「砂上の遭難者たち」
「──ん…?あ……?」
意識が浮上する。
「ここ……何処だ?」
ジリジリと肌を焼く陽光と顔面を撫でる熱風の感覚により目覚めた俺は、うつ伏せで
「──浜じゃ……ない?ははっ……ここは鳥取砂丘だとでもいうのか?」
頭痛と日光に眩んだ視界が落ち着いた頃、ようやく周囲を見る余裕ができた彼が居た場所は彼自身の記憶にある場所──ではなく、全く見覚えのない見渡す限りの砂の世界の真っ只中であった。
「……良かった、水も食糧もある。それに拳銃……手帳……手錠に無線機……失くしたものは……無いな」
余りの事態に呆然としていた青い制服の男、その背中や胸元に「
「携帯はダメ、無線は……《聞こえますか本部、県警本部》……こっちもダメか」
ポケットに入れてあった液晶型携帯端末は電源こそ入るもの電波は入らず、防刃チョッキに付けたより強力な送受信能力を持つ携帯無線機であってもうんともすんとも言わない。押していた
「暑い……口がしゃりしゃりする……」
忌々しくも降り注ぐ直射日光を背に受けながらも、流れた汗を吸い肌に張り付いた制服と砂の感覚に顔を顰めつつ、ただ漠然と東を、人工物を求めて彼は歩き続ける。
「これは……線路……か?」
一体どれほど歩いたのか、幾つかの砂丘を越え忌々しい太陽が頂点から幾らか傾いた頃。砂漠の中で地平の先でキラリと光ったソレを目指し、そうして彼が見つけたのは傷みつつも確かにそこに敷かれた人工物、砂に埋もれた
そして、
「うぅ……」
「っ⁉︎誰だ⁉︎」
砂丘を浚った熱風の音と己の身体から滴り落ちた水滴以外、碌な音を耳にしていなかった彼の鼓膜に届いたのは何者かの息遣いの音。肉食の野生動物を警戒し、咄嗟に腰の拳銃ケースから拳銃──ニューナンブM60を取り出し構えた彼が振り向いたその先。
「動…いて、ないのに、暑……い……よ」
銃口の先、砂の丘の中腹に埋もれたソレ。砂嵐にでも遭ったのか、彼が最初に目覚めた時と同様かそれ以上にその半身を砂漠の砂に埋もれさせた水色とも緑色とも言える髪色の少女がそこにいた。
「だ、大丈夫か⁈君⁉︎」
慌てて構えを解き駆け寄った彼は、倒れた制服姿の少女──何やら頭に
「だ、れ?」
「俺は、警察だ。助けに来た!」
「けい、さつ……?」
助けが欲しいのは彼とて同じ、だがこの時彼の頭を占めていた思考は間違いなく「
「……流した汗の割に体温がかなり高い、重度の熱中症か」
砂に埋もれていたにしても肌に張り付く制服や砂には水気がほとんどない。にも関わらず平熱を遥かに超える体表温度と朦朧とした意識、目の前の彼女が重度の熱中症に罹っているのは、高度な医療知識を持たない彼の目からでも明白だった。
───すぐに病院に運ばなくては、だがどうやって?
砂漠のど真ん中で遭難中の今、病院に連れて行くどころか適切な処置すら彼にできるかも怪しい。窮地に立たされた彼らは、しかしそんな彼の目線はかろうじて少女が何かを伝えようとしている事に気付く。
微かに動いた唇の動き、声にならない声で紡がれたソレは──
たすけて
見間違えようもない。「助けて」とそう聞こえた彼は、市民を守る警察官として、1人の大人として彼が考える最も
「くそっ、クソッタレが……」
彼は拳銃を仕舞い、迷わず意識の朦朧とした少女を担ぎ上げる。
「そうだ。鉄路が敷かれているなら、その先は人が住める場所に繋がっているはず!なら病院だってあるはずだ!」
背負った少女と共に彼は、
踏み締める砂と枕木、焼けた鉄に誘われ進んだ果てしなき鉄路のその先に、果たして救いがあるか。それとも絶望か。
命懸けで生徒の生命を背負った大人が進むその先に、未来があるのだろうか。
果たして、