──首都D.U.暴動事件発生から6日目
ヴァルキューレ警察学校本校舎臨時治安対策本部総合指揮室
「全員揃いましたね?では、作戦を伝達します」
必要最低限の以外の照明が落とされたその一室にて、場所や面子こそ少し異なるものの、つい6日前と同様にたった1人の大人と幾人もの生徒たちが
連邦生徒会統括室次席行政官
連邦生徒会防衛室副室長
連邦生徒会交通室室長代行
SRT特殊学園FOX小隊隊長
ヴァルキューレ警察学校顧問 おまわりさん
ヴァルキューレ警察学校公安局局長
ヴァルキューレ警察学校警備局局長
ヴァルキューレ警察学校生活安全局局長
ヴァルキューレ警察学校交通局局長
ヴァルキューレ警察学校情報通信局局長
アビドス高等学校生徒会長
アビドス高等学校生徒会副会長
クロノススクール報道部部員
百鬼夜行連合学院陰陽部部員
百鬼夜行連合学院百花繚乱紛争調停委員会
大人が1人に、生徒が16人。
連邦生徒会やヴァルキューレ警察学校に加え、救援に来たアビドス高等学校とその
また護衛対象故に
「まず、状況を確認しましょう。──不知火副室長」
年頃の少女らが着ける香水でなく、血や
「はい、ではまず本件の主犯である「孤坂ワカモ」率いる
まず、カヤが解説し始めたのは先日遂に連邦生徒会より「叛乱軍」認定を受けた孤坂ワカモ率いる暴動集団の内訳について。
「戦闘ヘリやSRTの強行偵察により判明した敵軍の残存生徒数はおよそ2千、中核となる集団としてヘルメット団が4つにスケバングループが1つが確認されています。また彼女たちが保有する装甲戦力については
暴動への参加人数自体は連日連夜の各機動隊の献身と
「問題は──」
「──
そして、目下最大限の問題とは重武装化したヘルメット団やスケバンなどの有象無象の生徒たち───ではなく、本叛乱の首魁と目される孤坂ワカモと彼女が駆る超弩級多脚戦車であった。
「SRT特殊学園1年、FOX小隊隊長の七度ユキノだ。わたしたちも含め先輩方── SNAKE小隊とD-DOG小隊が交戦し収集した情報から判明した性能諸元について立体映像に投影する」
カヤの発言を引き継ぐ形で話し出したセーラー服姿の少女──七度ユキノは手元の端末を操作し立体映像をD.U.の地図から多脚戦車の立体図へと差し替える。
「アビドス南部に本社を置くBAWS社がミレニアムサイエンススクールと共同開発中の試作重多脚戦車「XMLT-J-048」。未完成ながらカタログスペックで全高18m、横幅34m、総重量100t超の怪物です」
巡航戦車を容易く粉砕可能な背負式90mmライフル砲と対生徒用の機関砲と散弾銃の火力
超重量を物ともしない、巡航速度60km/hを誇る機動力
四脚故の地形を選ばない走破性
ただの戦車が「陸戦の王者」ならば、この重多脚戦車は「陸の要塞」と称するのが相応しい。
「BAWSとミレニアムに問い合わせたところ、本件発生直前にミレニアム近郊の荒野にて各種性能評価試験を実施中、何者かによって強奪。ミレニアム保安部隊と
しかしそんな機体もミレニアムの地で何者か──おそらく孤坂ワカモ──の手により強奪、今や叛乱軍の尖兵として連邦生徒会に牙を剥いているのだから恐ろしい話である。
とはいえ、いつまでも多脚戦車にばかり注目を集めていられる状況でもない。続いて戦車と同じかそれ以上に危険な存在であるワカモについて、雪の様に白い着物を羽織った少女が発言する。
「百鬼夜行連合学院百花繚乱調停委員会の御稜ナグサです。我が連合学院の生徒である孤坂ワカモについて、我々調停委員会で把握している情報を共有します」
百鬼夜行連合学院
自治区中央に聳える神木を中心にかつて内戦状態にあった諸委員会や部活が連合を組むことで設立した連合学園であり、陰陽部は神事と政により自治区全体の勢力均衡の維持を、百花繚乱調停委員会は実行力で以って自治区内で発生したあらゆる犯罪と紛争の調停・解決を目的とした調停機関である。
