 

「……わかった。じゃあ最後の質問だけさせてくれ。」

 

 コクリとナグサは頷く。

 私はナグサの言葉の意味が、早く出ていってほしい。だと思い。どうしても聞きたかった最後の質問をすることにした。

 

「ナグサはここに来る前、何があった?」

 

 ヘルメット団は仲間意識を高めるために、自分の過去を話すのが通過儀礼みたいになっているが、ナグサのだけは誰からも聞いていない。そのせいか、存在すら忘れていたまである。

 

「…………私は……」

 

 ナグサは少し考え込んで、また答え始めた。

 

「……親が……いない。……殺された。…………いや、私が殺したの。」

 

「な……」

 

 衝撃のカミングアウトに表情が固まった。部屋がじんわりと冷たくなって行くのを感じる。話し始めてから、気のせいか、ナグサが若干涙ぐんでいるように見える。

 

「……私がトリニティに……行こうと思わなければ……私が……」

 

 ナグサがそこまで行った所でガララと引き戸が音を上げた。

 

「おい、お前……何してる?」

 

 リーダーの声だ。一度聞いただけでわかる。

 

「あたしはこの子と話してたんだ。」

 

 振り返って、リーダーの目を見て答える。リーダーは一瞬別の方向に視線を逸らすとまた視線を戻した。視線を戻した際、手に握り拳を作って震えているのが見えた。

 

「そうか……じゃあ何でナグサは泣いている!」

 

 リーダーは早歩きであたしに近づいてくると胸ぐらを掴んできた。

 

「……っく!」

 

「答えろ!!」

 

 胸ぐらを掴まれたまま、頬を殴られる。両手で胸ぐらを掴んでいる方の腕を掴んでいるので、そのパンチはストレートに決まり、激しい痛みに襲われる。

 

「…………やめて。」

 

「でも、こいつは!」

 

「この人は悪くない。逆に、優しい。」

 

 あたしとリーダーの間にナグサが入って、リーダーを止めてくれた。

 

「……分かった。」

 

 リーダーがそう言うとあたしを掴んでいた手を離してくれた。ただ、あたしはリーダーに相当怯えていたようで、離された瞬間にドサッと床にへばりこむ。

 

「……ただ、地雷を踏んだのも事実。」

 

「ってめぇ!!」

 その後、再び胸ぐらを掴まれたが全力の謝罪によって、2時間の拘束の末、解放された。

 

 ……もう、ナグサだけは泣かさないようにしようと心に刻みんだ。あたしのような悲劇が起こらない為にもアジトメンバー全員にナグサの事は伝えておこう。

 

 そして、ナグサがトリニティの制服を着ていた事。リーダーがナグサに異常な程過保護な事から、皆んなでナグサの事を()()と呼ぶ事になったのは言うまでもないだろう。

 







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 次回も閑話を書こうと考えていますが、気分の都合上、ストーリーの続編になるかもしれません。ご理解の程お願いします!
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