──首都D.U.暴動事件発生から3日目
同シラトリ地区第3業務地区幹線道路上
「状況報告」
連日の
「はい。装甲放水車1台に加え、不足人員補充の為、シラトリ支所より募った
初日と同様、指揮官であるおまわりさんの問いにカンナは答える。回数を重ねる毎に重武装化しつつある暴徒たち、未だ巡航戦車クラスの装甲戦力の襲撃こそ受けていないが、先の交戦での
「各戦線の状況は?」
「正面を守る管区第一・第二機動隊は装甲戦力を含む大部隊を相手に比較的優位に防衛できているとのことですが、その側面を守る第三・第四機動隊並びに我が隊を含む予備隊は全体的に劣勢。既に
RZ隊の状況も散々だが、それと同様かそれ以上に他の予備機動隊や比較的練度装備共に整っている筈の管区機動隊ですら激しい損耗に晒されている。ただそれでも、後退しつつも多くの部隊が未だ壊乱せず統制を維持し続けられるのは、間も無く到着するであろう「救援部隊」の噂と遊撃部隊として文字通り「不眠不休」で各暴動集団間の連絡線や補給線を撹乱し寸断し続けるSRT各小隊の活躍が大であった。
「……なお不確定情報ですが、近々足止めされていた救援部隊の到着と逮捕者より今回の暴動の
暴動の勃発より3日、 今や「首都D.U.治安維持戦争」と
《HQからRZ、SD隊支援に向かっていた戦闘ヘリがシラトリ区への
「バカな!
しかし状況はますますと悪化する。遂に恐れていた
「がっ⁈」
地平から放たれた閃光が盾を構えたRZ隊の頭上を通過する。明らかに携行兵器から放たれる銃弾よりも
そして──より最悪なこととして、頭上を飛び抜けた砲弾が建築物に直撃し飛散した瓦礫のひとつが
「き、教官!血がっ……!」
「ぐっ……大丈夫…だ」
破片の直撃により砕けたヘルメットのシールドの破片が、指揮杖を手に片膝を突いたおまわりさんの額から滴った流血とともに零れ落ちる。
「誰か……手当のできる者は……!」
「……そんなことは、今は、どうでも良い」
「っ⁉︎そんな、どうでも良くなんかっ」
「
慌てて駆け寄ったカンナ、動揺した彼女に対しおまわりさんは傷を抑えつつも冷静に指揮権を委譲しようとする。
「そんな、でも、私は」
「カンナ」
RZ隊にとって精神的支柱ともいえる存在の負傷にカンナだけでなく、展開中の部隊そのものにも動揺が走っている。ただでさえ戦車の相手は生身の生徒でも荷が重いというのに、敵を目前にしてこのままでは余りに無防備と言わざるを得ない状況で逡巡してしまった彼女の行動はまさに「命取り」に他ならない。
《HQよりRZ!識別標識のないヘリが1機、首都高射部隊の空域封鎖を突破しRZ隊に向かって飛行中!接触まで──速い、速過ぎる!既に上空です!》
「頭上にヘリ!」
「あれは……
そんな混沌とした状況で戦域に強引に突入して来たヘリが1機。連邦生徒会でもなければヴァルキューレでもSRTでもない、太陽の逆光を背に頭上に現れた見慣れぬ機体は部隊の直上で急停止しその機体を横に傾ける。
「あれは──クロノスだと⁉︎」
白亜の機体側面に描かれた校章は円に十字架を刻んだ紋章。対空砲火を突っ切って現れたのは戦場には似つかわしくない、クロノススクール報道部所属の報道ヘリであった。
「敵戦車次弾発砲!」
「っ⁉︎教官!」
唖然として見上げたカンナの耳に届いた「次弾発砲」との絶叫に、咄嗟に視線を戻しおまわりさんを庇おうとしたその時────
「させないよ!」
天上より舞い降りた、ひとりの少女が展開した盾が砲弾を打ち払う。
「くっ……キミは」
見覚えのある、水色とも緑色とも言える髪色の少女の背中に、おまわりさんは思わず自分の血で濡れたその手を伸ばす。
「アビドス高校生徒会長梔子ユメ、貴方の恩返しに助けに来ました。おまわりさん」
振り返った少女は、愛しむように微笑みとともにその手を両の手で包み込んだ。
「ホシノちゃん」
そして更にユメの背後にはヘリから垂らされたであろうロープを伝って降り立った、桜色の
「了解、……殲滅する」
颯の如く、駆け抜けてゆく少女。鎧袖一触とばかりにいとも簡単に生徒を、戦車を打ち砕く。
しかし、そんな少女の強さに感嘆の声を漏らす暇もなく、唖然とした彼ら彼女の耳に届いた無線からの声は「救援部隊の到着」という希望さえ掻き消しかねない更なる戦況の悪化──絶望を齎すものであった。
《緊急!緊急!緊急事態発生!メインストリートに展開していた
襲撃者は1名、超弩級多脚戦車を率いた────
百鬼夜行連合学院所属の「厄災の狐」!狐坂ワカモです!》