そんな組織にそれぞれ属するカホとナグサだが彼女たちが遠路はるばる、遥か遠方に位置する百鬼夜行から首都のD.U.まで飛んで来たのは、ひとえに
「なお、当学院としては孤坂ワカモの処分は
カホから告げられた処分内容に、その場にいる誰もが厳しくも納得したような表情で頷く。内乱を起こしておいて学校の「停学」や「退学」などおまわりさんの様に外から来た者からすれば軽い罰とも感じないかも知れないがここは「学園都市」たるキヴォトスである。国でなく学校が戸籍を管理し、身分を保証しているキヴォトスにおいて停学や退学とは外でいう
「………」
故に、ある種当然とも言える罰であったが、それでも大人のおまわりさんから見てみればまだまだ子供相手にそこまでの厳罰は果たして適当なのか悩ませるものであった。
「では、そろそろ本作戦について伝達します。不知火副室長」
「ええ、本作戦に動員するのはおまわりさん麾下の予備第十機動隊を中核に先日壊滅した管区第一・第二機動隊を含む各機動隊から抽出した精鋭800名。これに救援部隊として参戦中のアビドス校戦力等を加えた新生RZ隊を本隊としつつ、遊軍としてSRTで唯一
作戦の大枠としてはサンクトゥムタワーを目指して進軍する叛乱軍本隊を遂に損耗率が200%を超えたおまわりさん率いる機動隊が、並の戦力では押さえにもならない一番の難敵である孤坂ワカモと多脚戦車をFOX小隊が抑える形である。
「……兵力不足は承知の上です。切り札となるFOX小隊、全てはそこに掛かっています」
本隊となる機動隊はもとより、SRTの各小隊も
肉を切らせて骨を断つ、にしても余りにSRT頼りの作戦ともいえない作戦に、そんな作戦しか用意できなかったのであろう防衛室の口惜しさがカヤを通じて滲み出ていた。
《──ならば我々も》
《ええ、私たちも》
《一枚噛ませてもらおう》
「ハイランダー鉄道学園とプロメテウス消防学校?」
しかしそんな会話に突然割り込んで来たのはオブザーバー枠として参加資格はあったものの、今の今までろくに発言をしてこなかったハイランダーとプロメテウスの2校であった。
《ヴァルキューレが車両並びに駅舎を死守しているとはいえ、それ以上に我々ハイランダー鉄道学園においてこれ以上の首都圏環状線の麻痺は看過し得ない状況になりつつある。サンクトゥムタワー駅周辺の常設部隊に加え、緊急配備した鉄道警察隊4個中隊と警備車両16台の指揮権をそちらに委譲する》
《我々、プロメテウス消防学校も
これまで最前線で戦っていた側からすれば、今の今まで傍観に徹しておきながら今更一体どんな風の吹き回しか、と文句のひとつも出そうな場ではあるが、状況がそんな贅沢を許すことはないことも皆理解している。
「正真正銘、最後の戦いです。本作戦にヴァルキューレとSRTは残存する全戦力を投入、有志連合とともに主犯である狐坂ワカモ率いる叛乱軍を正面から受け止めます」
足りない兵力をアビドス・百鬼夜行・ハイランダー・プロメテウスの有志連合により補うことができたヴァルキューレはこれでようやく正面切って叛乱軍と
「問題は我が方の展開場所です」
そして最後に問題となったのはあらかじめ防衛室が用意していた防衛計画よりも膨れ上がった部隊の展開・配置場所。
「叛乱軍の進軍経路を想定した上で、その
道路の結節点でかつ敵部隊の布陣が制限される場所……そしてサンクトゥムタワーへの阻止点となる場所となると──」
端末の上を、カヤの細い指先がページをめくるように滑る。勿論だが最重要防衛対象であるサンクトゥムタワーに
「なるほど、ここ……ですか」
「ええ、ここしかありません」
端末を操作していた彼女の指が止まる。そしてその端末からD.U.の立体地図を操作し映し出された地図を見たリンの呟きに、カヤも静かに同意する。
「作戦領域はサンクトゥムタワー正面、中央広場──
──仮称「円卓」とします」